ダンジョンにダイの代わりに爆死した兄弟子がいるのは間違っているだろうか(なおヒュンケルでもポップでもない)   作:規律式足

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 ベート・ローガの祝品、ですが。
 ゼノンが運んでる途中で遭遇したリリルカは匿名の祝品だと伝えられてすぐにベート・ローガが送ったのだと察しました。
 高価な祝品を送る行為自体が冒険者の箔付けになり、その派閥と友好関係を示すので、それらの自身の利益を顧みず、かつ名前を伏せるような照屋な知り合いはベート・ローガくらいですので。
 なお後日、18階層で共に戦った冒険者達からも届くようです。



第74話

 

「ゼノンの旦那。募集した入団希望者をこれから見るらしいんで、前庭に行きましょう」

 

「もうそんな時間か」

 

「さっき、命のヤツにも伝えておきましたんで」

 

「んじゃ行くとするか」

 

 確かダフネとカサンドラも来るとか言ってたな。アイツラなら知り合いだし、今のベル達のパーティーにはない強みがあるからありがたいよな。

 とりあえずこの二人は俺からも推しておくか、と考えながら前庭に行けば、そこには五十人を超す入団希望者が集まっていた。

 

「多いな」

 

 ヒューマン、エルフ、ドワーフ、獣人、アマゾネス、アイズ・ヴァレンシュタイン、小人族、半亜人、いかにも冒険者志望ってガタイの男から、この都市に来たばかりっぼい旅装姿の女までいる。

 まあギルドと屋台で広めればそうもなるか。

 

「「ん?」」

 

 なんか今、変なの混じってなかったか?

 えーと、ヒューマン、エルフ、ドワーフ、獣人、アマゾネス、アイズ・ヴァレンシュタイン、小人族、半亜人、ダフネ、カサンドラ・・・・・・。

 

「なにしに来てんだあの『剣姫』?」

 

「広告の『入団したらジャガ丸君食べ放題!』につられたのかね」

 

 ヴェルフが頭痛をこらえるように頭を抑えながら呟いたので、俺はヘスティアが配布した募集広告を見ながら答える。

 

「オラリオ最大派閥の幹部がそんな理由で・・・・・・来そうだなあ」

 

 ヴェルフ自身はあまり会話をしたことはないが、アイズが俺達と親しいことからどんなヤツかは知っている。

『神秘的』とも『神に匹敵する美少女』とも『近寄りがたい』とも『狂戦士』とも『ダンジョン狂』とも違う、アイズの周囲のイメージから形作られた顔以外を知っているのだ。 

 年齢と外見に不相応な幼子のような彼女を。

 

「だからロキ・ファミリアにもジャガ丸君屋台を設置しろと言ったんだ」

 

「屋台付きホームってなんすか。

 つーか、ジャガ丸君だけじゃなくて、旦那目当てってのもあるんじゃないのか?」

 

「前々からアバン流を教えて欲しいとせがまれてたからなあ」

 

「いやそんだけじゃなくてよ」

 

 懐かれてる自覚はある。

 だから面倒を見てやっても良いと思うが、アイズの立場と俺の多忙さから中々できないのだ。

 

「とりあえずロキ・ファミリアのホームまでひとっ走りして保護者を呼んでくるわ」

 

「頼むぜ旦那、『剣姫』の引き抜きなんて戦争に成りかねない」

 

「本人の意思で来たのになあ」

 

 今ならまだ冗談で済む。

 だからさっさと行くとするか。

 

「って、椿もいるじゃねえか!!ヘファイストス・ファミリアの団長まで来るとか何を考えてんだよ!!」

 

 他にも知り合いを発見。

 

「ベルの活躍と旦那のやらかしに興味を持ちやがったな!?」

 

「待てヴェルフ、なんでベルは活躍で俺はやらかしなんだよ」

 

 ただちょっと動くアポロン像を大量に取り出して、オッタルを倒した程度だろうが。

 充分だな、うん。

 戦争遊戯、そこで俺達ヘスティア・ファミリアはあまりにもやりすぎたようだ。

 あと、俺やベルの件ばかりではなくヴェルフがいることで、『クロッゾの魔剣』をファミリアに入団したら使えるかも知れないことが冒険者からしたら魅力的なんだろうな。

 

「つ、ついに零細【ファミリア】脱出・・・・・・!!神様っ、やりましたね!!」

 

「ああ!【ファミリア】を発足してから苦節三ヶ月ッ・・・・・・短いようで長かった!!」

 

 そんな事を言いながら手を取り合って喜ぶベルとヘスティアの姿を見てから俺はロキ・ファミリアへと急いだ。

『剣姫』アイズ・ヴァレンシュタインが来てると知られたら他の冒険者も来かねないからな。フリュネとかティオナとか。

 ただでさえバーチェが正式に加入する予定だってのに大変なことになりそうだ。

 

 

 知っている場所だからとルーラでひとっ飛びで行きたい気持ちになるが、多分ルーラはリレミトに並ぶ知られたらマズイ呪文の一つだろう。

 また教えて欲しいと頼まれても、あのポップですら習得に苦労したこの呪文をマトリフ師ほど育成能力のない俺が教えられるとは思えないからな。

 

「すいませーん」

 

「ん?貴方は【ヘスティア・ファミリア】のオッタルを倒したヤツウウウウウ!?・・・・・・・・・・・・サインください」

 

「うん、書くよそれくらい。んでちょいと主神さんと幹部の誰かに伝言を頼みたいんだが」

 

「構いませんよ。えっと俺達が聞いていい内容ですか?手紙とかでも大丈夫ですが」

 

「まあ大したことじゃないから大丈夫だろ。大したことじゃあないよな?」

 

 正直判断できないな。

 

「こちらの『剣姫』がウチの入団募集に参加してるんだが」

 

「大したことでしょうがっ!!

 俺がロキ様かリヴェリア様に伝えてくるから、お前はここを頼むっ!?」

 

「はいっ!!」

 

 俺の言葉を聞いた門番は大慌てで黄昏の館へと駆けていった。

 

「なんか、悪いな」

 

「いえ、なんとなくアイズさんがやらかしたんだろうなっていうのはわかりますから」

 

 ロキ・ファミリアの門番は男女二人組。

 その残った方がそう溢す。

 

「子供みたいなヤツだからなあ、アイズは」

 

「ははは、私達は同じファミリアなのについ最近まではそんな風に思えませんでしたけど」

 

「? 見ればわかるだろうに」

 

「人を寄せ付けない態度、あの見た目で誰よりも早くモンスターに突っ込む精神性、桁違いの強さと成長ぶりから、身内なのに色眼鏡をかけて見てたんですよ」

  

「そんなもんかね」

 

「でも、先日そちらの『リトル・ルーキー』をベートさんと競う合うように修行(ボコる)つけてるのを見て印象が変わったんです」

 

 修行をしてもらえと言ったのは俺だがベルには悪いことをしたのかもしれん。

 そして、だからベート・ローガは祝品なんて送ってきたのか。

 ベルはかなり年上に好かれるタイプだから訓練してる間に情が湧いたんだろう。

 

「なるほどね」

 

 ロキ・ファミリア内でアイズの印象が変わる、か。本人が言うには親しいのは同格の幹部連中かレフィーヤという後輩ぐらいらしいから、これからはもっと増えていくことだろう。

 

「すいません、門番なのにこんな話をしてしまって」

 

「構わねえよ。ちょうど良い時間潰しになった。どうやら来たみたいだしな」

 

 何やら黄昏の館から騒がしい音が聞こえてくるので、どうやら到着したようだ。

 

「アイズに抜け駆けされたー!!あたしもヘスティア・ファミリアに改宗するーー!!」

 

「何を言っとるんやティオナ!!ちゅうかアイズたんかて認めとらんわ、引き取りに行くんや!!」

 

「そうだ、バカゾネス!!テメェが居なくなったら誰が色惚けゾネス共を止めんだよ!!」

 

「あたしも改宗するー!!!!」

 

「コイツ、さっきより力が増しやがった!!」

 

「ベート!!そんな事を言ったらやる気を出すに決まっとるじゃろうが!!」

 

 そこには全力で走り出そうとするアマゾネスのティオナ・ヒリュテを羽交い締めにして止めようとする狼人ベート・ローガ。さらに叫ぶロキと同じく止めようとするドワーフのガレス・ランドロックがいた。

 

「あー、大丈夫か?」

 

「大丈夫に見えるならディアンケヒト・ファミリアに行け。このバカゾネスが暴走してんだよ」

 

「ティオネに続いてティオナまで、いくら頑強な儂らでも身体がもたんわい」

 

 ボロボロな上にげっそりとした様子で男二人は呟いていた。

 

「あ、ゼノン!!

 オッタルとの戦いは凄かったよ!!

 どうしたらあんなに強くなれるの?」

 

 こちらに気がついたティオナが嬉しそうに顔を輝かせながら言う。

 

「言いながらも力緩まねえぞコイツ」

 

「執念じゃのう」

 

 オッタルの戦い、見ていたのか。

 てっきりアルゴノゥトと呼ぶベルの方を見ていると思ったんだが。

 

「あー、美味い食事に、適度な運動?」

 

 アバン先生に食事こそが元気を出す一番大切なものだと教えられて気をつけているからな。

 向こうの世界での破邪の洞窟攻略時の保存食生活はしんどかった。

 運動も、身体が動かなくなるまで全力で修行してたから適度って感じだよな。

 

「はえー、そうなんだー」

 

「んなわけあるかよ」

 

「食事はウチでも改善できるかの」

 

「嘘は言っとらん、コイツ本気で言っとる」

 

 俺の回答にティオナな頷き、他の二人と一柱もそれぞれ反応した。

 

「とりあえずウチのホームへ行くか」

 

「知らせてくれてあんがとな」

 

「私も改宗ー」

 

「俺はダンジョンに行く」

 

「リヴェリアも来るから少し待ってくれんか」

 

 こうして、ロキ・ファミリアの面々と合流した俺はヘスティア・ファミリアのホームへと帰還した。

 今頃は面接でも開始してるのかね?

 ヘスティアが(私情混じりで)適性判断するとか言ってたしな。

 彼女は抜けてるトコもあるが、アレで人を見る目は確かだ。

 大勢の仲間に憧れるベルには悪いが、厳選して二人か三人くらいまでにしてほしいもんだ。

 ダフネ、カサンドラ、バーチェで埋まるじゃねえか。

 

「そういえば、ロキ・ファミリアは入団希望者はどうしてんだ?」

 

「最初はウチからスカウトしとったけど、最大手になってからは定期的にぎょーさん来るからなあ。

 一通り見て、ウチがビビッときた子以外はフィンが試験して決めとるよ。

 ティオナやベートも細かくは違うけどスカウトみたいなもんやし」

 

 ま、その方が確実だよな。

 

「よく考えたらティオナもベートも儂が叩き潰しとったのう」

 

 するとガハハとガレス(呼び捨てにしろと言われた)が笑い出す。

 

「むぅ〜今なら負けないから!!」

 

 二人ともフリーだったとこをスカウトされたってわけか。

 

「ところでゼノンよ。貴方の使う魔法についてだが」

 

 ハイエルフにして魔法に関して深い探求心をもつリヴェリアにアレコレどんな魔法が使えるのか話しかけられているうちに、ついにホームへ到着。

 さて、どうなったかね。

 

 集まっていた希望者がどれだけ選別されたのかと前庭を見ればそこには、

 天を仰いで崩れ落ちた姿勢のベル。

 引き攣った顔のリリルカとヴェルフ。

 目の焦点が定まらずアワアワ言う命。

 石像のように固まったヘスティア。 

 首を傾げるアイズ。

 爆笑しながら地面を叩く椿。

 苦笑するダフネとカサンドラ。

 そして、

 先程までの賑わいが嘘だったかのように静まり返った前庭だった。

 

「・・・・・・・・・何があったんだ?」

 

「入団募集やなかったん?」

 

 理由がわからずに唖然としてしまう俺と、聞いていた状況とは違って不思議そうな顔をするロキの声が、熱狂から醒めたホームに虚しく響くのであった。

 





 今話は、入団募集の会合となります。
 なんかアイズと椿がシレッと混じっていましたが、アイズはともかく椿は新居祝いついでにふざけて混じってました。
 ゼノンがいるから二億くらいは、とは作者も思いますが。新米冒険者や入団希望者からしたらゼノンが居るのに二億も借金があるのかと畏れてしまいました。また直に観戦した人以外の伝聞の人もチラホラいたので。
 
 アイズの行動にティオナも改宗したがりました。彼女もベル達を気に入ってますし、最近は疲れてましたから。

 ダフネとカサンドラはこのままヘスティア・ファミリアに加入かもしれません。

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