ダンジョンにダイの代わりに爆死した兄弟子がいるのは間違っているだろうか(なおヒュンケルでもポップでもない)   作:規律式足

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 続きです。
 オリジナル設定と原作改変があります。



第75話

 

「そんで、なにがあったん?」

 

 勝手に改宗(物語のタイトルみたいだな)、しようとしている(ロキの許可もいるが)アイズを引き取りに来たロキの困惑気味の声が響く。

 新ホーム一階の奥にある広いリビング。まだ荷物を出しきれてない木箱(中身はヘスティアの本)が乱雑に置かれた広間には、長椅子や壁に付けられた燭台、さらに暖炉が備わっている。ちなみにデザインこそ燭台ではあるが蝋燭ではなく魔石灯であり、一々火を灯す必要がなく非常に便利で経済的である。

 仰向けに倒れたベルを長椅子に運び寝かせてやり、とりあえず事情を聞くことにする。

 うーん、うーん、と唸り声を上げるベルの頬をアイズが指でツンツンと突く中、まだ全てを理解しているわけではないリリルカが口を開いた。

 

「その・・・・・・団員募集は途中までは大盛り上がりだったんですよ。ヘスティア様もノリノリで声を張り上げられまして」

 

 まるでライブ会場のようだったとリリルカは言う、その時までは。

 

「けど、屋敷から飛び出してきた命様が借金二億ヴァリスの契約書があったと叫んでしまいまして、それを聞いた入団希望者の方々は阿鼻叫喚の絶叫に包まれて帰られてしまったんです」

 

 そちらのアイズ様と椿様、ダフネ様とカサンドラ様を除いてですが。とリリルカは続けた。

 

「あー、なるほどな」

 

 今回集まった入団希望者はこれから冒険者になる者も多くいた。アポロン・ファミリアの全財産を得て順風満帆に冒険者をスタートできると思っていたのに、実は莫大な借金持ちでした、ならそら逃げもするだろう。

 フリーの冒険者や改宗しようとするオラリオで生活する者の場合はさらにそこら辺の判定はシビアだ。

 中堅ファミリアだったミアハ・ファミリアが、眷族を救う為とはいえ主神による莫大な借金で事実上解散してしまった実例もあるくらいだしな。

 良い装備、対策用のマジックアイテム、良い回復薬、となにかと金が掛かり、それが命に直結する冒険者にとって資金面で常に圧迫されることは耐えきれないのだろう。

 さらに二億ヴァリスもの借金ならば利子も莫大。月々数百万ヴァリスは払う必要があるのだろう。

 

「ちゅうかその様子やとドチビ個神の借金やな。なんやウチみたいにソーマを樽買いしたり、歓楽街に通ったん?」

 

「・・・・・・その話は後で詳しく訊くぞ」

 

「あ、しもた」

 

 ファミリアの金は主神のモノ。

 そんな認識で眷族の稼ぎで遊び呆ける神は多い(というか大半がそう)。神の恩恵を与え、ステイタス更新をしているのだから何もしていないわけではないのだが、日中オラリオ内で茶をしばいている神なんかはステイタス更新以外何もしない者も多い。

 ヘファイストスやデメテルとミアハやソーマなど主神自ら働くのは趣味の一環だとしても良心的な方で、タケミカヅチやヘスティアみたいに切実に働く必要のある神は笑い話のネタにされるくらい珍しかったりする。

 

「そ、それは」

 

「ああ、『ヘスティア・ナイフ』か」

 

 言い淀むヘスティアの視線がベルの腰に向いたところで俺は借金の理由を悟った。

 

「? 自分の名を冠すとか注文品かいな」

 

 武器屋に並ぶ製品を購入するのではなく、特注品を依頼するとなれば当然高くなる。

 ロキ・ファミリアの幹部陣全員が装備品をほぼ特注品で固めてる点から性能は保証するが、アポロン・ファミリアを戦争遊戯で倒した程度の立場でやることではないだろうとロキは首を傾げた。

 

「・・・・・・・・・知っていたのかいゼノン君」

 

 ヴェルフ達、二億ヴァリスに驚いた面々の視線が俺に集中する。

 

「『ヘスティア・ナイフ』鍛冶神ヘファイストスが創り上げた世界に一振りしかない特注品。ヘスティアの髪と血が素材に組み込まれヘスティアの眷族でないと切れ味を発揮しない。ナイフにしてはありえない強度を誇り、経験値を吸収し成長する生きた武器。

 そんな俺に鍛冶を教えた(見せた)人だって創れやしないとんでもない代物、馬鹿高いに決まってるだろ。

 以前気になって値段を尋ねた時にははぐらかされたしな」

 

 俺の言葉に一同は絶句した。

『ヘスティア・ナイフ』、初心者の身の丈に合わない値段の、初心者の身の丈に合ったナイフ。

 世界最速ランクアップ記録を二度も更新し『リトル・ルーキー』と呼ばれる今ならばその判断は間違っていないと言えなくもない。

 だがこの『ヘスティア・ナイフ』を用意したのはまだレベル1の時、先行投資にしてはあまりにも行き過ぎている。

 

「そ、そんなとんでもない物だったなんて」

 

「ロゴタイプが入っていて誰の作品だと前々から思っていたが・・・・・・あの方直々だったのか」

 

「持ち手と共に成長する武器。発想は面白いが中々に博打な代物、必ず大成すると信頼なければ渡すことなどできまいな」

 

 詳しい性能を知らなかったベルが呻き、ヴェルフが疑問が溶けたと頷き、椿がヘスティア・ナイフを興味深そうに眺めた。

 まあ普通の武器ではない。

 武器なんて必要だから用意するモノ。ずっと使い続ける前提のモノなんてまず考えられない。

 

「ま、まあコレはボク個神の契約書だから、そのファミリアに直接害はないよ。取り立てや利子もない契約だからね」

 

「ファイたん、ドチビを甘やかし過ぎやなあ」

 

 二億なんて利子だけでウハウハ利益やん。とロキは呟いた。まあ確かにな。

 

「大丈夫、ヘスティア様。私も4000万の借金あるから」

 

「あたしも8900万だよー」

 

 すると話を聞いていたアイズとティオナが声を上げた。

 第一級冒険者の武器はとにかく高い。

 素材の希少性とそれを加工する技術、さらにはかかった時間も合わせて金額がとんでもなく跳ね上がるのだ。

 オッタルの黒大剣にしても、ウダイオスのドロップアイテムを何人もの鍛冶師が叩き続けてなんとか加工したんだとか。

 

「そ、そうなのかい?」

 

「うん」

 

「そうだよー」

 

 莫大な借金持ちは自分だけではない。

 その事実にヘスティアは希望を感じたのか顔をパッと上げる。

 

「ナカーマ!」

 

「ナカーマ」

 

「ナカーマッ!!」

 

「「「イエーイ!!」」」

 

 ロリ巨乳美少女(の形をした実年齢不詳生命体)と無表情の金髪ロング美少女と褐色肌無乳美少女は、借金仲間という共通点から手を合わせて、まるで新たなチームであるかのようにはしゃぎ出すのであった。

 

「いや、深層に潜れる返済の当てがある第一級冒険者の御二方と、ダンジョンに潜れない時給三十ヴァリスのヘスティア様はお仲間でないかと」

 

「それでいったい何十年かける気なんや」

 

「もうカジノで一山当てるしかないだろ」

 

「オラリオには富くじなど開催してましたっけ」

 

 そんな彼女達を周りの者達は冷や汗をかきながら見ているのであった。

 

「ま、借金については追々なんとかしよう。幸い俺に動く石像の依頼がきまくってるし、破壊の剣の件で鍛冶師としても注目されてるみたいだしな」

 

「ってこれはボクの借金だよ!!ゼノン君が返す必要はないから!!」

 

「前々からバイト代を全て返済に当てられるように生活費は全て俺が出してたんだ。今更そんなことを気にするな」

 

「え?僕達がダンジョンで稼いだお金は?」

 

「んなもん小遣いと装備品代にしてるに決まってんだろ」

 

「「うぐぅっ!?」」

 

 俺の言葉にヘスティアとベルは項垂れてしまう。あんまり気にする必要はないんだけどな、夢を追いかけるベルとベルを支えるヘスティア、そんなお前らに何かをしてやるのが俺は楽しいのだから。

 

「ゼノン様、しかし」

 

 だがそんな俺にリリルカが声をかける。

 

「戦争遊戯での勝利、ベル様のランクアップ、などでファミリアの等級は一気に上がってEランクに成りました。それに伴ってギルドへ収める税も年間で百万以上になるかと」

 

「ハハハ、今はそれぐらいなら後半年もしたら一千万はいきそうだな」

 

「いやかなり笑えん出費やで、ウチらかてその捻出で遠征が中々できひんのやし。ダンジョン攻略させたいのに一級装備買える額を徴収すんなやと思うわ」

 

 そらそうだよな。

 魔石商売を独占してんのに、ギルドは何に金を使ってんのやら。

 別にモンスターを溢れさせない為の守備隊やら隔壁やらの費用があるわけでもないのにな。

 

「ま、幸いなことにダフネとカサンドラはこんな借金持ち主神のファミリアでも改宗してくれんだろ?」

 

「まあね。自室をそのまま使えるのは有り難いし。ゼノンなら直ぐに返済できるだろ?」

 

「これからゼノンさんと新生活が」

  

 ダフネはやれやれとした態度だがきちんと将来設計した上で加入すると決め、カサンドラは何やら蕩けた表情でじっとりと俺を見つめていた(最初からずっと)。

 

「よーし、あたしもヘスティア・ファミリアに改宗してガンガン稼ぐぞう!!」

 

「うん、私も頑張る」

 

「「「「「お前らは駄目に決まってんだろ」」」」」

 

「「ええ〜〜〜〜」」

 

「借金一億二千九百万追加は勘弁してください」

 

 リリルカの最後の一言に皆が一斉に吹き出し、場が笑いに包まれる中、俺はバーチェと共に用意しておいた料理を持ってきて宴会をはじめる。

 借金があるから節約は必要だが、もう用意してしまったし英気を養う為にも良いだろう。

 レベル2の上級冒険者にして指揮官としての能力があるダフネと、同じくレベル2でヒーラーで予知夢という規格外の異能があるカサンドラはベル達のダンジョン攻略で大きな力となるだろう。

 バーチェは加入しても、まだしばらくは勉強と本人も楽しんでいる孤児院通いでも良いだろう。

 模擬戦をベル達としてもらったが実力差が有りすぎてまだ当分は組めそうにない。

 何より本人も血を流さぬ日々に安らぎを感じてるみたいだしな。

 

 さてそんな宴の途中だが、ベルが涙目で頬を極東の焼き餅みたくぷっくりと膨らませてこちらを睨んできた。

 どうしたと声をかけたら、戦争遊戯で俺とオッタルの戦いがあったこと、それを自分は見れたのだとアイズに自慢されたらしい。

 ベルの後ろでムフーと勝ち誇った表情のアイズと、そんなアイズの首根っこを掴んで頭を下げるリヴェリアの姿まであった。

 

「いや僕も見たかったって、お前ヒュアキントスと戦ってたじゃねえか」

 

「なんでそんなタイミングでお菓子のおじさ…オッタルさんと戦うんですか!?」

 

「文句はオッタル、いや俺のせいでもあるか」

 

「ゼノン君、ベル君もこんな感じだしなんとかして見せて上げることはできないのかい?」

 

 ぷっくり頬を膨らませるベル君は可愛すぎて激萌えだけど、なんとかして欲しいとヘスティアは言う。

 

「あのな。そんななんとかって、俺はアバン先生じゃねえんだから」

 

「ゼノン君にとってアバン先生は本当に何者なんだい?」

 

 なんとかねえ。

 記憶再生?映像記録なんて悪魔の目玉がいないから撮ってないだろうしなあ。あ、

 

「ほれ幻霧呪文マヌーサ」

 

「「「「「え?」」」」」

 

 えーと、このままだと俺視点を幻として再生してるから視点を多角的にズラして、舞台みたいな感じにっと、良し出来た。

 

「ほれ、これで良いだろ?」

 

「「「「なんとかなったよ!?」」」」

 

「幻を見せる魔法ではないのか?」

 

「幻はある程度作れるから、記憶を再現するくらいなら出来るかもと試したらいけた(音声付き)」

 

「なんでも出来るのだな」

 

「単なる応用だよ」

 

「しかしよく自身を客観的に見れるのう」

 

「? それが出来ないと技の型のズレとかわからんだろう」

 

 自己を見上げる視点で想像し認識できないと技やら型の習得が困難だろうに。

 

「とんでもない才能じゃな」

 

 ガレスは、俺とオッタルの戦いに場が盛り上がる中でそう溢すのであった。

 

 

 新しいホームは珍騒動と楽しい宴から始まった。喜劇のような始まりかたに俺は思わず笑みを溢す。

 そして改めてアポロンから譲り受けた館を見渡す。

 アバン先生と会うまでは、いや会った後も、あの空でダイ達の代わりに飛び出したあの瞬間までは、俺はこんな館に住みたいと、欲しいと思っていた。

 だけど夢が叶い、

 手に入った今では、

 

「部屋が余って勿体ないから賃貸にでもだすかな」

 

 こんなことを思ってしまったんだ。

 笑っちまうよなあ本当に。

 ああ全く、生まれた時から呼吸も出来ないくらい苦しんで苦しんだ俺の渇望は、満たされぬ欲望は。

 

「頑張れゼノンさーん!!」

 

「いや圧倒してるだろ」

 

「お菓子の人がーー!?」

 

「おはぎ、お饅頭ーっ!?」

 

「オッタル、極東菓子まで買ってたんやな」

 

 この騒ぎと新しい家族達が、仲間が満たしてくれてるんだろう。

 

 なあアバン先生。

 貴方があえて教えなかった答えは、

 今ならなんとなくわかる気がするよ。





 今話は、ヘスティアナイフの借金+宴会にロキ・ファミリアが加わった形ですね。
 現在フィンさんは服が破られ壁際に追い詰められスーパーピンチですが、まあ勇者だから大丈夫でしょう(笑)。
 ダフネとカサンドラとバーチェは加入しました。
 今後どうなるかは、これから決めていきます。
 ギルドの税金制度はかなり謎ですね。
 警察も消防隊も防衛隊も無いのに、何にお金使ってんでしょう。
 病院も公営ではなくディアンケヒト・ファミリアですし。
 疑問はつきませんが、それは置いといて。
 原作でベルが感じていた【ファミリア】の温もりをゼノンも感じてるお話でした。
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