ダンジョンにダイの代わりに爆死した兄弟子がいるのは間違っているだろうか(なおヒュンケルでもポップでもない) 作:規律式足
宴会が終わったロキ・ファミリアメンバーが帰ったらホームの塔の壁が破壊されていたそうです。
きっとダイとクロコダインが戦ったんでしょうね(目そらし)。
ヘスティア・ファミリアがアポロン・ファミリアに引っ越して新団員勧誘からのアレコレと宴会があってから翌日。
帰り際にロキから「ちょいと手を借りることがあるかもしれんわ」と耳打ちされ、まあ知らん仲ではないから良いかと俺は内容しだいだと一応引き受ける気はあると返した。
ロキ・ファミリアはオラリオの双頭たるファミリア。その立場からダンジョン攻略以外の面倒ごとに対処しなければならないのだろう。
そういえば先日の港町メレンでも食人花の調査がどうとかアイズが溢していたな。
まあ、どんな厄介事があるかは知らんが俺が報酬として渡した『歓楽街優待券』で英気を養って欲しいものである。
ベル達が今日こそは引っ越し作業を終えようとパタパタと館内を駆けずり回るのを見て、俺も依頼されてる動くガネーシャ像を仕上げないとなと館外の作業場へと足を運ぶ。
魔力を注ぎ込めば動く(ということになっている)自動人形は、オラリオの外壁で門番を担当しているガネーシャ・ファミリアにはありがたい物らしい。いくら眷族数が多く、最高はレベル5だが実力者揃いのガネーシャ・ファミリアであっても、オラリオの警備、冒険者によるトラブル対処、仲間の育成、資金集めのダンジョン攻略などをしていたらいくら人手があっても足りないからな。
ちなみに主神であるガネーシャは、動くガネーシャ像達をかなり気に入ったようで、毎朝「俺が、俺達が、ガネーシャだっ!!」とゴーレムも加えてポーズを決めているそうだ。
眷族はいつものことだと流しているが、都市民からはえらく評判が良いんだとか。
玄関から前庭に出たところで何やらオロオロと門の前で右往左往する千草を発見した。
「どうした?」
「あ、ゼノンさん。命ちゃんに用事がありまして」
千草。
命が所属していた極東からオラリオに主神ごと出稼ぎに来た【タケミカヅチ・ファミリア】の一員。
極東衣装の前髪で目を隠した少女である。
「呼んでくるか?それとも自室まで案内してやろうか?また朝風呂に入ってなければ部屋の片付けしてる筈だしな」
昨日もつい我慢できずに入っていたらしいからな。
「フフフ、命ちゃんったら。私達が濡れタオルで身体を拭くか、水浴びで我慢してるのに自分だけお風呂を堪能してるんだ。これは少しオハナシしないとフフフ」
朝風呂という言葉を聞いた途端、千草が隠れた目を光らせ全身から暗くて強い負の念が溢れ出す。『(ごはんー?)』暗黒闘気に似てるけど食事じゃないから出てくんなガスト(暗黒闘気で作られた煙状モンスター)。
「あー、風呂ぐらいなら貸してやれると思うぞ?」
「ダンジョンに潜った後にギルドで借りるシャワー(有料)がせいぜいでそれも湯船がなくて物足りない思いを私達がしてるのに命ちゃんったらフフフ」
「おーい、帰ってこーい」
『(やっぱりごはん?)』
負の念ってヤツは些細な感情からでも湧き上がるもんだな。
とりあえずガストに千草を見ていてもらって、俺は命を呼んでくることにした。
いったいどんな用事なんかね?
命を連れていったら、
「ほ、本当ですかっ?!」
と、少し会話した後に驚きの声を上げていた。
「何があったのか?」
「風呂を借りにくる話ではなさそうだな」
「檜風呂でしたか、リリははじめてでしたがバスタブより良い感じでしたね」
ガストを隠れさせたところで窓辺から一緒に並んで眺めていたヴェルフとリリルカと疑問を口にする。
なにやら千草の齎した情報で命が焦っているようだ、ヴェルフ達も様子が変だと気づいていた。
なんか緊急の案件かね?
タケミカヅチ・ファミリアと付き合いはかなりあるが、基本的には貧乏以外のトラブルとは無縁の連中なんだが。
しっかり耳を澄ませていれば聞き取れていたが、聞き耳たてるのも失礼だと気にしないようにしてたからな。
んで、千草は足早にホームから去り、命も館へと戻ってきた。
「命さん、どうかしたんですか?」
ここで普通に訊けるベルの人柄は助かるよな。
「い、いえっ。別に、何も・・・・・・」
「「「(なんかあったな)」」」
ベルの問いかけに慌てて目を逸らし、素早く会話を切る命。
ぎこちない動きと動揺した態度から、何かがあったのは間違いないと俺達は確信するのであった。
「タケミカヅチも借金してたのかね?」
故郷で世話した娘が嫁入りするから急遽大金が必要になったとかで。
「リリ達には笑えない冗談ですよゼノン様」
皆と顔を見合わせそんな軽口を叩く。
なにやらまた騒動が起きるような、起こらないような微妙な予感を俺は感じるのであった。
「つーわけで、なんか予知夢見なかったか?カサンドラ」
こういった時はとりあえず予知の確認だな。
「あのさゼノン、確かに的中するみたいだけど、それはそれで一々当てにするのもどうかと思うよ」
最近はカサンドラの戯言だと切って捨てなくなったダフネが苦言を呈する。
予知に頼り過ぎた国の末路は物語では悲劇の定番だからな。
「ゼノンさんが頼ってくれた(ジーン)。
でもあまり大した夢は見てないですよ?」
もっともカサンドラは嬉しそうだが。
「見るには見たのね」
ま、ダフネの言う通り予知に頼り切りもよくはないか。ただ予知夢の話をふるとカサンドラが喜ぶから悩みどころなんだよなあ。
「夜の町を飛び跳ね逃げる白ウサギ。
追いかけ回す飢えた女獣の群れ。
逃げ惑った先で白ウサギはとんでもないモノを見るのです。って感じでした」
色々思い当たるな。
しかし神々からは史上最速兎と呼ばれ、予知夢でも白ウサギと表現されるベル。
本当にヒューマンなのかここまでくると気になってくるな。
「白ウサギって団長よね?」
「夜の町は歓楽街・・・・・・か?」
となれば女獣はアマゾネスだとして、ベルは何を目撃するんだ?
確かにイシュタルは色々とやってはいるが、拠点に証拠を残すヘマはしないし、あったとしても一見して分かるものではないと思うが。
「というか、団長が歓楽街になんで行くのさ」
それだ。
知識として知ってそうだがベル本人はまだ行ったことはない筈。俺も連れてったことがないしな。
「何度か連れて行こうとしたが、ヘスティアとリリルカがうるさくてよ。俺としてはでろりんみたいに紹介とかやってみたいんだが」
そういえば俺が歓楽街とか行って酒をはじめて飲んだのはでろりんが案内してくれたからか。
アバン先生はそういうのは一切行かない人だった。やっぱりアバン先生もフローラ様のことが頭から離れなかったのかね。
「さすがは歓楽街の『夜の帝王』」
「誰が紫デブ蝙蝠だ。俺も男だからな溜まるもんは溜まる」
「ゼノンさんが、はわわわわ」
「なら恋人作れば良いじゃん」
「まだ遊んでいたい年頃なんです」
恋人と娼婦は敷居の高さが違うだろ?
「けどさ、ゼノンが気になったのは命と千草って娘の様子が変だったからでしょ?あの二人が歓楽街と関係あるのかい?」
「・・・・・・ねえだろ。タケミカヅチに惚れてる命と、桜花に惚れてる千草だぞ」
「なら身売りとかもないか」
「ま、なんか動きだしたら調べるとするか」
「ダンジョン攻略前に地上でトラブルあると生存率に関わるからね」
呆れたようにダフネは溜息をつく。
レベル2になるくらい冒険者をやっているだけあってそういった心構えはきちんとしているようだ。
「ダンジョン攻略については頼むぞ。まだ冒険者としてはダフネが一番手練れだからな」
「レベルと速度なら団長、経験ならリリルカ、力ならヴェルフ、剣技なら命、なんだけどね。
ま、せいぜい普通の冒険者ってのを教えてあげるとするよ」
普通の冒険者としての経験。
それが結成したばかりのヘスティア・ファミリアには何より必要な要素なのかもしれない。
今話は、宴会翌日の命と千草のやり取りについてです。ダフネとカサンドラが居るため、ゼノンは彼女達に相談します。
ちなみにベル君は大したものは見ません。ただちょっととある人の尊厳に関わることなだけです。
カジノ編、オリジナル閑話をいくつか挟みたいのでいつも以上に話が続くかもしれません。
ヘディンさんとか出したいですし。