ダンジョンにダイの代わりに爆死した兄弟子がいるのは間違っているだろうか(なおヒュンケルでもポップでもない)   作:規律式足

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 繋ぎ回です。
 話が進みません。



第78話

 

「きょ、今日は早めに就寝させてもらいまーす」

 

 ホームで夕食を終えた後。

 まったりとおしゃべりやカードゲーム、ボードゲームなどをしながら仲間達と過ごす一時が定着しつつある中で、命さんは開口一番そう言った。

 ちなみにヘスティア様は僕達に借金バレしてからバイトでガンガン残業するようになった。リリが「それでも二億の前には焼け石に水では?」と呟いたりしているけど、気にせずやる気を漲らせてガンガン働いている。

 どこか空々しい命さんの声。

 まだ夜の八時前ということもあってその場の皆が嘘だなと気づいていたけど、敢えて知らない振りをして「お休みなさい」と見送ることにした。

 彼女がリビングを後にして、三階の自室に向かう振りをして二階の窓から飛び降り裏門から外へ出ていったのを確認する。

 そうなればいよいよ僕達も行動開始だ。

 

「よし、追うぞ」

 

「尾行は盗賊業以来ですね〜」

 

「い、いいのかなぁ・・・・・・」

 

 仲間の後をつけるという行為に決めていたとはいえついヘタれてしまう。

 千草さんとの話からここ数日挙動不審だった命さんを追跡するのは、僕とヴェルフとリリの三人。

 

「気を付けてな」

 

「遅くならぬように」

 

「ま、これも経験でしょ」

 

「ウサギとキツネの月夜の会話?」

 

 ゼノンさんとバーチェさんとダフネさんとカサンドラさんはホームで待機だ。

 ヒラヒラと手を振るゼノンさん達に見送られて僕達は追跡を開始するのであった。

 

「やっぱり気が逸っているな」

 

「落ち着きがないですね〜」

 

 昼とは違う姿で賑わうオラリオの夜。そこを早足ですり抜けるように歩く命さん。

 だけど剣術と体術に秀でた頼れる遊撃手である普段の彼女なら気づくような拙い僕達の尾行に、彼女はまるで気がつかない。

 それだけ彼女が焦っている、つまり緊急事態なのではないかと心配になってくる。

 物陰に隠れては命さんから付かず離れず移動を重ねて追跡していくと、南のメインストリート・繁華街へと到着した。

 大劇場やカジノや高級酒場が並ぶ、ここが目的地かと思いきや、命さんはさらに道を曲がり路地裏の店頭に佇んでいた千草さんと合流した。

 

「千草様?他の皆様は居られないみたいですね」

 

「タケミカヅチ・ファミリア関連なら桜花は現れると予想していたんだがな」

 

「ここからさらに移動?どこに行くんだろ?」

 

 親しい友人とこっそり二人で飲みに行く。

 そんな微笑ましい様子には見られない。

 命さんと千草さんは何やら言い合って神妙な顔で頷き合い、その場から離れ出した。

 僕達は建物の影から顔を出してさらに尾行を継続する。周りの人達の胡散臭い視線を寄せられるのが少しばかり辛いけど、仕方ないことだよね。

 二人がどんどん進んでいき、追う僕達も繁華街の喧騒から離れていく。

 

「・・・・・・おい、この方向は、まさか」

 

 するとヴェルフが彼女達の進行方向から目的地を察したようだ。

 オラリオ南東部、だと思う。そこには何かあったかな?普段から僕はあんまり行かない場所だよねと頭の上に疑問符を浮かべる。

 ヴェルフの言葉を聞いて、はっ、とリリも其処に何があるのか思い出したみたい。

 

「ねえ、二人とも都市南東部って」

 

「ベルッ、お前はここで帰れっ」 

 

「ベル様、帰ってくださいっ」

 

 何があるのか尋ねようとしたら急に二人から僕だけ帰れと語気を強めて言われる。

 

「えっ、えっ?なんで、急に?」

 

「いいから聞けっ、お前にはまだ早い」

 

「そうです。此処から先はベル様が来ていい場所ではありません!」

 

 理由がわからず混乱してしまう僕に、二人はなんとか押し切ろうとしてくる。

 

「そんな、今更なんで・・・・・・あっ、命さんが行っちゃうよ!?」

 

 ここまで来て除け者扱いされたくないから必死になってごねていたら、タイミングよく命さん達が道の奥へと進んでいき、見失いかけそうになっていた。

 

「あー、くそ。リリスケ諦めろ、やっぱり旦那に来てもらうべきだったか」

 

「う〜〜〜命様。よりによってどうして其処なんですか〜〜。ベル様の教育によろしくないのに」

 

 二人の反応、ヴェルフはやらかしたと後悔して、リリは苦虫を噛み潰したような顔を浮かべている。

 いったい、何があるんだろう?

 路地裏に転がる酔い潰れた冒険者(風邪をひかないか心配)を跨ぎながら僕達は、二人の進路を辿るのであった。

 

 

「こ、ここって・・・・・・」

 

「だから帰れって言ったんだ」

 

 道が開けたことで現れた光景に僕は顔を引き攣らせることになった。

 現在地は都市の第四区画、その南東のメインストリート寄り。

 隣接する繁華街とはまるで異なる、淫靡な雰囲気漂わす空間。建物の壁や柱に設置される桃色の魔石灯、立ち並ぶ看板には艶めかしい赤い唇や瑞々しい果物のマーク、そしてその前で魅惑的に誘う麗しい女性達。

 その場所を神々と人々は鼻の下を伸ばし頬を緩めながらこう呼ぶ『歓楽街』と。

 あちゃーと頭を押さえるヴェルフに顔を向けながら僕は顔が大赤面しているのがわかる。

 

「だからベル様には来てほしくなかったんです」

 

「ここの匂いはどうにも慣れないな」

 

 リリは羞恥か憤りかで顔を真っ赤にして、ヴェルフは色気たっぷりの女性から漂う香水の甘い匂いに鼻を摘んでいた。

 

(こういうことだったのか!?)

 

 ヴェルフとリリが帰らせようとしたことに僕は納得した。ド助平なお祖父ちゃんがもしいたらルンルンと足を運びそうな場所だけど、想い人以外と『そういう事』をすることに抵抗のある僕には早いどころか一生縁のない場所である。

 そういえばヘスティア様も「南東区画だけには行くな」と以前から入念にしつこく厳命されていたことを今更ながらに思い出していた。

 

「オラリオに・・・・・・こんな場所あったの?」

 

「むしろ冒険者、荒くれ集うオラリオだからこそある場所だろうよ」

 

「この区画は大通りも含め、日が出てる内は扉も窓も閉め切って閑散としています。ベル様がご存知ないのも当然です」

 

 夜の街である『歓楽街』は日中は寝静まっている。

 日中はダンジョン、夜は外食でもしない限りは出歩かない僕が知る機会はなかったよね。

 

「カイオス砂漠の文化圏に、海洋国地方の建築様式・・・・・・相変わらずごった煮だな」

 

「オラリオは『世界の中心』ですからね。娼婦達も大陸中から来ると聞いたことがあります」

 

 多様な格好をした娼婦が行き交う幅広の街路。そこから見える建物はヴェルフの言うように様々で、東方や砂漠地方、オラリオではまず見かけない外観の建物が密集している。

 オラリオ内にも異国情緒というか、その地方出身者ごとに固まる区画があるけど、こんなごたまぜな場所は見たことがなかった。

 

「ヴェ、ヴェルフは来たことがあるの?」

 

 もしかしてゼノンさんが連れてきたかな?

 

「ヘファイストス様のもとにいた時に同僚達に連れられてな。来ただけで利用せずに帰ったよ」

 

 命さん達を追跡する途中に、集まってくる娼婦の皆さんを押し返しながらヴェルフは億劫そうに返す。

 

「リリも幸いここには墜ちませんでした」

 

 ソーマ・ファミリアという特殊な環境で育ったリリもそう呟く。ただ昔の同僚にはここでお金を稼いでいた人達もいたらしい。

 

「ううっ・・・・・・命さん達は、ここにどんな用事があるんだろう?」

 

「歓楽街でアルバイト、それともホスト目当てですかねえ」

 

「アルバイトは微妙にありえそうなのがな。ホストはねえだろ」

 

 何も歓楽街だからといって娼婦だけが仕事じゃないしなとヴェルフは言う。

 受付やらウェイターの仕事もあるにはある。ただそれらも容姿が良い方が良いので、その点二人は問題ないだろう。

 実際、今も通りを歩く二人は道行く神や男性に声をかけられてはビクビク反応しているし。

 

「ま、初心すぎるアイツラにはねえか」

 

「もう声をかけて合流しちゃいましょう」

 

 まるで迷子になった双子の子鹿みたいな二人。このままだとトラブルになりそうだと判断したヴェルフとリリは声をかけようとしている。

 ここから先はまた呼び込みの娼婦の皆さんが多くて、その人混みに二人を見失いそうになってしまう。

 ヴェルフがなんとか掻き分けて第三区画に足を踏み入れようとするが、『今からサービスタイム!』「へ?」僕は宣伝する娼婦の人達と雄叫びあげる男性客の波に呑み込まれ、逸れてしまった。

 

 

「うう、どこ行ったの二人とも〜」

 

 迷子の時はその場を動いていけないのが鉄則。だけどここ歓楽街で少しでもじっとしていると娼婦の皆さんには手を引かれて連れてかれそうになるし、息を荒くした神様達からは「リ、リトル・ルーキーが客引きかい?」と女神・男神問わず声をかけられてしまう。

 だから仕方なく記憶頼りに歩き回るのだけど、見知らぬ場所だし建物が特徴ありすぎて目印にならないしとここがどこだかわからない。

 こんな時だったらいつもなら『ナニカが』誘導してくれるのだけど、今日はなぜか反応しない。

 

『(こちらリリルカお嬢様担当のシャドー、こちらリリルカお嬢様担当のシャドー。ベル様担当のシャドーに応答願う、ベル様担当のシャドーに応答願う。合流の為に誘導をお願いしたい)』

 

『(つーん。娼婦に鼻の下を伸ばす旦那様など知りません。つーん)』

 

 心細くなって涙が溢れそうになったり、周りから漂う淫靡な空気に恥ずかしくなったりと感情がグチャグチャだ。

 

(うわーん、ゼノンさん助けてー!)

 

「ぼーく?迷子なの〜?」

 

「へあっ!?」

 

 そんな時に美しいエルフの娼婦さんに声をかけられたものだから僕はつい変な声をあげて走り出してしまった。

 ちなみにこの時素直に迷子です、と言っていればこの後のトラブルは無かったかもしれない。

 混乱のまま歓楽街を駆け出す僕。

 色気のある肌の露出した格好、漂う香水の匂い、女性達の男を誘う仕草。

 僕はまさに『夜の街』に押し潰されそうになっていた。

 

「はぁっ、はぁっ、はっ・・・・・・」

  

 そのまんまの意味で迷走し続けた僕だけど、ついに息が切れてしまった。

 ダンジョンでもないのにこんなにヘロヘロになるなんてあまりにも情けない。

 全身を火照らせながら両膝に両手をついていた僕は、汗を拭って顔を上げる。

 

(こ、ここは・・・・・・?)

 

 また知らない場所だと絶望感に眼の前が暗くなる。周囲の風景はまた様変わりして、極東の建物が密集する区画に辿り着いてしまった。

 

「遊郭、だっけ?」

 

 命さん達の出身である島国の娼館様式。何故か偏った知識を持っていた祖父に昔教えられたことがあったのだ。

 さっきの区画のような強引な客引きが居ないので僕はゆっくりと息を整えながら歩いてゆく。

 

 この先でとんでもないモノを見るとは知らずに。

 

 





 今話は、命の抜け出しから歓楽街の追跡の途中です。原作の説明を含めると文字数が嵩んでしまい話が進みませんね。
 上手いことシーンを飛ばしたいのですが塩梅が難しいです。どうにも書かないとどうして此処にが伝わらない気がしてしまいまして。
 二次創作だから原作既読前提でシーンだけでも大丈夫かと悩んではいるのですが。

 ベルのシャドーちゃんは情緒が育っているから拗ねてしまいました。
 リリルカのシャドーがかなり苛ついております。

 次でなんとか春姫のアレコレまで書きたいですね。
 
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