ダンジョンにダイの代わりに爆死した兄弟子がいるのは間違っているだろうか(なおヒュンケルでもポップでもない) 作:規律式足
アレ?
話が膨らんで展開がまったく進んでません。
あと無双アビス面白い。
「どうして、ここに・・・・・・」
神々に絡まれ、危うく強引にお持ち帰りされかけた命はうろたえながら、声を絞りだす。
「命様の様子がおかしかったので、失礼ながらつけてきました」
「一蓮托生の【ファミリア】になったんだ、隠し事なんてするな」
リリルカは尾行について告げ、ヴェルフはヘスティア様みたいな借金バレはゴメンだぜと呆れたように呟く。
その件でトラブルがあったらファミリア皆で解決しようと団長であるベル・クラネルが宣言してすぐにこれなのである。
命が「うっ・・・・・・」と肩をすぼめると、
「あ、あのっ、命を責めないでください・・・・・・。もとはと言えば、私のせいで」
揺れる前髪から片方の瞳を覗かせなながら千草がそう言いながら歩み出る。
か細い声で喋る彼女は、申し訳無さそうに「ごめんなさい」と謝罪した。
その謝罪に別に責めたいわけではないヴェルフとリリルカはとりあえず「説明してくれ」とことの経緯を問いただす。
「・・・・・・実は、私達の故郷『極東』の知り合いと、似た人を、歓楽街で見た、と聞いて・・・・・・」
千草がポツポツと話し出す。
千草と命の説明によると、彼女達と同郷の人物、歓楽街だから女性が数年ほど前から行方知れずだったとのこと。
その消息を絶った人物の目撃情報を、千草が交流ある冒険者達から聞き、命と相談して真偽を確かめる為に来たそうだ。
「同郷の者同士の問題でかつ確証もありませんし、場所が場所ですので」
会ったこともない自身の知り合いを探すことを手伝って欲しいとは、命と千草の性格からして言い出せず。また歓楽街であることから、仲間達に溺愛される初心な『ベル・クラネル』の前では言い出せなかったと告げる。
「けど歓楽街のことならゼノンの旦那に訊けば一発でわかるんじゃねえのか?」
「ゼノン様って何回も訪れて、歓楽街でも有名人ですからね」
ヴェルフが不思議そうに、リリルカはやや不満気(父親が風俗通いしてる感覚)にそう返す。
ゼノンは性衝動発散目的は当然として、歓楽街のこの混沌かつ猥雑した空間を好んでいる。
さらに事実上歓楽街の統治者である神イシュタルともファミリアごと懇意にしているので、彼が望めば歓楽街でわからぬことなどそうはないだろう。
「それは・・・・・・考えたんですが」
「その・・・・・・探し人が女性でして」
無論、いくら初心な二人だってその手段を考えなかったわけではない。
それなりに付き合いがあるので、頼んだからと言って何かを要求する人物ではないと知っているし、無碍にされるほど嫌われている関係でもない。
だが、探し人が女性であり歓楽街にいる以上は娼婦である可能性が高いとつい考えてしまい、
「旦那がその探し人を娼婦として抱いたかもしれないと妄想したら気拙くて訊けなかったと」
男女の肉体関係の有無。
文化や風習によっては挨拶並に気安くなんでもない事ではある(どちらかといえば極東の農村、孤児として育った彼女らもそちら寄りになるのが普通だが、育て親が貞操観が固いタケミカヅチの為こうなった)。
事実アマゾネスなど種族レベルでおおらかである。だが貧乏ではあるが、ある意味温室育ちの箱入り娘である命と千草は、もしそうだったらと考えてどう接したらよいかわからなくなってしまって、ゼノンに訊ねることができなくなってしまったそうだ。
「まあ、わからんでもないが」
「少しばかり妄想が過ぎませんか?」
この歓楽街にいったい何人娼婦がいて、その中から関係持つなんてどんな確率だよと、リリルカは呆れてしまった。
「「うっ!?」」
事実、妄想に等しい想像であると自覚のある両者は顔を真っ赤にして羞恥から俯いてしまった。
「言ってやるなリリスケ。
しかし桜花のヤツはどうした?アイツもお前らと同郷で腐れ縁だろう、連れてこなかったのか?」
タケミカヅチ・ファミリアの団長、カシマ・桜花。タケミカヅチが育てた孤児の一人であり、同じ釜の飯を食った命達とは兄妹に等しい幼馴染以上の間柄だと聞いていた。
命達と同郷の知り合いであるならば彼もまた知り合いだろうし、娼婦であるかどうかはともかくとして、行方知れずだった知り合いが見つかったとあれば何もしないような性格ではないと今までの付き合いから理解していた。
「お、桜花は、歓楽街に、連れてきたくなくて・・・・・・来てほしく、なくて・・・・・・」
ヴェルフが桜花について触れると、千草がさらに顔を赤くして俯いてしまった。
「あの、千草殿は桜花殿のことを幼馴染や兄妹としてではなく、その・・・・・・異性として」
身内の恋愛事情を歓楽街で語るという、とても恥ずかしい行為をしてしまっている命は、もはや度数の高い酒を飲んだ時よりも顔が赤い。
「気持ちわかりますけど」
ヘスティアが都市南東部へ立ち入らないように厳命したり、リリルカがベルを途中で帰らせようとしたのも同じ理由な為、その行動に納得してしまう。
想い人が色気ある女性に目移りし、鼻の下を伸ばすような顔など見たくないのだろう。
また堅物ほど歓楽街に嵌まる、というのはよく聞く話である。
万が一、桜花やベル、想い人らがそうなったら自分の容姿や体型に少しばかりコンプレックスのある千草やリリルカは耐えきれないだろう。
なお、ゼノンがそれを聞いたら、別に恋人じゃないのにそこまで縛り付けるのはどうなんだ?と首を傾げるだろう。
「(旦那が桜花誘って歓楽街に行こう、と盛り上がってたけど止めとくか。下手したら刺されるかもしれんし)」
そしてヴェルフは千草の恋心を知り、ゼノンがやらかそうとしていることを止めることを決意した。
ゼノンとしてはかつて悪友であるでろりん達にしてもらった事を誰かにしたいだけなのだが、乙女心の暴走による刃傷沙汰などヴェルフはごめんなのだ。
本来起こる筈だった事件の芽が事前に摘み取られ、カサンドラが予知夢でそれを知りホッとしてる中、リリルカは千草の複雑な乙女心にうんうんと同調していた。
「しかし、人伝の話だけで判断がつくものなのですか?他人の空似ということも・・・・・・」
島国である極東出身者は、世界中からあらゆる種族人種が夢と野望と富と名声を求めて集うオラリオ全体からしても珍しい方である。
だが、訪れる人数が尋常ではない為、歓楽街だけにしても遊郭エリアができてしまうくらいには存在する。
極東人、という括りで人探ししようものなら見つけることは極めて困難だろう。
「そのお方の種族は珍しく・・・・・・特徴も聞く限り、無視できない点も多いようなのです」
結わえた黒髪を揺らす命は、思いを持て余しているように、視線を地面に落とした。
「彼女は、自分達とは違って高貴な身分です。そんなお方がこの歓楽街にいるなど、とてもではないですが信じきれず・・・・・・この目で確かめずには、いられなかったのです」
居ても立っても居られず探しにきた、と怯えながらこの歓楽街に訪れた動機を命は語るのであった。
高貴な身分、即ち貴族。
その探し人の情報から、鍛冶貴族の生まれであるヴェルフは逆ではないかと思った。
高貴な身分なのにいる筈がない。
否、むしろ高貴な身分の生まれだからこそいてもおかしくないのだ。
暗黒期が過ぎ去ったとされるオラリオであっても、都市の憲兵たるガネーシャ・ファミリアが目を光らせてなお行方不明者は後を絶たない。
その内幾人かは人攫いの被害にあってると噂されている。
そして、珍しい種族であること、貴族であったこと、食べる物に困らず肉付きよく成長したこと、行儀作法を学んでいたこと、そして美しいこと、は人攫いからしては商品の値を吊り上げる宣伝文句となる。
人攫いやら人買いにあった結果、歓楽街にいる。それでも酷い境遇からしたら(例、リリルカ)まだマシな境遇ではあるのだが、大いにありえることである。
ましてや人攫いに関してはヴェルフは他人事ではない。彼はその特異な能力と血筋から現在も故郷であるラキア王国から狙われているのだから。
そんなヴェルフの反応を事情を知るリリルカは横目で窺いつつ、話を切り上げるように喋る。
「事情はわかりました。ですが、不用意です。この第三区画は歓楽街であると同時にイシュタル・ファミリアが牛耳る勢力圏でもあります。いくらゼノン様の件で目溢しされる可能性があるとはいえ、探りをいれるなんて迂闊な真似をしないでください」
せめて話を通しておけば別だが、下手したら難癖つけられファミリア間で戦争になり、タケミカヅチと桜花が夜の街でオモテナシする立場になりかねないとこであったのだ。
その注意に少女達はシュンと項垂れた。
反省する命と千草を見やりながら、ヴェルフはとりあえず帰宅することを提案する。
「何はともあれ帰って旦那に相談だな。案外探し人だって知ってるかもしれない。知らなくても捜索なら旦那からイシュタル・ファミリアにお願いしてもらうとかな」
頼り切るのはどうかと思うが、頼ると飼い主に構われる飼い犬みたいに喜ぶんだよなあの人(傍から見たらわからないが)とヴェルフはぼやく。
その言葉に慣れない場所に疲れ切っていた一同は頷き、
「ん?」
そこでようやく、一人足りないことに気がついた。
「・・・・・・おい、ベルはどうした?」
「えっ?」
ヴェルフの言葉に辺りを見回し、リリルカも気付く、気付いてしまう。白髪赤目の少年の姿がどこにも見当たらない。
「ベル殿も、いらっしゃったんですか?先程からお二人しかいませんでしたが」
「う、うん」
彼女達と合流する前から居なかった事実。あの人混みで逸れたと気付いてしまい、場の時を凍らせる。
「やべえな、下手したら今頃バニー姿で舞台上でダンスしてんじゃねえかベルのヤツ」
「その店はどこですか?ではなく否定できないのがベル様のベル様たるところですからね」
アカン事態に顔面蒼白となり冷や汗をかきながら現実逃避をしてしまうヴェルフとリリルカ。
辺りから届く歓楽街の喧騒。固まる四人の間を、娼婦達の笑い声とお客達の歓喜の叫びがすり抜けてゆく。
そしてそのベル・クラネルであるが、
「ううう〜、私もう疲れちゃったよ〜、春姫さ〜ん。本当に大変なの〜」
「よしよし、アスフィ様の頑張りを春姫は知っておりますよ〜。アスフィ様は頑張り屋さんで、とても良い子ですね〜」
先日お世話になった、というか共闘した、クールな眼鏡美人のお姉さんが、金色の長髪をした狐人の着物姿の女性に縋り付くように膝枕してもらい、頭を撫でられ褒められ続けるという、とんでもない場面に遭遇してしまっていた。
「え?」
逃亡中である現状を忘れるほどのインパクトにベル・クラネルは立ち竦み硬直するのであった。
今話は、ヴェルフ達が命達に事情を訊く+オマケでした。
軽く触れるだけの予定でしたが、書いたら長くなってしまいました。
ヴェルフ的に貴族の人攫いは他人事ではないですね。さらに血筋からエルフに命を狙われかねないオマケ付きですが。
命がゼノンに頼らない理由などアレコレ語った感じです。
ベルが見たとんでもないないモノは、皆さんの予想通りにアスフィさんナデナデでした。
彼女以外の他の常連もとんでもない立場の方ばかりです(笑)。
こうなった経緯は次回にて。
なお昨日発売の無双アビスのせいで危うく投稿が間に合わないとこでした。
作者的にかなりハマるゲームですね。中毒性が半端ないです。