ダンジョンにダイの代わりに爆死した兄弟子がいるのは間違っているだろうか(なおヒュンケルでもポップでもない)   作:規律式足

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「なあフィン?」

「どうしたロキ。先日の神の宴から何やら考えこんでいるみたいだけど」

「うちって、洗濯板(の付喪神)なんかな?」

「擦り洗いできるほど凸凹してないから、むしろまな板だね」

「(怒)いてこますでショタおっさん」

「訊いたのはそっちだろうに(胸が無いと心も狭いのか、ヤレヤレ)」

「(ガチャリ)どうしたお主ら、騒ぎおって」

「ロキは洗濯板なのか、それともまな板なのか、どっちなのかって話でね」

「なんで二択みたいに言うねん」

「? ロキはそこまで薄くなかろう」

「さすがガレスやなあ。きちんとわかっとるやん、うちにもしっかりとあるって」

「コレは絶壁じゃ」

「(納得)」

「誰が壁やあああっ!!って薄くないのは胸やのうて身体かいっ!!」

 そんな怪物祭前のロキ・ファミリアの一幕。



第8話

 

 ヘスティアが神生設計の先行きが危うくなり(元から明るくはない)、ロキに洗濯板の付喪神(笑)という新たな称号が付けられた【神の宴】が終わり。

 ヘスティアがヘファイストスに土下座と借金でベル・クラネルへの武器作成を依頼したり、ベル・クラネルが薬神ミアハにポーションをタダで貰ってから、武器屋の陳列棚の短刀を穴が空くほど見つめ続けて、通り過ぎる先達冒険者から微笑ましいものを見る眼差しを向けられたり、ゼノンが色々溜まってきたからそろそろ娼館にでも行くかと食堂の常連客に相場を尋ねたりしてるうちに時は流れ。

 オラリオの一大イベントである【怪物祭】の日を迎えた。

 

 怪物祭という年に一度の催しが開かれる。

【ガネーシャ・ファミリア】主催の闘技場を1日占領して、ダンジョンから引っ張ってきたモンスターを観客の目の前で調教してみせるイベントなのだとか。

 どうやらこの世界でもモンスターを従える技術は存在するらしい。

 元の世界なら超竜軍団の竜騎衆か獣王クロコダインがガルーダにしていたぐらいだろうか?

 元の世界のモンスターはどれも見た目に反して知能が高く、野生動物にするような調教は不要だった。

 また魔王軍六軍団のうち半分は暗黒闘気で創り出されたモンスターばかりだったから、創造主に逆らう存在はいなく、これまた調教は必要ないのだ。 

 この祭りの事を知ったのは仕事先の食堂で、店長もその日ばかりは店を閉めて家族で祭りを見て回るとか。食堂としても稼ぎ時ではあるが、メインが闘技場なので持ち運び可能な屋台料理ほど儲けがでないから休むらしい。

 急遽できた休日。

 暇だからといって昼間から娼館に行くのもな、と悩んでいた所で、ホームから勢いよく出発するベルを見かけた。装備からしてダンジョンに向かう気だろう。

 

「祭りには行かねえのか?」

 

 だから俺はそう問いかけた。

 

「お祭りですか?」

 

 どうやらベルは怪物祭自体を知らないらしい。全く、これで女の子と出会いを求めて田舎を飛び出したとは笑わせてくれる。

 こういったイベントを抑えることこそがハーレムの第一歩だろうに。

 ざっくりと客と店長から聞いた『怪物祭』にベルに伝える。それを聞いて少しは興味をもったようだ、少しかい。

 

「ゼノンさんは行くんですか?」

 

「いんや、行かねえよ。祭りやら宴は参加しまくって飽きてるから娼館にでも行こうかなと」

 

 元の世界は魔王軍襲来により祭りを開けるご時世では無かった、わけではない。

 むしろ、魔王軍を撃退した勝利を祝う祭りを頻繁に行っていたぐらいだ。から元気ではあっただろう、士気を高める狙いもあっただろう。それでも騒ぐことで悲劇を振り払い、明るい未来を夢見たものだ。

 それで俺はダイ達と行動を共にするまでは、祭りの主役としてなんども祀られたものだ。

 規模はこちらの方が上なんだろうが、モンスターの調教も含め、さして興味は惹かれない。

 

「そうですか、というか娼館って」

 

「ベルも行くか?娼館通って五十年とかいう常連さんからのおすすめの店を聞いたんだが」

 

「僕のおじいちゃんみたいな人ですね」

 

 エロ爺はどこにでもいるのな。俺も常連さんがマトリフ師みたいな雰囲気で会話しやすいから話を聞いたくらいだし。

 

「あの、でしたら一緒に見に行きませんか?」

 

「ごめん。俺ってば異性しか愛せない体質なんで」

 

 一晩以上関係もった女なんていないがな。

 

「デートの誘いじゃないですからっ!?」

 

「うん知ってる」

 

 からかっただけ。

 

「ま、せっかくの機会だ。見物ついでにナンパでもしてみるか」

 

 えーと、確かマトリフ師直伝の口説き文句は、どんなセリフだったか。

 

「仲間、家族とお祭りを見て回るのって、生まれて初めてですっ!!」

 

 ベルのはしゃいだ声に、そんなに喜んでくれるなら良いかという気持ちになる。というか、詳細は聞いてないがベルの過去も何気に重いような予感がするんだが。

 手持ちの金を確認し、護身用の雷鳴の剣はあえてホームに置いていく。こういったイベントには必ず掏りやら物取りが現れる。質の高い剣なんて持ち歩いてそんな連中に目をつけられたくはない。

 

「じゃ、行くか」

 

「はいっ」

 

 朝の澄んだ空気の中、まるで兄弟のようにホームを出発した。

 

「あ、そういえば神様はまだ帰ってきてないんですよね?」

 

「ああまだだ。日持ちする料理はホームに置いてあるから、入れ違いになっても大丈夫だろうが」

 

【神の宴】なのだから数日続いてもおかしくはない。だがここまでヘスティアの帰りが遅いのは用事、おそらくはベルの為の武器作成あるいは、武器を依頼することに時間がかかっているからだろう。

 

「つい神様も一緒ならと思ってしまいまして」

 

「気になるなら土産でも買ってやれ」

 

 特に約束とか待ち合わせもしてないから祭りの最中で合流とか無理だろうしな。

 そんな風に会話しながら二人で歩き、見覚えのある店の前を通ったところで、

 

「おーいっ、待つニャそこの白黒ブラザーズ!」

 

 誰が白黒ブラザーズだ。

 初めて聞いた名称に声のした方向に振り向くと、先日食事と騒動をした『豊饒の女主人』の店先で、猫耳と細い尻尾を生やしたキャット・ピープルという種族の少女が、ぶんぶんと大きく手を振っていた。

 

「知り合いかベル?」

 

 騒動以降はシルから話を聞いた程度で他の店員とは見かけた程度だが。

 

「あれから何度かシルさんからランチを貰ってまして、それで」

 

 照れくさそうに頬をかくベル。

 落とした魔石を拾ってもらった出会いから、ずいぶんと親しくなったもんだ。ポップが聞いたら羨ましがるだろうな(そしてマァムにしばかれる)。

 

「おはようございます、ニャ。いきなり呼び止めて悪かったニャ」

 

「おはよう。気にするな、祭り見物しにいくくらい暇だからな」

 

「おはようございます。えっとそれで僕たちに何か用事ですか?」

 

 呼び止められはしたが挨拶はきっちりとする。躾はきちんとされてるのだと感じた。

 

「ちょっと面倒ニャことを頼みたいニャ。はい、コレ」

 

「へっ?」

 

「サイフだな」

 

「白黒ブラザーズ弟の白髪頭はシルのマブダチニャ。だからコレをあのおっちょこちょいに渡して欲しいニャ」

 

 ベルに渡された物は、布袋状で口金のついた『がま口財布』。エンブレムが刻まれてるので【ファミリア】制作のブランド品かもしれない。

 説明不足から話が見えてこないベルが頭の上にクエスチョンマークを浮かべていると、

 

「アーニャ。それでは説明不足です。クラネルさんも困っています」

 

 助け舟を出すようにエルフの店員が現れた。

 

「ゼノンさん。僕、綺麗なエルフさんに名前を覚えて貰ってます」

 

 そしてベルはなにやら感動していた。

 

「客商売だからな、名前を覚えるのは常連客ゲットの手順の一だ」

 

 二回目の来店時にこれをやられると嬉しくなって何度も通うようになるんだよな。

 

「リューはアホニャー。店番サボって祭りを見に行ったシルに、忘れていった財布を届けて欲しいニャんて、そんニャこと話さずともわかることニャ。ニャア、白髪頭?黒髪兄?」

 

 まあ俺はなんとなく察したが。

 

「というわけです。言葉足らずで申し訳ありませんでした」

 

「あ、今のでわかりましたから。そういうことだったんですね」

 

「財布を忘れるとか大変だな」

 

 まあ、あのシルとかいうヤツなら財布が無くとも周りに潜んでいる護衛が払うだろうから困りはしないだろうが。

 

「そんで渡して欲しいと、どんな規模か知らんが祭りの中で見つかるか?」

 

 破邪の洞窟で会得したレミラーマの呪文でなんとかなるかね?でもアレは正確なイメージと地図がねえと。

 

「闘技場に繋がる東のメインストリートは既に混雑している筈ですから、まずはそこに向かってください。人波についていけば現地には辿り着けます」

 

「シルはさっき出かけたばっかだから、今から行けば追いつける筈ニャ」 

 

「あの、ゼノンさん」

 

「もののついでだ、いいだろそれぐらい」

 

 引き受けて良いかと視線で訊ねるベルに俺は頷いた。シルとやらは何かありそうな存在だが、ベルに優しくしてくれたのは事実だしな。

 

 ベルは財布を落とさないよう懐にしまい、俺達は摩天楼のそびえる都市の中心、更にその奥で伸びてるだろう東のメインストリートへと出発した。

 





 ゼノン
 娼館に普通に行くタイプの主人公。
 性欲はあるが、恋愛経験は無し。
 異種族での子作りに抵抗がある。混血の悲劇を連続して見たのと、故郷のスラム街でその境遇の悲惨さを見てきたから。一応抱けはする。

 ベル
 お兄ちゃんみたいなゼノンとお祭りに行けてウキウキしてる。故郷でも祭りぐらいはありそうだが(地域行事として)、眷属仲間・家族と参加ははじめて。かなり闇が深い。

 白黒ブラザーズ
 ゼノンが兄だから黒白ブラザーズの方が良いだろうか?豊饒の女主人店員のアーニャが命名。
 その名称にベルは照れつつ喜び、ゼノンは心底どうでも良かった。
 兄弟仲良く祭りを見て回る。
 その姿をアーニャはなんだかとても羨ましそうに眺めていた。

 レミラーマ
 ドラクエよりトルネコの大冒険でお馴染み呪文、マップにアイテムの位置が表示される。当作品では破邪の洞窟で会得し、地図に探し物の位置が浮かび上がる。地図が無くともなんとなく方角がわかるようになる。ただ探し物の情報が多く、イメージが正確だとより成功率が上がる。
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