ダンジョンにダイの代わりに爆死した兄弟子がいるのは間違っているだろうか(なおヒュンケルでもポップでもない) 作:規律式足
ちなみに『ナデナデ屋』の噂を聞いたフレイヤが試しに自分の眷族にやってみたところ、
頭を撫でられた眷族は喜びのあまり心臓を止めました。
当然と言えば当然ですが、やった本神であるフレイヤは眷族達の狂信ぶりに軽く引きました。
ことは、ベル・クラネルがとんでもない事を目撃する少しばかり前の場面から始まる。
「もしかして、ベル君かい?」
ヴェルフ達と逸れた僕が極東の娼館『遊郭』の建前が建ち並ぶエリアで心細く歩いていたところ、突然ポンと肩を叩かれた。
仰天した僕が背後を振り向くと、そこには橙黄色の髪と瞳を持つ男神ヘルメス様がいた。
「やあ」
驚いた反応をする僕にヘルメス様は一笑する。
僕より背の高い男神様は、目を弓なりにして他の神様達が胡散臭いと称する優男の笑みを浮かべていた。
「アレ?」
何かが足りないと思いキョロキョロと見回していると、
「なにかあったかい?」
そんな僕の様子にヘルメス様が問いかけてきた。
「その、いつも一緒のアスフィさんがいないなあ、と思ってしまいまして」
「確かに付き人としていつも連れ回しているけど、常に一緒ってわけではないから。
それにいくら俺でも歓楽街に女連れでくるほどレベルは高くないよ?」
僕の言葉に冷や汗をかきながらヘルメス様は返す。けど「いやでもそれでアスフィから蔑むような眼差しを向けられるならアリかも、アリだな」と口元に手を当てながらブツブツと言い出していた。
もしかしたら僕は新しい性癖を開拓するきっかけを作ってしまったのかもしれない。ごめんなさいアスフィさん。
「え、えーっと・・・・・・ヘルメス様は、どうしてここに?歓楽街で遊ぶにしては何やらお荷物が」
「ベル君、歓楽街ではそんな野暮なことを聞いちゃ駄目だぜ?」
帽子のつばをさげ、顔を隠しながら口元はニヤリと笑っていた。
なんとなく知り合いの神様達がヘルメス様を碌な扱いしない理由がわかった気がした。
「オレがここにいたことは、くれぐれも内緒に頼むよ?約束だ」
「いやでも神様達には嘘が通じませんから問い詰められたらバレてしまいますよ?」
「大丈夫、オレの行動をピンポイントで気にする神々なんていないから」
それは少しばかりヘルメス様の心の闇が垣間見えた言葉だった。
顔見知りは多いが親友はいない。
事件が起こったらまっさきに疑われるが、普段は便利屋扱いで気にもされない。
ヘルメス様は神々でそんな立ち位置にいるんだそうだ。
でも少しヘルメス様と会話することで、僕の頭はようやく落ち着いてきた。知っている人(神)と会えた安堵感が、慣れない歓楽街の空気に押し潰されそうになっていた孤独感をどこかにやってくれたんだ。
ならば後は帰り道を教えてもらおうと口を開こうとして、
「それにしても、ベル君が一人で歓楽街とはね〜。ヘスティアにバレたら大変だあ〜」
「へ、ヘルメス様?」
ヘルメス様はイタズラを思いついた時のように愉しげな表情を浮かべていた。
「照れる必要はないよ。さあ、コレをグイッ一飲みしてゼノン君のように武勇伝を作り出すんだっ!?」
同時に僕の掌に何やら小瓶を握らせてきた。チェスの駒に似た透明な容器、中にはチャポンと赤い液体が揺れていた。
「え、と」
「ちょいとお高い精力剤だけど、サービスさ。戦争遊戯の賭けで儲けさせてもらったからね、じゃ」
アデュー、と手を振りながらヘルメス様は嵐のように去っていった。
どんな反応をすれば良いか悩むけど、とりあえず僕は『ゼノンさんの武勇伝』がどんなものか聞きたいなあ、と思いましたマル。
ただ、せっかく遭遇できた知り合いと逸れるのは耐えられないからその後ろ姿を必死に追いかけたのだが、下界では一般人程度の身体能力であるヘルメス様を、レベル3になった僕は捕らえることができなかった。
(逃亡慣れしている!?)
まるでお祖父ちゃんのような逃げっぷり、眼の前にいるのに捕まえられないこのヌルリとした感覚はさながらウナギのようだ。
そんな無我夢中で追いかけて、路地の曲がり角に飛び込んだ時のことだった。僕は対面から歩いてきた人物とぶつかりそうになってしまった。
「おっと」
あわや正面衝突というところを、地面を蹴り、相手も動いてくれたことでなんとか回避することができた。
「す、すいませんっ!?大丈夫です・・・・・・か」
謝罪をしようとする僕は、眼の前の人を見て、尻すぼみとなってしまった。
目を奪われるくらいに美しい足の長さ。くびれている腰の位置はとても高く、美脚という言葉がまさにしっくりときていた。
衣装は紫紺で統一されており、ヘスティア様にも負けない豊かな胸回りは短衣が隠している。
透けて見える薄手の衣を身に纏ったまるでカモシカのように引き締まったアマゾネスだった。
同じ薄手の衣装だけど、どこかおおらかでやあっけらかんとした、ティオナさん達やバーチェさんとは違う、色気の溢れる存在だった。
「まったく、あの胡散臭い神は、今日は別件があるんだってのに・・・・・・。ん、あんたは?」
今日すれ違った女性の中でも一際美麗な相手は、何やら呟いたあとにようやく僕の存在に気がついたみたいだ。露出の激しい衣装と肉感的な身体を前に上手く反応できない僕に、彼女はズイと顔を寄せると、
「その顔、ゼノンの息子の『リトル・ルーキー』だね?」
ぐはぁっ!?
ゼノンさんの息子という言葉は嬉しいけど、何故かこの場所歓楽街で、如何にも娼婦然とした眼の前の人に僕の二つ名である『リトル・ルーキー』と呼ばれると心に表現できないダメージが入ってしまった。
リトル?ルーキー?
歓楽街としてはなんかアレな言葉だ。
「そ、そうですけど・・・」
さらに引き寄せられて腰に両手を回され身体が密着し、見つめ合うことになる。
「私はアイシャ。まあ見ての通り娼婦だけど」
触れ合う感触に恥ずかしさに恐怖の混じったドキマギが心中で暴れる中、彼女は笑いぺろりと自分の唇を舐めた。
「父子の息子比べも悪くないか」
なんかとんでもないことを言い出した。
「じゃ、行くよ」
ヨイショ、と硬直し動けぬ僕をまるで荷物のように小脇に抱えるアイシャさん。
「え?えっ?えっ?」
「ああ代金なら気にしなくて良いよ、ゼノンからはたっぷりと代金以上のモノをもらっているからね」
今夜はご馳走だと、まるで狩りの獲物のように僕は捕まえられてしまった。
駄目だ不味い逃げろ。
今更ながらに本能が抵抗をはじめるが時既に遅く、またレベル3の僕が振りほどけないくらいの力強さが彼女にはあった。
そういえば、バーチェさんがイシュタル・ファミリアの娼婦達は、故郷のテラスキュラに劣らぬ実力者ばかりだと教えてくれたっけ?
そしてゼノンさんが、自分が抱いた娼婦、特にアマゾネス達がなんかランクアップしまくってたなあと不思議そうに首を傾げていたなあ。
何をしてんだあの人!?
ナニだよ。
自分ツッコミをしたくなるくらい状況は極めて悪い。このままだと僕はとんでもなく大切なもの(実際救世に関わる)を失い、オラリオにとんでもないことがおこってしまう(某ヤンデレストーカー女神の暴走)そんな予感と悪寒が全身を駆け巡っていた。
「今日は不作だー」
「あーあ、ロキ・ファミリアの男連中とヤれる皆が羨ましいなー」
「ベート・ローガがいない、どこ?」
「アイシャ、誰それー?」
さらに畳み掛けるように周囲からワラワラと、街路や路地裏から、沢山の人影、いや沢山のアマゾネスが姿を現す。
ぎょっとする僕を他所に、見目麗しく溌剌とした彼女達はこちらへとやってきた。
「ゼノンの息子。見つけたから食べちまおうと思ってね」
「いいねーそれ(ジュルリ)」
「ゼノンの息子ならさぞかし」
「ベート・ローガ、あの熱くて重い一発が忘れられない」
集うアマゾネス達。
まさに僕はウチの食卓に並ぶウサギ料理の如き状態だった。
なんかベートさんのことばかり考えている人もいるみたいだけど。
このままだと僕は大切なモノを失い、とんでもないことがおきてしまう。
そんな時にあの声が聞こえたんです。
「なんという醜態だ愚兎。正直関わりたくないがあの御方が気にかける存在、きっかけだけはつくってやるから適当に逃げろ」
凍るように冷たく、刃のように鋭く、雷のように刺々しい声が、迸る雷撃と共に放たれたのです。
「それからなんやかんや飛び込んだ建物内を逃げ回るうちにここについてしまいました」
「あらあらそうなんですか〜」
狐人の女性の前に正座して、項垂れながら僕はことの経緯を説明しました。
その横にはぐったりと眠るヘルメス・ファミリア団長『万能者』アスフィさんの姿が。
僕の存在に気づいた彼女は「その記憶を消す!?首から上と一緒にっ!?」と襲いかかってきたんだけど、眼の前の狐人・春姫さんが手慣れた感じに今は立てかけてある花飾りのついた杖『眠りの杖』を振りかざしてアスフィさんを眠らせたんだ。
これからどうしよう。
「とりあえずお茶にしませんか〜」
途方にくれる僕に彼女ののんびりした声が染み渡っていった。
今話はすこし時間が戻り、ベルサイドです。
ヘルメス。
以前頼まれたブツを運びにきた死の商人。依頼そのものはゼノンと会う前のイシュタルがだした。
何やら予定がバッティングしたため、実は帰る途中だった。
人望と神望に著しく欠ける神物。
アイシャ。
作者的には更に腹筋が割れてたらパーフェクトな外見のキャラ。
アマゾネスってやはり最高。
父子の息子比べをするつもりだった。
リトルルーキー。
歓楽街ではバニシュデス並のパワーワードな気がする二つ名。
響き渡る声。
フレイヤ・ファミリア所属の某ドSエルフ。
イシュタルとロキの会談の情報を得た為、独自に調査していた。
ベルを助けたことで、歓楽街戦争と派閥大戦を未然に防いだ英雄。さり気なく偉業認定されランクアップまであと少し。