ダンジョンにダイの代わりに爆死した兄弟子がいるのは間違っているだろうか(なおヒュンケルでもポップでもない) 作:規律式足
すいません、展開に悩んでしまいました。
ざっくりとキング・クリムゾンして、翌朝のことになります。
「で?説明してもらおうか?」
なんかベルが正座をさせられていた。
その前には両腕を組んで仁王立ちしている我らが主神であるヘスティアがいる。
ちなみに仁王立ちの仁王とは仏教なる神話の神様らしい。
タケミカヅチ系とはまた別の神話体系でかなりややこしいらしいが、そんな一神話の神がその神話を知らぬ者達にすら、立ち方という形で名前が知られているのは純粋に凄いなと俺は思いましたマル。
しかし、『仁王立ち』。俺がいた元の世界でも相手からの攻撃を一手に引き受ける行為、または技としての名前が伝わっていた。
この共通点からもしかしたらなんらかの繋がりでもあるのだろうか。
あ、そうそう【ヘスティア・ファミリア】の新本拠のだが、その名称は正式に『竈火の館』へと決定した。ヘスティア・ファミリアのホーム、でもいいっちゃいいんだが、賃貸ではないファミリアは大概つけているらしい。
ちなみに本拠の無いファミリアが借りてる集合住宅なんだが、他の神々から『天界(笑)』と呼ばれているそうだ。
いくらオラリオでも零細ファミリアが集団で暮らせるアパートや長屋は限られているからなのだとか。
「歓楽街に行って、朝帰りぃ〜?ほら、ベルくぅん、申し開きはあるのか〜い?」
そんなどうでもいいことを俺が考えている間も、ヘスティアによるベルの追及はよりねちっこさを増していた。
しかしまあ、ベルも泣いているしそろそろ助け舟を出してやるか。
「あんまり怒るなヘスティア。
ベルが歓楽街に行った理由は昨日のうちに説明しただろうが」
夜遅くまでバイトしてから帰ってきたヘスティアは、お疲れ様でしたとベルからのおかえりのハグを期待していた。
だが帰ってきたらベルはおらず、途中でヴェルフ達が戻ってきたと思ったら、ベルとは歓楽街で逸れたという絶望溢れる情報を告げられた。
そんで歓楽街に伝手のある俺が探しにいったら(シャドーで一発)、「ギルドへの偽装報告書の締め切り〜、注文された魔道具の納期〜、ミスした仲間のフォロー、やらかした主神の後始末〜」と寝言を呟きながら魘されているアスフィの横で、現在娼婦ではなく『ナデナデ屋』のスタッフである春姫と英雄譚談義で盛り上がっていたのだ。
なので声もかけずに放置してきたのだが、まさか朝帰りになってしまうとは。
もしかしてベルって御伽噺や英雄譚で語り合うことに飢えていたのかね?
ヘスティア・ファミリアだと普段その手の話題で盛り上がれる相手がいない。
俺は当然知らないし、勤勉なリリルカは内容は把握していてもあくまで大筋のみ、ヴェルフは英雄譚の人物の血をリアルで引いてるから逆に興味がなく、バーチェは読み聞かせをするのは好きだがそれだけ、ダフネとカサンドラも一般教養レベル。
ヘスティアも読書家だが、内容を語り合うタイプじゃなく、とりあえず読んでいる瞬間に浸りたいタイプで内容について語ったりはしない。
「そ、れ、が、命君を心配した行為だとしても、
た、と、え、ベル君が原因で暇になった『ナデナデ屋さん』のスタッフと話をしていたとしても、歓楽街に行ったことにはかわらない!!」
「はい、ごめんなさい。僕は行くなと言われた場所に足を踏み入れた駄目兎です」
種族はヒューマンなんだけどなあ。
だが歓楽街に行ったから説教はいくらなんでも理不尽すぎる気がするんだが。
「歓楽街は怖いところです。アマゾネスの皆さんにぺろりと食べられてしまうところでした。まな板の上のウサギの気分を味わいました」
どうしよう、夕飯もウサギ料理なんだが。
「だから言ったろうベル君。歓楽街は君のような子は行くべきところではないんだよ、と。そう一生足を踏み入れては駄目なんだ」
「はい」
そのヘスティアの言葉にベルは深く頷いている。
「なあヴェルフ、女に迫られるのは男の夢じゃねえのか?」
ベルの怖がりっぷりに俺はそんな疑問を抱いてしまう。
普通はそんなことにならないから、女の気を惹こうとプレゼントやら活躍やらでアピールするんだろうに。
「いや旦那、アマゾネスの迫り方は捕食される感が強くてな、モテるのとは違う怖さがあるんだよ」
捕食される感が怖い、ね。
ダンジョンだって負けたらモンスターに食われるから一緒だと思うんだが。
「そんなもんか」
よくわからない。
「まあ、恋人ではないボクの歓楽街に行ったことへの追及が理不尽だというゼノン君の言葉はもっともだから、これ以上はやめておくけど。
ベル君が危ないから行っちゃ駄目という場所に足を踏み入れたのは事実!!」
確かに主神のいいつけに背いたのは間違いないからな。
「今日一日、君には罰を与える。内容は奉仕作業だけど、それで反省すること、いいね?」
「はぃ・・・・・・」
ベルは項垂れながら、消え入るような声で答えた。まあ罰にはちょうど良いかもな。
どうせ社会奉仕、ご近所さんとの付き合いはこれからの生活で必要。示しをつける形では良い落とし所なんだろう。
「あの、ゼノンさん」
「どうしたベル」
とりあえず歓楽街の残り香を落としてきなさいと風呂に行くよう指示されたベル。
一緒に廊下まで出たところで俺に声をかけてきた。
「その、春姫さんの事情についてですが」
「ああ、知っている」
俺がベル達が頭を撫でられたことに喜んでたから、イシュタルになんとなく提案した『ナデナデ屋』。
それは男慣れしてない新人に、接客に慣れさせる為という意図もあって実行された。
ただ、愚痴を聞いて、頷いてやり、頭を撫でながら褒める。
それだけの夜の街にしては物足りない筈なのに、やたらと評判が良いらしい。
というかどハマリする客の素性がとんでもなくて、イシュタル本神も、頭を抱えているそうだ。
各ファミリアの団長やらギルドの上役、都市を動かす有力者ばかりだからそうなるだろうな。
誰も褒めてくれない立場だからこそ、褒めて頭を撫でて欲しいんだろうな。
用意してやった『眠りの杖』も客のレベルが高いから念の為に渡したんだよな。
泣き崩れる客はいても、暴れたり、無体な行動するやつは今のところ(今回のアスフィ以外)いないらしい。
せっかく杖の使い方を指導したのに、必要なかったみたいだな。いやベルの命を救ったから結果としては良かったのか。
「今の仕事にやりがいはあるけど、好きな英雄譚みたいな冒険をしてみたい。だから自分を買い戻そうと頑張っていました」
らしいな。
極東の名家出身でアレコレあってイシュタル・ファミリアで娼婦をしていたが、男への免疫が無さすぎて今の立場に落ち着いたのだとか。
「実家を勘当されて他に行くところがないから悩んでいましたけど、あの、もし良かったら」
「ヘスティア・ファミリアに誘いたいのか?」
「はい」
そこまでベルに話をしたことは意外だな。どうやら一晩で随分打ち解けたらしい。
「いいんじゃねえか?
イシュタルによるとなんか便利なスキル持ちらしいが、身請けや買い戻しもまた娼婦の在り方だしな」
娼婦の守護神たるイシュタルならば断ることは多分ないだろう。
つーか、便利過ぎて反則レベルで危ないから闇派閥に知られる前に歓楽街から離しておきたいとも言っていたな。
「み、身請けですか」
春姫の値段。
人の価値は時価だから直接訊ねてくるか。
「でも、そうしたら『ナデナデ屋』の常連がどうなるやら」
他にもスタッフ居るから大丈夫だと思うが、アスフィなんかは全員試した上で、もふもふも追加で気持ち良い春姫にハマってるとのこと。
「オラリオの闇ですねえ」
「ロイマンなんか頭を撫でられて褒められるのは、下手したら一世紀以上ぶりだろうしな」
ある意味で仕方ないのかもしれないな。
なお、この時点では春姫=命の探し人だと知らず、後に一騒動へとなってしまうことになる。
今話は、春姫とベルの話を飛ばして翌朝のことになります。
春姫の過去を語ってもベル君が曇るだけで、かつゼノンがなんとかできない領域ですし。
ただ、今の春姫は自分を買い戻して冒険者になる、という夢を見れています。
ゼノンがイシュタルにアレコレしたので、殺生石を使う予定はなくなり、またファミリアから抜けれないわけではなくなったので。
むしろレベルブーストを闇派閥に知られたら危険な為、イシュタルはゼノン、ヘスティア・ファミリアに預けたがってます。
闇派閥は当然ですが、ギルドとロキ・ファミリアにも渡したくはないので。
とにかく、春姫はなんとなく冒険者になりたいから、ヘスティア・ファミリアという目標地点を得ることになりました。
そこら辺の心理描写はそのうちやろうかなと思っています。
なんか久しぶりに展開に悩んだ話でした。