ダンジョンにダイの代わりに爆死した兄弟子がいるのは間違っているだろうか(なおヒュンケルでもポップでもない)   作:規律式足

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「ゼノン様ー、この宝箱って黒くなってません?」

 リリルカはゼノンがテント暮らししていた時から存在する工具箱扱いの宝箱の色が変わっていることに気がついた。

「ああ、色々あって蘇生呪文かけまくったら・・・・・・なんか進化した」

「進化?」

 ミミックは厄災を呑み干し、パンドラボックスへと進化したのであった。
 次にゼノンが自身に身体を突っ込んできたら唾液塗れにしてやると、心に決めているぞ。



第83話

 

 トランプ、ルーレット、サイコロ、貝独楽、あらゆる賭博の溢れる娯楽施設『エルドラド・リゾート』。

 オラリオ南方、繁華街の一角に存在する大賭博区域は諸外国、諸都市がこぞって出店したオラリオの別世界である。

 その別世界は比喩ではなく、オラリオ内にありながらもギルドの介入できない治外法権であることも示している。

 過去、『世界の中心』とまで言われるようになった迷宮都市には娯楽が欠けていた。

 当時もイシュタルやそれ以外の神々が娼館やそれに近い歓楽街を運営していたが、下界に遊行に来ていた神々がそれだけで満たされる筈もなく、歌劇の国メイルストラ、娯楽都市サントリオ・ベガなど名だたる各国と大都市の協力を誘致したのである。

 すべての神々がオラリオに集うわけではない。むしろオラリオを暴力者達の都市だと嫌い、各国にて芸術など創作活動に趣味に励む神々もいる。

 大劇場や大賭博場などのオラリオでも有名な娯楽施設はそんな神々が他所の国で活動した結果発展したという経緯があるくらいだ。

 そのような成り立ちであるから管理機関であるギルドが運営を主導できるわけもなく、あくまで主権は外資を投じた他国の施設側。その中でも権力争いは絶えないのだが他国の運営団体の中でもっとも力ある組織の、とりわけその中でも立場の高い者が、責任者として派遣されている。

 ただ、もう一つの治外法権であるイシュタルの統べる歓楽街とは違い繁華街には、大賭博場には特徴がある。

 それは都市大派閥であるガネーシャ・ファミリアの警備を受けられること。

 ガネーシャ・ファミリアはガネーシャという民衆の守護者である善神の理念による、人々の安全を守る為に運営されるファミリアである。

 ゆえにギルドに必ず従うわけでも、その義務や義理があるわけでもない。

 だが、娯楽施設を利用する者達もまた民衆であり、各国の富豪や要人はオラリオの冒険者とは異なり神々の恩恵を刻んでいない場合が多い。

 ゆえに、眷族達が思うところがないわけでないが守衛としての役割を担っているのだ。

 外部資本による治外法権、ガネーシャ・ファミリアというフレイヤ、ロキ・ファミリアに次ぐ大派閥による最高峰の守り。そんなダンジョンという危険地帯の直ぐ側に存在しながら安全の保障された欲望の楽園。

 そんな中で、その立場を利用して悪事を働き、欲望を満たす者は当然の如く存在する。

 そして、目に余る所業を為す者が居るならば、それに対処する者達もまた存在する。

 

『豊穣の女主人』にて働くウェイトレスであるエルフ、リュー・リオン。

 かつてオラリオに存在した正義の派閥【アストレア・ファミリア】の生き残り。

 理由があってその素性は明かせない立場、正確には薄々知られていて周囲から目溢しされている身だが、そんな彼女もそういった悪事を見逃せない一人。

 店に訪れて騒ぎをおこした夫婦から聞かされた事情から彼女は欲望に満ちる治外法権にその身を投じる決心をした。

 なおその夫婦の事情とは、賭博に嵌った夫が大負けし財産どころか自慢の娘、綺麗で気立てよく、ちょっと内気だけどとても良い、それこそ男神に求婚されるほどに評判の良かった娘を借金の質として奪われたというのだ。

 実の娘を担保に賭博。

 如何に神々の遊技場にして冒険者の舞台、ならず者達のパラダイスである、この迷宮都市オラリオに住む者達であろうと顔を顰める、親として最悪の所業。

 この父親のような輩を知れば、妻を奪われた怒りから人類に価値なしと大魔王に加担した某竜の騎士がどんな反応をするだろうか。

 如何に嘆こうが、妻に何度も注意されてもなお賭博を繰り返し破滅したこの男の自業自得に過ぎない。

 妻と、そして連れて行かれた娘を哀れに思いこそすれど、それでもよくあるありふれた悲劇。酒の肴には気分が悪い小話として都市に埋もれて消えていく筈だったその話は、妻カレンによる「【アストレア・ファミリア】がいてくれたら」という発言により変わる事になる。

 その言葉を聞き、何もしないでいられるリュー・リオンではなかった。

 つまりはそれだけの話なのである。

 そして、彼女の在り方を肯定し、その魂の輝きに尊さと愛しさを抱く、店員に扮したとある女神はそんな彼女に対して出来る限りの助力をするのであった。

 彼女らの目的は嵌められて連れ去られた娘、アンナ・クレーズの救出と解放。

 その為に酒場の勤務時間外に活動を開始する。

 

 だが、そんな善意による型破りな所業を歓迎しない存在もいる。

 裏稼業には裏稼業による流儀があり、その道理を無視されてはギリギリで保たれている裏の不文律が崩れさってしまう。

 故に歓楽街という、別勢力を統べる神イシュタルは動くことにした。

 もとより『エルドラド・リゾート』の経営者『テリー・セルバンティス』の所業はやり過ぎであると問題視していたという理由もある。

 

「たく、面倒だねえ」 

 

 娯楽都市サントリオ・ベガにある『エルドラド・リゾート』母体組織とも連絡を取り、この件に対処すると決めたのだ。

 そうして彼女、女神イシュタルは、『エルドラド・リゾート』にフレイヤ・ファミリアと揉めようと撃退できる存在、異世界の英雄ゼノンに行ってもらうようお願いしたのであった。

 

 





 今話は、『ファミリアクロニクル、エピソードリュー』のグランカジノをぶっつぶせ!のプロローグとなります。
 なので説明ばかりで、短めです。   

 ちなみにミミック君はなんか進化してパンドラボックス君になりました。
 そこらの冒険者では勝てない存在です。
 なおゼノンへの忠誠心はかなり下がってます。

 イシュタルは豊穣の女主人にかなり探りをいれていて、リューが善意で動くことを察知しました、
 彼女の善性を否定する気は作者にありません。
 でも、裏稼業的には許容できないかなと。
 下手したら、カジノで借金しても冒険者に泣きつけば帳消しにできると学習する者達が生まれる危険性がありますので。
 また、ガネーシャ・ファミリアとギルドが繁華街に介入するきっかけにもなりかねないのですし。
 だから面倒だけどイシュタルがさらにゼノンが動く羽目になりました。

 どうなるかは未定ですが、数話程度で終わらせる予定です。
 
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