ダンジョンにダイの代わりに爆死した兄弟子がいるのは間違っているだろうか(なおヒュンケルでもポップでもない)   作:規律式足

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 書いてるうちに話が膨らむ不思議。

 なおロイマンさんはナデナデ屋で、イシュタル様からエルドラド・リゾートの件を伝えられて、現実逃避気味にフリュネに特攻し、フリュネによるオカン・おばちゃん的ナデナデをされて崩れ落ちました。



第86話

 

「よおベル、勝ってるか?」

 

「ゼノンさん!!」

 

 着慣れない燕尾服を纏う涙目の白髪赤目ショタという、その手の趣味の人(神)には堪らない存在であるベルが、同じファミリアの仲間である俺の声を聞いて「助かった」と言わんばかりの態度で嬉しそうに駆け寄ってくる。

 その姿はまさに飼い主と再会できた兎そのもので、バニーセットを装着してないにも関わらず、ウサ耳とウサ尻尾が感情に合わせて揺れる姿を幻視してしまった。

 

「「「「「ハウッ!?」」」」」

 

 それはベルに注目していた変態(種族問わず)達も同じことで、燕尾服バニーベルという極上のご馳走を目撃した彼ら彼女はただひたすら悶えるのであった。

 

「って先日のアマゾネスのお姉さん!?」

 

「やあ『リトル・ルーキー』。お姉さんが今夜のお相手をしてあげようか?」

 

「結構です!!」

 

 どうやら春姫と遭遇した歓楽街の夜にベルはアイシャと遭遇していたらしい。

 一般人、外部の訪問客、ギルド職員、冒険者問わず大人気なスポットである歓楽街であるが、それでも高ランクアマゾネス達を満たすにはまだ足りない(客がアマゾネスに怯えて避けるパターンもある)。

 また最大手ファミリアであるフレイヤ・ファミリアは女神至上主義者の集団、ロキ・ファミリアは幹部以外の男連中は女達に頭が上がらず、といった感じなのでレベルの高い男は中々食えないらしい。

 まあそうでなくても女神が主神なファミリアの眷族は基本的に歓楽街は避けがちになるとか。

 フレイヤ・ファミリアほどではないが、主神である女神に惚れる眷族はかなり有り触れた事例である(例、ヴェルフ)。

 

「アイシャを断るとか凄いなベル。イシュタルに匹敵する美女で床上手だってのに」

 

「ねえゼノンさん。身内のそんな生々しい話はヘスティア様女性方達でなくても気恥ずかしいものなんですよ?」

 

 僕はお祖父ちゃんで慣れてはいますけど。とベルは顔を赤らめながら呟く。

 

「父子の息子比べ、したいんだけどねえ」

 

「父じゃねえよ俺はまだ19だ」

 

「ゼノンさんの子供、エヘヘ」

 

 アマゾネスらしいアイシャの言葉に俺はツッコミ、ベルは嬉しそうに笑った。

 

「・・・・・・で、モルドだったな。ベルをカジノに誘ってくれたのか?」

 

 そんな和気藹々?とした身内トークを切り上げて、所在なさげにチラチラとコチラを窺っていた、礼服似合わない三人組に声をかける。

 

「へい、ゼノンの旦那!!

 先日の戦争遊戯の賭けで大儲けさせてもらった恩返しとして誘わせて頂きやした」

 

「旦那ってお前」

 

 嘘、ではない。

 顔を見て表情の動きと気の流れを見極めれば、神ほどではないがそれぐらいはわかる。

 一瞬ベルの『幸運』スキルを利用して稼ぎにきたのかと邪推してしまったが、ベルの新しく取ったスキルをコイツラが知るわけないしな。

 

「ま、いいんじゃないか?

 場末の背後関係わからん賭博場ならともかく、ここなら警備もしっかりしてるし、健全に賭博を楽しめるからな。ベルにも良い経験だろう」

 

 ヘスティア・ファミリア団長なんだから礼服とこういった空気には慣れて欲しいところだ。

 それに俺とでろりん達のように、気楽に楽しめる関係はあって欲しいという気持ちもある。

 こちらをじっと窺う生真面目なリューは、まだ幼いベルを『夜遊び』に引き込む不良冒険者達に非難がましい視線を送っているが、場所が此処『エルドラド・リゾート』ならまあ健全な『夜遊び』だろう。

 心配する気持ちはわからんでもないが、エイナとリューはベルを年齢以上に幼く捉えている節があるな。まるで宝物に傷がつかないように守ろうとする様子に近い物を感じる。

 

「へへへ、旦那にそういって頂けるならこちらも誘ったかいがあるってもんでさあ」

 

 いや、だからなんで俺には三下みたく腰を低くするんだコイツラ?リヴィラの街の連中も大体こんな感じだけどな。

 

「ああ、ただウチの女連中は色事に厳しくてな。カジノならともかく歓楽街は駄目で、繁華街でもキャバクラの類は避けてくれ」

 

「厳しいっすねー。カジノで勝った金はそれらで散財豪遊するのが楽しいんスけど」

 

 だから勝っても負けても素寒貧なんだろうが。まあ勝って金を貯金できるヤツは賭博なんてせんわな。

 しかしまあ、存外楽しいもんだなこんな話は。

 やはりでろりん達と馬鹿をやってたあの時間を思い出してしまう。

 当時は俺を小賢しく良いように使ってるとも思ったりもしたが、本当に一緒に楽しんでいただけなんだよな。

 

「ゼノンさん?」

 

 涙が一筋右目から溢れ落ちる。

 寂寥。

 ベル達のおかげで感じる機会が殆どなかった感情が、似たような不良冒険者との会話で浮かび上がってしまったようだ。

 

「なんでもないさ」

 

 あの決断に後悔はない。

 ダイとポップを救えたことは俺の最高の誇りだ。

 そしてこちらでの日々もまた掛け替えない宝物になりつつある。

 寂しいと感じるのは、それだけアイツらが大切だったのだと思って大事に腹に抱えよう。

 

「しかしお前ら、どうやってこの店に入店したんだ?基本的に招聘状が必須だと聞いて、俺もイシュタルから譲ってもらったんだが」

 

 俺の言葉に「そんな場所なんですかここ」とベルがあんぐりと口を開ける中、モルド達は良くぞ聞いてくれましたと意気揚々に答える。

 

「俺達はこの『繁華街ゴールドカード』を持っているんでさあ!!大賭博区域に金を注ぎ込んだ奴だけに送られる、店共通の通行証ですぜ」

  

 あ、はい(察し)。

 鼻高々に突き出す金色に輝く金属製の悪趣味なカード。何がすごいかってこれがダンジョンで見た彼らの装備品より高いのが凄い。

 なんでもこれ一枚あればどのカジノでも入場できるらしい。案外マナーはしっかりしてる連中なのかもしれないな。

 

「他の店と違って『エルドラド・リゾート』は最大賭博場。今日初めて入れた・・・・・・(感涙)!」

 

「あぁ、ブロンズ、シルバー、そしてゴールド、ここまで長かったぜ。認められる為にどれだけ金を落としてきたか」

 

 つまりそれだけカジノのカモなんだよなあ。

 

「これを持っている第三級冒険者は、俺達くらいしかいないだろうな!!」

  

 涙ながらに語るモルドの仲間、スコットとガイル。そしてモルドは得意げにのたまっていた。

 

「もしかして、お前らがベルを誘ったのはゴールドカードを自慢したかったのか?」

 

「「「うっ!?」」」

 

 図星をつかれてしまい胸を押さえる三人組。

 まあランクで先を行かれたから凄いとこを見せつけたくなったんだろうな。なんかこう微笑ましい連中だ。

 

「その眼差しが辛い」

 

「なんだこの幼子を見る目は」

 

「もしかしてこの衝撃が恋?」

 

 最後は完全に違うかな。

 

「まあベルがそれを得るのは難しいから、誇ってはいいんじゃないか?」

 

 というか、ゴールドカードが発行される前に出禁にされそう。『幸運』スキル持ちだしな。

 

「そうっすよね!!

 いくらリトルルーキーでもこればかりはそう簡単にはいかねえ」

 

「アタシ達の血と汗と涙の結晶だもの」

 

「装備代、ポーション代、飯代、神へのお小遣い、全部注ぎ込んだからな」

 

 よく生き残れたねお前ら。

 実は才能あるだろ。

 しかし、

 

「そんだけ注ぎ込んだ凄いことなのにステイタスに反映されてスキルが生まれたりしねえの?」

 

「「「それがしないんだよなあ???」」」

 

「力、はまあ仕方ないか」

 

「耐久、上がらねえよな。耐えてるのに」

 

「器用、は上がっても良さそうなのにねん」

 

「敏捷と魔力は使わないけどよ。そもそも魔法ねーし」

 

「「「でも偉業達成したんだからランクアップはして欲しかった(絶望)」」」

 

「神の恩恵も融通効かねえな」

 

 戦闘に限られてるのかねえ。

 でもベルの『憧憬一途』みたいな例もあるし、強い感情に応えてやれよ。

 それとも神が司る権能によるかもな。

 商業やら賭博の神のならランクアップはせんでもスキルくらいは生えてきそうだ。

 と、そこで一つのネタが思い浮かんだ。

 

「でもよ、これってギルドに報告したら報酬が貰えるんじゃないか?」

 

 そのネタをモルド達に告げる。

 

「どういうことでさあ?」

 

「ギルドってランクアップした際に討伐数やらきっかけを調べて公表するだろ」

 

「真似して死ぬヤツが後を絶ちませんがね。いやリトルルーキーの真似する馬鹿は流石にいやしませんが」

 

「え?そうなんですか?」

 

「できねえよ死ぬわ」

 

 驚くベルにガイルがツッコむ。

 

「だからさ、

 ここまでカジノに金を注ぎ込んでもステイタスに反映されない、って記録になるんじゃねえか」

 

 やっても無駄、という情報もまた貴重な記録になるだろう。

 

「「「どんな自傷行為!?」」」

 

 カジノ狂い三人組はそう叫んだそうな。

 

 なお、後日彼らが試しにギルドに報告したところ、本当に貴重な情報としてギルドに記録されることになったそうな。ギルド職員は繁華街の各店からその額を調べてドン引きしたそうな。

 モルド達は少なくない額を貰い、さらにギルドの情報室にその名を刻むことになる。

 

 その後、節度を弁えて遊べよと告げてアイシャを引き連れて離れる。

 リューとシルもベルと話したそうにしていたからな。

 さて、束の間の楽しい時間だったが、

 こっからは本気でやらねえとな。

 





 今話は、ゼノンとモルド達の会話パートでした。存外書いてて楽しくなって1話使ってしまいました。
 ゼノンはでろりん達を思い出させるこんな連中が好ましく感じます。
 そんな態度なので、敬遠されがちな強者でありながら弱いならず者に慕われやすかったりします。

 モルド達のステイタスの件はオリジナル設定です。いや意気揚々判定してあげなよと作者は思いました。
 ギルドにしてもランクアップが記録になるなら、ランクアップしない情報も記録になるかなと。
 やっても無駄な行いも貴重な情報なので。
 ただこれは、モルド達がカジノでは行儀良く裏付けるが取れたから報酬がでました。
 渡したギルド職員の顔は引き攣ってましたが。

 さて、次には決着したいなあ。
 と思いますが書いてみないとわからないので未定です。
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