ダンジョンにダイの代わりに爆死した兄弟子がいるのは間違っているだろうか(なおヒュンケルでもポップでもない) 作:規律式足
お久しぶりです。
ベル達と別れた俺達は予定通りカジノでバカ勝ちを続ける。
男装したリュー・リオンとその妻役のシル・フローヴァ(フレイヤ)が注目を集め、テッド達の狩り場である貴賓室に招かれる前に俺達が誘われなければならない。
リュー・リオンが変装しているエルフの伯爵という役は成功者を貶めることを生き甲斐とするテッドにとっては極上の獲物。興味をひいてしまえば本人達の目論見通りすぐさまお呼びだしされてしまうだろう。
そして酒場の看板娘である顔の広さを利用して、遊びに来ている放蕩の神々にお願いする伯爵夫人役のシル・フローヴァ。
酒場でのサービスに釣られた連中は何やら企みがありそうなのは察しつつも【面白そうだからいっか】の精神で注目集める二人の偽情報を広めていく。
戦争遊戯の時にはっきりとわかったがごく一部の神々を除き本当にロクデナシばかりだ。
この連中に比べたら人を謀るが英雄を創り出そうと駆けずり回るヘルメスがまだまともに見える。
『またまた大勝ち!!【幸運】の兎だあ!!』
「「「ヒャッホーオオオ!!」」」
そしてモルド達に連れられたベルもまた注目を集めていた。
ランクアップ最速記録及び先日の戦争遊戯での活躍で若手でもっとも知名度のある冒険者ベル・クラネル。その大勝ちぶりに会場は大きく湧く。
その勝ちぶりに運営者からマークされトラブルが起きかねない状況になりそうなものなのだが、同行者が誰か認識すると顔が引き攣りはじめていたディーラーや、険しい顔でベルを見張っていたウェイター達が揃って表情をニンマリ笑顔としだす。同行者の存在により負け分を回収できる算段がついたからだろう。
一緒にいる三人、つまりモルド達は上流階級でもないのにこのカジノに来店できる【ゴールドカード】保持者、すなわち極上のお得意様『カモ』である。
いくらベルが大勝ちしてもモルド達で回収できると当たりがついたのだ。まあ当人達も「「「勝ち分で一勝負だあああ!!」」」と叫んでるしな(やめときゃいいのに)。
そんな喜劇のようなナニカを見ながら俺は磨きあげたアバン流殺法『空』の技習得に必須な観察眼を駆使してチップを積み重ねていった(アバン先生すいません)。
「お客様」
ようやくか。
いつの間にか同行者であるアイシャだけではなく幾人ものバニーガールを侍らしてカジノを楽しんでいた俺に、仕立てのいい黒服に身を包んだ年配のヒューマンが声をかけてきた。
「オーナーのセルバンティスが、ぜひお会いしたいと」
馬鹿だねえ。
哀れみに似た内心を表情に出さないように気を配る。既に詰み寸前な状況だと知らずにいつもの趣味に興じようとするテッド、この誘いをした時点でもう逃げる機会をヤツは逃したのだ。
「依頼の話ならば後にしてくれ。今はカジノを楽しみたい」
すぐに応じずに一度は断る。
これも交渉のテクニックの一つだ。
興味がないという態度がより相手を食いつかせるのだ。
動く石像作成者としてそこそこ有名になってるからできることだがな。
「いえいえ商談ではありませんので」
「それならまあ」
リュー・リオンと違って貴族の振りとかしなくていいのは楽で良い。
冒険者に過ぎない立場なら無礼な態度も(内心で馬鹿にしつつ)気にしないだろう。
「どうぞ、こちらに」
店の支配人らしき老紳士然とした初老のヒューマン。有能そうな人物だがテッドの素性ややらかしは、どこまで知っているのやら。
単に騙されて雇用されてるだけの立場ならまだ良いが、テッドに加担していたならばその末路は知れている。
背を向けて案内する支配人は俺とアイシャには屠殺場の家畜のように見えていた。
「おお、君がゼノンかね!!」
カジノ経営者と冒険者兼その他諸々な俺に上下関係などあるのだろうか?
明らかに上から目線な身長は低い典型的ドワーフ体型のおっさん。
まあ冒険者はたとえ高ランクであっても貴族やら大商人には下に見られることが多い。
理不尽な要求も珍しくないらしいがそんな時は、そんな時だけ役に立つ主神もザラらしい。
生物としての格の違いからか、たとえ零細・ファミリアの主神であろうと強くでれるヒューマンはいないからな。
「どうも」
「私はテリー・セルバンティス、このカジノのオーナーを務めている。今夜は楽しんでいるかね?」
「内装は物語の王宮みてえで、働いてる連中の身嗜みも容姿も良い。すげえカジノだなと思いました。
ヘスティア・ファミリアのゼノン。名字すらない身だが幸運に恵まれてな。で、こっちは」
「イシュタル・ファミリアの戦闘娼婦アイシャ・ベルカ。今夜は付き添い込みのお楽しみでね」
そう娼婦らしく艶然と笑うアイシャ。
・・・・・・これ終わったらもうひと仕事か。
「それは羨ましいですな。流石はレベル1にして活躍するだけはある」
羨ましいと言いながらもアマゾネスにして高ランク冒険者であるアイシャから少し距離を取るテッド。自分よりレベルの高いアマゾネスは捕食者に過ぎないとは誰か言ったかな。
「活躍ねえ。
大したことはしてねえけど」
俺の本音を込めたテッドへの挑発。
楽しいからやっていることばかりだから活躍なんて思ってはいないし、戦争遊戯でオッタルを倒したことも楽しかったが余力はある。
必死になるような事態はそう無かった。
もしかしたら俺にとってオラリオでの生活は、外界に降りてきた神々と同じような認識なのかもしれない。
だが、その言葉はテリーに成り代わったテッドに突き刺さり刺激する。
成功者を貶めることを生き甲斐とする劣等感の権化には、自分にはできないことを重く見てないことが不快になるだろう。
「そうそうゼノン君。お聞きしたところ本日は相当ツイてるようだね」
「さてね、カジノなんていつもこんなもんだろ」
でろりん達と行った時はアイツラの浮き沈みを見るのが楽しいのであって、ゲーム自体はつまらない。
持ち前の身体能力で負けない遊戯は作業みたいなものなのだ。
「ほほう」
ビキリと笑みを浮かべたまま苛立ったように額に血管を浮かび上がらせるテッド。
この回答も癇に障ったようだ。
「でしたら特別に、一介の冒険者風情が立ち入ることすらできないだろう貴賓室に、特別に来られませんか?」
「その貴賓室もこっちみたいに簡単に勝てるヌルイゲームじゃねえよな?」
「・・・・・・・・・図に乗るなよ若造(ボソッ)」
「なんか言った?」
堪えきれず本音の溢れたテッドを無知を装いつつ馬鹿にしたようなにトボけた口調で語りかける。
「いえ、要はより高額な賭博を楽しもうというわけです。お前みたいな目立っただけの冒険者風情が同席することすらできない金満家の方々とな」
もう大分キレてんなコイツ。
「そういった威張った連中を負かすのが愉しいんだよなあ、いいぜ」
ザボエラやキルバーン(ピロロ)は好きそうだけど、本音では興味はないな。
だってそんな連中は受けた屈辱を億倍返しにするまで粘着してきて面倒だし。
「では決まりですな、こちらです。・・・・・・何もかも奪い屈辱に沈めてやるぞガキが」
もう取り繕えてないなコイツ。
この程度で態度に出すようじゃ本物の上流階級にはほど遠い。
所詮は成り代わったチンピラだな。
「さーて、愉しむとするか」
屈強(カジノ基準)な門番が立つ樫の大扉をくぐり抜け、そこへと辿り着く。
後ろで「あっ」とした表情で固まるリュー・リオンと「チェッ」と不貞腐れだすシル・フローヴァ(フレイヤ)。なんとかコチラの目的はかないそうだ。
そうして、テリー・セルバンティスに成り代わったテッドの生涯最後のゲームがはじまる。
補足・説明。
繋ぎ回です。
決着までいきませんでした。
今後も書けたらあげます。