ダンジョンにダイの代わりに爆死した兄弟子がいるのは間違っているだろうか(なおヒュンケルでもポップでもない)   作:規律式足

9 / 119

 フレイヤからゼノンの魂は色ではなく形で見えます。歪みのない完成された球体、そんな感じですね。
 心惹かれる美しさですが、そこに至ったのが自分とは無関係である為、手を出す、加えるのは気が引ける感じです。
 
 しかしフレイヤファミリア。
 美の神で魅了持ちなのに、幹部陣が従う理由が「恩義」にあるのがなんとも。イシュタル様との差はここだったのかな、と。
 


第9話

 

「おーいっ、ベールくーんっ!ゼノンくーんっ!」

 

 わいわいと、今にも踊り出しそうな声々が溢れる大通り。多くの冒険者がダンジョンに潜っている時間帯に、ここ、東のメインストリートは大勢の一般客で賑わっていた。

 

「え?」

 

「む?」

 

 そんな喧騒の中、聞き覚えのある声が自分達の名を叫んでいた。

 

「神様!?どうしてここに!?」

 

 ベルからすれば所在すらわからなかったヘスティアとの突然の再会だから驚きだろう。

 

「おいおい、馬鹿言うなよ、君に会いたかったからに決まってるじゃないか!」

 

 おそらく完成したプレゼントを一刻も早く渡したいとばかりにベルの居場所を探したに違いない。ただヘスティアはこちらに「無論ゼノン君にもね」と目配せもしたが。

 最初の眷属であるベルがヘスティアにとって特別な存在なのは言うまでもない。その白兎のような可愛らしい容姿と、ほっておけなくなる健気な性格に、つい構ってしまうのも理解できる。

 けれど同じ眷属である俺を区別したり放置したり雑に扱ったりは絶対にしない。童女(身体の一部を除いて)のような見た目らしからぬ母性を発揮して、母のように慈しむように接してくれるのだ。

 いやまあ、俺としては年齢と性格的にそこまでしなくとも良いのですが。正直、照れくさいものはあるし。

 

「いえ、僕も会いたかったですけど、そういうことじゃなくて、ちょっと出来すぎたタイミングに怖いような」

 

 ヘスティアの答えになってない答えにベルは汗を湛えてしまってるな。

 

「いやぁー、それにしても素晴らしいね!会おうと思ったら本当に出くわしちゃうなんて!やっぱりこれこそが、主神と眷属の絆ってヤツなんじゃないかなー、ふふふっ」

 

「声が届いてないよぉ」

 

「ストーカーみたいで怖いんだがな」

 

 まあ、血を刻んだ神の恩恵。そんな作用があっても別に驚きはしない。

 ただ、世界有数の巨大都市オラリオの一大イベントである人混みがいつもより多い『怪物祭』で、約束もしてないのに合流できるなんて、偶然と呼ぶのは無理があり、運命的とすら言える。

 

「途中ですれ違ったフレイヤに君達の場所を聞いて正解だったよ」

 

「「誰(ですか)?」」

 

 どうやら再会できた理由はあったようだ。

 その事実に俺とベルは何故かほっとした。

 しかし、フレイヤ。

 先日酒場でなんやかんやアレコレお尻スプラッシュのあったロキ・ファミリアと双璧を為すファミリアと同じ名前だな。

 

「あの、神様?凄いご機嫌みたいですけど、本当に何があったんですか?」

 

 ヘスティアのテンションは高い。

 それは数日ぶりの再会を喜ぶだけではなく、もっと別の理由があるような。そう、徹夜してテンションが高くなっている感じがするのだが。

 

「へへっ・・・・・・知りたいかい?ボクが舞い上がっている理由を」

 

 勿体ぶられると、いや別に、と返したくなる自分がいる。俺は根が捻くれ者だしなあ。

 

「は、はい」

 

 ベルは素直だから頷くがな。

 再会してからずっと相好を崩しているヘスティアは、手を後ろに回し、何かゴソゴソと弄りだす。なるほど、プレゼントは無事に用意できたんだな。

 ちょっと待て、卵はどうした?

 これからきちんと買うんだよなあ?

 

「実はね・・・・・・」

 

 と、言いかけたところでヘスティアはぴたりと動きを止める。祭りで賑わう大通りを軽く見渡した後、待てよと言うように軽く空を見上げだす。

 

「・・・・・・うん、せっかくだ。やっぱり今は、教えなーい」

 

「ええっ!?」

 

 ま、せっかくプレゼントを渡すなら相応しいシチュエーションがあるわな。

 

「楽しみは後で取っておくとしよう(卵も買わなきゃだしね)」

 

 お預けをくらったベルは、そんな、という顔になっている。こういった素直な反応がショタコン気味な神にはたまらないのだろう。

 

「デートしようぜ、ベル君ゼノン君」

 

「・・・・・・で、デート!?」

 

「俺もか?」

 

「ああ、そうさ。こんなに街は盛り上がっているんだ、ボク達も楽しまない手はないだろ?」

 

「いや、でもっ、デートって・・・・・・!?」

 

「ふふっ、さぁ行くぞ、ベル君ゼノン君!」

 

 一気に顔を赤らめさせたベルと、戸惑う俺を見て、ヘスティアは一層おかしそうに、楽しそうに笑う。

 並んだ俺とベルの隙間に強引に身体をつっこませ、それぞれの腕に自分の両腕を絡ませた。

 全く、強引なこった。

 そんな触れ合いも、悪くない。

 大通りに並ぶ出店の活気は一向に衰えない。売り出される品物は歩きながら手軽に食べられる串料理にはキュウリの浅漬けなんて変わり種まである。他には怪物祭にちなんだ小物やアクセサリーも屋台で売っていた。むっ漢字ネックレスとな、鉄片を見慣れぬ字の形に加工してアクセサリーにしているのだが、なんかカッコいいな買うか悩む。

 

「本物の武器まで売ってますよゼノンさん」

 

「ベルよ騙されるな、あれは木刀をコーティングしてるだけのまがい物だ」

 

 本物じゃねえよ。

 目利きの出来ない冒険者が安くてお得だとホクホク顔で購入してんじゃねえか。

 子供向けの玩具なのか、冒険者向けの詐欺なのか判断に困るな。

 

「って。待ってください神様!!僕達、実はお使いを頼まれているんです!」

 

 だったな。

 一応周りは確認はしているがまだ見当たらない。どこまで行ってんのやら。

 

「ん、そうなのかい?でもベル君もけっこう楽しんでたよね?」

 

「家族とお祭りなんて初めてで。でも、シルさんを探さないとっ・・・・・・」

 

「よし、じゃあデートしながら人探ししようじゃないか。楽しみながら仕事をこなせて一石二鳥だ。あ、ベル君、ちょっとそこのクレープを3人分買ってきて」

 

「神様ぁー!?」

 

 叫びつつもやや離れたクレープ屋台に向かうベル。流されやすいのもあるが頼まれたら断れない優しい子だからな。

 

「で、わざわざベルを遠ざけたのは何か理由でもあるのか?」

 

 唐突にベルに買い物を頼んだヘスティア。自分で買わないであえて頼んだのはベルには知られたくない用事でもあるんだろ。

 二人きりになりたいとでも頼むのかね?口実もあるから別に構わないが。

 

「うん、あのさ」

 

 ヘスティアは言いにくそうに照れたように頬を赤らめそっぽを向き、

 

「ボク達が夫婦みたいに思われてるって聞いたら、ゼノン君はどう思う?」

  

 恥ずかし気にそう言った。

 

「すまないヘスティア俺はお前のことを家族のように慕っているあのボロい廃墟そのものなホームだって生まれて初めてできた帰るべき場所なんだと大切に思っているけれど悪い俺はお前をそんな対象には見ることができないんだそれにはいくつか理由があるその一つが俺は異種族との婚姻に抵抗がある点だこれは俺の過去が原因ではなく俺の知る人物が種族が異なる相手と結婚し子作りし不幸な結末になってしまったからだその出会いそのものは断じて不幸ではない一つの奇跡ではあったがそれでも周囲がそれを認めず愛する女性は殺され生まれた息子とは十年以上も離れ離れになりあげくに敵となってしまったんだこの件で不幸なのは本人達だけではない生まれてきた子供が一番辛い思いをしていたんだ辛いだけではなく大切なものだって得られはしたそれでも一般人が当たり前に得られる幸せをダイは甘受することができなかったんだだからこそ俺は異種族間での恋愛いや婚姻?否子作りに抵抗がありお前と夫婦になることはできないんだ。

 あと、俺の好みのタイプは性に奔放な色っぽいお姉さんだから、胸はデカいが童女丸出しなヘスティアは対象外なんだスマンな」

 

「長々と話しておいて、

 最後の一言だけで良かったじゃんっ!!

 家族として大切に思われてるのは本当に嬉しいけどさぁっ!!」

 

 いやまあ異種族との子作りに抵抗あるのは本当だしなあ。アマゾネスって種族もいるらしいがどんな違いがあるのやら。

 あとヘスティアとベルが、あの場所が大切なのは間違いないんだ。

 

「ま、まあいいもん。ボクだってラブい対象なのはベル君で、ゼノン君は子供みたいなものだから良いんだ。振られたみたいだけど気になんかならないやい」

 

 なおそのベル本人がなあ。

 

「神様ー!ゼノンさーん!買ってきましたよ、ガネーシャ味クレープ!!」

 

「なんでその味を選んだんだいベル君!!」

 

「象の肉でも入ってんのかね?」

 

 食堂の客で来たが、ガネーシャって神様は象の面をつけた偉丈夫だったよな。

 ベルから手渡されたクレープを受け取りまじまじと眺める。クレープを包む紙に描かれたガネーシャの顔が食欲を失せさせる。

 

「よし、よし次だベル君。今度はジャガ丸くんの屋台にトライしようぜ!」

 

「ま、まだ行くんですか!?」

 

「当たり前さ。1年に1度のお祭り、今を逃したら来年だぜ!」

 

 意外と味の悪くなかったクレープを頬張って、俺とベルはヘスティアに先導されてメインストリートを駆け回る。

 

(後で二人きりにしてやらんとな)

 

 家族として楽しい時間は二人から充分過ぎるくらいにもう貰っている。ならせめて恋愛方面で気を利かせるくらいはしてやるべきだろう。

 ヘスティアのはしゃぎぶりにベル共々苦笑いは絶えなかったが、それでも楽しく振り回された。

 





 ヘスティアとベルと三人で祭り巡り。
 ゼノンにしても主賓以外での祭りは初めてなため楽しんでます。
 そしてちょいちょい小ネタも。
  
 キュウリの浅漬け
 いつの間にやら祭りの定番?浅漬けの素に浸された冷やしキュウリを一本割り箸に刺して売ってるやつ。浅漬けの素のペットボトルはしまっておいて欲しいな、と作者は思いました。

 漢字ネックレス
 祭りで見かけたアクセサリー。好みの漢字で作ってくれます。外国の方が「忍」の字のネックレスを買ってたのを見ました。なおゼノンは悩んだけど買ってません。

 武器の玩具
 木刀をそれっぽく加工。これでダンジョンに潜ったら死にます。

 これらはダンまち原作には出ないオリジナル話です。

 ヘスティアとの夫婦扱いについて。
 ちょっと、ほんの少しだけ意識していた。ゼノン的には無い。理由は色々あるけど、ヘスティアが少女というより仕草反応から童女だし。

 ガネーシャ味クレープ
 スパイスの効いたカレー味。刺激的だが美味い。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。