ダンジョンにダイの代わりに爆死した兄弟子がいるのは間違っているだろうか(なおヒュンケルでもポップでもない)   作:規律式足

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 ようやくヘスティア・ファミリアに春姫加入です。
 前話のロキ・ファミリアより時間はやや遡ります。



第92話

 

「色々あって本日よりヘスティア・ファミリアに入団することになったサンジョウノ・春姫さんだ、皆拍手」

 

「ベル様のモノとなりイシュタル様の元よりヘスティア様の眷属になります。サンジョウノ・春姫と申します。これからよろしくお願いいたします」

 

 光沢を帯びる金の髪と翠の瞳をした狐人である春姫は、鮮やかな紅の着物姿で可憐な仕草で頭を下げるのであった。

 

 わぁー、パチパチパチパチパチパチ。

 新しい住居へ引っ越しが終わり一段落したヘスティア・ファミリアホーム。

 夕飯時の皆が集まる時間帯に手続きが終わり荷物を纏めてやってきた春姫を俺は皆に紹介する。

 本来は団長にして身請けしたベルの役目であるが、そこはイシュタル・ファミリアとの付き合いが長い、年長者である俺の役目だろう。

 事情を知るベル以外は呆気に取られた表情のまま流れで拍手を続けるヘスティア・ファミリア一同。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 そんな拍手タイムが暫し続いた所で、

 

「・・・・・・・・・ってどういうことだーー!!」

 

「全っ然説明してないですよねーー!!」

 

「春姫殿ーーーっ!?」

 

「・・・・・・何をしでかしたんだ旦那?」

 

「ゼノンに惚れてないから問題ないな」

 

「ですね〜」

 

「その判断基準はどうなのよ」

 

 ロクに説明せずに紹介したから驚き叫ぶのは当然のこと。

 そして命の反応から、わざわざ彼女達が歓楽街まで行って探していた行方不明の同郷の人物が春姫だったようだ。

 こんな偶然ってあるんだな。

 そしてヴェルフよ、なんでやらかしたのが俺なんだ。今回はベルのやらかしだ。

 

「そしてベル君のモノってどういうこと!?」

 

「そうです!?ベル様何をしてんですか!?」

 

「え?え〜〜いや、その」

 

 ヘスティアとリリルカは続いてベルへと矛先を向ける。頬を薄っすら赤く染めながらベルを見る春姫の様子は明らかに好意がある、惚れている女のソレだからな。

 同じ感情を抱く者だから両者はすぐさま理解したんだろう。

 ヘスティアとリリルカに詰め寄られるベルは、身請けを娼婦(ナデナデ屋だったけど)からの開放・借金を代わりに払った程度の認識で、さらに一度会って夜通し英雄譚で盛り上がっただけの春姫が自分に好意を抱いているとは一切考えてないようで両者と春姫の反応がよくわかってない。

 

「ベル様は、一度会っただけの春姫の為にアレほどの大金を出して身請けしてくださいました。そこまで熱烈な想いをぶつけられてしまうと(ポッ)」 

 

「「身請けーーっ!?」」

 

「は、春姫殿が春姫ちゃんが、お、大人の女に」

 

「いや誤解あるだろコレ」

 

「団長だもんね〜」

 

「むう、羨ましい」

 

「私もゼノンさんに同じことしてもらいたいな」

 

 ベルと春姫の間にはとんでもない認識の差があるな。ベルからしたら冒険者になりたがっている娘の為に扱いに困る泡銭を使っただけだが、春姫からしたら一度会っただけの自分を身請けする・熱烈な愛の告白にしか見えないだろう(物語好きでそんなシチュエーションに強い憧れもあったようだし)。

 そして身請けだが、アマゾネスのように娼婦であることを好んでる種族とそういった嗜好の者はともかく、奴隷として買われアイシャから訊いた所によると悲観的に絶望しながら生きてきた春姫のような立場の者からしたら(イシュタルが変わったこととナデナデ屋でだいぶ改善したが)、物語によくある白馬の王子がお姫様を迎えにきたような状況なんだろ。

 

「はぁ、じゃあ旦那説明してくれ」

 

 疲れたように頭を抑えるヴェルフに促され、俺はざっくりと説明する。

 命達追跡時に春姫と出会ったこと。

 春姫が自身の借金を返済して冒険者になりたがっていたこと(イシュタル・ファミリアでもダンジョンに潜るがアマゾネスメイン)。

 それを知って手助けしてあげたいとベルが俺に相談してきたこと。

 ベルがモルドに誘われてカジノに行き、そこで得た大金で春姫を身請けしたこと。

 今に至る。

 

「てな感じだ」

 

「「「あ〜〜〜そんな流れ」」」

 

「え?最近じゃが丸君を買いに来たおばちゃん達が、貴女のトコのベルちゃんやるわね〜、って言ってたのはそれが理由?」

 

 おばちゃん達にまで広まってるのかヤベえな。

 

「というかモルド様達、ベル様を嫉妬から襲撃したのになんで冒険者として先輩風吹かせているんですか」

 

 18階層の決戦に参加した連中はだいたいそんな感じだろ。

 

「どんだけカジノで大勝ちしたんだよ」

 

 モルド達のやらかしでかなり減ったが身請けできるほどの大金だもんな。

 

「父子だね」

 

 誰が父親だ、俺はまだ十九だ。

 と、一通り皆がコメントするが春姫の入団に反対する者はいないようだ。

 まあ故郷の友人が出稼ぎ先で娼婦として働いていると知りなんとかしようとしていた矢先に仲間に身請けされたと知った命はあまりの情報量と展開の早さに虚ろな眼となっていたが。

 

「おっほん・・・・・・とりあえず春姫君の事情はわかったよ。あらためてボクがヘスティアさ、君を眷属として歓迎するよ、よろしくね」

 

 そしてヘスティアが気を取り直して歓迎の意を示す。想い人であるベルの周りに恋する乙女が増えることに思うところはあるだろうが、それを理由に拒絶するような神ではないのだ。

 

「あ〜、そんでイシュタルからいくつか条件っつうか伝言があるわ」

 

 春姫を送り届けたアイシャから伝えられた内容をその場の全員に告げる。

 

「まず、改宗はしても今までと変わらず【ナデナデ屋】で働いてほしいそうだ。もちろんバイト代は出すそうだ(ヘスティアのバイト代の◯◯倍額)」

 

「はい、私は構いませんが」

 

 伝言内容に春姫がチラリと確認するようにヘスティアとベルを見れば、

 

「ヘスティア・ファミリアは副業OKさ!」

 

「春姫さんが良いなら構いませんよ」

 

 主神と団長からの許可はおりたようだ。

 

「そもそもナデナデ屋ってなんなんだ?」

 

「疲れている方の話を聞き、褒めて差し上げるお仕事です」

 

「アポロン・ファミリアの時なら通ったかも」

 

「あ、ははは」

 

 ヴェルフの疑問に春姫が答え、どんな仕事か想像したダフネとカサンドラが苦笑する。

 

「あとヘスティアも金がないならやらないか?とバイトの誘いもあるな」

 

「やらないから!!」

 

 激しく拒絶するヘスティアだが、バイト代は良いから勿体なく感じる。

 人気がでまくりのナデナデ屋。イシュタル・ファミリアの構成員だけでは足りないので、ヘスティア以外にもデメテルなどの母性の強い女神達に声をかけてるらしい。

 

「最後に春姫に発現している魔法はかなり厄介だから取り扱いと情報管理に気をつけろ、だとよ」

 

 確か一時的なレベルアップだよな。

 バイキルト、スクルト、ビオリムに加えて魔力まで増大する強化魔法だと思えば、他所に知られたらマズイよな。

 

「・・・・・・・・・うん。ゼノン君とベル君でそこは慣れてるから気をつけるよ」

 

 激しく嫌な予感を感じてるヘスティアだが、今更だよなとなんとか落ち着いている。

 イシュタルの切り札だった魔法。

 今回の改宗の許可もまだ付き合いの切れない闇派閥に知られないための対策だからな。

 

「あ、最後の最後にもう一つ。春姫個人にだ」

 

「はい?」

 

 そこで俺は娼婦の守護神であるイシュタルの巣立った娘への言葉を伝える。

 

「幸せになれ、だとよ」

 

「イシュタル様」

 

 珍しい奴隷だからと買われた春姫。

 発現した魔法により堅牢に囲い込まれた日々。

 だがもしもイシュタルに拾われなければ、きっとこの瞬間を迎えることはできなかっただろう。

 

「さて、タケミカヅチにも伝えるとして、あとはこれからのことか」

 

 アポロンとのウォーゲームが終わってからだいぶバタバタしていたからな。

 

「ヘスティア・ファミリアも人数が増えて、ダンジョンに潜るにしても訓練や調整が必要ですよね」

 

 バーチェはまだだが(レベル六の入団は大きすぎるので)、ダフネとカサンドラと春姫の三人の加入。ベルとリリルカとヴェルフと命の四人と合わせて七人のチームという上層中層では大所帯とも言える人数だ。

 

「これだけの人数で稼ぐとなると日帰りだと厳しいか?」

 

「いっそ二組に分ける、という手もありますが。それでは少し不安ですね」

 

 上層なら大丈夫だろうが中層では壁役が足りないだろう。

 あと女だけのチームは絡まれやすいらしいから推奨できんし。

 

「暫くはそれらを踏まえて訓練だな。

 なに金なら気にするな、依頼が山程来ているからな」

 

 俺の作成した武具やらアイテムが欲しいという声も多いが、一番は【うごくせきぞう】だ。

 戦力ではなく、観賞用に欲しいってのがオラリオに来ている暇神らしいがな。

 

「「いつもありがとうございます」」

 

 申し訳なさそうなベル達。

 

「気にすんな、嫌な仕事は断ってるしな」

 

 色々やってるが趣味の範疇。

 やりたいようにやっている。

 

「あ、家事でしたら私もお手伝いいたします」

 

「人数増えたし助かるな、せっかくだベルの好きな味噌汁の味付けを教えよう」

 

「はい、お義父さま!!」

 

「誰がお父さまだ、俺はまだ十九だ」

 

「やっていることが舅だぞ旦那」

 

「ちょっと春姫君!!君はまだ大切なことを誤解してないかな!!」

 

「そうです!!ベル様は困っているから助けたのであって、妻として囲ったわけではありませんよ!!」

 

「身請けってそんな感じなのっ!?」

 

「知らないでやったんですかベル殿!?」

 

「ふむ、ゼノンが父なら母は私だな」

 

「え?私ですよバーチェさん」

 

「勝ち目ないのに喧嘩しないでカサンドラ。バーチェさんはレベル六だから」

 

 新たな団員が加わり、かつて太陽を掲げた館は竈の温もりの前で賑やかな時間を刻む。

 新しい仲間、動きを止めぬオラリオ。

 迫りくる騒乱の前の穏やかな一時。

 

 

 

「メイド希望者が列をなして押しかけてきてるんだけど」

 

「なにをやらしたんですかゼノン様」

 

「心当たりはあるが、とにかくシル・フローヴァは断っておけ。死ぬから」

 

「どんなメイドだよ」

 

「フレイヤ・ファミリアのトップ1・2を沈めた必殺料理人だ」

 

「あははは、シルさんの料理はそこまでじゃないですって」

 

「ちょっとまて、ベルが食ってた旦那が作ってない弁当はソイツが作ったやつじゃ」

 

「卵サンドで変な音がしてましたよね」

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・。

 

「「「「不採用、と」」」」

 

「なんでよっ!?」

 

 





 補足・説明。

 春姫加入の話です。
 とりあえずは暫くの間はヘスティア・ファミリアは訓練期間となります。
 その間にロキ・ファミリアイベントをやりたいなと考えています。

 ベルは身請けを理解してませんでした。
 春姫は熱烈な告白された認識です。
 好ましい相手に身請けされるという、娼婦の夢のシチュエーションにときめいております。
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