ダンジョンにダイの代わりに爆死した兄弟子がいるのは間違っているだろうか(なおヒュンケルでもポップでもない)   作:規律式足

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 ソード・オラトリア七巻です。
 オリジナルエピソードから入ります。



第93話

 

 ベルがカジノで大勝ちし極東出身の狐人である春姫をイシュタル・ファミリアから身請けしヘスティア・ファミリアに改宗してから数日。

 春姫は幼少期に付き合いのあったタケミカヅチ・ファミリア出稼ぎ組との再会を喜び。

 ベルは身請けについてきちんと説明を受けて、やったことに後悔はないが頭を抱え。

 ヘスティアは春姫の改宗の際に知ったとんでもない魔法、一時的にランクアップできるウチデノコヅチを見て白目を剥いてぶっ倒れた。

 そんな賑やかな日常を俺はうごくせきぞうガネーシャバージョンを作りながら楽しんでいるのであった。

 オラリオに来てから数ヶ月。

 大きく躍進し続けるヘスティア・ファミリアは暫しの平穏な時を過ごしていた。

 

 されどそれはヘスティア・ファミリアが、というだけのこと。

 ファミリア結成から時は短く、主神であるヘスティアも団長であるベルも趣味人である俺もこの迷宮都市、そして世界全体については無知に等しい。

 今が忙しなく、過去に目を向ける余裕も必要もなかった。

 けれど俺は知り、関わることになった。

 ベル・クラネルとヘスティア・ファミリアが紡ぐ物語とは異なるもう一つの英雄譚。

 ロキ・ファミリアと闇派閥とのオラリオの暗黒期から続く迷宮都市を守る為の戦いを。

 

 

 

 それはこんな一言から始まった。

 

「ちょっとロキ・ファミリアまで行ってくるな」

 

「ロキのトコ?なにかあったの?」

 

 ウォーゲームの勝利で譲り受けたホーム。百人を超える団員全てが生活できる屋敷は広い。

 ロキ・ファミリアのように団員を門番にする余裕はヘスティア・ファミリアにはないので、現在は用事がある者が来た場合は呼び鈴、よく響く鐘を鳴らして貰うようにしている。

 それでも屋敷の奥にいたら聞こえないのだが、そこは俺がシャドー達をこっそりと屋敷各所に配備し、伝わるように工夫した。

 これにより屋敷のどこにいても来訪者の存在に気づくことができるのだ。

 しかし困ったな、

 ヘスティア・ファミリアは人数が少なく、各々でやることがあるのでホームを留守にしがちだ。

 ヘスティアはじゃが丸君屋台とヘファイストス・ファミリアでのバイト。

 ベル達はダンジョン攻略。

 俺は残念だがいくつかバイトはやめて現在はホームにてうごくせきぞう作成依頼をこなしているが、納品の際には出かけ、さらに夜にイシュタル・ファミリアに通う。

 客分扱いのバーチェに常に居てもらうということもできるが、せっかく閉鎖的なアマゾネスの国から出てきたのだから好きに過ごしてほしい。

 つまり広大なホームを全員が不在にすることも珍しくないのである(通いのメイドも団員不在時には帰って貰っている)。

 実際は俺が創り出したモンスターが配備されてるので空き巣や密偵の心配はないが、未だにベル達にすら秘密にしていることだから説明できない。

 ならば団員を増やして仕事を割り振れば解決だが、団員を家族と認識するヘスティアとベルに雇用するような団員募集は受け付けないだろう(また前回の募集で来ない可能性も高い)。

 

(守衛でも雇うべきか)

 

 ファミリア人数に合わぬホーム。

 そのため思わぬ不便さが発生していた。

 ・・・・・・っとかなり話が脱線してしまったがロキ・ファミリアの件である。

 

「なんでも先日報酬として渡したイシュタル・ファミリアの娼館優待券のことで礼が言いたいらしい」

 

「そんなモノを渡したのかい!?

 そしてそんな件で呼び出すのかい!?」

 

 ヘスティアの驚きの叫び。

 ロキのあの女好きな性格と、ロキ・ファミリア男団員の現状(女性団員が立場高め)では礼を言いたいということに違和感はないが、それだけではなさそうだとも感じていた。

 むしろ、それを名目に俺を呼びだそうとしているのかもしれない。

 

「なんかの依頼もあるかもしれないし、とにかく行ってみるさ」

 

 アポロンという大口の収入源が減った以上は金はいくらあっても足りん。

 ガネーシャ・ファミリアなどからのうごくせきぞう依頼の報酬だけでも生活に困らないがベル達に活動費で不自由させたくない。

 

「そういえばアイズ君の石像が欲しいとか言ってたような?」

 

「それお気に入りを全員分依頼する流れじゃねえか」

 

 しかし神の感性ならともかく、人間が一分の一自分石像を受け入れられるのだろうか?

 いや英雄を模した石像なんてザラにあるから平気なんだろうなあ(アバン先生は肖像画すら嫌がってたが)。

 そんなヘスティアとのやり取り後に俺はロキ・ファミリアのホーム【黄昏の館】へと向かった。

 

 

 

「よう来てくれたな、ゼノン」

 

 男なのか女なのかわかりにくい外見、だが女好きセクハラ魔なのは揺るぎない神物、それがロキ。

 黄昏の館の一室。

 会議室らしき広い部屋に俺は招かれていた。

 かつて入団希望者のベルを追い返したことからロキ・ファミリアはプライドが高い、そう思っていた。

 だが今までの付き合いとアポロンとのウォーゲームの一件にて案内途中にすれ違った団員達からは親しみや敬意を感じられた。

 団結が強いファミリアであるがゆえに一度親しくなればこうなるのだろう。

 

「礼、と聞いていたがそれだけではないようだな」

 

 娼館優待券の礼だけならばロキと男性団員のみで充分。しかしこの場には主神であるロキ、団長であるフィン、ほぼ同格のリヴェリアとガレスのみならず、アイズにティオネとティオナにベートとアルガナというロキ・ファミリア幹部陣が揃っていた。

 

「せやで、いやイシュタルんトコは最高やったし連れてった子らも満足しとったから感謝はしとるがな」

 

 どうやら娼館は堪能できたようだ。

 ダンジョンの最深階層を進む彼らには是非リフレッシュしてして欲しい。

 

「が、今はそれより訊きたいことがあんねん」

 

 ロキらしからぬ真剣な表情。

 その糸目を開いた彼女はこちらをまっすぐに見据えてその内容を口にした。

 

「ベル坊がイシュタルのとこから身請けしたことについて詳しく」

 

 スパァァァン!!

 予想外の問い。

 それはその場の幹部達も同様だったらしく、フィンはズルリと滑り、ガレスは呆れたように頭を掻き、ベートはウンザリした様子で出ていこうと席を立ち、アイズ達は気になるように身を乗り出し、そしてリヴェリアが波折にした厚紙(ハリセン)でロキをぶっ叩いた(送還されないかアレ?)。

 

「お前は何を訊いているんだぁっ!!」

 

「(ピクピク)」

 

 後頭部を思い切り引っ叩かれ長机に突っ伏すロキは、机に置かれたグラスの結露による水分でリヴェリアとダイイングメッセージを残していた(余裕あるなコイツ)。

 

「すまないねゼノン」

 

 真剣な話はまだ先になりそうだ。

 個人的には楽だから歓迎だが俺はそっとため息をついてロキにホイミをかけることにした。

 

 

 

 

 オマケ。

 

「なあゼノン。依頼があるのだけど」

 

「うごくせきぞうか?」

 

【勇者】フィン・ディムナによる依頼。

 小人族の為に名声求める彼ならば自身を称える石像も必要なのかと訊ねれぱ彼は首を左右に振るって違うと言う。

 

「先日のイシュタル・ファミリアで見た【ねむりの杖】というマジックアイテムを造ってほしい」

 

 娼婦の護身具として渡した催眠呪文ラリホーを発動できる武器(殴っても稀に発動)。それをフィンは欲しいらしい。

 捕獲ではなく討伐がメインの冒険者にしては珍しい依頼だなと首を傾げたら、彼は疲れ切った窶れた表情で、

 

「アルガナとティオネ対策に、ね」

 

「ああ」

 

 小人族繁栄の為に自身の子は小人族であることを望むフィン・ディムナ。ゆえに生まれる子供がアマゾネスになる彼女らは好ましい性格であれ好かれていようが、婚姻相手として対象外。迫られても断る以外の答えしかないのだろう。

 個人的には英雄二世は苦労ばかりという印象があり、フィン・ディムナという極めて例外的な小人族の子など碌な未来が予想しかできないのでアマゾネスの姉が存在するのは良い選択だと思うが、どうやらその考えはないらしい。

 

「わかった用意しておく」

 

 まあ大した手間でないしな。

 値段についてはヴェルフに相場を訊いておくとしよう(繰り返し使用できる魔剣の相場額とは?)

 

「ありがとう、ありがとう」

 

 希望を見つけた勇者はポロポロと涙を零していた。

 

 

 

 オマケのオマケ(笑)

 

「「バーチェの毒を無効にした指輪みたいに眠りを無効化する指輪をください」」

 

「はいこれね」

 

 さらに後日、俺は眠りを無効化する指輪【目覚ましリング】をとあるアマゾネス二人に渡すのであった。

 いやだって客は平等だし。

  





 補足・説明。

 ソードオラトリア編です。
 ゼノンの介入の為に黄昏の館に呼ばれました。
 あとヘスティア・ファミリアホーム問題について触れました。おっきい館は管理も大変。
 そしてロキ個神の気になることの為にすぐさま中断。なにやってんだコイツ。

 オマケ。
 眠りの杖をフィンに売りますが、目覚ましリングをティオナとアルガナにも売ります。
 バーチェの惚気によりフィンの対策が無意味になりました(笑)。

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