ダンジョンにダイの代わりに爆死した兄弟子がいるのは間違っているだろうか(なおヒュンケルでもポップでもない)   作:規律式足

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 前回のあらすじ(違う)

「裏切ったなゼノンンンン!!」

「恋する乙女の依頼を断れるか」

 なお依頼品の値段が鍛冶屋がキレるレベルの安価だった為、団長としては文句を言えない模様。



第94話

 

「・・・・・・ざっとこんなトコだな」

 

 ロキが復活してからベルが春姫を身請けした経緯を説明。

 

「ほーん、タケの知り合いが極東からオラリオに流れてたんか」

 

 身請け。

 お気に入りの娼婦を自身の妻・妾にする為に楼主から買い取る、事実上人身売買そのものでありその行為を顔見知りの将来性を期待している少年・ベルがしでかしたことに困惑と憤りを抱いていた面々だが、その理由とベルの無知さを理解して納得した。

 ベルは娼館に通い詰めてないし、妻か妾にする為に買い取ったのでもない。

 ただ、たまたま得た泡銭で冒険者になる夢を見る少女の願いを叶えただけなのだ。

 

「普通はそんな泡銭を博打で得られんのやけど。今度ウチも一緒に行こうかいな」

 

「やめとけつまんねえぞ」

 

 胴元に利益が出るから賭博場は成り立つ。

 つまり賭け事は負けるようになっている。

 けれど【幸運】のアビリティを持つベルはそんな常識は当てはまらず、勝ちの確定した博打ほどつまらないものはない。

 もはやそれは、単なる金稼ぎの作業。

 胴元から睨まれカジノから出禁、さらに胴元の上役に目をつけられる手間やらリスクを考えると、正直割に合わない。

 ベルが今回そんな目にあわず出禁されてないのは、モルド達を筆頭としたベルの存在により大負けした者達が大量発生したこと、イベントとしてカジノ全体を盛り上げて利益を出したからだ。

 

「まあ負けへん博打がつまらんのはわかるけど、大勝ちして綺麗所侍らしてウハウハしたいやん」

 

「それは俺がやった」

 

 なおベルの場合はショタ趣味な紳士淑女暇神女神が涎を垂らしながら囲んでいた、定期的にシル(フレイヤ)とリューが睨みを効かせて散らしていたそうだが。

 

「んで身請けされた狐人の嬢ちゃんはタケ達と再会できて夢の為にヘスティアのとこで冒険者になった、と。

 ま、中々の美談やん」

 

 あんな魔法持ちで改宗が認められたのはイシュタルが春姫の為に気を遣ってくれたからだがな。

 

「でもよゼノン。娼婦の過去話にいちいち同情するのは問題だろ。またこんなことが起こるぜ」

 

 ベルの善意の行動は評価できるが、それを繰り返させてはいけないとベートが注意する。

 春姫は本当に同情できる境遇であるし、救われたことに報いたいと思うような善人ではあるが全ての娼婦がそうではないからな。

 お涙頂戴、お金はもっと頂戴。

 自らの過去を儲けに繋げる強かさを身に着けてこそ本物の娼婦なのだ。

 

「そもそもベル・クラネルを歓楽街に行かせることが問題だろうが」

 

 娼館に慣れさすのではなく行かせるな。

 潔癖で堅物なことに定評あるエルフからしたらそんな風に思うのだろう。

 

「・・・・・・とりあえずベルが人助けしたってことだよね?」

 

 説明されたがよくわからなかったアイズは限られた部分だけを理解したようだ。まあだいたいそんな感じだしな。ただちょっと春姫が身請けしてくれた兎風ショタに惚れてヘスティア・ファミリアが修羅場になっただけ。

 

「今度褒めてあげよう」

 

「それはやめて差し上げろ」

 

 一目惚れした初恋の少女に身請けして偉いねと褒められる。

 どんな反応すれば良いかわからねえよ。

 

 

「さて、じゃあベル・クラネルに関してはここまでにしておこう」

 

 話を切り替える為にロキ・ファミリア団長であるフィン・ディムナがパンパンと手を叩く。

 

「いいかげんゼノンを呼び出した本題を話さないといけないからね」

 

「本題?」

 

 やっぱり優待券の礼というのは建前だったのか。

 

「といってもオラリオに来てから日の浅いゼノンにはいくつか説明をする必要があるだろう」

 

 それからフィンは本題に必要な事前知識を教えてくれた。

 ロキ・ファミリア遠征時に起きた異常事態。

 オラリオに千年以上も積み重ねられた情報の中に存在しない異形のモンスター。

 それらを使役する謎の存在。

 闇派閥と呼称されるファミリア。

 暗黒期と呼ばれた時期にオラリオで起きた悲劇と奴らとの因縁。

 そして壊滅させた筈の闇派閥がオラリオの深部に潜り力を蓄えていた事実と連中の企み。

 フィン・ディムナはオラリオに来てファミリアを結成して数ヶ月の新米冒険者に惜しみなく伝えてくれた。

 

「・・・・・・なんとまあ、頭が痛くなる話だ」

 

 かつて敵対した大魔王バーン率いる魔王軍が如何に真っ当に侵攻してきたのかよくわかる(地上吹き飛ばす時間稼ぎの為の余興だったが)というものだ。

 なんかもうこのオラリオにはザボエラとキルバーン、それに一時期のハドラーみたいな連中が山程どころではないくらい存在するらしい。

 国家の重鎮、貴族やら役人も似たようなことはしているが連中は武力を持たないから力尽くでなんとでもなったからなあ。

 

「大概のファミリアが好き放題しているのは事実。闇派閥に分類されずとも悪行働く連中も多い。

 けれど闇派閥の邪神と呼称される神々は、他の神からしてもやりすぎているからね」

 

 闇派閥の特徴はギルドの存在を敵視し、迷宮都市の在り方を否定することにある。

 また神の恩恵を得た冒険者の人々をモンスターから守る存在という印象を覆すかのように私利私欲の為に力を、血生臭く振るう。

 オラリオが発展し豊かであるのは冒険者の力だけによるものではない。

 この地に住まう人々が冒険者の齎す利益を用いて生活するからこそ、世界の中心と呼ばれるほどに発展するのだ。

 ダンジョンだけでも、神だけでも、冒険者だけでも、民だけでも、商人だけでも成り立つことのない豊かさ。

 だからこそギルドという利益配分を采配する組織が必要なのである(些か私利私欲の為に動いてる場面もチラホラある)。

 

「それをぶっ壊すねえ。

 寂れた街で何を楽しむのやら」

 

 闇派閥に近いと睨まれ、ギルドと幾度となく揉めているイシュタル・ファミリアが暗黒期にギルド側についたのもこれが理由だ。

 歓楽街が儲かるには金を落とす、懐豊かな民の存在が必須なのだから。

 そして金銭だけではない。

 英雄となる為、名声を得る為に冒険者になりにきた者達にとっても自身を褒め称える民衆は必要。

 ゆえに一時の享楽の為に民衆を玩具とする闇派閥はあってはならぬ存在なのだ。

 

「その闇派閥の拠点と思われる場所を【ダイダロス通り】に発見した」

 

 ダイダロス通り。  

 オラリオ南東に存在する広大な住宅街。

 住宅街と謳っているもののその構造は複雑怪奇。重層的な造りは上下に伸びる階段を幾つも生み出し猥雑な道が区画の隅々まで氾濫している。

 この地はいわゆる都市の貧民層の住まうスラムであり、俺の故郷(王族に焼かれたが)みたいな場所。落ちぶれた冒険者やゴロツキの居着く、オラリオの一般人が避ける場所の一つだ。

 

「闇派閥の隠れ家にはうってつけなわけだ」

 

 ギルドどころか住人すらも把握しきれない区画、【奇人】と称された当時の施工者がどんな隠し通路を造っているのかも定かではない。

 

「そう、見つけられたのはベートが食人花の臭いを嗅ぎつけたから。でもどうにもね」

 

「罠くせえ、そう思う」

 

 都合が良い展開に裏があると警戒するのは良い指揮官の証だな。

 仲間の命を預かる立場なら慎重過ぎるに越したことはない。

 

「僕達ロキ・ファミリアは装備を整えてその拠点に進攻する予定なんだ」

 

「なら俺への本題ってのは、その進攻に参加しろってのか。まあ知らん仲じゃねえから別にかま「いいや」」

 

 闇派閥の拠点に攻め入る。

 その戦力として呼び出されたのかと思い了承しようとしたところで遮られた。

 

「ゼノン。

 君は今回の件に、決して参加しないでくれ」

 

 フィン・ディムナのロキ・ファミリア団長としての要請。

 それは主神であるロキ以外は予想外のもので、会議室は驚愕に包まれた。

 

(名声を独占する為・・・・・・ではない。自身らの力を過信しているから・・・・・・じゃねえ。俺を闇派閥と繋がっていると疑っている・・・・・・からでもない)

 

 いくつか理由を推察するが未だ情報が足りぬ為か、どれもしっくりくるものはなかった。

 

「フィン・・・・・・どうして?」

 

 アイズの不思議そうな表情がその場の総意であった。

 

 





 補足・説明。

 オマケ話は本編に組み込めない思いついた小話をやるつもりです。
 その為時系列やどのタイミングでやったのかは気にしないでください。
 前回のオマケはフィンが眠りの杖を知ったら欲しがりそう(感想にもあったかな?)と思ったのでつい。 
 目覚ましリングの返しはノリですね。
 死の商人の呼び方は作者は思いつかなかったので吹きました(笑)

 今話はベルの春姫身請け説明からです。  
 なお話し中の「お涙頂戴、お金はもっと頂戴」はるろうに剣心の志々雄真実が外伝にて言った発言です。
 とりあえずテロリストなのに遊郭に飽きるほど入り浸る攘夷志士と、治安維持部隊なのに遊郭に通う新選組に誰かツッコまなかったのかなと思いました。
 
 ベルの身請けを褒める予定のアイズ。
 妻か妾を買ったことを想い人に褒められたらどんな反応になるやら。作者の想像力を超えている状況ですね(笑)。

 割と無知なゼノン。
 闇派閥と暗黒期については食堂の世間話で聞いた程度でした。原作ベル君もどれくらい知ってたのでしょうね。

 フィン・ディムナの要請。
 大した理由ではありません。
 信頼できぬ同盟者達に、信頼できる戦力(ゼノン)の手の内を晒したくないという警戒からです。さてどう伝えましょう。
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