ダンジョンにダイの代わりに爆死した兄弟子がいるのは間違っているだろうか(なおヒュンケルでもポップでもない)   作:規律式足

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 作中でベート・ローガのゼノンへの態度軟化について説明不足ですいません。
 ベートですがベルとの修行中でのベルからの説明、ウォーゲームでの活躍と実力、ウォーゲームでオッタルに暴露された多忙ぶり、などからゼノンを認めている感じです。
 またゼノンにしても、クロコダイン・ヒュンケル・ラーハルトなど出会ってすぐは警戒していたが次第に軟化していった存在がいたのでベートのことを気にしてません(ラーハルトは認めていたが最後まで塩対応)。



第95話

 

 イシュタル・ファミリア直営娼館の優待券のお礼をしたいとロキ・ファミリアに呼ばれた俺は、ロキ・ファミリア団長である【勇者】フィン・ディムナから彼らが対応している案件、闇派閥のことを教えられた。

 そして闇派閥の調査で迷宮都市オラリオ最大規模のスラム街【ダイダロス通り】にて最硬精製金属【オリハルコン】(同名だがゼノンの元いた世界製に比べたらかなり格は落ちる)でできた巨大な扉を発見した。

 その拠点らしき地下空間の内部はさながら迷宮のようであり、人工迷宮と呼ぶに相応しい場所。

 誘うように開かれた(撤退したら閉まって再度訪れたらまた開いた)その扉は罠であることを確信させた。

 罠であるとわかっている場所に進攻することは危険極まりない所業であるが、現状として【闇派閥】の情報が足りないこと、またロキ・ファミリアがダンジョンで遭遇したロキ・ファミリアですら苦戦を強いられた明らかになんらかの手が加わった怪物【精霊の分身】の存在がある以上は放置もできない。

 ゆえにロキ・ファミリアは危険を承知で敵の用意した罠に飛び込むしかないのだ。

 そんな状況で戦力になりうる俺という存在の参戦をしないようにと、ロキ・ファミリア団長であるフィン・ディムナは告げたのだ。

 

「どうして?フィン」

 

 ロキ・ファミリア主力の一角である【剣姫】アイズ・ヴァレンシュタインの疑問の声。

 それは安全の為に俺がいた方が良いという意見と同時に、一緒に冒険したいという彼女の願望からも来ていた。それはアイズ・ヴァレンシュタインだけではなく理由はそれぞれながらも他の幹部陣も同じ。

 団員達が無事に帰還する為、目的を達成する為にも、俺という存在は大きな戦力となるだろう。

 

「俺もアイズと同感だな。雑魚(二軍とされる団員、後衛・治療班)は置いて、代わりにゼノンを連れていくべきだ」

 

「ちょっとベート、あたし達仲間なんだから、いい加減そういう言い方やめなって」

 

 人造迷宮を見て獣人としてさらに冒険者としての経験からいやな予感がしていたベート・ローガはアイズに同意した上で進言する。

 ティオナとティオネのアマゾネスの双子はゼノンの同行に賛成ではあるがベートの物言いに反発して噛みつく(もっともティオネは惚れてる雄であるフィンの言葉第一の為、ゼノンの同行はフィンの命令に従うが)。

 

「後衛の支援もなしに突っ込んであんたや私達がどれくらい力を発揮できるのよ。ダンジョンもどきなら、武器や道具は必要じゃない」

 

「ゼノンがいれば問題ねえだろ」

 

 換えの武器、治療の為のポーション、それらの運搬であれば俺のうごくせきぞうがあれば充分だろうとベートは続ける。

 単純な命令しかきけない(ということになってる)魔導人形(ということになってる)だから調査は無理だろうが運搬要員には問題ない(ということになっている)。

 

「ベートの進言には一理あるがの」

 

「そもそも彼は他所のファミリア。彼一人だけ助力を要請しようがまだ規模の小さいヘスティア・ファミリアを闇派閥との抗争に巻き込むことになるぞ」

 

 フィンの言葉に最初は反発しそうになった三首領の二人・ガレスとリヴェリアだが、冷静になれば俺の参戦が危険であると思い至る。

 闇派閥は手段を選ばない。

 暗黒期では眷属である冒険者ではなく主神を狙い送還し、神の恩恵が無くなり無力となった冒険者を討ち取るという所業すら実行してそうだ。

 ロキ・ファミリアに加担し闇派閥と相対するということは、そんな連中との戦いに善人である俺の仲間たちを巻き込むことになってしまう。

 

「それは・・・・・・」

 

「チッ」

 

「マズイよねー」

 

 その意見にはロキ・ファミリア若手幹部陣も頷く他はない。

 ヘスティア・ファミリアは俺を除いても急成長を続ける新参ファミリア。

 要請すれば協力は惜しまない善性はあるが、ファミリアとしての経験と積み重ねが無さすぎる。

 また主神ヘスティアも団長であるベルも人の悪意に疎い世間知らず。

 手段を選ばぬ闇派閥一派との抗争にはあまりにも適していない。

 

「そうだね、それだけではないが。リヴェリアの言った理由も当然ある」

 

 フィンはそう頷きながら言う。

 見どころある成長株のヘスティア・ファミリアはまだ闇派閥と関わるのは早すぎるのだと思っているらしい。

 

「ま、一応警戒だけはお願いしたいかな。

 リヴェリアは万が一の為に入り口付近に待機してもらう予定だけど、闇派閥が僕達が潜ったタイミングを好機と判断して【精霊の分身】を地上に放つ可能性もあるからね」

 

 そんな残した戦力が対応しきれない時の為に地上にいた方が良いとのことらしい。

 地上でモンスターが暴れるとなれば他のファミリア、ガネーシャ・ファミリアなどが駆けつけてくるだろうが即座に対応できる戦力も必要なようだ。

 

「ロキ・ファミリアの残りの戦力だけで対応しきれない見通しなのか?」

 

 ロキ・ファミリアは強い。

 他のファミリアよりも組織として強い。

 個々の実力ではフレイヤ・ファミリアの方が一部で勝るだろうが、集団戦闘ならば負けはしない。

 中堅層の戦力が厚く練度も高いこの集団はロモス騎士団は当然としてパプニカ騎士団にも劣らない(カール王国騎士団には及ばないが)。

 

「自慢の仲間だけど念の為だよ」

 

 仲間(部下)の実力を知ってなお保険はいるとフィンは判断したようだ。

 

「ま、できる限りゼノンには出張って欲しくはないんや。今回で闇派閥と決着できると思えへん。伏せ札はあるにこしたことないねん」

 

 闇派閥と冒険者の最大の違いはここかもしれない。闇派閥の眷属情報は神会で公開されない場合がある(二つ名は神会による名付けではなく通称の場合が多い)、だが二大ファミリアとしてオラリオに君臨するロキ・ファミリアは、その実力と主力の情報が知れ渡っている。

 神の恩恵、レベル◯の者がどれだけ所属しているのか。ギルドにその情報を登録する義務があり、神会の二つ名をつける際にレベル2以上の冒険者は情報を晒されてしまう。

 冒険者として名を上げ、名声を得るためには欠かせないことではある。

 むしろこうなる為に冒険者になりランクアップしたとすらいえる。

 だがそれはこのような状況では裏目にでる。

 名声や情報など知りうる方法のないダンジョンのモンスターが相手ならば問題はないが、悪意ある地上に隠れ潜む存在相手では致命的だ。

 レベルの差は絶対。

 いくら人数がいようとレベル2の集団にレベル5一人が襲いかかれば容易く壊滅できてしまうほどに。

 また自身よりレベルが高い者と戦うことを避ける選択すら闇派閥は取れる。

 総力で勝ろうが情報が知られていることはこんな事態を引き起こしかねないのだ。

 

(分断されて各個撃破。その危険性は助言しておくべきか)

 

 かつてバーンパレスに挑んだ際に俺達もハドラーに同じことをされた(ハドラーがダイと決闘するためだったが)。俺達はダイもポップもマァムもなんとか勝てたが危機的状況であった(なお俺は魔界の実力者数ダースセット)がロキ・ファミリアが切り抜けられる保証はない。

 

「わかった、ロキ・ファミリア団長としてのフィンの要請は聞いておくよ」

 

 聞いておくだけで守る気はない。

 ロキ・ファミリアの面々との付き合いはそこそこできて当初僅かにあった反発も殆どない。

 合わない者がいることは否定しないが死んでほしいとは思えない。命の危機がありそうな状況で何もしないなんて無理な話だ。

 

「・・・・・・そう」

 

「チッ」

 

「残念だなー」

 

 若手幹部陣が残念そうにする中で、ガレスとリヴェリアは因縁がないにも関わらず闇派閥との件に巻き込みつつある状況に申し訳無さそうにしていた。

 ロキ・ファミリアを含めた現オラリオの名のあるファミリアは闇派閥と因縁がある。

 けれど新参ファミリアであるヘスティア・ファミリアはそうではないのだから。

 

「ま、終わったら治療やら依頼しに行くかもしれんからわかりやすいトコに居てくれたら助かるわー」

 

 主神であるロキのそんな軽い言葉でこの話し合いは終わったのである。

 

(さーて、こんな時の為に用意しておいた変装セットを引っ張りだすか)

 

 人造迷宮入り口で身を潜めて待機か、レムオルで透明となってこっそり混じるか。解錠呪文アバカムがバレるのはまだマズイだろうし一緒に侵入が正解だろう。

 装備としても強力なキルバーン(人形)衣装を着て参戦するとしよう。

 俺のスキルは神に嘘をつける。

 見た目がまるで違い、戦闘スタイルを完全に変え、アバン流と呪文を使用しなければまず俺だとバレないだろう。 

 

 

「ええんやなフィン?」

 

「ああ」

 

 話し合いが終わってその場に残ったのは、団長であるフィン・ディムナと主神ロキ。

 ゼノンの参戦を断った真の理由は、同盟者である他のファミリア、デュオニュソスとヘルメスさらにはギルドにゼノンの情報を知らせない為。

 フィンとロキもゼノンの実力の一部しか知らないが、この進攻で使われてしまうだろう新たな情報を与えたくはない。

 イシュタルとの極秘対談でヘルメスが闇派閥ではないことは確認できた。

 だが闇派閥ではないにも関わらず、ヘルメスは怪しい行動・暗躍を続けている。ギルドの依頼だけではなく、自神の目的の為に。

 それは決してロキ・ファミリアにもオラリオにも利益あることではないだろう。

 ゆえに信頼などできない。

 そしてデュオニュソス。

 こちらも闇派閥に出入りしている様子はない。闇派閥による会合の場で見たことはないらしい(仮面をつけた謎の存在がいるらしいが)。

 ゆえに闇派閥の疑惑を解いてもよさそうだが、完全に疑いを晴らすことはできない。

 27階層の悪夢の被害者であり、仲間であるレフィーヤ・ウィリディスが団長のフィルヴィス・シャリアに懐いていようとも警戒を欠かすことはできないのだ。

 

「でもなフィン。 

 ゼノンにあないな情報を伝えてもうたら勝手に参戦してまうで?」

 

 ゼノンの性格、というかオラリオに居る理由を考えれば当然のこと。

 自分自身ならばなんとでもなると確信しているがゆえに自身のことは利益度外視に無頓着。

 気にするのは親しい者のことだけなのだ。

 

「彼なら情報を伝えずとも異常を察知して首を突っ込む可能性が高いだろ」

 

「それはそうやなあ」

 

 ゼノンの感知能力がどれだけなのかは両者は知らない。けれど気になったからと調査にきて、そこでロキ・ファミリアが戦っていれば加勢するだろう。

 だったら事前に伝えておき準備して貰うほうが良い。

 知っていればゼノンとて行き当たりばったりの着の身着のままではなく、きちんと情報秘匿の用意をして戦いに臨むだろう。

 

「参戦して欲しくないのは本音さ。

 一般人として日常に埋没したがる彼を戦いの場に引っ張りだしたくはない。

 でもメレンで助力してくれたことから、情報を得たら参戦するのは間違いないからね」

 

「英雄のようなお人好しやで」

 

「・・・・・・そうだね」

 

 そんなゼノンの在り方をフィンは眩しいモノを見るような気持ちになるのだ。

 

「異界の英雄・・・・・・か。

 彼は何を成し遂げたんだろうね」

 

 ロキより教えられたゼノンの情報(ヘスティアの許可済)、自分の半分も生きていないのにそう呼ばれたゼノンに憧憬に似た感情をフィン・ディムナは抱いていた。

 





 補足・説明。

 ゼノンの参戦拒否理由です。
 現時点でヘスティア・ファミリアが闇派閥に目をつけられてる可能性は低く(エニュオの正体がアレだから敵視はされてそうですが)、ゆえに巻き込みたくない気持ちもあります。
 ゼノンはともかくとして、ダンジョンに潜るベル達とバイトしているヘスティアは狙いやすい存在なので。ベルも原作よりは成長はしていますが【精霊の分身】には勝てませんし。
 だけどゼノンはそんな気遣いを知ってなお、勝手に参戦する予定です(カサンドラの占いも確認する気)。なんとなくですが、ロキ・ファミリアが事前情報が一切ないダンジョン攻略に慣れてないと感じたので(作中現時点ではゼウス・ヘラ・ファミリアが攻略済な階層でしたっけ?)。
 予定ではこの話でゼノンなりのダンジョン攻略、対策を告げるつもりでした。
 かつて国家は未知の領域調査には死んで問題ない奴隷や死刑囚を罠の確認の為に先行させたと言ってから、うごくせきぞう達を先行させようなど。
 ただそれができてしまうと、ダンジョン攻略にその手法が定着しかねないのでやめました。
 あと火を起こして煙攻め、運河から水を引いて水攻めも考えましたが、ダンジョンと繋がっている以上は無駄ですよね(笑)。下手したら運河の水源はダンジョンの可能性もありますし。

 キルバーンに変装する予定のゼノン。
 実用性と本人(キルバーン)に対する意趣返しです。当作オリジナル装備ですが、キルバーンセットを一通り用意してあります。
 ミストバーンも候補にあがりましたが、無口設定の為にやめました(衣装はある)。
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