ダンジョンにダイの代わりに爆死した兄弟子がいるのは間違っているだろうか(なおヒュンケルでもポップでもない)   作:規律式足

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 ダイの大冒険ロモス編を聞き終えたフレイヤ・ファミリア幹部陣の反応。

「ふん、少しはマシになったではないか」

「なんでポップの後方師匠面してるの?」

 みたいな某白黒エルフ。
 某4兄弟はマゾッホさんの「勇者とは〜」のくだりで同族の自称勇者に対して失笑したり罵倒したりしてます。
 そして某猪マンはクロコダインの後悔に対して同情しました。立場のせいでクロコダインは武人として徹しきれなかったので。
 某猫人さんはどうだろ?
 一番反応がわからない人てすね。



第97話

 

 闇派閥のオラリオ最大拠点にして強固なる砦にして必殺の狩り場である人工迷宮『クノッソス』。

 その場所を掴んだロキ・ファミリア精鋭による盤石な編成での進攻は、事態を逆転させんと目論む闇派閥によって返り討ちの危機に直面していた。

 閉ざされた通路、襲いかかる食人花の群れ、落とし穴などの各種罠。

 しかし都市随一の戦闘集団であるロキ・ファミリアにとってそれは切り抜けられないものではない。

 どのファミリアより優れた戦闘指揮と徹底された命令遵守によりいかなる苦難とて乗り越えてきた。

 だがそれは、オラリオ最高の指揮官である『勇者』フィン・ディムナがあってこそ。

 彼という精神的支柱がある限り、ロキ・ファミリアは断じて揺るがない。  

 だからこそ、闇派閥はそれを狙った。

 フィン・ディムナの指揮能力を限界まで酷使させ疲弊させたところで、協力者である最大戦力の『怪人』による強襲。

 支柱を圧し折り、都市最強派閥を統制とれぬ獲物の群れへにしようと目論んだ。

 だが、

 

「ボクの名はキルバーン」

 

 迷宮に響き渡る笛の音とともに現れた『死神』と名乗る異形の存在によってその企みは破られた。

 

「クッ!?」

 

 そして恐るべきことにその人ともモンスターとも神ともしれぬ存在は、戦闘力であればオラリオの全冒険者と比べても単体最強格である『怪人』レヴィスの片腕を不意打ちで切り飛ばし、武器としては実用的とは程遠い、半ば趣味人しか使用しない程に使われない武器である『大鎌』を自在に操っていた。

 高名な冒険者にこんな人物は存在しない。

 であれば裏の、闇派閥に関わる存在か。

 あるいはあり得ないことに、レベル6の冒険者にすら勝るレヴィス以上の武力を持つ『神』なのか。

 下界にて力を封じている神々であるが、技術まで使用できなくなるわけではない。

『弓の神』や『狩猟の神』が恩恵を刻んだ弓使いよりも巧みに必中させるように、『武神』と称される神々は武術のみで冒険者に勝る。

 事実として極東の武神タケミカヅチならば都市最強の冒険者であるオッタルを投げ飛ばすことが可能なのだ。

 ゆえにこのキルバーンもその類の存在ではないのか?その場の事情を知らぬ者達はそう驚愕しながら推測していた。

 

「・・・・・・撤退だ」

 

 そんな中、この死神の正体に心当たりのある唯一の人物であるロキ・ファミリア団長フィン・ディムナは誰よりも早く混乱から立ち直り決断する。

 

「フィン!?」

 

 すぐさま反応するのはロキ・ファミリア有数の実力者である『凶狼』ベート・ローガ。

 因縁ある闇派閥幹部ヴァレッタ、隻腕となった手負いの怪人レヴィス、謎の存在であるキルバーン。

 それらを放置して逃げるのかと問いかける。

 

「ベート、この状況は闇派閥の罠。

 まさかここまで人工迷宮を自在に操作できるのであれば後衛を連れてきたのは確実に失敗だった」

 

 迷宮の壁の変化、封鎖はダンジョンでも稀にあることだ。それを切り抜けられるかどうかが冒険者の実力をわけると言っても過言ではない。

 だが人間の悪意はダンジョンすら上回る。同族だからこそより的確にやられたくないことをできるのだ。

 

「俺が言ったとおりだろうがっ」

 

 ギリッと噛み締めながらベートは言う。

 これならば幹部とゼノンを合わせた少数精鋭で挑むべきであったと。

 

「ああ、それは僕の失策だ認めよう」

 

 フィンは自らの失敗を認め、認めた上で必要なことだったと内心で呟く。これからを見据えるならば二軍三軍にも経験は必要だったと団長として思うからだ。

 

「理由はわかった、だがあの正体不明の野郎を放っておくのか?」

 

 ベート・ローガはまだ何も失ってないのに退くのか?とは問わない。失ってからでは遅いのだとその人生から理解しているのだから。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・(十中八九ゼノンなんだろうなあ、親指疼かないし)あのキルバーンとやらが仮に神だったとしたら討ってしまってはまずい。神殺しはそれを為した者の魂を永劫蝕む呪詛となるらしいからね」

 

 ゆえに人は神を殺せない。

 生物としての畏怖もある。この世界の住人はたとえ憎き悪神邪神であっても神を害す殺すことに尋常ではない抵抗を感じてしまう。だから暗黒期でも神の送還は神の手で行ったのだ。

 

「確かめる術がねえならそうすべきか」

 

 畜生がとベートは大鎌を回転させ銀の円を描き振るう道化師のような存在を睨みつける。

 フィン達を窺う闇派閥幹部たるヴァレッタも同じ可能性を考えているのかキルバーンを警戒するが攻撃できず、刃を躱すレヴィスは隻腕にされたことで回避で精一杯のようだ。

 

「退くぞロキ・ファミリア!!すぐにガレス達別働隊と合流しこの窮地を脱する!!」

 

「「「「「はい!!団長!!」」」」」

 

 闇派閥相手に撤退は屈辱すら感じてはいる、だがそのようなプライドよりも団長であるフィン・ディムナの言葉は優先される。これが『勇者』フィン・ディムナが創り上げた組織なのだ。

 

「あ、ベート。その斬り飛ばされたレヴィスの腕と剣は回収しておいてくれ。何かの役に立ちそうだ」

 

「テメェのこんな状況でも合理的なトコは尊敬以上にドン引きだよ」

 

 怪人というモンスターに近い存在の腕ならば何かの素材になるだろうし、如何にも禍々しいこの長剣は下手したら『呪道具』の可能性だってある。

 しかし致命的な一撃をくらいかけたそのすぐ後に回収という判断ができる知性と理性にかつて1ファミリアの団長を務めたベート・ローガはただドン引くのであった。

 もっともこれはキルバーンという謎の脅威が味方側であるという余裕のおかげでもあるが。

 

(キルバーン、ね。

 ダイの大冒険の大魔王の名はバーン。

 もしかしたら関係ある存在なのかもしれない)

 

 余裕があることで知性は輝く。

 オラリオ随一の知略家である頭脳はそんな答えを導きだしていた。  

 真実はさらに入り組んでいて面倒な存在ではあったのだが。

『勇者』フィン・ディムナ健在な状況での撤退。これで闇派閥の企みは台無しとなる。

 ダンジョンの到達階層を更新した上で部下を失わずに帰還できる指揮こそがフィン・ディムナの真骨頂なのだから。

 

 

 

「あーらら、彼らは撤退か。

 まあいいよね、今はまだその時ではないのだから」

 

 キルバーンに扮したゼノンは残念そうにそれらしい言葉を呟く。

 死神。

 大魔王軍において裏切り者、役立たずの粛清を担っていたからこそ通称ではあるがこの神が降りし世界では『死神』という存在はそのまま神を示す。

 ダンジョンとなんらかの繋がりのある怪人ならば気にする必要はない。

 だが死後の再会を対価として闇派閥に所属する者達にとっては神殺しを為すことはできない。

 自らの死を厭わぬ自爆兵達はそれゆえ遠巻きにするしかないのである。

 

「貴様ぁっ!!」

 

 そして怪人レヴィス。

 彼女にとってはフィン・ディムナの撃退はあくまで仕事、それがすめば目的の存在であるアリアを狙いに行きたいところであった。

 しかし謎の斬撃で片腕を落とされ武器を失い、さらに身体が徐々に硬直していく不可思議な現象と、振るわれし大鎌の前に逃げ惑う他なかった。

 

「まったくわざわざ死神が死を告げに来たんだ。抵抗せずに首を差し出すべきだろう?」

 

「チッ、こんなところで刈られるわけにはいかん!!」

 

「おや?」

 

 そう叫んだレヴィスの意思に呼応され周囲の食人花はキルバーンへと殺到する。

 首を傾げたキルバーンは躊躇わず腕を振るう、大鎌が閃きが視界を遮る食人花がバラバラに細切れとなるが、その一瞬の隙をつきレヴィスとヴァレッタは開いたオリハルコンの扉へと飛び込んだ。

 

「(ま、こんなとこか)」

 

 キルバーンの面をつけたゼノンは大鎌を玩びながらやるべきことはやったと頷く。

 ロキ・ファミリアがフィンの指揮の下で撤退するのならば手助けは不要で、この人造迷宮と協力するレヴィスの存在を認識していれば次に遅れをとることはないだろう。

 

「(キルバーンの存在も連中に印象つけれたみたいだしな)」

 

 チラリと不気味な彫像の瞳や植物の彫細工の中に隠された青白い花を見る。

 それがモンスターの一種か一部で、人造迷宮に潜む闇派閥に映像を送っていることを大魔王軍の悪魔の目玉にストーカーされまくっていたゼノンは察していた。 

 ならばこそ下手な追撃はありえない。

 

「(アイズにご執心らしい怪人も片腕を落とした上で死神の笛の呪曲で身体は麻痺している。アレが動けないなら致命的な事態にはならないだろ)」

 

「いなくなってしまったか。

 仕方ない、またの機会にするとしよう」

 

 あとは落とし穴や隔壁による部隊の分断が懸念だなと思考しながらゼノンは闇に溶けるように透明化呪文レムオルで姿を消す。

 

「(そういえばキルバーンムーブの時にあのフィルヴィスとかいうエルフも反応していたな。少し調べておくか)」

 

 レフィーヤ・ウィリディスはともかく、ロキとフィンは別ファミリアの団長である彼女を警戒していた。この両者が疑い、さらに別の気になる点があればナニカあるのは間違いないだろう。

 

 

 キルバーンに扮したゼノンの参戦。

 これは大きく本来の流れを変えることになる。

『神』の一柱かもしれない存在の介入は、後ろで糸を引く死の神タナトスと人造迷宮の継承者バルカ、そして都市の破壊者エニュオの動きを、たとえロキ・ファミリアを討つ好機であろうとも止めるには充分すぎる理由となった。

 神殺しのリスクに闇派閥構成員、さらには間借りしているイケロス・ファミリアのディックスが引き下がったのもある。

 万が一神殺しをした際に天に昇る送還の光が人造迷宮を破壊してしまう懸念もある。

 またゼノンによりフレイヤ?アレただの病んだ小娘じゃんと敵対意識の無くなったイシュタルがスポンサーの立場であるが『天の雄牛』を注文しなかったのもある。

 残る戦力である暗殺者と毒妖蛆などのモンスターでは嫌がらせにはなるが無駄な浪費となる、そう判断した。

 

「とりあえずあの『死神』がクノッソスから出てくのを確認しない限りは下手な襲撃はできないね」

 

 闇派閥の残党を取りまとめる死の神タナトスの命によりロキ・ファミリアは罠にこそ嵌めるが殲滅よりも追い出す流れることに決まった。

 

「生きるべきではない命を狩る、か。

 どこのヤツなのかねえ」

 

 あるいは神の使いの類か。

 死する者を迎えにいく存在はあらゆる神話に存在し、死者の魂を裁く神とている。

『死』への認識は神話によって異なるのだ。

 

「ま、追い出して扉を閉じれば侵入できないだろうし。ロキ・ファミリアは次回だね」

 

 次はあのキルバーンとやらは来ないと良いけど、タナトスはそう諦めたように呟くのであった。

 

 

 ロキ・ファミリアによる闇派閥の拠点進攻。

 その作戦は失敗に終わる。

 ロキ・ファミリアは人造迷宮クノッソスの脅威を目の当たりにし逃げ帰るように撤退せざるえなかった。

 仮にあの時に団長であるフィン・ディムナが怪人レヴィスに討たれていたら全滅すらありえたことだろう。

 別働隊であるガレス達も苦戦を強いられた、幹部陣が多い編成ではあったが隔壁による部隊の分断からのモンスターの強襲はそれだけで壊滅しかねない。

 強固なる外壁を破壊する手段、扉を開く鍵の入手。それが得られなければ再進攻はすべきではない。それがロキ・ファミリアの下した判断だ。

 そして、

『死神キルバーン』なる謎の存在。

 とりあえずゼノンに説明してもらおうとフィンが心に決める中、団員達は未知の実力者に恐れをいだくのであった。

 失った者はいないが、得たものも情報のみ。

 まだマシな終わりにロキとフィンはホッと息をついた。

 

 

 なおその後、とある狼人が自身の無力感から団員達と揉めてしまう騒動が発生し、主神と三首領は胃を痛めることになる。

 誰も失わなかったが、次は絶対に二軍と後衛は連れて行きたくない。

 フィン・ディムナをレヴィスに殺されかけたことを実感しているだけに、ベート・ローガはやらかしてしまうのであった。

 

 

「俺を強くしてくれ」

 

 ベート・ローガがゼノンに弟子入りを志願し、ゼノンがベート・ローガにスペシャルハードコースゼノンエディションを実行するのはこれから少し後になる。

 

 

 





 補足・説明。
  
 クノッソス編終了です。
 とりあえず、
 リーネファンの皆様すいませんでした!!
 彼女の輝くイベントはキルバーンコスプレにより消滅してしまいました。
 神かもしれないヤツの参戦、それだけで闇派閥は動けませんでした。
 また初手レヴィス撃退も大きいです。
 ガレス側もレヴィス強襲が割と決定打だったみたいですし。
 正直あまり納得できない締めでしたが、これ以上は続きが書けなくなりそうでしたので。
 はやく異端児編をやりたいですし。

 そしてベート・ローガ君はつい言いすぎてしまいました。彼ならばやらかしそうなんですよね。

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