ダンジョンにダイの代わりに爆死した兄弟子がいるのは間違っているだろうか(なおヒュンケルでもポップでもない)   作:規律式足

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 ソード・オラトリア8巻開始です。
 リーネを含めた原作ロキ・ファミリア死亡者は生きていますがやはり重傷にはなりました。
 これはキルバーン(ゼノン)の手が回らなかったからですね。  
 ゼノンはあらかた脱出したのを確認した後にこっそりリレミトで離脱して大急ぎでホームへ帰還ました。
 タナトス達は現在人造迷宮で必死にいなくなったキルバーンの捜索中です(放送で呼びかけたりもしている)。
 あと歓楽街は燃えてません。

 


第98話

 

「だから言ったんだ、実力のねえ雑魚が戦場にでてくんじゃねえ。二度と巣穴から出てくんな」

  

 その暴言はまるで懇願のように聞こえた。

 

 

 ロキ・ファミリアによる人造迷宮進攻をキルバーンに変装して援護した俺はタイミングを見計らってリレミトで離脱した。

 一応はシャドーを複数匹残して置いたので死者はでないだろうと楽観はしたのだが怪しげな短剣を振るう闇派閥の暗殺者とモンスターにより二軍と後衛に負傷者がでてしまった。

 毒と呪い、負傷に合わせてその二つの異常状態になった団員達のため団長であるフィンはディアンケヒト・ファミリアの聖女と(大急ぎでホームへ帰って着替えてシャワーを浴びた)俺を頼った。

 ディアンケヒト・ファミリアの聖女と自前の治療のみでなんとかはなったのだろうが、かつてダンジョンでキアリーの効果を見たからだろう。

 そんなわけで何食わぬ顔で頼まれた治療をこなしていたのだが、傷つき毒で変色し呪いで癒えぬ身体を石の床に布を敷いただけの簡易な治癒場で横たわる者達へ『凶狼』ベート・ローガはくだらなそうに、感情を殺して、その琥珀色の双眼を凍らせながら嘲弄と冷笑を向ける。いや手伝えよお前。

 狼人による傷ついた者達への蔑みの言葉に、二軍筆頭格のラウルとアナキティが仇のように睨みつけ、多くの団員達も涙を流しながら眉間を怒りに歪めた。

 

(不器用なこって)

 

 その言葉の意図がうっすらわかってしまうのはアバン先生による教育の賜物なのか、戦場を長く渡り歩いた経験からなのか。

 そして理解したのは俺だけではない。

 負傷者として倒れていた治療師の少女リーネもベートの想いを恋心ゆえに察していた。むしろ彼女は慌てふためくアイズの姿のほうに驚いたくらいだ。

 

「ゼノンさん・・・・・・」

 

 アイズは助けを求めるように傷つく仲間と暴言を吐いたベートを見てからこちらへ声をかけた。

 

「大丈夫だ」

 

 だから俺はその頭をクシャクシャと撫でてやった。ロキ・ファミリアは誰も死なないし、ベートの暴言も俺やリーネ以外でもロキとフィン達三首領は理解しているだろう。

 人造迷宮攻略にしたって次はもっと上手くやり、犠牲者などでない。

 心配はない。

 そう元気つけるように治療する傍らに相手でアイズを撫でてやったんだ。

 何も問題はない。

 その時はそう思っていた。

 

 数日後ホームで仲間達と揉めて追い出されたベート・ローガが俺に弟子入りを志願してくるまでは。

 ・・・・・・どうやらロキ・ファミリアは予想以上に素直な連中の集まりで感情の裏を読むのが苦手らしい。ベート・ローガのわかりやすい本音を見抜けないなら、鉄面皮なヒュンケルやラーハルト相手では会話すらできず、人当たりの良い勇者を装っていた昔の俺にあっさりと騙されたのではないかと思った。

 

(部下としては優秀で使いやすいんだろうなあ)

 

 指揮する側としてありがたい集団だろう。

 しかし今後を、次代として考えるには頼りなくも思うが。

 

(三首領共は後継についてどう考えているのやら)

 

 ロキ・ファミリア創立メンバーの3人。彼らはもう結構な年である。如何に神の恩恵で老化しにくいとはいえ現役を退いてもおかしくない年齢だろう。

 部外者の俺が考えることではないか。

 

「俺を強くしてくれ!!」

 

 ヘスティア・ファミリアホームの俺の作業場の床に頭をこすりつけるように下げるベート・ローガを見ながら俺はそんなことを考えていた。

 

「別に構わないが」

 

 闇派閥は現在人造迷宮から動く様子はない。

 消えたキルバーンを見つけるために人造迷宮内を構成員総出で大捜索しているからだ。

 ロキ・ファミリアも仲間の治療と情報整理にこれからの準備で忙しい。

 ヘスティア・ファミリアも新たな団員を加えたパーティの調整の為に上層で慣らしを行っていていない。

 なら一週間程度は時間を取れるだろう。

 

「・・・・・・・・・いいのか?」

 

 顔を上げたベートは自分から頼んできたにも関わらず信じられないような表情で俺を見る。

 

「お前は昔の俺と違って大切なことを理解しているからな」

 

 アバン流を体得する上で一番大切な想い。

 誰かの為に力を振るえること。

 それをベート・ローガは持ち合わせている。

 ならば教えることに問題はない。

 きっとアバン先生もそう言ってくれるだろう。

 それに人造迷宮では俺一人では手が足りなかった、ベート・ローガを鍛えればその問題は解決できるだろう。ちょろまかしたオリハルコンで親衛騎団モドキでも拵えようか悩んでいたが魂を分割する禁呪法は少しばかり怖いので使わずに越したことはない。

 

「・・・・・・感謝する」

 

「報酬は貰うぞ」

 

 アバン先生もダイに対して家庭教師として請求したらしいからな(ローンでも可)。

 

「ああ、構わねえ」

 

 さて、じゃあ準備といくか。

 

 

 

「・・・・・・・・・というわけで一週間ほどベート・ローガを鍛える予定だ」

 

 ロキ・ファミリアホーム、団長執務室。

 もはや顔パスな程に馴染んだロキ・ファミリアの本拠地を訪れフィンへと説明をする。

 人造迷宮の件に加えベートと仲間内での諍いの件で頭を抱えていたフィンはさらに胃まで押さえだしていた。

 

「君にはキルバーンのこととか聞きたかったんだけどねぇ」

 

 アレはお前だろとジト目になりながら問い詰めるフィンを口笛を吹きながら誤魔化す。

 たとえモロバレだろうと明言し確定させなければ問題ないのだ。

 

「いやね、ベートをしばらく面倒みてくれることは助かるよ?僕の立場ではベートを擁護してしまえば派閥内で分裂が起きてしまうからさ」

 

「本音でぶつかれば良いだろ。喧嘩でもしてよ」

 

 家族なんだろ?と訊ねれば、フィンはそう簡単じゃないよと首を振るう。

 ファミリアは家族と銘打っていても団員達は決して対等な間柄などではないらしい。

 レベルが高く、実際に強いベート・ローガに反感を抱いても物申すことができる存在はロキ・ファミリア内でもあまりいないそうだ。

 だが今回の件は流石にそうも言ってられずに、ラウルを筆頭になんでそんなことを言うのだと揉めてるのだとか。

 

「言われたリーネ本人が庇っているのだけど、それでも納得はできないみたいでね」

 

「大派閥は大変だな」

 

 超実力主義であるがゆえに弱者はひっこめというベート。弱いからというだけで否定されることが許せないラウル達。

 団長としてはどちらを肯定すべきなのやら。

 もっとも一番拗れてる原因がベート・ローガが自身の本心を語らず、弱者批判ばかり目立っているからなのだが。

 

「ま、そんなベート自身も強くなりたいと俺のトコに頭を下げにきたんだ。

 せいぜい真剣に鍛えてやるとするよ」

 

「意外だね。あんな言動をするベートを君が鍛えてくれるなんて」

 

 君はラウル達と同じ意見だと思っていたよとフィンは続ける。

 

「ベートの言動も強くなろうとするのも自分ではなく誰かの為だ。それなら鍛えてやることに否はねえよ」

 

「・・・・・・短い付き合いでよくわかるね」

 

「本当に他者を見下すクズはわざわざあんなことは言わねえよ。

 一昔前の俺なんざ人前では悲しげに傷ついた連中を心配して内心で『俺の活躍を彩る犠牲になってくれてありがとう』と嘲笑ってたろうよ」

 

「たびたび言うけど、一昔前の君って本当にゲスだったんだね」

 

「大魔王軍に勧誘されるくらいにな」 

 

 そんな考えもダイ達と関わるうちにいつの間にかしなくなっていたわけだが。

 

「それじゃあベートの件は了承したよ。ただ君がベートを鍛えるとなるとアイズ達が騒ぎそうだからそこだけは気をつけてほしい」

 

「オラリオ外でやるから大丈夫だ」

 

「高レベル冒険者がオラリオ外にでるのは手続きがいるんだけどね!?」

 

 んなこたしらん。

 

「あとロキにベートの恩恵が消えたりしかけると思うが気にしないでくれと伝えてくれ」

 

「殺しかけるのが前提なのかいっ!?」

 

 それぐらいしないと短期間では強くならん。

 

「・・・・・・わかった、伝えておく。

 ああそうだ、ベートの件ではなくクノッソスについてだけど、神イシュタルはクノッソスの鍵を所有していたりするかな?」

 

 ベートの修行予定に納得したフィンはファミリアが直面している問題について訊ねてくる。

 歓楽街の為に闇派閥のスポンサーをしているイシュタルならば自身らが欲するモノを持っているのではないかと思ったのだろう。

 

「そこに関しては詳しくはしらん。

 ただギルド側と闇派閥側のどちらが勝つかわからんから組んでるようだし、今回のお前らの敗北で協力するかわからねえぞ?」

 

「交渉で得るのは難しいか」

 

 ギルド側が勝つという明確な根拠か、闇派閥に反感を抱かない限りは闇派閥寄りな中立を維持するのは間違いないだろう。

 

「・・・・・・ギルドが歓楽街の利益に目をつけるからこんなことに」

 

 頭を抱えるフィン。

 イシュタル・ファミリアが闇派閥に加担しだしたのはフレイヤに反感を抱いているからだけではなく、ギルドからの圧力もあるからだしな。

 暗黒期にはギルドに協力して戦ったらしいのだが。

 

「話は此処までだな。  

 そんじゃまたな」

 

「ああ、ベートを頼んだよ」

 

 そうして俺はフィンの執務室を後にするのであった。

 さあて、どうやって鍛えるとするか。

 

 





 補足・説明。

 ソード・オラトリア8巻開始です。
 原作では半ば追い出されるベート・ローガですがこの作品では一週間ほど修行パートを挟みます。
 闇派閥の動きもどっかのキルバーンのせいで無駄に時間をくっています。

 ゼノンはナチュラルクズ。
 一昔前は犠牲者に対して自分の名声の糧程度にしか思ってませんでした。
 ただアバン(偽装)とホルキンスとバランとハドラーの死やポップのメガンテを見て考えが改まったようです。
 だからこそ最初からベートを面倒くさいお人好しだと認識していました。本当に見下すヤツはかつての自分みたいなヤツだからですね。

 ベート・ローガの修行。  
 とりあえず恩恵がカラータイマーのように点滅するくらいには死にかける予定です。
 ベホマあるからでえじょうぶだ。

 クノッソスの鍵。  
 イシュタルは持っていますが、闇派閥との同盟の証なので手放す時は闇派閥を切る時です。
 なおゼノンはアバカムを秘密にしています。

 
 
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