ダンジョンにダイの代わりに爆死した兄弟子がいるのは間違っているだろうか(なおヒュンケルでもポップでもない) 作:規律式足
ダイの大冒険1話〜(でろりん編)を読んだ皆さんの反応。
(共通)知恵ある魔物に育てられた少年というくだりで知恵ある魔物の時点で顔を顰めたが、ダイの境遇に同情しブラスの善意に感服。その後のドタバタ活劇には笑ったりゴメちゃんとの友情に感動。
ベル、リリルカ、アイズ、ティオナ、ガレスは共通とほぼ同じ。アイズはまだ納得しきれない程度。
フィン→下手な冒険者より強いのに小悪党なでろりんパーティに呆れる。勿体ないと思いつつも名声を得る手段としては納得(死者もいない為)。
リヴェリア→ロモス王の騙されやすさに呆れるも、善良さとダイを勇者と認める度量に感心(王城めっちゃ壊されてるし)。
フレイヤ・ファミリア→この辺りでは聞きはしたが興味なし。白エルフが呪文に反応した程度。
ロキ・ファミリアによる闇派閥拠点クノッソス攻略にて自身の弱さを痛感したロキ・ファミリア幹部レベル6冒険者である『凶狼』ベート・ローガが「強くしてくれ」と懇願しにきてから翌日。
ロキ・ファミリア団長である『勇者』フィン・ディムナに許可を得て、さらに食料含めた必要なモノを用意した俺は自身の拠点であるヘスティア・ファミリア本拠地に居た。
「・・・・・・暫く留守にします、夕飯は温め直して食べてください、と」
「母親かよ」
ベル達はダンジョン、ヘスティアはバイト、バーチェは孤児院。それぞれやる事の為誰もいなくなった(俺が拵えたモンスターは居る、雇ったメイドは午前中のみ)竈火の館の台所で夕飯(本日はシチュー)の支度を済ませる。
そんな自身の思い描く強者らしからぬ姿(エプロンと三角巾着用)にベート・ローガはなんとも言えぬ表情を浮かべるがそう言えばコイツは料理人だったわと思い直す。
「さて行くか」
シュッと三角巾を取りながら中庭へと向かう。これからする予定の指導をする為には少しばかり遠出をしないといけないからだ。
「修行はどこでやんだ?この元アポロン・ファミリアの本拠地も身体を動かす場所はあるがロキ・ファミリア本拠地ほどじゃねえぞ。ダンジョンにでも潜るのか?」
俺の後ろについてくるベートがそう疑問を口にする。修行と言えば本拠地かダンジョンの二択が基本だ。しかし俺はそのどちらにもする気がない。
「ホームは不便だし、ダンジョンはモンスターが出現するのは便利だが色々な目があるから行かねえよ」
ダンジョンに籠もって修行、それも一瞬は考えた。だがダンジョン自身が生きていること、闇派閥を含めた冒険者達の目があること、他のまだ知らぬ第三者に目撃される可能性があること、出入りをギルドに把握されること、ルーラで移動ができないこと、などから却下した。また俺がダンジョンを中層までしか潜ったことがないので修行に適した場所を知らないという理由もある。
「モンスターを狩らねえとステイタスが上がらねえぞ」
そう冒険者の常識を語るベート。
神の恩恵を授かった冒険者にとって『強さ』とはステイタスとスキルとレベル。
これらの高さと有能さが強さとなる。
ゆえにそれらを上げる為に冒険者はダンジョンへと潜りモンスターを狩る。
だが『強さ』とはそれだけではない。
このオラリオではフレイヤ・ファミリア団長『猛者』オッタルしか至っていない思考と境地だが、修練を重ね積み上げた技量もまた『強さ』なのだ。
そして俺は神の恩恵によるステイタスでかつての世界で魔界の魔物程度の身体能力のあるベート・ローガにはその技量こそが必要だと判断した。
「これからお前に叩き込むのは勇者が創り出した人の技の極みだ。ステイタスにも反映されるかもしれないが、体得できれば有用だよ」
「アバン流、ってヤツか」
バーチェに渡した記憶を頼りに描いた物語『ダイの大冒険』、その物語をベートもティオナ経由で知っているようだ。
「一週間で勇者に成れるスペシャルハードコース、といきたいところだがお前に呪文適正があるかわからんし、別に勇者を目指してないだろうからアバン流牙殺法習得が目標だな」
一応ではあるが呪文もベート向きのヤツを考えて見繕ってはいるが見るからに武闘家タイプだしなコイツ。ブロキーナ師やマァムの例があるからホイミやキアリーなら契約できる可能性もなくはないが。
「そいつは楽しみだな」
好戦的にニヤリと笑うベート。
まだ序盤も序盤だがアバン流の有用さは明白だからだろう。特にあのクノッソス攻略を考えればオリハルコンの防壁はともかくガレス・ランドロックのようにアダマンタイトの壁を砕けるように成りたいのだろう。
「じゃ、今から移動するが修行にあたって注意を一つしておく」
「注意?」
「俺がする事できる事に一々ツッコむな」
「? わかった」
意味がわからず首を傾げるベートだがとりあえず頷きはした。
だって毎度説明するのは面倒くさいのだから(ツッコまれ説明を求められることをやる自覚はある)。
「さてと、先ずは透明化呪文レムオル」
「・・・・・・オイ」
「そして瞬間移動呪文ルーラっ!!」
「ちょっと待てコラああああ!!」
自身を中心としてベートと用意した荷物をまとめて光の球体で包むようにイメージ。そうすることで触れていなくても移動できる寸法だ。
透明化呪文レムオルは念の為。
ルーラ移動時は光る球体に見える為目立ってしまうのが難点なので、レムオルをかければ目撃されてもバレないだろう(勘の鋭い存在なら違和感ぐらいは察知しそうだが)。
修行は都市外にて行う。
しかし高位冒険者の都市外への出入りはギルドの許可が必要で手続きが面倒なので(フレイヤ・ファミリアは普通にシカトしてるらしいが)門を使わずにルーラで移動する。
見たことも経験したこともない移動手段にベートが叫びを上げる中、俺は数秒ほどの浮遊感を堪能する。
「ついた」
場所は変わり、とある山。
俺がウサギなどの肉を狩る為に利用している手製の山小屋だ。
そういえばアバン先生はルーラ移動後の着地が下手だったなと思い出しながら俺はスタリと足をつく。
「な、ん、だ、今の魔法」
しかし初めてのルーラに驚き叫んだベートは内臓がひっくり返るような衝撃を感じたのかゼイゼイと息を吐く。
「ツッコむなと言ったろうに、まあいい。
瞬間移動呪文ルーラ。
上部に遮蔽物があると頭をぶつけてしまうが、かなり便利な呪文だよ」
だからダンジョンでは使えない。
基本的に目的地にまっすぐに突き進むので天井を避けたり迂回したりという融通が効かない呪文なのだ(そこまでくるとルーラではなくトベルーラ)。
「これは、俺も使えるようになるのか?」
荒く息を吐く中で縋り付くような眼差しをしながらベートは訊ねてくる。
フィンから聞かされたベート・ローガの過去。それは自身の手が届かなかったがゆえの悲劇。
早く大切な人の元へ駆けつけることができればもしかしたら救えたのではないか?そんな想いが透けて見えていた。
「呪文契約すればあるいは、だな。
だがルーラに関しては契約できても使えるヤツはすくねえぞ」
ルーラは便利な呪文だ。
だが使い手はごく僅か。
それはルーラが契約したらとりあえず使えるメラなどの呪文とは違い難易度が高いからだ。
あの魔法使いとしてのセンスが高いポップですらマトリフ師による訓練(岩を足にくくりつけて湖に沈めたり、他国に放置)でようやく使えるようになったのだ。
そこまでの難易度だからこそ便利であるにも関わらずルーラの使い手は希少なのだ。
またルーラは思い描いた『場所』に移動する呪文であって『個人』の元へ駆けつける呪文ではない。
個人の元に移動する呪文は合流呪文リリルーラの方である(魔力やルラムーン草粉末などのマーキングの必要あり)。
「・・・・・・そうかよ」
その返事にベートは残念そうに顔を伏せた。
ベートにルーラを教える予定はない。ぶっちゃけ仮に契約出来たとしても一週間で使いこなすのは不可能な呪文だからだ。
「切り替えて修行を開始すんぞ」
荷物を適当に山小屋へとぶちこみ、小屋の前の整地された草の生えてない場所へと移動する。
丸太を切っただけの簡易な椅子に座るよう促し、かつてアバン先生にしてもらったように用意してあるプレートに字を描く。
「先ずは説明からだな」
「座学かよ」
げんなりとしたベートの反応。ロキ・ファミリアは冒険者にしては珍しく座学にも力をいれている(主にリヴェリアの影響で)。ダンジョン攻略における知識や魔物の生態などの貴重で有り難い知識なのだが身体を動かすことが第一な冒険者には向いてなく敬遠されている(教師役がスパルタすぎるせいもあるとか)。
ゆえにノリで眼鏡(伊達)をかけた俺の仕草に露骨に嫌そうな顔となる。
「無意識に放つより意識して打つ方が力の入り方が違うんだよ。
極端な例だが、必殺技なんてもんは偶々発動した会心の一撃を意図的に打てるようになったもんだしな」
「ああ〜」
その説明に理解を示すベート。
実戦経験から偶にでる強い威力の一撃に思い当たる節があるのだろう。
「技の型にしてもどうしてそうするのか理屈を知った方が覚えやすい。とりあえず頭に入れとけ」
これはアバン先生が学者の一族だからこそできたのだろう。
完全に感覚のみで伝える流派も無くはないのだから。
「今回この限られた期間でお前に叩き込むのは、俺が師である勇者アバンに伝授されたアバン流。
これは刃を用いた武具、剣、槍、斧、弓、鎖、牙の六種に地、海、空と分けた物質破壊の理論を当てはめた武術だ」
「物質破壊か。なんとなく何を指しているかはわかるが、鎖はともかく牙はなんだ?噛みつくのかよ」
高位冒険者だけあって理解力のあるベートの当然の疑問。そこで俺はゴソゴソと用意してあった握り手の両端に鋭利な石のついた武器『石の牙』を取り出す。
「牙殺法は自身の歯で噛みつく殺法ではなく、こういった刃のついた拳武器の殺法だな。短剣よりリーチの短い近接武器が分類される、篭手に刃のついたジャマダハルみたいなドラゴンキラーや爪武器なんかも牙殺法だ」
アバン流は全てを切り裂く斬撃の武法。
威力・間合いによって武具は分けられるのだ。
「・・・・・・俺に教えるのはその牙殺法ってことか」
「そうだ。出来れば脚による蹴撃の類を教えてやりたいがアバン流に足技はねえ。なら拳打の延長である牙殺法を教えようと思う」
「ハッ、ベルやダイとかいう十二のガキも体得したんだ。すぐに身に付けてやるよ」
「(コイツは適正高めだが、その二人は習得速度がおかしいなんて次元じゃないからあまり比べない方が良いんだがな)」
俺もアバン先生曰く異常な速度で体得したが、ベルとダイはそれに劣らない。
事前知識により比べてしまうのが分かるが、あまり意識しないほうが良い。
「んじゃ、先ずは固体破壊の極みである『地』の技。アバン流牙殺法『地砕拳』からだ」
かつて勇者アバンが拳聖ブロキーナによる指での薪割りから着想を得た、物質の硬度、筋力の総量に依らない破壊技。
小さな勇者ダイが1日で会得したその技をなんとか教えないといけない。
だから、
「アバン流牙殺法『地砕拳』」
「ぐはぁっ!! テ、テメェ」
さっくりと座学を済ませたらとりあえず本人の身体に叩き込む。
「からの〜ホイミ」
そして治す。
「ベート・ローガ。レベル六というオラリオでも数少ない高位冒険者であるお前がダイのように力を使い果たすのは至難。
またここまで鍛えて強くなったお前は己自身の戦闘スタイルが確立されてしまっている」
ここら辺が教える側として面倒くさい所だ。ベルやダイは何も身につけていない分覚えやすかったのだから。
「そしてお前には技を扱えるだけの基礎能力は充分にある。というか、長い実戦経験の中で『地』の技に近い威力を放てたこともあるだろう」
「カ、ハァ」
「それを毎回狙って打てるように、型を教えた後はひたすら岩を砕かせる。
そして出来ない回数が一定数に達したら俺がお前に手本として『地砕拳』を叩き込む」
「鬼か、テメェ」
既に治りはしたが痛みの残る腹部を押さえるベート。しかし実力者に新たな技を短期間で教えるにはコレしか手段はない。
オッタルは積み重ねた基礎が段違いだから理論を伝えるだけで『地』と『海』の技は使えるようになるかもしれないが、ベート・ローガは基礎技術ではなくステイタス向上に力を入れてしまっていた。
「近くに岩石地帯がある、続きはそこでやる。かなり無茶を強いるが心折れるなよ」
「・・・・・・上等だ」
挑発のような俺の物言いに狼人は苦しげながらもニヤリと笑った。
修行開始から二日間。
篭手や石の牙を装備し数え切れないほど岩を砕き、数え切れないほど俺に技を叩き込まれホイミで治され、ベート・ローガは『地』の技を体得するのであった。
その頃のロキ・ファミリア。
「ベートサンドコ?ドコ?」
「言い過ぎたっスかねえ」
「気にするタマじゃないでしょ」
想い人を探し求めハイライトを無くした眼差しで徘徊する治癒士の少女と、
「のわあああっ!!またやっ!!またベートの恩恵が消えかかって、戻った。
何をしとんねんゼノンのヤツ(げっそり)」
恩恵の喪失の有無で眷属の生存を把握してしまう主神が悶え苦しんでいたとか。
補足・説明。
前書きはなんか評判の良かった『ダイの大冒険』を読んだ聞いた人達の反応です。気が向いたらまた書きます。
ベート・ローガの修行期間は一週間程度の予定で、それが済んだらソードオラトリア8巻に続けます。
修行内容ですがベート・ローガが実力者であるがゆえに痛みを伴ってしまいます。
なにせ確立された戦闘スタイルに新たな理論をぶちこみので。
修行パートはとりあえず後1話程度で纏めたいかなと思います。作者がアバン流をそこまで理解しきれてないのもありますので(笑)。
ルーラに関して思う所のあるベート・ローガ。これがあればと彼ならば思うでしょう。