1階層〜森林〜
とあるゲームの序盤の森。
平均的に静かなはずの森はどうやら今日は騒がしいようだった。
「無理無理無理ぃぃ!!死ぬ死ぬ死ぬぅぅぅ!!」
彼は不知火 虎麗(しらぬい くれい)。21歳。
ど平凡な大学生活を送る一般人である。
そんな彼は悲鳴をけたたましく上げながら
追いかける黒い大盾から逃げていた。
「大丈夫だよ〜!ちょっとヒリっとするぐらいだよ!だから止まってよ〜!」
本条 楓。
本ゲームのダークホースにして制御不能な少女。
虎麗とは幼い頃からのご近所付き合い。
逃げ惑う彼に向けて満面の笑みを浮かべながら
その裏、腹の底では捕まえたあとのことを考えながら
追いかけていた。
「嘘つけ!知ってんだぞ!第1回イベントでその毒竜で圧倒してただろうが!俺は耐性も無ければ防御に振ってもないの!」
「元はと言えば私との約束を忘れたお兄ちゃんが悪いんだよ!大人しくお縄につけ〜!」
「へっ、メイプルの遅さで捕まるかよ!じゃあなっ!」
「うぅっ、逃がさないよっ!【毒竜】!」
彼にとっては【AGI】が低い彼女から逃げることは容易い。
しかし厄介なのはそのスキルである。
もう少しで撒けそうな時、
彼女が発動したスキル【毒竜】は彼を飲み込まんとする勢いで
襲いかかっていった。
「えっ?ちょっ!うぎゃァァァァ!!!」
このお話しは
不知火 虎麗が
そんな少女たちとの甘酸っぱい青春を
ゲームを通して彩っていく物語。
「そんな訳ないだろおおおお!!!!」
では無いようである。
〜不知火宅〜
「New World Online?」
「そうだよ!理沙に勧められて私も始めたんだけど結構楽しいんだよ!お兄ちゃんもやろうよー。」
「調べてみっからちょっと待ちなぁ。」
日も傾き始めたこの日。
虎麗は何故か帰ったら自分の布団で寝ていた彼女を叩き起して
布団にいたいとごねる彼女を膝枕しながら雑談にふけっていた。
「えっへへ〜♪お兄ちゃんの膝枕最高〜……。」
「寝るなよ。」
「寝ないよぉ………………zzz……。」
「寝ようとしてんじゃねぇか!おい起きろって!」
「むぅ〜、ちょっとくらいいいじゃん……。」
「寝た楓を連れて帰るのがめんどくさい。」
「ひどーい!」
「でも、なんだかんだ送ってくれるんだよね。お兄ちゃん。」
「やなこった、ていうかどうやって俺の家に……え?」
「やっほお兄ちゃん。」
「あっ、理沙!」
「どっから入ってきやがったぁ!!」
「会いたかったよお兄ちゃん!!」ガバッ
「ぐはっ!」
いつの間にか部屋の入口に立っていたもう1人の少女。
白峯 理沙。
彼女も虎麗のご近所にて
楓と同じ虎麗に恋する少女であった。
「あっ、理沙ずるい!私も〜!!」
「すーっ、はあぁ♡お兄ちゃんの匂いだぁ、あぁ、落ち着く……。」
「首、首締まってますお嬢様ァ…。」
「ん〜?気のせいじゃな〜い?」
「り〜さ〜!変わってぇ〜!」
「嫌だ」
「わっ、すごい真顔。」
膝枕していた彼の上半身にダイブするように飛びついた彼女は
勢いのまま押し倒し、首元に顔を埋めて彼自身を堪能し始めた。
その際に抱きつく力が強かったのか
首へと回した腕が彼の喉を締めていた。
「変わってじゃねぇ!離れろりぃ〜さぁ〜!」グググ
「やぁだぁ!!このままくっついてよぉよ〜!」
「むぅ、お兄ちゃんまた私に構ってくれてない……。こうなったら……。」
「お、おい楓?何考えてるのか知らないが変なこと考えてんなよ?」
「背中ぁぁ!!」ギュッ
「あっ!楓!今は私が独り占めしてるんだから後にしてよ!」
「(楓って童顔だし発育はぼちぼちなのに実際体が触れるとあるにはあるんだよな…)」
「はぁ、お兄ちゃんの背中〜♡」スリスリ
「…………。」ギュッ
「いだだだだ!!理沙!?急に耳つねるなよ!いでででで!」
「今、変なこと考えたでしょ。」
「スーッ、なんのこっ、いっで!!」
「お兄ちゃんの嘘なんかバレバレだから。」
「ごめんってば!悪かったよ!」
「zzz……。」
「寝るなぁ!」
「はぁ、はぁ、そ、それでなんだっけ、NWO?」
なんとか2人を剥がした彼は
話しを戻して本題に入ろうとしていた。
「そっ、私はまだお母さんから許可が降りてないから出来てないんだけどね。」
「どうせ勉強絡みだろ。」
「次はお腹でもつねるかな?」
「マジすんませんでした。調子乗りました。」土下座
「面白いんだよ!お兄ちゃんもやろうよ〜。」
「ん〜、そうだな、最近積みゲーもだいぶ吐かしたしなぁ。やってるかぁ。」
「やったぁ!じゃあ始めたら教えて!一緒にレベル上げしよ!約束だよ!」
「ほいほい。楓も最近始めたのか?」
「そうだよ!」
「楓のことだからいつもの天然でなにかしてそうだよねぇ。」
「違いねぇ。」
「それどうゆう意味かなぁ!」
「ところでどうやって侵入しやがったんだお嬢さん方。」
「えへへ、お嫁さんだなんて///」
「聞き間違いにも程があんだろ。」
「どうやってってお義父さんが快く入れてくれたけど?」
「親父ぃぃ!!ちょっと喧嘩しようかぁぁ!!」
「えっと、設定はこんなもんか。うし、やるか。」
商品到着後、何かと準備を終えた彼は
いよいよゲームを開始しようとしていた。
「………おっ、これがNWOか。いいねぇ、新作を始めるこのワクワク艦これたまんないよなぁ。」
「えっと?まずは初期ステの設定か。」
「名前は……虎麗だから………。レクス、とか?うん、なんかカッコイイかも…。」
まず起動して眼前に飛び込んできたのは
空色の設定空間。
開かれた自身のステータス画面をいじりながら思考を巡らせる。
「ん〜、俺はタンクとかスナイパーとかに向いてないんだよなぁ。どのゲームやってもサポートより前線に回されるしなぁ。」
そう、彼はいわゆる【脳筋】と言われるタイプの人間らしい。
本人が自覚していないのでなおのことタチが悪い。
「んじゃあ、【STR】と【AGI】に振ってっと。その他は……いっか!対比は7:3くらいで…、よしっ、OK!」
「……初期装備かぁ。なんでもあるんだ。ん〜。でも俺が使いたいのはないかなぁ。ゆくゆくは作れたりすんのかなぁ。」
「じゃあ取り柄えず、ハンマーで!」
一頻り設定を終えた彼は光に包まれ転送中学始まり
目をつぶった。
……転送中……
「……ん、おわ!すげぇ!!」
「マジに異世界って感じだ!!テンション上がる〜!!」
ゲーム内とは思えない爽快感。
序盤の街。1階層。
どこまでも広がっていそうな青い空。
材質までくっきりと主張する石畳の地面。
全てが本物のようなクオリティ。
「さて、まずは何からしたらいいのかな。」
ところでこの虎麗、もといレクスは
約束をした楓をほっぽいてゲームを始めやがったのだ。
「このナレーター敵なんかな。味方なんかな。」
敵です。
「クソが。」
「ん〜、とりあえずレベリングだよな。んなわけで森にやって来ました。」
1階層、森林。
生い茂る草木はまるで生きているかのように風に揺られている。
時折通過するモンスター達を横目に手頃な敵を探す。
すると蜂の音のような音が聞こえ振り返る。
「フォレストクインビー、か。いいね!いざ尋常に!」
レクスの顔面目掛けて飛んでくるフォレストクインビー。
序盤ということもありそこまで早くないので
突っ込んでくるのに合わせてハンマーを振り上げる。
「よぃしょおおおお!!!」ドスン!!
体ごとハンマーに叩かれたフォレストクインビーは
光の結晶体となって消えていった。
ピコン!
「おっ、レベル2になった!よしっ、頑張るぞぉ!!」
好評もしくはモチベが続けば書きますよ。