ピカピカ勇者ちゃんとドロドロパーティ   作:ブナハブ

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魔法使いちゃんは世界がお嫌い

 冒険者ギルド、そこは名前の通り冒険者が利用する、冒険者の為の施設である。

 ギルドでは依頼が張り出されてある。依頼は国が定期的に送ってくる物だったり貴族が出したりとケースは色々あるが、一番多いのは民間人からの依頼だろう。

 基本的に誰でもなる事の出来る冒険者という職業は、何でも屋という側面が強い。ギルドはどんな依頼だって法に触れない限りは受け付けるし、冒険者もやる気と報酬次第ではどんな依頼だって受ける。その為、大抵の人は一旦ギルドに依頼を出して、無理そうなら多少お高くてもその道の専門家に頼るのだ。

 

「今日はどんな依頼があるかなー、折角なら討伐系が良いなー」

「まーた浮かれてる、ほんとにもう」

 

 ルーチェがうんざりしたように言うけど気にしない。だって嬉しいんだもの! お師匠に教えて貰ったスキルも身に付いてきたし、この調子でどんどんレベル上げをするべきだとボクは思うのだ。

 

「あ、お師匠だ」

 

 そんな事を考えていると、ちょうど良くお師匠を見つけた。

 

「ちょっとみんな待ってて……おーい、お師匠ー!」

 

 ボクはオーク討伐の件を伝えるべくお師匠へ話しかけに行った。

 

「あん? って、リリアか。どうしたこんな朝から」

 

 お師匠の第一声はあからさまに不機嫌そうな物だったが、相手がボクだと知るとすぐに態度を軟化させた。

 

「うん、実は……って、あー! また朝から飲んでる!」

 

 意気揚々とオークを倒した事を報告しようとするボクだったが、お師匠がシュワシュワと泡立っている飲み物……すなわちお酒をグビグビ飲んでいるのを見てそれどころじゃ無くなった。

 

「朝はなるべく飲まないって約束したじゃんか!」

「なるべくだろ。今日は飲んで良い日なんだよ」

「飲んで良い日って……今日はお仕事ないの?」

「いんや、昼に貴族サマを護衛する予定だ。めんどくせぇよなーったく、わざわざ高い金出してまでアタシを指名するなよ」

「あるじゃんお仕事! なおさら朝からお酒飲んじゃダメでしょ!?」

「別に支障がなきゃ仕事前に飲んでもいいだろ。お前、アタシが酔っ払ってるとこ今まで見た事あるか?」

「ぐぬぬ……!」

 

 なんてだらしないお師匠なんだろうか。でも確かに、お師匠がお酒を飲みまくる所は見てても酔っ払ってる所は見た事が無いな。

 

「け、健康に悪いし」

「アタシ、生まれてこの方体調不調になった事ないぞ」

「……そんな生活だから背が伸びないんじゃ?」

「ほっとけ、別に飲んでも飲まなくてもアタシはちんちくりんのままさ」

 

 そう言いながら懲りずにまたお酒を口にする。前世なら一発で職質される絵面だ。いや、この世界でも普通にアウトだけど。

 

(うーん、我がお師匠ながら本当にだらしない)

 

 金色のツインテールに真っ赤な目、目は片方だけ眼帯で覆われており、背丈はボクより小さく容姿も相まって子どものよう。そんな見た目のこの人こそがボクのお師匠、エマさんである。

 年齢は知らないけど、多分ボクよりもずっと年上だと思う。こんな外見だけどその実力は凄い……いや、凄いなんて物じゃない。

 

 強さの頂点、一騎当千の英雄に並び立つ存在であるSランク冒険者、それがお師匠なのだ。

 

「まあいっか、けど体調には気を遣ってよね」

「へいへい」

「まったく……あ、そうだお師匠! ボクついにオークを一人で倒したんだよ!」

「ほー、そうなのか」

「うん、勝てたのはお師匠が教えてくれたスキルのお陰だよ。だから、ありがとうございます」

 

 スキルを覚えていなければ本当に勝てなかっただろう。だからこそボクは、感謝の意を伝える為に深く深く頭を下げた。

 

「……感謝される事じゃねえよ。あんな武技、そこらの冒険者でも教えられる」

 

 お師匠が言う武技とは、ボクに教えてくれたスキル、スラッシュの事だ。

 この世界では前世に存在しない特殊な力、技術がいくつか存在する。そういった事に疎い一般の人達は全部引っくるめてスキルと呼び、依頼の都合で色んな人達と交流する冒険者もまた、分かりやすいように自分達の持つ力をまとめてスキルと呼称するのだ。

 ボクの唯一のスキル、スラッシュは武技に分類される。武技の特徴としては近接職向けな物が多く、なにより努力次第で誰でも身に付けれるという有り難い仕様になっている。

 

「というかお前、アタシとグダグダ話してて良いのか? 依頼を受けに来たんじゃねえの?」

「あ、そうだった!」

 

 今日は討伐系の依頼を受けに来たんだ。腕っぷし自慢の多い冒険者にとって討伐系は人気のある依頼だ。ノロノロしてたらあっという間に無くなっちゃう!

 

「あわわわ! は、早く行かなきゃ」

 

 ボクはお師匠に軽く別れの挨拶を済ませると、急いで依頼の貼ってある掲示板へと向かった。

 

「……うん?」

 

 その道中、ボクはギルドの入り口の影から中を覗く小さな男の子を見つけた。

 

「……っ」

 

 その子は掲示板を見ているようで、既にほとんどの依頼の紙が持ち去られ、誰も居なくなった掲示板を見て悲しそうにしていた。

 

「───ねえ、君」

 

 その様子を見てボクは、すぐに向かう先を掲示板から子どもの方へと切り替えた。

 

「え?」

「さっきから掲示板を見てるけど、何かあったのかな?」

「……」

 

 話しやすいようにしゃがんで目線を合わせて尋ねるボクに、彼はポツポツと自分の事情を話した。

 

▼▼▼

 

「……」

 

 リリアが子どもへ話しかけに行ったのを見て、相変わらずのお人好しねと(ルーチェ)は思わず微笑ましくなった。

 あの子の事だ。きっとどんな依頼内容だろうと、例え受けようと思っていた討伐系じゃなくても、迷わずこの依頼を受けようと私達に言ってくるのだろう。

 

「……ルナ、ソレイユ、分かってると思うけど」

「多少危険な依頼でも何も言わない。ですよね?」

「ええ、そうよ」

 

 ソレイユの言葉に私は肯定する。それに同意するようにルナも頷く。

 

「いつも通り、ご主人様がやりたい事をやれるようにする。もし危険な奴が出ても……全部、ルナが殺す」

 

 そう言って彼女は血のように赤い瞳を滾らせる。あの子の光に惹かれた者同士、話が早くて助かる。

 

(そう、ただ守るだけじゃダメ)

 

 安全だけを考えるのなら、監禁でもして俗世から離すのが手っ取り早いだろう。だけどそれは出来ない。それはあの子の光を損なう事になるからだ。

 

(あの子の歩む道を支えて、不要な障害は全て消す。その為の私達だ)

 

 この世界は醜い。モンスターに魔族、人類の脅威は多く居るのに一番身近な敵は同じ人間なのだ。

 私利私欲の為に、我が身可愛さで他者を裏切り、蹴落とす。そんな腐った奴らがこの世界にはゴロゴロと居る。だからこそ彼女は特別なのだ。こんな苦痛に塗れた現実でも、明るく前を向いて歩き続ける事が出来る。それがどれほど貴重で、尊い事か。

 

「おーい! みんなー!」

 

 そうこうしている内にあの子が依頼の紙を持って大手を振りながらやって来る。

 

「なにリリア? 受ける依頼でも決めた?」

「うん、これなんだけど」

 

 そう言って彼女は持ってきた依頼の内容を私達に見せた。

 

……なるほど、薬草の採取ね。あの子どもの様子と採ってくる薬草を見るに、家内で厄介な病気を患った人でも居るのかしら。

 依頼自体にきな臭い感じはしないし、内容も戦いを強いられる物ではないけど、問題は場所と報酬ね。

 

「……念の為聞くけど、本当にこれを受けるのね?」

 

 採取する薬草は、この辺りじゃ危険な事で有名な洞窟にしか群生していない。ただでさえ洞窟探索は準備に手間も費用も掛かるし、例え上手く事が運んでもこの報酬じゃ赤字は必至。そりゃあ誰も受けないわ。

 

「う、うん、ダメかな?」

「……」

 

 そう、それは彼女も分かっているのだ。この依頼は受けるだけで損になる。

 

「み、みんなの足りない分の報酬はボクが出すよ! 大丈夫、こういう時の為にコツコツ貯金してるんだから」

 

 それを承知の上で彼女は受けるのだ。例え依頼を受ける事が出来なくても、きっとあの手この手と手段を変えて、親身に寄り添う事だろう。相手が出会ったばかりの赤の他人であっても、だ。

 

 断言する。彼女以外であの子どもの依頼を受けようとする者は決して現れない。私だってこの子が側に居なければ仕方ない事だと割り切り、受けようとしないだろう。

 

「バカね、そんなのこっちから願い下げよ」

「ええ、リリアさんに負担を押し付けるなんて事をすれば私達に天罰が下ります」

「ご主人様の好きにして大丈夫、ルナはご主人様のものだから」

「みんな……!」

 

 私達の言葉にリリアはみるみると表情を明るくさせる。

 

……嗚呼、やっぱり彼女は特別だ。その笑顔が、優しさが、心の強さが、全てが光に満ちている。この子の側に居るだけで、私の心は安らぎ満ちる。

 

「───お話の最中失礼します」

 

 だからこそ、彼女との時間に割って入る存在が酷く煩わしい。

 

「「「……」」」

「えっと、なんですか?」

 

 何も喋らない私達に変わり、リリアが尋ねる。

 

「ギルド長がルーチェ様をお呼びです。なので少々お時間を頂きたく」

 

 そう言ってギルド長の秘書であるその女はメガネを上げて答える。リリアの質問に答えた風だが、その目線はずっと私の方へ向けていた。

 

「らしいけど……ルーチェ、どうする?」

 

 秘書の言葉を聞いたリリアは、心配そうに私の方を見る。私のせいで彼女にそんな顔をさせるのが酷く辛く、同時に彼女の事をカケラも気にしないあの女への憎悪が湧いてきた。

 

「そんな顔しないでリリア、すぐ行って帰ってくるから」

「う、うん、本当に大丈夫? 付いて行こっか?」

「すみませんが、ギルド長がお呼びなのはルーチェ様だけですので」

 

……ああ、本当に嫌になる。コイツにも、この世界にも。

 

▼▼▼

 

(あの子、また森に行ってる)

 

 辺境の小さな村に生まれた少女、ルーチェ。今年で七つになる彼女は、同じく今年で七つとなる少女、リリアが村近くの森へ入っていくのを見た。

 

(ダメって言われてるのに、なんで行くんだろう?)

 

 森は危険だから入るなと、ルーチェは親や村の大人達から良く言われている。それはリリアも同じで、なのに彼女はこうして隙を見れば森に入っていくのだ。もっとも、ルーチェには以前から気付かれていたが。

 

(やっぱり変な子)

 

 村の中でルーチェと同い年で同性なのはリリアだけだが、だからと言って仲良くなろうとは思わなかった。彼女自身が引っ込み思案なのもあるが、なによりリリアが村では有名な変人だったからだ。

 

 リリアは時折り妙な事を言い出す。魔王って実在するのとか、自分は勇者になるんだとか。そういった言動は年月が経つにつれて増していき、今やほとんどの村人が彼女を不気味がり、近寄ろうとしない。そしてルーチェも、彼女と一緒に居る事で自分も変な目で見られるのが嫌だったから関わろうとしない。

 

「……」

 

 しかし一方で、ルーチェは年相応に好奇心旺盛だった。大人の言いつけを守って未だに踏み入った事のない森がどんな所か非常に気になるし、そこへ堂々と入っていくリリアがズルいと感じた。

 

(……連れ戻すだけだから)

 

 だからこそ彼女は、そう自分に言い聞かせてリリアの後を追うように森の中へ入って行くのであった。




【ザッッッツい勇者パーティの容姿解説】
勇者ちゃん:活発美少女、茶髪ボブ、翠眼、背は平均的、微乳
魔法使いちゃん:ツンデレ美少女、青髪ロング、碧眼、背はちょい低、美乳
戦士ちゃん:クール美少女、黒髪ショート、赤眼、背はやや低、狼風のケモ耳、貧乳
僧侶ちゃん:おっとり美少女、金髪セミロング、金眼、背は平均的、巨乳
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