ピカピカ勇者ちゃんとドロドロパーティ   作:ブナハブ

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勇者ちゃんは仲間想い

 少年の依頼を受ける事にしたボク達は、目的地である洞窟に向かうべく森の中を進んでいた。

 

「もうすぐで洞窟には着くけど、歩きっぱなしで疲れも溜まってるだろうし着いたらそこで野宿にしましょう」

 

 ルーチェの言葉に皆が頷く。ボクもそれに賛同するが、その顔は少しだけ暗くなってしまっていた。

 

「……リリア、どうしたの?」

 

 その事に気付いたらしいルーチェは、ボクの顔を心配した様子で覗き込んで尋ねた。

 

「いや、馬車なら今頃着いてたんだろうと思うと、なんだか申し訳なくなって」

 

 当初、洞窟まで馬車に乗って移動しようと考えていたのだが、それにルーチェが待ったをかけた。

 

『これ以上お金を掛けてたらいよいよ大赤字だわ。ここは時間を掛けて徒歩にするべきよ』

 

 なんともその通りな話だが、普段なら多少の出費が出ても馬車を使っていた。それなのにルーチェがあんな事を言ったのは、ボクが稼ぎにならない依頼を持ってきたからで……そう思うと無性に申し訳なくなる。

 

「……はぁー」

 

 そんな事に考えて俯いていると、ルーチェがわざとらしくため息を吐いた。

 どうしたのかと顔を上げてみれば、そこには心底呆れた表情をするルーチェが居た。

 

「バカね、そんな事で悩んでたわけ?」

「え?」

「私達に迷惑かけたとか、一々そんなので不安にならなくて良いつってんの」

「そうですよリリアさん、それにお金の事で気にする必要なんて無いのです。いざという時は私が全て出しますから」

「ご主人様、お金無くて困ってるの? だったらルナが取ってくる」

「み、みんな……!」

 

 仲間達の言葉にボクの心は軽くなる。いつだってそうだ。彼女達は強くて頼れるだけじゃない。こうしていつもボクに寄り添ってくれる。

 

「はいはい二人とも甘やかさない。ソレイユ、そんな事を軽々しく言わないでちょうだい。リリアに悪い癖が出来たらどうするの」

「リリアさんなら大丈夫ですよ。それに私も、リリアさんにその気があるなら喜んで全てを差し出します」

「だとしてもダメ。それとルナ、絶対にお金は盗って来ないで。後が面倒だから」

「むう、分かった」

「まったく……まあそういう事だから気にしないでリリア」

「うぅぅぅ〜!」

「って、な、泣いてるの?」

 

 そりゃあ泣くよ! こんな心優しい人達に囲まれてるんだなって改めて気付かされたんだもの。

 

「大丈夫? 何か嫌な事でもあったの?」

「良ければお話してみて下さい。私達に出来る事があればなんでもやりますから」

「ご主人様、大丈夫? 誰かに泣かされた?」

「ううん、違うんだ。ただちょっと感動しちゃって」

 

……改めて考えるとボクのパーティメンバーって、ボクには勿体ないぐらい凄い子達ばかりなんだよね。

 

 幼馴染のルーチェは、氷の魔法を扱う魔法使いだ。生まれついての魔力持ちしか扱う事の出来ない魔法、それを使えるだけでも凄いのにルーチェは努力家で才能も溢れていた。そんな彼女はみるみる内に成長して、二年前では見事にBランク冒険者となった。

 

 この街に来て、ルーチェを除けば最初にボクのパーティに加入した獣人のルナ。彼女は奴隷として売られていた所をボクが買ったのだが、なんやかんやあって奴隷の身分のままボクのパーティに加わる事となった。売られていた時は獣人の癖に力が弱いとか酷評されていたけど、今じゃボクより立派な戦士として活躍している。ランクはボクと同じCランクだけど、その実力はCランクよりずっと上だろう。

 

 一年前、とある依頼で行動を共にする事となった僧侶のソレイユ。彼女は所属している教会じゃ聖女という特別な称号を持った凄い地位に居る人だ。そんな人がどうしてボクのパーティに加わってくれたのかだけど……理由はボクも良く分かっていない。

 

「ねえ、みんな」

 

 みんな、本当にボクには勿体ない人達だと思う。その実力も、人としての器も……これがMMOだったら寄生プレイと周りに揶揄されている事だろう。

 

「みんなは何かやりたい事ってある? なんだかいつもボクの都合に付き合わせてる気がして……もしあるなら、パーティから抜けて自由にして良いんだよ?」

 

 だから聞いてみたくなった。もし少しでもボクを思って我慢している事があったら、ボクの事は放ってやりたい事をやって欲しかったから。

 

「「「……」」」

 

 ボクの言葉を聞いた三人は、一様に目から光を無くして……うん? なにその反応?

 

「……リリアに、嫌われた?」

「ル、ルーチェ?」

 

 ルーチェは顔を俯かせると、何かぶつぶつと独り言を呟く。

 

「なんで? 何が原因? どこがダメだった? 思い出せ、は、早く治さなきゃ、このままじゃあの子が居なくなって……いや、私が穢れてるから? リリアみたいな光じゃないから? ……ダ、ダメ、それでも嫌、お願い、居なくならないで、わ、わた、私の前から消えないで」

 

 掠れるような声で何を言っているのか分からない。しかし尋常じゃなく震えている彼女の体が、何やらただ事ではないと気付かせる。

 

「……ご主人様」

「た、大変だよルナ! ルーチェがおかしく」

「ルナ、何かいけない事した?」

「へ?」

 

 裾を掴んで声を掛けてきたルナは、唐突にそんな事を言い出した。

 

「ダメな所あった? あるなら言って、これからはちゃんとするから」

「えっと、ルナ?」

「もっと強くなって欲しいならそうする。お金が欲しいなら用意する。他にも欲しい物があったら言って、頼み事があるならなんでも言って。絶対、絶対ご主人様の望んだ通りにしてみせる。だからお願い、ルナを見捨てないで」

「おおお落ち着いて!? そんな事言わないから! ソ、ソレイユ助けてー!」

 

 ルーチェだけでなくルナの様子もおかしい。もはや頼みの綱はソレイユだけだと彼女の方を振り向けば、なんと彼女は護身用のナイフを首元に突き付けていた。

 

「いやなんでぇ!?」

「……神に仕える私の身は、全てリリアさんの物。そのリリアさんに拒絶させられたのならば、私の生に意味などありません」

「なに言ってるのか分かんないよ! あと別に拒絶してないからね!?」

 

 なにこれ? 何が起きてるの? どこかから相手を混乱状態にさせる呪文でも打たれた?

 

「と、とにかくダメー!!」

 

 そこからみんなの正気を戻すのに十分ほど掛かり、理由はまったく分からないけどひとまずパーティを抜けて良いなんて二度と言わないと約束する事でなんとか事態を収束させた。

 

▼▼▼

 

「もう、本当にびっくりしたんだからね!」

「ご、ごめんリリア」

「すみませんリリアさん、ご迷惑をお掛けさせてしまい」

「……ご主人様、ごめん」

 

 リリアの必死の呼び掛けで立ち直った三人は、頬を膨らませてプリプリと怒るリリアにひたすら謝っていた。

 

「本当に、ほんっっとうに何も異常は無いんだよね? 精神攻撃を受けたとか、そういうのじゃなくて」

「ええ、それだけは保証するわ。……あれは、そう、単に私達の心の問題なの」

「……その問題を詳しく聞く、っていうのも難しいんだよね?」

「「「……」」」

 

 俯いて何も言えずにいる三人を見て、リリアは仕方ないなと言わんばかりに小さくため息を溢すと彼女達に笑みを向けた。

 

「ならこれ以上何も聞かないでおくよ。ただし、言ってくれる気になったらすぐに教えてね」

「……いいの? リリアはそれで」

「勿論だよ。そりゃ言ってくれないのは寂しいよ、けどそれ以上に皆の事を信じてるからさ」

「「「……」」」

 

 そう言ってくれる事に三人は心底嬉しく思う反面、申し訳なくなっていた。

 リリアは知らない。自分達が裏で犯罪紛いの行いをしている事に。その行いの量や質は違えど、リリアが知れば間違いなく悲しむような数々を、自分達はして来ている。

 

 全てはリリアの為、それが彼女達の裏でやっている事に共通する動機。それほどの強い想いを各々がリリアに向けており、だからこそ件の言葉を告げられた時に彼女達は一瞬で平静さを失ってしまった。

 

『───パーティから抜けて良いんだよ?』

 

 どういう意図で言ったであれ、その言葉を聞いた三人は全身の熱が急速に失っていくのを実感した。

 

(……ご主人様)

 

 ルナはその言葉を告げられた時、世界全てが闇に塗り潰されてしまうような気がした。いや、きっとそれは気のせいじゃないのだろう。

 彼女の世界は常に夜だった。道を照らす灯りも、夜空を彩る星々も何も無い。ただただ闇だけが広がる真っ暗な世界。そんな中で唯一輝きを放つのがリリアだった。

 真の暗闇で生きれる者はそう多くない。生まれついての盲目か、そもそも光を知らないか、それぐらいだろう。ルナはそのどちらでもなく、故に彼女は光を欲する。

 

「よし! 洞窟も見えてきた事だし、予定通り着いたら野宿にしよっか」

「……」

 

 そう言って笑顔で呼び掛けたリリア。……ちょうどその時、ルナは何か妙な気配を感じ取った。

 

「ご主人様」

「うん?」

「トイレに行くから、先に行ってて欲しい」

「トイレ? 別にそれぐらい待つけど」

「ううん、先に行ってて」

「……うーん、なら先に行って野宿の準備しておくね」

「うん」

 

 リリアから了承を貰ったルナは、道沿いから離れて木々の奥へと進んでいく。他二人はなんとなく察したようだが、着いて来なくて良いとルナは先んじて目線を送った。

 

「……」

 

 生い茂った草木を通り抜けて、開けた場所へと顔を出す。

 

「……居るの分かってるから、さっさと出ろ」

 

 自分以外の姿が見当たらない中、ルナは確信を持った声で呼び掛ける。その直後、背後の木の上から人影が飛び出してきた。

 

「───へぇ、分かってたか」

 

 空高く跳躍し、ルナの目の前へと鮮やかに着地したその男は、そう言って好戦的な笑みをルナに向けた。

 

「やっぱり獣人」

「ほー、そこも気付いてたのか。なんだ、弱っちそうと思ってたが勘だけは良さそうだな」

 

 ルナの発言に男は感心したように頷く。ただしその顔は、あからさまにルナの事を見下していた。

 ウルフカットの黒髪に黄金色の瞳。その頭部には獣人特有の獣の耳が存在する。

 

「さーて、同じ獣人だから目を付けたが、コイツを連れて行くべきかどうか……ん?」

 

 何かをブツブツ言いながら思案する男だったが、ルナの姿を見て気付く。

 

「お前……」

 

 彼女が黒髪赤眼の獣人であるという事、それに気付いた男は彼女をジーッと見つめて……その事実に気付いた時、男は口を大きく開けて笑い出した。

 

「ぶっ……ハハハハ!!! おいおいマジか、見覚えある顔だと思ったらそういう事かよ!」

「……」

 

 腹を抱えて嗤う男にルナは無機質な目を向け続ける。男はその事を気にも留めず、愉快げに言った。

 

「まさかこんな所でまた会える日が来るなんて、人生分からねえもんだ。……なあ? 負け犬(・・・)?」




獣人について
他が魔法みたいな不思議パワーを扱う中、筋肉だけでモンスター蔓延る物騒な世界を生き抜いてきた脳筋種族。強い奴が正義であり、弱い奴は普通に見捨てられる。人間からは、まだ魔族よりかは話が通じる宇宙人という認識。獣人族の成人は十歳から。
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