【書籍化決定】死にまくり女子高生の冥様は無自覚にゲームバランスを破壊する~運営さん、ただ死にたいだけなのにシステムが私の邪魔をしてくるんですがっ!!~   作:ミポリオン

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第017話 初めての交流

 週明け、玄関のドアを開けると晴愛が怒った顔で待ち構えていた。

 

 そして、開口一番に罵声を一つ。

 

「メイ、あんた何やってんの!!」

「ん?」

 

 金曜日に別れた時は不機嫌な様子じゃなかったはず。全然心当たりがない。

 

「これよ、これ」

「なになに――」

 

 晴愛が押し付けるように見せてきたのは、ITOに関する掲示板の一つ。注目のプレイヤーについて語るスレッドだった。

 

 そこには私と同じ名前と特徴のプレイヤーが取り上げられている。

 

 あの場に他に白Tとハーフパンツはいなかったから、多分、私。まさか装備を着ていないだけでスレッドに載るほど注目されるとは思わなかった。

 

「なんでこんな奇行してるのよ!!」

「なんのこと?」

 

 自分の名前があったところだけ見て、その後を全然見てなかった。さらに続きがあったみたい。

 

「何回も泉に飛び込んでることよ。皆、冥が変人だと思ってるじゃない!!」

「服着てないからじゃないの?」

「そんなわけないでしょ!! 1回や2回ならまだしも何百回も故意に死ぬプレイヤーなんていないんだよ!! しかも街で!!」

「なるほど」

 

 私はてっきり服のせいかと思っていたけど、まさか死に続けたせいだったとは思わなかった。

 

 ゲーム内で死ぬなんて割と普通のこと。モンスターにやられて死ぬことはあるし、毒やダンジョンの罠で死ぬこともある。だから、いくら死に続けたからと言って、私のことなんて誰も気にしないと思ってた。

 

 まさかこんな風に取り上げられるなんて……。

 

 晴愛の言う通り、私がやっていることは他のプレイヤーからすれば、異常な行為に見えるらしい。

 

「もうこんなことしないようにしなさいよね」

「やだけど?」

 

 だからと言って、死ぬのを止めるつもりなんてない。

 

 一度生活水準を上げたら、下げるのが難しいのと一緒だ。一度死の気持ちよさを知ってしまったら、もうなかったことにはできない。

 

「はぁ!? 注目されたら困るでしょ!?」

「どうでもいいよ。死ねさえすれば」

 

 注目されたからといって、死ねなくなるわけじゃない。それに、ゲーム内で有名になっても身バレするわけじゃない。だから、現実には影響がなければそれでいい。

 

 死ぬことに比べれば些細なこと。

 

「駄目だこいつ……早く何とかしないと」

「前から知ってたでしょ」

 

 晴愛が呆れた顔をしているけど、私たちはもう10年以上の付き合い。晴愛は私が死を追い求めているのは百も承知。

 

 その私が死を手に入れてしまったらどうなるか。

 

 元から目に見えていたと思う。

 

「いや、もう手遅れか。メイはそういうやつだったわ。はぁ……まぁ、あんたのゲーム人生だし、メイが楽しいのが一番か。そうね、思う存分楽し()んだらいいわ」

 

 最終的には晴愛が折れてくれた。

 

 流石に絶交するとか言われたら考えるけど、なんだかんだ晴愛は私に甘い。うちのお母さんよりも甘々だ。感謝を込めてこれからはママと呼ぶことにしよう。

 

「ありがと、ママ」

「私はママじゃない!!」

 

 なぜかめちゃくちゃ怒られた。

 

「とにかく、死ぬなら次からは人目につかないところで死になさいよね」

 

 表情を引き締め、真剣な顔で言う晴愛。

 

「なんで?」

「耐性を習得したら、死ぬのに時間がかかるようになるんでしょ。見てたらからくりに気づくプレイヤーもいるわよ。知られたくないんでしょ?」

「それもそっか」

 

 それは盲点だった。確かに晴愛の言う通りだ。これから使うかもしれないネタがバレちゃったら意味ない。気をつけよう。

 

 

 

 

 家に帰ってゲームにログイン。

 

 晴愛の忠告に従って、泉で死ぬのは諦めた。とりあえず、街の中を川が通っているので、どこか目立たない場所を選んで死ぬことにする。

 

 絶好のダイビングポイントを探すため、私は歩きだした。

 

 でも、しばらくすると、横から声を掛けられる。

 

「ちょっといいかしら?」

 

 声の持ち主は露出度の多い服を着た女性プレイヤー。少し吊り目で勝気そうな瞳の美人なお姉さんだ。ワインレッドのボブカットがよく似合っている。

 

 一応周りを確認してみるけど、お姉さんの視線と言葉は私に向けられている。

 

 私は警戒しつつお姉さんに尋ねた。

 

「何か用ですか?」

「昨日は倉庫にちゃんといけた?」

 

 あっ、思い出した。よく見たら、昨日道を尋ねた女性プレイヤーさんだ。

 

「昨日はありがとうございました。」

「いえ、ちゃんとつけたのなら良かったわ。私はレーナ。よろしくね」

「メイです。よろしくお願いします。それで、私に何か?」

 

 でも、彼女に声を掛けられる理由が思いつかない。

 

「昨日掲示板で面白いスレッドを見たんだけど、あなたは一体何してるの?」

「ただ死んでるだけです」

 

 話を聞いて納得した。

 

 よく見れば、周りにはいつもより沢山の人たちが集まっている気がする。周りの人たちの視線も私たちに向けられていた。

 

 私のことが随分と広まっているみたい。スレッドは沢山の人に見られているから当たり前か。

 

「何か理由があるの?」

「特にありません」

「え、理由もないのに死んでるの?」

 

 私の答えにレーナさんは困惑した表情を浮かべる。

 

 死の良さをなかなか理解してもらえない。残念だなぁ。

 

「はい。強いて挙げるなら死を体験したいからです、気持ちいいので」

「き、気持ちいい? リ、リアルで何か辛いことでもあったの? 話聞くわよ?」

 

 レーナさんが困った顔をしてる。

 

 私、何かおかしなことを言ったかな?

 

 現実では、両親は出張が多いけど、家族仲は悪くない。それに、学校生活も友達はいるし、いじめもない。成績も取れてる。

 

 むしろゲームで死ぬことができて、現実生活にさらに張り合いが出てるくらい。

 

「いえ、特には」

「はぁ……放っておけないわ。メイはこの街は見て回ったかしら?」

「まだです」

 

 倉庫には行ったけど、それ以外の場所には行っていない。

 

「そう。案内するわ、ついてきて」

 

 レーナさんは私を先導するようにして先を歩き出す。

 

 きちんと受け答えしたつもりだけど、もしかしたら、自殺願望を持っているとでも勘違いされたのかも。

 

 はぁ……現実で死ぬつもりなんてないのに……。

 

「もっと泉で死にたいんですけど……」

「いいから、ついてきなさい」

「はぁ……分かりました」

 

 私としてはせっかくのプレイ時間を無駄にしたくなかった。だけど、レーナさんの勢いに押されて、なし崩し的に街を案内してもらうことになった。






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