【書籍化決定】死にまくり女子高生の冥様は無自覚にゲームバランスを破壊する~運営さん、ただ死にたいだけなのにシステムが私の邪魔をしてくるんですがっ!!~   作:ミポリオン

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第021話 踏んだり蹴ったり

 私は崖下の地面に向かって真っ逆さまに落ちていく。

 

 ジェットコースターのように胸のあたりがゾワゾワする。

 

 重力に引かれて落ちる速度が増し、すぐに地面が迫ってきた。このまま落ちれば、私はぐちゃぐちゃになってしまうに違いない。

 

 その光景を思い浮かべると、体がぶるりと震えた。

 

 恐怖はもちろんある。でも、それ以上に快感が全身を包み込む。

 

 ……20メートル、10メートル、5メートル、3メートル、1メートル。

 

 地面はもう目と鼻の先。恐怖と快感への期待感が爆発寸前まで高まった。

 

 ――ビタァアアアアンッ

 

 そして、遂に地面に激突。

 

 その瞬間、私の中の恐怖と快感が弾け、気持ちの良い死を迎える……

 

「……あれ?」

 

 はずだった。

 

 でも私は死んでいなかった。それどころか、痛みすらない。この現象は何度も経験している。耐性スキルが無効に進化した後に攻撃を受けた場合の処理にそっくり。

 

 またなの!? また、システムが私が死ぬの邪魔をするの!?

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ」

 

 期待が裏切られて、溜まった怒りが爆発。

 

 私の叫びが渓谷に木霊した。

 

 

 

 

 

「はぁ……はぁ……ふぅ」

 

 気が済むまで声を出し続けた私。ひとまず運営に耐性スキルに対する怨念を詰め込んだメッセージを送って気持ちを落ち着かせる。

 

 ここに来て、死ぬのを邪魔されるとは思わなかった。

 

 まさか今まで手に入れた耐性のせいで、体験したことがなかった転落死ができないなんて……私の期待を返して欲しい。

 

「はぁ……帰ろ。あっ、ダメだった……」

 

 やる気が削がれたので帰ろうと思ったけど、ここに来た本来の目的を思い出す。

 

 私は気持ちを切り替えてクエリ石を集めることに。手当たり次第に石を拾って鑑定していく。

 

『鑑定スキルのレベルが上がりました』

 

 称号の効果もあって程なくして鑑定スキルのレベルが6になった。

 

「あった」

 

 クエリ石は割と簡単に発見。

 

 一度鑑定すれば、後は見分けがつく。私が墜落した場所は、クエリ石だらけ。拾えるだけ拾ってアイテムボックスはもういっぱい。

 

 鑑定によると、クエリ石はポーション系のアイテムを作る際に必ずと言っていいほど使われる触媒で、かなり重宝されているらしい。

 

 ポーションはいくらでも使われる。需要があるのは納得。

 

 私は帰路に就く。

 

 ただ、落ちた場所からポータルに向かうのは高低差もあって遠そうだった。私は直接街の方角に向かって歩き出きだした。

 

『きゃああああああああああっ』

 

 しばらく進んでいると、遠くから女の子の悲鳴が聞こえてくる。

 

 悲鳴あるところに"死"あり。

 

 フラストレーションが溜まっている私は、その声の許に走った。

 

「あれは…………ボス!?」

 

 見えてきたのは、通常より明らかに大きなモンスター。

 

 ライオンの頭と山羊の頭があって、尻尾が蛇になっている。なんだかキマイラっぽい見た目。フィールドボスは倒されたみたいだから別のボスなのかも。

 

 キマイラは今にも女の子に襲い掛かろうとしていた。一方で、女の子は先端にドクロがついた杖を構え、ガタガタと震えながら対峙している。

 

「メェエエエエエエッ」

「きゃああああああああああっ」

 

 山羊の頭が(いなな)くと、辺りに雷がいくつも降り注ぐ。女の子はその爆風を受けて吹き飛んだ。

 

「おおっ!!」

 

 私は今まで見たことがない攻撃に期待感が高まる。

 

 あれなら私を殺してくれそう。

 

 どう見ても劣勢だから、すぐに助けに入りたいところ。でもこういう場合、きちんと声掛けしないと後でトラブルの元になると聞いている。

 

「いたたたた……」

 

 私は腰を擦る女の子に近づいて声を掛けた。

 

「ねぇ」

「え、あ、誰?」

「こっち。助けはいる?」

 

 キョロキョロと辺りを見回す女の子は、声を聞いて私の方に顔を向ける。

 

「お、お願いしますっ!!」

「分かった。逃げていいよ」

「あ、ありがとうございます?」

 

 私はボスの前に歩み出た。女の子が走り去る音が後方から聞こえてくる。

 

 もう気兼ねしてなくていい。

 

「グルルルルルルッ」

 

 獲物を逃がした私に怒ったみたい。完全にロックオンされた。

 

 想定通り。これで私は死ねる。

 

「グォオオオオオオンッ!!」

 

 ライオンの口が大きく開くと、巨大な火球が吐き出された。

 

 ――ゴォオオオオオオオッ

 

 凄まじい轟音と共に私を包み込む。

 

「あぁ、そういえばそっか……」

 

 でも火球は私を焼かない。だって炎熱耐性があるから。これは仕方ない。

 

「グォ!?」

 

 ボスは私が無傷なのに驚いたのか、変な声を出した。

 

「さっきの雷で攻撃してよ」

「メェエエエエエエッ!!」

 

 私の声に、山羊が大きく鳴く。

 

 空中にバチバチと放電する球体が浮かび、下にいる私に向かって稲妻が落ちる。

 

 ――ドォオオオオオオオンッ

 

 轟音と共に光が私を包み込んだ。

 

 きたきたきたきたぁ!!

 

 ――プスンッ

 

「あれ?」

 

 でも、私はノーダメージだった。

 

 なんで?

 

「グォッ!?」

 

 無傷の私に驚いたのかキマイラが狼狽えた。

 

「もっと強い攻撃をして」

「キシャアアアアアアッ!!」

 

 私が睨みつけると、尻尾の蛇が紫色の玉を吐き出す。

 

 ――ドォオオオオオオオンッ

 

 その球は私に直撃して爆発した。

 

「ん~?」

 

 でも、その攻撃も私にはなんのダメージも与えられなかった。

 

「メェエエエエエエッ!!」

 

 続けて山羊の声と共に、辺りに凄まじい冷気が集まり、私にいくつもの氷の槍が降り注ぐ。

 

 ――パリンパリンパリンパリンッ

 

 その攻撃は私に当たった瞬間に弾けた。ダメージは一切ない。

 

 まさかボスがこんなものな訳ないよね。

 

 おじいさんの墓にいたボスはもっともっと強かった。誰も倒せないボスがこんなに弱いはずない。

 

「はぁ……もっと強い攻撃はないの?」

「グォオオオオオオンッ!!」

「メェエエエエエエッ!!」

「キシャアアアアアアッ!!」

 

 私になめられていると思ったのか、3つの頭がそれぞれ口を開く。その前方にエネルギーのようなものが集まり、段々大きくなっていく。

 

 そして、エネルギーは混ざり合って漆黒のエネルギーとなった。

 

 おおっ、これなら期待できそう。

 

 その漆黒のエネルギーは黒い光線となって私に降り注いだ。

 

「今のもダメなの?」

 

 でも、私は無傷。一切効果はなかった。

 

「グォッ!?」

「キシャッ!?」

「メェッ!?」

 

 3つの頭が三者三様に驚く。

 

「もう終わり?」

 

 正直、あんなに大きな体をしてるくせに興覚めだ。

 

「メェエエエエエエッ!!」

「だから、それは効かないよ……」

 

 性懲りもなく、山羊が私に雷を落とす。

 

 すると、意外なことに私の体が痺れて動けなくなった。

 

「グォオオオオオオオオンッ!!」

 

 その隙を狙ってキマイラが私に突進。

 

 あぁっ!! それはダメ!!

 

 私は心の中で叫ぶ。でも、その願いは空しく散った。

 

「「「ギャアアアアアアアアッ」」」

 

 体当たりが私に直撃した瞬間、3つの頭から悲痛の叫びが聞こえ、消し飛んだ。

 

 その直後、通知が鳴る。

 

『ユニークフィールドボス、ディザスターキマイラが討伐されました』

 

 いやぁあああああああああああっ!!






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