【書籍化決定】死にまくり女子高生の冥様は無自覚にゲームバランスを破壊する~運営さん、ただ死にたいだけなのにシステムが私の邪魔をしてくるんですがっ!!~   作:ミポリオン

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第003話 O・MU・TSU

 次の日、目を覚ました私は昨日の出来事を思い出す。

 

「くふふふっ」

 

 死ぬのがあんなに気持ちいいなんて思わなかった。

 

 ログインすれば、あの快感を味わえると思うと、どうにも待ちきれない。学校なんてサボってしまいたいけど、そういうわけにもいかないのが学生の悲しいところ。

 

 遅刻しないように朝食と準備を済ませて外に出ると、晴愛が待っていた。

 

「冥、おはよ!! なんかいいことでもあったの? その顔きっもいよ?」

 

 私は自分の顔を手でむにむにと触り、表情を整えてから返事をする。

 

「良いことあった」

「へぇ、どんなこと?」

「ゲームで死んでみたらすっごかった」

 

 語彙力が足りなくて上手く伝えられない。あの感覚はやっぱり体感してもらわないと分からないと思う。

 

「ふーん、ほー、へー。冥は一人でさっさと始めちゃったんだ」

「死が目の前にあるから仕方ない」

 

 ジト目で顔を近づけてくる晴愛に私は肩を竦める。

 

 長年夢見ていたものが目の前にあれば、我慢なんてできるはずない。

 

「冥は私と死、どっちが大事なの?」

「死」

 

 まるで束縛彼女のような言い様の晴愛に無慈悲な答えを突きつける。

 

「ひどいなぁ。私は冥の事大事に思ってるのに」

 

 晴愛は私に横からくっついてきて、およよよ、と泣き真似をした。

 

 お互いをよく知っているからこその軽口だ。

 

「晴愛のことは大事。でも死はさらに上」

「はぁ……振られちゃった。でも、よかったじゃない。死を体験できて」

「うん。気持ちよかった」

「気持ちよかった?」

 

 私の言葉にきょとんとした顔をする晴愛。

 

 何かおかしなこと言ったかな?

 

「そう。死ぬって気持ちいいの」

 

 思い出すと、体の奥が熱くなって疼く。

 

 はぁはぁ……早く死にたい……

 

「やっぱり冥は変わってるねぇ、あははは……」

「晴愛も死んでみるといい」

 

 ぜひ親友である晴愛にもこの気持ちよさを味わって欲しい。

 

 少し頬が引きつっている気がするけど、多分気のせいだよね。

 

「私はいいよ。そういうのは」

「気持ちいいのに……」

 

 残念ながら晴愛には受け入れてもらえなかった。

 

 しょうがない。自分の趣味趣向は他人に強要するようなことじゃないし、私が気持ちよければそれでいいや。

 

 晴愛が突然辺りを見回しながら小さく呟いた。

 

「そろそろ話、変えよっか」

「ん? 分かった」

 

 近くには私たちを見ながらひそひそと会話をする人たちがいる。

 

「メイはどんな種族でゲームを始めたの?」

「下級吸血鬼」

「え、めっちゃ使いづらい種族じゃん」

「それがいい」

 

 よく分からないけど、私は彼女の言葉に従った。

 

 

 

 

「冥、帰るよ」

 

 学校が終わると、晴愛が私の許にやってきた。

 

「寄り道する」

「どこ行くの?」

「ドラッグストア」

「私も買いたいものがあるからついてくよ」

 

 他に良い対策が思い浮かばなかったので、晴愛と一緒にドラッグストアに向かう。

 

 上手い解決策がないからと言って死なないという選択肢なんて私にはない。

 

「ドラッグストアで何買うの?」

「おむつ」

「へぇ~、そっか、おむつ……おむつ!?」

「うん」

 

 晴愛が一度納得した風に頷いた後、私の顔を二度見した。

 

 そんなに驚くようなことじゃないと思うんだけど。

 

「えぇ!? 赤ちゃんなんていないよね? もしかしてそんなまさか? 冥ったらいつのまに?」

「産んでない。私が穿く」

「まぁそうだよね。でももうお漏らしなんてしないでしょ? どうしてまた」

「ゲームすると、パンツとシーツがびしょびしょになるから」

「いやいや、なんでゲームでびしょびしょになんの? 意味分からなすぎでしょ」

「分からない。ログアウトしたらびしょびしょだった」

 

 晴愛は腕を組んで頭を左右に大きく傾げながら歩く。

 

「おっかしいなぁ。ダイブ中は体に影響ないはずなのにさぁ、どうなってんの?」

「さぁ」

 

 確かに晴愛の言うように、ゲームを始める前にそういう説明を受けた。

 

 その通りなら現実にある体にはなんら異常は起きないはず。でも実際、私の体にはゲーム内の感覚がフィードバックされているのは間違いない。

 

 死の快感がそれだけ強烈だということかもしれない。

 

 まぁ、誰かに見られる訳じゃないし、おむつすれば全て解決するんだから、気にしなくてもいいと思う。

 

「バグ報告してみた方がいいかも」

「……ログインしたら報告してみる」

「そうして」

 

 でも、晴愛から圧を感じたので、言う通りにすることにした。

 

 ドラッグストアについた私は、晴愛と別れておむつ売り場にたどり着く。

 

 そこには多種多様なおむつが並んでいた。正直どれがいいか分からない。謳い文句を見る限り、どれでも大丈夫そうではある。

 

「これにしよ」

 

 晴愛に何か言われそうなので、見栄えの良さそうなおむつを選んだ。

 

「冥も少しは人目を気にするんだ」

「まぁね」

「冥、大人になって……」

 

 合流した晴愛が涙ぐむ。

 

 人目を気にしてるんじゃなくて、晴愛の目を気にしてるんだけど、それは言わないでおく。

 

 ウザ絡みしてくる晴愛を適当にあしらって代金を支払い、ドラッグストアを後にした。

 

「それじゃあ、また明日ね」

「うん、ばいばい」

 

 家に帰ってきた私は、勉強や、ご飯やお風呂なんかを済ませ、おむつを装着。

 

 今のおむつは凄く進化していて、見た目も割とオシャレでむくれず、履き心地も悪くない。その上、薄くて吸水性が高くて横漏れもしないらしい。

 

 大変素晴らしい。まるで私がゲームをするために進化してくれたみたい。

 

 準備万端でゲームにログイン。

 

「あ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」

 

 私は今日一発目の太陽による焼死をキメた。





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