【書籍化決定】死にまくり女子高生の冥様は無自覚にゲームバランスを破壊する~運営さん、ただ死にたいだけなのにシステムが私の邪魔をしてくるんですがっ!!~   作:ミポリオン

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第043話 勘違いは勘違いを呼ぶ

「あっ。セーラ、攻撃しなくていいよ」

「何言ってるの? ゴブリンだよ? 倒さなきゃ」

「この子たち、私の従魔」

「は?」

 

 私が説明すると、セーラはキョトンとした顔で固まった。

 

 そういえば、ずっと忘れてた。でも、誰かに見つかったら間違って攻撃されてしまうかもしれないから、おじいさんの墓で留守番をするように言っておいたはず。

 

「どうしてここいるの?」

「ゴブゴブ、ゴブゴブゴブゴッブゥッ」

「なるほどね」

 

 調教スキルを覚えたおかげで意思疎通ができるようになっている。

 

『すまねぇ親びん、俺たち腹が減って我慢できなくて命令破っちまった』

 

 とのこと。

 

 どうやら、おじいさんの墓には食料がないので、定期的に森に棲むモンスターを狩って食料を手に入れているらしい。

 

 まさかそこまでリアルだと思っていなかったので、想像が及ばなかった飼い主である私の落ち度。反省。

 

 それにしても最初は全く気づかなかった。

 

 だって、なんだか普通のゴブリンさんよりもかなり精悍な体つきになっていて、目に明確な知性が宿っているから。

 

 味方のアイコンが出てなかったら分からなかったと思う。

 

 もしかしたら、モンスターを狩っている内にレベルが上がったのかもしれない。

 

 ゴブリンさんとは違うからゴブって呼ぶことにしよう。

 

「な、なななな、何普通に話してんのよ!!」

 

 ゴブたちから事情を聞いていると、セーラの時が動き出した。

 

「従魔だからだけど?」

「メイは調教スキル取ってないじゃん。なんでテイムできるの!?」

「躾けしたら従魔になったよ? その時、調教スキルも覚えた」

「聞いてないんだけど」

「言わなかったっけ?」

 

 そういえば、あの頃はイベントの話で忘れちゃってたかも。

 

「どうやって調教したの?」

「悪いことをした子にお仕置きして言うことを聞くようにした」

 

 なかなか意思疎通が難しかったから体に覚え込ませた。

 

 悪い子を倒すと他の子たちが大人しくなるんだよね。

 

「はぁ~っ、またとんでもないことをしれくれたね」

「そうなの?」

「調教スキルの取り方なんて誰も知らないんだよ。だから初期スキルで取らない限り従魔は作れないって言われてたの。私も取ったもん」

「へぇ~」

 

 死にたいだけだから従魔のことなんて少しも考えていなかった。

 

 家ではペットを飼ってないから飼ってみるのもいいかも。ゲーム内ならリアルよりもハードルが低そうだし。何より正直ゴブたちはあんまり可愛くない。

 

 次は可愛いモンスターを従魔にしよう。

 

「相変わらずあんまり分かってないみたいね」

「死ねればそれでいいし」

「そうだった。メイはそういうやつだった」

 

 セーラはガックリと肩を落とす。

 

「それよりクエストやろ」

「はぁ……そうだね」

「ゴブたちに手伝ってもらう」

 

 私はゴブたちにクエストの対象モンスターを連れてくるように命令した。

 

「ゴブッ」

「ちょっ!?」

 

 数分後、ゴブたちがモンスターを引き連れて戻ってくる。

 

 数十匹はいそう。セーラは口を大きく開けて驚愕していた。

 

「足止めして。止めを刺すのはダメ」

「ゴブゥッ」

 

 ゴブたちは私の命令を受けて、モンスターたちがこっちに来ないように壁を作る。

 

 自分たちの数よりも多いにも関わらず、ゴブたちは全くモンスターを通さない。攻撃を受けてるけど、さほど効いてないみたい。

 

 矢で狙うには絶好のチャンス。

 

「セーラ」

「はいはい、分かってるよ!!」

 

 セーラはなんだか少しやけっぱちになりながら矢を番え、モンスターたちを仕留めていく。

 

 気づけば、ゴブたち以外のモンスターはいなくなった。

 

「次」

「ゴブゥッ」

 

 私の命令で再びモンスターを探しに行ったゴブたち。しばらくすると、また数十匹のモンスターを引き連れて帰ってきた。

 

「来たよ」

「はいよ!!」

 

 セーラはモンスターを撃ち殺していく。初めてウサギさんを倒した頃よりもずっと慣れてきていた。

 

 明らかに狙いを定める速度と矢を放つ速度が格段に上がっている。

 

 流石私のママ。

 

「次」

 

 それからしばらく私たちはモンスターを狩り続けた。

 

「ぜぇぜぇ……終わったぁ」

「お疲れ様」

 

 セーラはその場に大の字になって体を休める。

 

 何回か繰り返したところでセーラが受けたクエストを全て完了したらしい。

 

 後は街に戻って報告するだけ。

 

「帰る?」

「そうね。クエストも終わったし、街へ戻りましょ」

「分かった。バイバイ、皆。森で狩りしててもいいけど、プレイヤーに見つからないように気をつけて。見つかったら従魔アピールしてね」

 

 私たちはゴブたちに別れを告げ、街の方に歩き出す。

 

「ゴブゴブッ!?」

 

 でも、私たちの前にゴブが立ちはだかった。

 

「え?」

「どうしたの?」

「ゴブたちが連れていきたい場所があるって」

「なんだか分からないけど、行ってみましょ。面白そうだし」

 

 セーラがニヤリと口端を吊り上げた。

 

 セーラは私よりも沢山ゲームをしている。何かを感じ取ったのかもしれない。

 

「分かった。案内して」

「ゴブッ」

 

 私たちはゴブたちに連れられて森の奥へと進んでいく。

 

「ここ?」

「ゴブッ」

「何もなさそうだけど……」

 

 たどり着いたのは、森の奥にあった何の変哲もない岸壁のそば。

 

 特におかしな点は見当たらない。

 

「ゴブッ」

「なっ!?」

 

 ゴブが岸壁の一部に手を伸ばすと、手が岩の中へと吸い込まれた。

 

 どうやら岸壁の一部が幻だったらしい。

 

 その瞬間、通知が鳴った。

 

『隠しエリア『悠久を生きる者の隠れ家』を発見しました』

 

 

 ◆   ◆   ◆

 

 

「はぁ……」

 

 開発ルームでは山岸が項垂れていた。

 

「元気出してくださいよ、先輩」

「いやぁ、まさか断られるとは思わなかった。メイは相当お怒りらしい」

 

 苦渋の決断だったとは言え、山岸はメイを弱体化したことに罪悪感があった。

 

 その上、メイの通話拒否。それは和解する気がないという意思表示に他ならない。そのせいで山岸はさらに落ち込んでいた。

 

「あれだけ弱体化しましたからね。普通のプレイヤーなら納得できないっすよねぇ」

「だよなぁ……はぁ……」

「まぁまぁ、他に手はなかったんですし、これでも飲んで元気出してください」

 

 見るに見かねた後輩は、元気が出ると噂のエナジードリンクを山岸に飲ませる。

 

「はぁ、そうだな」

「それに、メイもあの隠し要素は見つけらなかったじゃないですか。まだまだ大丈夫ですよ」

 

 そして、ゲームの話題にシフトさせた。

 

「はじまりの森のもう一つの隠し要素か」

「ですです。あれは見つけられないっすよ。まさかはじまりの森に二つも隠し要素があるとは誰も思いませんし。その上、あの隠し要素は自分じゃ発見できない。あの森のモンスターを自力で調教して発見させないと見つけられないなんて誰も気づきませんって」

「あぁ、確かにな。あの条件はちょっとやそっとじゃ見つからないだろう」

 

 ゲームの話になると少しずつ山岸も熱が入って気力が湧いてくる。

 

「だから、メイのことは忘れて元気出していきましょう」

「おうっ、なんか元気が出た。いつも悪いな」

「気にしないでください。先輩にお世話になってますからね」

 

 後輩はエナジードリンクすげぇ、と思いつつニッコリと笑った。





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