【書籍化決定】死にまくり女子高生の冥様は無自覚にゲームバランスを破壊する~運営さん、ただ死にたいだけなのにシステムが私の邪魔をしてくるんですがっ!!~   作:ミポリオン

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第044話 しつけたゴブに連れられて♪

「え?」

「すごっ」

 

 通り抜けると、岩壁がぐるりと取り囲む入り江が視界に映った。唯一の海への出入り口も洞窟みたいになってる。

 

 本当に隠れ家という名前に相応しい場所だと思う。

 

 気候は夏真っ盛りで、空から強い太陽の光が差し込んでいる。

 

 ――ザザーン、ザザーンッ

 

 定期的に打ち寄せる波の音が心地いい。

 

 右手にログハウスが建っていて、その奥に桟橋が海へ向かって伸びている。

 

「おや、珍しい。客人かのう……」

 

 景色に目を奪われていると、漫画やアニメで見られる年寄り言葉が耳に届いた。

 

 でも、声は若々しい。それどころか幼くさえある。

 

 その声は近くに設置された木製のビーチチェアから聞こえてきた。

 

「エルフ?」

 

 椅子の端からひょっこりと顔を出したのは、大体12~13歳くらいの耳の長い少女だ。ただ、薄い水色っぽい髪の色に、空の色の瞳をしていた。

 

「知らぬのも無理はない。ワシしかおらんからな。ハイエンシェントエルフという種族じゃよ。名をニアという。よしなにな」

 

 ハイエルフやエルフは聞いたことあるけど、ハイエンシェントエルフは聞いたことがない。特別な種族なのかもしれない。

 

「私はメイです。よろしくお願いします」

「私はセーラです。よろしくお願いします」

「堅苦しい言葉など使わんでいい。肩が凝るでな」

 

 その言葉は嬉しい。お言葉に甘えることにする。

 

「ありがとう」

「よいよい。折角客人が来たことじゃし、もてなさねばな」

 

 ニアが指をパチンと鳴らした瞬間、辺りが夜になってしまった。

 

「おおっ」

「な、何が起こったの?」

「なぁに、心配するでない。暗い方がよく見えるから夜にしただけじゃ」

 

 不安そうにするセーラを宥めるニア。

 

 彼女が再び指を鳴らすと蛍のような光が集まってきた。

 

『キャハハハハッ!!』

『人間さんよ、人間さんがいるわ!!』

『ホントだ、人間だ!!』

『わぁ~、初めて見た!!』

 

 よく見ると、光の中に小さな人型の体に半透明の羽を持つ存在が居る。球状の膜が彼らを覆っていて、光を放っていた。

 

 それだけじゃない。球体に羽が生えた存在やいろんな動物をデフォルメした存在も沢山現れて、空を飛びまわっている。

 

 非日常的で幻想的な光景。思わず目を奪われる。

 

「お次はこれじゃ」

 

 さらに、ニアが手を叩くと、目の前にバーベキューセットやテーブルが現れた。ログハウスの入り口から妖精たちが料理を運んでくる。

 

 彼らがバーベキューの串や魚介類を焼き始め、漂い始める良い匂い。

 

 ニアが椅子から立ち上がり、私たちの方にやってくる。

 

「お腹が減る」

「良い匂いね」

「テーブルにつくのじゃ」

 

 私たちはニアに促されて席に座った。

 

 妖精たちによって目の前に熱々のバーベキュー料理と冷たい飲み物が運ばれてくる。我慢できそうにない。

 

「食べてもいい?」

「うむ。いただこうかの」

「「「いただきます」」」

 

 私たちは料理にかぶりついた。

 

 ――シャララランッ

 

 しばらく夢中に料理を食べていると、軽快な音楽が流れ始める。料理から一度視線を外すと、空に浮かんでいた不思議な生物たちがそのリズムに乗って踊り出した。

 

 その一糸乱れぬ動きは引き込まれるには十分だった。

 

「まさかここを訪れる者がおるとは思わなんだ。どうやって見つけたのじゃ?」

 

 興味深そうに聞いてくるニア。

 

「前に躾したゴブリンたちが教えてくれた」

「おおーっ、なるほど。そういうことか。それなら納得じゃ」

「ニアはどうしてここにいるの?」

 

 納得顔になったニアにセーラが不思議そうに尋ねた。

 

 パッと見は少女だけど、相当力のある人物だと分かる。普通ならこんなところに一人で住んでいるような人じゃないはず。

 

「ワシの力はあまりに強大すぎるゆえな。表に出ると碌なことにならんのじゃ」

「あぁ~、そういうことなんだね」

「思い当たる節がありそうじゃな?」

「ま、まぁね」

 

 意味ありげに笑うニアからセーラが目を逸らす。

 

 私だけ蚊帳の外で、なんだか二人で通じ合っている。少しずるい。

 

「今日はありがとう。凄く楽しかった!!」

「こういうのも悪くない」

 

 あっという間に時間が過ぎ、そろそろログアウトの時間になってしまった。

 

 いつも死んでばかりの私だけど、なかなか面白い体験だった。

 

「いやいや、気にするでない。ワシも久しぶりに人に会えて楽しかった」

「またね」

「あっ、そうじゃ。ここを訪れたお主らにプレゼントをやらねばな」

「「うっ」」

 

 別れを告げると、ニアが手をポンと叩く。

 

 その瞬間、私とセーラは眩い光に包まれて目が眩んだ。

 

 10秒ほど経つと、光が消えて視界が戻ってくる。

 

「セーラ、装備変わってる」

 

 セーラを見ると、初期装備じゃなくて緑を基調としたドレスアーマーのような装いに変化していた。

 

 そして、その手には凄まじい波動を放つ弓が握られている。明らかに普通の武器じゃない。

 

 これはセーラにとって嬉しい誤算だと思う。

 

「これ凄いよ!! でも、メイも変わってるよ!!」

「え?」

 

 嬉しそうにはしゃぐセーラに言われて自分の体に視線を落とした。真っ黒だったはずの装備が、白くなっていた。

 

 もしかして……。

 

 私は嫌な予感がして恐る恐るメニューを開く。

 

 すると、ノラに作ってもらった装備が、全く別の装備に変わっていた。

 

「ニ゛ア゛ァ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッ」

 

 私は力の限り叫んでいた。

 

 





いつもお読みいただき、誠にありがとうございます。

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