【書籍化決定】死にまくり女子高生の冥様は無自覚にゲームバランスを破壊する~運営さん、ただ死にたいだけなのにシステムが私の邪魔をしてくるんですがっ!!~ 作:ミポリオン
「なんじゃ? もしかして嬉しすぎて礼をしたいのか? 仕方ないのう」
私は小憎たらしく笑うニアの頭に手刀を振り下ろした。
「ふんっ」
「ぷぎゃっ!? いったい――」
「ふんっ」
「ぷぎゃっ!? なんの――」
「ふんっ」
「ぷぎゃっ!? つもりじゃっ!!」
無言で何度も頭を叩いていると、ニアが私の手を弾く。
「よくも装備を勝手に変えてくれたね」
今回の装備の変化は本当に酷い。
効果が全て反転していた。
『呪い』の状態異常が『祝福』へと反転し、全能力強化。
『病気』の状態異常が『絶好調』へと反転し、全能力強化。
『疲労』の状態異常が『超元気』へと反転し、全能力強化。
『恐怖』の状態異常が『平穏』へと反転し、全能力強化。
『鬱』の状態異常が『躁』へと反転し、全能力強化。
『裂傷』の状態異常が『鉄壁』へと反転し、ダメージ2分の1。
防御力、魔法防御力の低下が反転して防御力、魔法防御力の上昇へ。
そして『不死王』セットが『聖王』セットに変化し、全能力強化。装備自体が変わったことで性能も強化。
これでもかというくらい私は強化されてしまった。さらに、呪いまで強化されて簡単には外せなくなっている。
その上、『不死王』セットはレアな素材を使ってノラが丹精込めて作ってくれた呪い装備。
勝手に別の物に変えられて怒らないのはどうかしている。
「効果を反転させた上に強化してやったのじゃぞ。嬉しかろ?」
「嬉しくない。誰でも装備が強くなって喜ぶと――うぷっ」
私は突然後ろから羽交い絞めにされて口を塞がれた。
「ストーップ。少し大人しくしましょうね。ごめんね、ニア。メイはちょっと変わってて……(メイ、気持ちは分かるけど、暴力はダメだよ)」
「まさか、装備を強くして頭を叩かれるとは思わなんだ……」
セーラが謝罪すると、ニアが頭を擦りながら口を尖らせる。
「ちなみに装備を元に戻したりは……」
「できぬ。これは不可逆な技なのじゃ」
ノラに作ってもらった装備がもう戻ってこないと知り、愕然となった。
ただでさえ死にづらくなって苦労しているのに、これからもっと死にづらくなる。
今度ノラに謝りにいかなきゃ。ノラの悲しい顔が頭に浮かんできた。とても言いづらい。
「ううむっ。悪かったのう。まさか装備を強くして怒るやつがいるとは思わなかったのじゃ」
ニアがシュンと肩を落とす。見た目が少女なので罪悪感が半端じゃない。
はぁ……ちょっとずるいけど、反省してるのなら仕方ないか……。
今日のところはこれ以上怒りをニアにぶつけるのを諦めた。
「知らなかったんだから仕方ないよ。あまり気にしないで」
「いーや、このままではワシの気持ちが納まらん。何か代わりの物を送りたいのじゃが……」
それはそれとして、これ以上強化されるのは困る。
「ぷはぁっ。セーラを強くして」
私はセーラの手を振り解いて告げた。
自分が強くなるのは嫌だけど、セーラが強くなる分にはなんの問題もない。
「メイッ」
「ふむっ。他でもないお主がそれでいいのであれば、よかろう」
「いい」
セーラが私を窘めようとするけど、勝手に話を進める。
「承った」
「え?」
ニアがセーラに手を翳すと、セーラに光が降り注ぎ、光の柱が立った。
明らかに普通じゃない。
「何をしたの?」
「セーラにワシの加護を与えた。少しは役に立つじゃろう」
「ありがと」
「なーに、これは詫びじゃからな。気にするでない。かっかっかっ」
礼を言うと、ニアは両手を腰に当てて鷹揚に笑った。
数秒後、光が消え、セーラが姿を現す。天使だけあって元々神々しさがあったけど、さらに増している気がした。
「なんだか力が湧いてくるんだけど?」
「加護をくれたらしい」
「そうなんだ。装備を強化してもらった上に加護まで貰っちゃって本当にいいの?」
「さっきも言ったが、これは詫びじゃ。気にするでない。どうしても、というのなら、たまにここに遊びに来てくれたらええ」
「それくらいお安い御用だよ、ね、メイ?」
「うん」
今回はもてなしてもらったので、次は私が作ったとっておきの料理の数々をごちそうしてあげようと思う。
ニアもきっと気に入ってくれるに違いない。ぐっふっふっ。
「そうかそうか。それではまた来るのを楽しみに待っておるぞ」
「それじゃあ、またね」
「ばいばい」
私たちはニアに別れを告げ、また壁を抜けてはじまりの森へと戻ってきた。
「どんな装備を貰ったの?」
帰り道、セーラの話を聞く。
「妖精王シリーズの防具と神弓ミストルティンだね」
「名前からして強そう」
「相当強いよ。明らかに序盤で手に入れるような装備じゃないね。特にミストルティンは大気から魔力を集めて矢を自動生成できるから矢がいらないし、矢に込める魔力が調整できる。上限まで魔力を込めた状態の矢は、相当破壊力が高いみたいだね。それに1カ月に1回だけ使える『神殺し』はかなりヤバそう。地形変わるかも」
「へぇ~」
正直に言えば、魔力を全力で込めた矢を受けてみたいし、神殺しも受けてみたいけど、親友にそんなことをさせる気はない。
それくらいは私でも分かっている。
「それと防具だけど、セット効果も含めると、魔力の自動回復速度が数十倍。魔法もほとんど使い放題みたいなものだよ」
つまり、蘇生魔法を覚えたら蘇生し放題ってこと。蘇生魔法で復活させられると、その場で復活できる。良いことだ。
早く覚えて欲しいね。そのためのレベル上げならいくらでも付き合う。
「ん?」
「誰かくる」
話をしていると、前方から気配を感じた。
「やっと見つけたぞ、イモータル」
「ここで会ったが100年目ってなぁ」
「弱体化してんだろぉ。運が悪かったなぁ」
身構えていると、姿を現したのは明らかにガラの悪そうなプレイヤーたち。
彼らの頭の上には真っ赤なドクロマークが浮かんでいた。
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