【書籍化決定】死にまくり女子高生の冥様は無自覚にゲームバランスを破壊する~運営さん、ただ死にたいだけなのにシステムが私の邪魔をしてくるんですがっ!!~ 作:ミポリオン
「冥、あんた、命狙われてるよ?」
翌日、晴愛が出会い頭にそう言った。
「え、ホント?」
勿論現実の話じゃない。ITO内でのこと。とっても興味がある。
「うん、掲示板に伝説のPKに仕事を依頼したって書いてあった」
「伝説のPK。良い響き」
なんでも、私がまた強くなりすぎると弱体化されるかもしれないから誰か殺してくれる奴はいないのか、という話をしていて白羽の矢が立ったのがその伝説のPKらしい。
そして、依頼方法を知っているというプレイヤーがその伝説のPKに私を殺させる依頼をしてくれたとのこと。
それはとても嬉しい。
ただ、一点だけ心外なことがある。
それは、私が強くなりたいとでも思われていること。
私は強くなりたいわけじゃない。それなのに、いつもいつもシステムのせいで死ねなくなったり、変なイベントに巻き込まれて勝手に強くされたりしてるだけ。
迷惑なのはこっちの方。その点だけは納得できそうにない。
でも、それはそれとして、ゲーム内で命を狙われるなんて最高の極み。一刻も早く殺しに来てほしい。
伝説になるくらいだから、不可能も可能できるかもしれない。一体どんな殺し方をしてくれるのかなぁ。
毒殺? 暗殺? 事故死?
どんどん妄想が膨らんでいく。今から楽しみすぎる。
「嬉しそうだね」
伝説のPKとこれからのことを考えていると晴愛がおかしそうに笑う。
「死ねるかもしれないし」
そりゃあ喜ばないわけないでしょ。
今までどんなPKも私に少しのダメージすら与えることができなかった。伝説になるくらい恐れられているのなら私を殺せるかもしれない。
そう考えたら期待せずにはいられない。
「今日はどうするの?」
はじまりの街近辺でもうPKの姿は見えなくなった。次の予定は決めていない。晴愛に何かやりたいことがあるなら付き合うつもり。
「そうだね。またニアの所に遊びにでも行く?」
「それもいいかも」
PK撲滅運動の傍ら料理も色々作り貯めた。
今なら私の最高の料理の数々を出すことができる。流石のニアも私が作り出した毒料理を食べれば、度肝を抜かれること間違いなし。
その時のニアの顔を想像すると思わず笑みがこぼれそうになる。ついでに私も死ねば一石二鳥だ。
「それじゃあ、またあとでね」
「了解」
家に帰った後、諸々の用事を済ませた私はゲームへとログインした。
「お待たせ」
「うん」
私たちは合流すると、はじまりの森へと向かう。もう勝手知ったる我が家のようなもの地図がなくても分かる。
「なんだかいつもと雰囲気が少し違う?」
「確かにそうかも」
ただ、森の中がいつもと何かが違うように感じた。でも、それが何かよく分からなかった。
気にせず私たちはニアのところを目指して歩く。
――ザクッ
「ぐはっ」
でも次の瞬間、背中と胸に鋭い痛みを感じた。視線を落とすと、私の胸に禍々しい形の刃が生えているのが見える。
それだけなのに私は立っていられなくなってその場に倒れ伏した。
「メイっ!!」
セーラが私に駆け寄り、抱き起す。
「ひゅー……ひゅー……周りに誰か……いる?……ごふっ」
「いないけど、そんなこと言ってる場合じゃないでしょ!」
凄い……確かに伝説のPKと呼ばれるだけのことはある。いつの間にか刺されていた。まさか全く気付かないとは思わなかった。
今はもう刃が消え、周りにその姿もない。相当の隠密能力だ。
「やっぱり死ぬのって……最っ高っ。がはっ」
刺された部分が焼けただれているかのように熱く痛むと同時に、何かが抜け落ちていくような冷えていく感覚と共に私は意識を失った。
「はっ」
私は宿で目を覚まし、体をビクンと震わせる。
完全に意識外からの不意打ち死は初めて。
いつも死のうと思って死んでいるので、心の準備が出来てる。けど、全く意識していないところで死ぬのはまた趣きが違う。
恐怖と快感に驚きがプラスされ、新鮮さが増している。ただ死ぬことにほんの少しだけ飽きを感じていたけど、一発で解消された。
セーラが戻ってこないところを見ると、伝説のPKさんは本当にターゲットだけを狙う。暗殺者に近い人物なのかもしれない。
それが伝説のPKさんの中の人のロールプレイってことかな。そういうPKさんなら大歓迎。いくらでも私を殺しに来てほしい。
装備も貫通してダメージを受けたところを見ると、多分防御力無視の攻撃を持っている。
それに私には再生能力がある。それが追いつかないほどの致命傷を一撃で負わされたっぽい。急所攻撃とか、クリティカルとか、再生無効みたいなスキルとかも持っているのかも……。
まだまだ未知のスキルが沢山あるみたい。
「ふふふふふふっ」
私を殺せるプレイヤーがいた。それはとても嬉しい話。思わず笑いがこぼれる。
――ピロピロピロッ
内心で喜んでいるとビデオ通話の着信を知らせる音が鳴る。
『メイ、大丈夫?』
相手はセーラ。突然のことだったから心配してくれたらしい。
ゲームの中だけどお互いにリアリティ設定最大だからね。刺されて死ぬのもリアルに見えたはず。それは結構ショックだったかもしれない。
でも、映っている顔を見る限り元気みたいで私も安心した。
「大丈夫。死に戻っただけ」
『まさかメイが死ぬとは思わなかったよ』
「いつも料理で死んでたよ?」
セーラの前でよく料理を食べては死をキメている。私は無敵じゃない。
『それ以外で死んだことないでしょ。今までPKにやられるのを見たことがなかったからね。誰にも殺されないと思ってた』
「殺されたいんだから、それは困るよ」
誰かに殺してもらいたいのに、もう殺して貰えないんじゃ未来がない。こうして殺してくれるプレイヤーがいるならまだまだ未来がある。
『まぁ、無事な姿も見られたし、よかった。これからどうするの?』
「そっちに行くからニアのところで待ってて」
『分かった。それじゃあね』
「また後で」
通話を切った私は、すぐにセーラとニアの許に向かう。
伝説のPKさん、どうやったら依頼を受けてもらえるのかな。探し出して依頼を受けてもらおう。
自分を殺す、という依頼を。
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