【書籍化決定】死にまくり女子高生の冥様は無自覚にゲームバランスを破壊する~運営さん、ただ死にたいだけなのにシステムが私の邪魔をしてくるんですがっ!!~ 作:ミポリオン
「ずぞぞぞぞぞっ」
「ずぞぞぞぞぞっ」
二人の男が無言でひたすらにラーメンを啜っていた。
「やっぱ、醤油ラーメンはここっすねぇ」
「だなぁ」
麺を飲み込んだ直後、二人は口々に同意する。
彼らはITOの開発メンバーの山岸と後輩の二人。昼食に自社ビルの近くにあるラーメン屋にやってきていた。
ずいぶん昔から営業している老舗のラーメン屋で、内装は昭和ながらのレトロな雰囲気があり、地域の人は勿論、ラーメン好きの人たちにも愛されている名店だ。
「いやぁ、見つかるとは思えないっすけど、あの隠しイベントって鬼畜っすよねぇ」
後輩が思い出したように呟く。
「ん? もしかして亜神アニマのイベントのことを言ってるのか?」
「そうっすそうっす。最初はプレイヤーたちと仲良くなるようなイベントやクエストばかりで合法ロリおばあちゃんみたいなキャラなのに、後半でボスになるとか、マジで鬼の所業じゃないっすか?」
親しくしていた相手が敵になるというシチュエーションは、VR技術が発達する前のゲームならまだ良かったかもしれない。
しかし、現実と区別がつかないくらいリアルな世界の中では相当メンタルに堪える事件に違いない。
「それは思うところがないわけじゃない」
「そうなんすか?」
「あぁ、でもやっぱり、仲良くなった相手が敵でしたとか、実はそれにも事情があって、体が何かに蝕まれていたとか、だんだん理性を失っていくとか、それに相手が苦悩するとか、その果てにプレイヤーに襲い掛かるとか、一瞬理性を取り戻したところを倒されて安らかに天に還るとか、そんな話がユーザーに人気なのも事実だからなぁ」
「世知辛いっすねぇ」
プレイヤーがゲームに求める要素は千差万別。
当然ハッピーエンドやほのぼのとしたイベントばかりというわけにもいかない。中にはやはり胸が熱くなるような展開や、救いなく終わってしまうようなイベントも必要だろう。
「まぁ、実はさらに隠し要素を仕込んでんだけどな」
「え、なんすかそれ!? 俺、知らないんすけど!!」
――ブルルルルルッ
ラーメンを食べながら会話していると、山岸が腕に付けている端末が震えた。
「もしもし、どうかしたのか? ……なんだと!? あぁ、あぁ、分かった。すぐに戻る」
山岸が後輩を制して通話に出ると、切羽詰まった様子でメンバーから連絡が入る。内容を聞いた山岸はすぐに通話を切って立ち上がった。
「先輩、どうしたんすか?」
「緊急事態だ。すぐに戻るぞ」
「は、はいっすっ!!」
後輩も残りを急いで啜ってから席を立つ。そして二人は急いで会計を済ませ、自社へと駆け出した。
◆ ◆ ◆
『レベルが上がりました』
『レベルが上がりました』
『レベルが上がりました』
……
……
……
通知音が完全にニアが死んでしまったことを告げている。
まさか物凄く強いであろうニアが、私が作った料理くらいで死ぬとは思っていなかった。てっきり少し毒になってダメージを受けるくらいだと。
でも、そんなことを言ってもなんの言い訳にもならないし、私が殺してしまったという事実は何も変わらない。
ましてやITOのNPCや一部のユニークボスは死んだら復活しない。ニアは隠しイベントのキャラクターであり、隠しボス。多分復活しないと思う。
それはつまり殺人と同じようなもの。後々ボスになるんだとしても、今はただの可愛いNPCだったのに……私はそんなニアを殺してしまった。
勿論、NPCはただのデータだと言う人もいると思う。でも、私はそんな風には割り切れそうになかった。
どちらかと言えば、私たちプレイヤーの方がよっぽどキャラクターっぽい。だって死んでも何度も復活する。そんなのリアルじゃありえない。
だからこそ、私も安心して死んでいたんだから。
「……」
「……」
私とセーラの間に沈黙が漂う。
セーラも流石に今の私に掛ける言葉が見つからないんだと思う。
「ニ、ニア!?」
そんな中、ニアの死体が光り輝きだした。全身が真っ白な光に包まれて宙へと浮かび上がり、真っ白な人形の素体のような見た目になる。
光は人型から形を変えて小さくなり、まるで恐竜の卵のような形へと変貌を遂げ、ゆっくりと私の前に降りてきた。
私は両手をお椀のようにしてその光を優しく受け止める。
その卵はアイテムで説明にはこう表記されていた。
『亜神アニマの繭:己の存在を守るために繭の形をとったもの。亜神は完全に死ぬことはなく、いずれ復活する。そのための休眠形態。割とすぐに復活するかも』
つまり、ニアは蘇るということだ。
「メイッ」
それが分かった瞬間、私はその場にへたり込んだ。一気に力が抜けたからだ。
ただ、私がニアを殺したという事実は変わらない。だけど、ニアが復活するのが分かっただかで嬉しさと安堵で力が抜けてしまった。
セーラが私に駆け寄って支えてくれる。
「ごめん」
「んーん、大丈夫だよ。ちょっと色々あったからね。少し休も」
「うん、ごめん、ごめんね……」
私はセーラに支えられながら、アニマの繭を抱きしめてただただ謝ることしかできなかった。
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