【書籍化決定】死にまくり女子高生の冥様は無自覚にゲームバランスを破壊する~運営さん、ただ死にたいだけなのにシステムが私の邪魔をしてくるんですがっ!!~ 作:ミポリオン
「あはははっ、ちょーウケる」
「だよねぇ」
遠くで同じ服を着た十代後半の女の子たちが楽しそうに笑っている。
どこでもありふれた学校の風景。これが日本の女子高生たちの日常。そのはずなのに私の傍には誰にもいない。
今日も私は一人で本の世界に逃げ込んでいる。
でも実は、チラチラと彼女たちの様子を窺っては、彼女たちのようなキラキラした青春の日々を羨んでいた。
私は幼い頃からコミュニケーションがとっても苦手だった。
私なんかが話しかけていいのかな。
私なんかが一緒に遊んでもいいのかな。
そんな風に考えていたら出遅れてしまい、どこのグループにも属することができずにひとりぼっち。
気づけば、先生と一緒に過ごしてばかり。
私は一人の友達もできないまま幼稚園を卒園していた。
「ね、ねぇ」
「あぁ~、ごめんね、ちょっと用事があるの」
「そ、そそそそ、そうなんだ」
小学生に上がった後、今度は一人にならないようにとクラスメイトに話しかけた。
でも、私が上手く話せなかったり、的外れなことばかり言ってしまったりしているうちに、誰も私に声を掛けなくなっていく。
そしてまたひとりぼっち。
中学生になってもそれは変わらず、一念発揮して文学部に所属。
ずっとぼっちだった私は本が友達。漫画や小説ばかり読んできた。文学部なら同じ趣味の人と出会えると思っていたけど、話がかみ合わずに結局一人。
グループから外れて一人でいることに耐え切れず、そのまま退部。
結局ひとりぼっちのまま中学校も卒業した。
ひとりぼっちで時間を持て余した私は勉強だけは沢山していて、特に苦労もせずに近所の進学校の高校に入学。
そこでは部活に入部する気も起きなくて今に至る。
結局、私は幼稚園から高校生になるまでずっとぼっちだった。
そんな私に1つの転機が訪れる。
「この中なら……」
それは「インフィニット・テイルズ・オンライン」との出遭い。
日本初の完全没入型のVRMMORPGで、ファンタジー世界をまるで現実のように体験できるらしい。
ゲームの世界で現実とは全く別の自分になって新しい人生を歩むことができる。そこでなら私も仲のいい友達ができるかもしれない。
そう思って私は初回募集に応募した。
「やった……」
その結果、何の因果か抽選に当選。早速ゲームをスタートした。
私には好きなキャラクターがいる。
それは人気漫画『くノ一ちゃんは忍べない』の主人公、桃園《ももぞの》さくら。
ピンク色の忍び装束を着ているくノ一。忍ぼうとしているんだけど、全ての行動が裏目に出て周りから注目されてしまう女の子。
そもそもピンクな忍び装束が忍べてない大きな原因なんだけど、なぜか気づかないまま忍ぼうと健気に頑張る彼女。
そんなちぐはぐな頑張りをする彼女が自分みたいで少し親近感が湧いてしまった。
そこで私は
これならいける。
そう思ってゲームの世界にログインした。
「凄い……」
視界が真っ白になった後、切り替わる。
ぼんやりとした世界だ。
何度か瞬きをすると、徐々にハッキリと見えてくる。そして……瞳が世界を映した瞬間、私は言葉を失った。
だって、物語の中にしか存在しないファンタジーな街並みが目の前に現れたから。今まで頭の中にしか存在しなかった世界がそのまま再現されているみたいだった。
「こ、こんなことしてる場合じゃないよね」
ゲーム世界に気を取られてる場合じゃない。私がこのゲームを始めたのは友達を作るため。
他のプレイヤーに話しかけて積極的に仲良くならないと。
「あ、あの~」
私は勇気を出して近くに居たプレイヤーにおそるおそる話しかける。
「あ、見つけた。こっちこっち」
「良かったぁ。人が多くて会えないかと思った」
でも、そのプレイヤーは私に気づかないまま、元々約束していたらしいプレイヤーと合流して去っていく。
「くぅ~っ、最高っ!!」
「早くモンスターと戦いてぇ!!」
「もふもふぅっ!!」
「おで、肉、食う」
他のプレイヤーも続々と各々の冒険に旅立っていく。
「あっ、あっ……」
もたもたしている内に私はその場に一人取り残されていた。
――ピュ~ッ
辺りに寒々とした風が吹く。
「あ、あの……」
それでも私は諦めずに通りがかったプレイヤーに話しかけた。
「あれ見てよ!!」
「あ、めっちゃ可愛い」
でも、私の声は全く聞こえないように通り過ぎていく。
おかしい。
「す、すみません」
「あの」
「こんにちは」
何度も何度も話しかけてるのに、誰も私に気づいてくれない。
それからもプレイヤーたちに話しかけても誰も反応してくれなかった。それどころかNPCにさえも気づいてもらえない。
私だけ皆と同じ次元にいないみたいな感覚。まるで幽霊にでもなったかのよう。
「バグ? いや……」
でも、それは現実の私と同じだ。
そう。ゲームの中でもなんにも変わらない。自分は結局自分でしかなかった。環境が変わったからと言って、都合の良い展開になったりしない。
どこまでも現実は残酷だった。
友達を作ろうと思った私だけど、早々に諦めてNPCとさえ関わらない完全なるソロでプレイし始めた。
ポータルを登録した後、モンスターを倒しに街を出る。
「モンスターにも?」
驚きなことに私はモンスターにさえ気づかれなかった。
私は持っていた短刀を振り下ろす。
「ギュウッ!?」
それだけでモンスターは死んでしまった。
他のモンスターの目の前に立ってみても全く反応されない。目の前で踊っても、叫んでも、変顔しても気づかれる気配すらなかった。
私は気づかれないことをいいことに憑りつかれたようにモンスターを倒していく。
『レベルが上がりました』
『レベルが上がりました』
『レベルが上がりました』
『レベルが上がりました』
レベルもどんどん上がってく。
『悟られぬ者の称号を獲得しました』
『一撃一殺の称号を獲得しました』
『暗殺者の称号を獲得しました』
気づけば称号を獲得し、
『不意打ちスキルを習得しました』
『急所攻撃スキルを習得しました』
『防御力無視スキルを習得しました』
スキルも覚えた。
『隠密のスキルレベルが上がりました』
『気配遮断のスキルレベルが上がりました』
『知覚遮断のスキルレベルが上がりました』
『魔力遮断のスキルレベルが上がりました』
『無音行動のスキルレベルが上がりました』
徹底した忍者プレイをするために取得した初期スキルもぐんぐん上がる。
「きゃあああああっ!! 誰か助けてぇええええっ」
そしてある時、私はPKがプレイヤーを襲うところに遭遇。
「ぐはぁっ」
「え? え?」
気づけば、そのプレイヤーを助けていた。
ただ、私はその人に気づいてもらえない。その時プレイヤーは不思議そうにしながら去っていった。
それから遭遇する度にPKを殺し続けた。
「あっ、これ私のことだ」
すると、私は自分のことが掲示板に書かれていることに気づく。
そこで私は思いつく。有名なプレイヤーを殺せば、誰かに気づいてもらえるようになるかもしれない、と。
私は掲示板で情報を流し、プレイヤーの暗殺依頼を受け始めた。
それから何度も依頼を成功させるうちに私の名声が広がり始める。私が認識されていることが嬉しかった。
それでも誰も私を見つけることはできない。
そのうち、ある有名プレイヤーを暗殺する依頼が入った。
その人物はイモータルや魔王と呼ばれ、あらゆる攻撃に耐性があり、一万人以上を一人で虐殺したという恐ろしい人物。
流石に殺せないかもしれない。
最初はビビりながら魔王に近づいた。でも、魔王は私に気づかない。
そして、背後に忍び寄って短刀を突き刺す。
「ぐふっ」
案外簡単に殺すことできた。
あははははっ。
名高い魔王も私には敵わない。
それが掲示板で広がり始める。
みんながもっと私の存在を認めてくれた。自分がちゃんと認識されていると思うと嬉しかった。
でもその後、驚くことにさらに魔王を殺す依頼が。しかも何千回分もの報酬とともに。
恨みを買った誰かの仕業? でもそれは私には関係のないこと。依頼はこなすのみ。
一度殺した相手を殺すのは簡単。
私は魔王を殺す、殺す、殺す。
なーんだ、魔王だなんて言っても、ただのプレイヤーの一人なんだ。
殺している内にそう思った。
でも、私は魔王を勘違いしていた。魔王の恐ろしさはもっと別の場所にあった。
何度も何度も殺している内に、少しずつ、本当に少しずつ殺しにくくなっていることに気づかなかった。
最初は本当に微々たる変化だったけど、どんどんその変化は大きくなり、一撃では殺せなくなって初めてその異常性に気づく。
しかし、一度依頼を受けた以上、途中で終わらせるわけにはいかない。そんなことをすれば、私の名前に傷がつく。
でも、何度も殺しているうちに、最後は殺せなくなってしまった。
理屈は分からないけど、魔王の恐ろしさは殺されるたびに強くなること。それこそが魔王の本当の恐ろしさだったんだ。
「もう依頼はやらなくてもいいよ」
魔王は私を正確に認識して声を掛けてくる。
今まで一度も声を掛けられたことなんてないのに……。
でも、掲示板で気づかれるよりもずっと嬉しかった。だって、ちゃんと私を見て話してくれていたから。
その上依頼失敗は誰にも言わないと配慮までしてくれた。
ただその後、信じられない言葉が耳に入る。
「それから一つお願いがある」
魔王からのお願い。それは本当に恐ろしい内容に違いない。
私は息を呑む。
「もしよければフレンドになって欲しい」
「!!」
でも、思ったのとは違った。ただ、別の意味で衝撃的だった。
フレンド。それはゲームを初めてのことだったから。嬉しい。嬉しくて舞い上がりそうになる。
この人が、この人だけがゲーム内で私を認識できる。
私が承諾するのに時間は要らなかった。
いつもお読みいただき、誠にありがとうございます。
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