少しでも楽しめられたなら嬉しいです。
深い森の中、角を生やした人型生物―――魔族の男は逃げていた。
一人の少女から。
「しつこいな」
魔族の男は両手から雷の球を生み出し、追いかけてくる少女に投げ飛ばした。
迫りくる雷の球を、少女は宝石が埋め込まれた湾曲した片刃の剣で切り裂く。
切り裂かれた雷の球は消滅。
それを見た魔族の男は目を見開く。
「チッ」
魔族の男は地面に向かって雷の球を投げ、砂煙を発生させる。
「よし、これで」
魔族の男が逃げようとした時、
「どこに行くの?」
彼の目の前に少女が現れる。
しまったと思った時には、もう遅かった。
魔族の男の両腕と両脚は一瞬で斬り飛ばされる。
両腕と両脚を失った彼は、地面に倒れてしまった。
魔族の男は己を見下ろす少女に言う。
「化物め」
「失礼だね。私にはカンネっていう名前があるんだけど」
少女は化物と呼ぶにはあまりにも可愛らしい十五の子供だった。
ポニーテイルに結ばれたオレンジ色の髪。
くりっとしたオレンジ色の瞳。
ショートパンツにへそ出しトップス。
剣とドラゴンの紋様が描かれた黒と白のロングコート。
そして両腕と両脚を覆うプロテクター。
まるで剣士のような格好をしていた彼女を見て、魔族の男は笑う。
「知っているさ。多くの魔物や魔族を殺している剣の魔法使い……《魔剣のカンネ》」
「あれ?ひょっとして私って有名人?」
「噂になっているよ」
「そっか」
嬉しそうに笑う少女。
彼女は瞳を怪しく輝かせて、剣を上段に構える。
「なにか言い残すことは?」
「君は化物だよ。魔族以上に」
「あ、そ」
少女は無慈悲に剣を振り下ろした。
魔族の意識は暗闇に染まる。
<><><><>
魔族を倒した私は、剣を肩に担ぐ。
「終わった~これでここらへんの魔族は全て倒したかな」
私は魔族の言葉を思い出し、笑みを浮かべる。
「《魔剣のカンネ》……か。異名が付くぐらい有名になったんだな~」
異名が付いた。
それは前世がアニメオタクである私にとっては嬉しいことだ。
「頑張ってきてよかったな……」
私は思い出す。
この世界に……『葬送のフリーレン』の世界に転生してきたばかりのことを。
<><><><>
「あれ……?」
気が付いたら俺―――
いや、ちょっと待って。
なんで俺、幼女になってんだよ。
「どうなってんだ?」
えっと、待って。
状況を整理しよう。
まず俺は田中流。
日本に住む社会人。
平凡に生き、平凡に暮らしていた。
趣味はアニメを見ること。
これといった特徴がない平凡な社会人。
「えっと……確か俺はアニメを見ていたんだよな」
俺が覚えているのは、アパートで録画していたアニメ『葬送のフリーレン』を見ていたことだ。
ちょうど一期の最終回を見終わって……確か寝たんだったよな。
で、気付いたら知らない部屋にいて、知らない女の子になっていた。
いや、意味わからんて。
「というか、この子……どこかで」
姿見鏡に映る俺は可愛らしい女の子だった。
絶世の美少女というわけではないが、普通に可愛い。
短いオレンジ色の髪に、くりっとしたオレンジ色の目。
あれ?俺、この子……知っているような?
「というかこれ……もしかして転生ってやつか?」
夢かと思った俺は自分の頬を引っ張る。
うん、普通に痛い。
「ということはこれは現実か……」
俺はようやくこれは夢ではないと理解した時、部屋のドアからノックの音が聞こえた。
「カンネ。朝ごはんよ」
ドアから女性の声が聞こえた。
恐らくこの身体の母親だろう。
「カンネ……カンネ。そうだ……思い出した」
俺はようやく思い出した。
そうだよ。
この身体の名前はカンネ。
大人気漫画にしてアニメで有名になった『葬送のフリーレン』に登場するキャラクターだ。
『葬送のフリーレン』
それは魔王を倒した勇者の仲間の一人、魔法使いフリーレンが多くの人間と出会い、別れを繰り返す物語。
感動あり、戦闘あり、笑いありのエルフの旅。
彼女の物語は多くの人を魅了させた。
俺もそんな『葬送のフリーレン』に感動した一人だ。
アニメしか見たことないけど。
そしてそんな物語に少しだけ登場するキャラクターの一人であり、今の俺―――カンネだ。
魔法都市オイサーストで開催される一級魔法使い試験に参加した一人であり、一次試験でフリーレンと同じパーティーを組む女の子。
水を操る魔法を使う三級魔法使い。
二次試験まで合格したのだが、三次試験ではゼーリエという最強エルフに不合格を言い渡される。
つまりモブより出番はあるが、主要キャラクターほど出番があるわけじゃない少女がカンネだ。
いや~、まさかアニメキャラクターに転生するとはな。
主要キャラクターであるシュタルクやフェルンに転生できなかったのは残念だが、まぁいい。
むしろ今……俺は興奮している。
なぜかって?
そんなの決まっているじゃん!
「この世界は魔法がある!剣がある!魔物がいる!興奮しないほうが無理だ!!」
この世界は魔法と剣のファンタジー世界だ。
オタクが望む世界だ。
せっかく魔法がある世界に転生したんだから、魔法を使ってみたい!
いや、せっかくだから剣も極めてみよう。
魔法剣士とか超カッコイイだろう!!
「よし、決めた。俺―――いや、私は魔法剣士になる!」
読んでくれてありがとうございます。
ちょくちょく投稿するのでよかったらこれからもよろしくお願いします!
あと小説家になろうとカクヨムで『リトライ~過去に戻った鍛冶師は幼馴染と家族を死なせないため、めちゃくちゃ強くなります!~』と『悪役転生~弟子を庇って死んだらアニメに登場する最凶のラスボスに転生していた~』というものを投稿しています。
よかったら読んでみてください。
少しでも暇つぶしになったら嬉しいです。