深い森の中で、赤い髪の魔族の少女は大きな石に座って夜空を眺めていた。
そんな彼女の耳に、足音が聞こえる。
「久しぶりだね」
魔族の少女に近付いたのは、オレンジ色の髪をポニーテイルにした少女。
くりっとしたオレンジ色の瞳。
ショートパンツにへそ出しトップス。
両腕と両脚を覆うプロテクター。
腰に差した剣。
そして……剣とドラゴンの紋様が描かれた黒と白のロングコート。
まるで戦士のような格好をしている少女を見て、魔族の少女は笑う。
「やぁ……また会いに来てくれたんだね」
「まぁね」
月の光に照らされた少女は、鞘からゆっくりと剣を抜く。
「あなたを倒すために」
宝石が埋め込まれた湾曲した片刃の剣を構え、少女は瞳を怪しく光らせる。
「そう……」
魔族の少女は石から降りて、尋ねる。
「殺す前に聞いておくよ。名前を教えて」
魔法使いであり、剣士でもある少女は答える。
「カンネ。それが……私の名前」
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「カンネ。それが……私の名前」
魔族との再戦に来た私は自分の名を告げた。
私は勝つ。絶対に。
そのために新たな魔法を作り、使いこなせるよう鍛錬をした。
必ず……目の前にいる魔族を、
殺す!
「私に勝てると思ってるの?」
「思っているからここに来たの。“
無数の魔法で自分を強化した私は弾丸の如き速さで魔族の少女に突撃し、魔法刀―――影月を振るう。
鋭い斬撃を魔族の少女は躱し、掌から風の刃を飛ばす。
迫りくる風の刃を刀で切り裂き、魔族の少女の懐に入る。
「“
炎を纏わせた刀を素早く振るい、魔族の少女の右腕を斬り飛ばす。
だが魔族の少女は動じない。
彼女は左手から風の砲弾を放ち、私の腹に直撃。
強い衝撃を受け、血を吐いた私は吹き飛ぶ。
だがすぐに体勢を整え、口に付いていた血を指で拭う。
片腕を斬り飛ばしただけじゃあ、ダメみたいだね。
なら、さらに攻める!
私はロングコートのポケットから小さな木の杖を取り出し、魔法を唱える。
「“
杖から光の刃を形成し、新たな剣を作り出す。
左手に光の剣、右手に炎を纏わせた刀を構え、私は魔族を睨む。
「行くよ!」
私は魔族の少女に接近し、二本の剣を振るう。
怒涛の連続剣撃を放ち、魔族の少女の身体を切り裂こうとした。
だが魔族の少女は私の連続攻撃を全て紙一重で躱す。
そして、
「甘いよ」
左手の人差し指から風の弾丸を飛ばし、光の刃を形成していた杖を壊した。
光の剣を失った私は刀を両手で握り締め、刺突を放つ。
鋭い刺突は魔族の少女の肩に突き刺さった。
だが同時に、魔族の少女が放った風の刃が私の胸を切り裂く。
傷口から血を流しながら、魔族の少女から距離を取る。
「ハァ…ハァ…ハァ……」
痛い。
息が苦しい。
血を流しているから頭が少しクラクラする。
だけど、
「負ける…わけには……いかないよね」
私は魔法剣士になりたい。
強くて、カッコイイ……魔法剣士になりたい。
痛いぐらいなんだ。
血が流れるぐらいなんだ。
最後に勝つのは、
「私だよ!」
さぁ勝とう。
目の前にいる魔族の少女に!!
「“
次の瞬間、私の身体からオレンジ色の粒子が発生した。
無限に湧き出す魔力。
それを見て、魔族の少女は巨大な竜巻を放った。
迫りくる巨大竜巻。
直撃すれば死ぬ。
だけど私は不思議と怖くない。
「悪いけど……この一分間は、誰にも負けないよ」
私は新たな魔法を発動する。
「“
私の身体が禍々しい赤黒い鎧に覆われ、稲妻が発生する。
「ハァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」
力強く炎と赤黒い稲妻を纏わせた刀を振るい、一閃。
襲い掛かった巨大竜巻を真っ二つにした。
それを見て魔族の少女は目を丸くする。
「ウソ……」
「ウソじゃないんだな、これが!」
私は一瞬で魔族の少女の背後に移動し、刀を振るう。
速い斬撃が彼女の背中に深い傷を付ける。
「この程度」
魔族の少女は振り返り、左手から風の刃を放とうとした。
だがそれよりも速く、私は刀を振るい、魔族の少女の左腕を斬り飛ばす。
両腕を失った魔族の少女は呆然とする。
「あらら。どうやら私の負けみたいだね」
「そうだね……“
魔法を唱えると、刀が白く輝き出す。
「これで終わりだよ」
私は刀を振るい、魔族の少女を切断。
切断された魔族の少女は黒い塵と化して消える前に、呟く。
「さよなら……カンネ」
魔族の少女が消滅したと同時に、私が纏っていた鎧が消えた。
刀から輝きも失い、身体から放出していたオレンジ色の粒子も止まる。
「どうやら一分が過ぎたみたいだ…ね……」
全ての魔力を使い果たした私は、地面に倒れる。
ハハハ、少し……無理をしすぎたみたい。
でも勝てた。
勝つことができたよ。
「これからどうしよう」
“魔力を無限にする魔法”と“狂戦士の鎧を纏う魔法”と“一撃必殺を放つ魔法”の影響で魔力も体力も残っていない。
もう動けない。
というか傷口から血が流れてる。
え?どうしよう……本当にどうしよう。
このままじゃあ、本当に死んじゃうんだけど。
そう思っていた時、
「まったく……随分、無茶したな」
聞き覚えのある声が聞こえた。
声が聞こえた方向に視線を向けると、そこにねずみ色の髪の少女—――ラヴィーネがいた。
「ラヴィーネ……どうしてここに?」
「お前が心配でついてきてたんだ。ついてきて正解だった」
彼女の手には救急箱があり、どうやら私が魔族と戦って大怪我するのを予想していたみたい。
ラヴィーネは私の傷を消毒し、包帯を巻いた。
応急処置した私をラヴィーネは背負い、街に向かって歩く。
「お前って馬鹿だよな。こんな怪我をして……見ててハラハラしたぞ」
「ごめん……どうしてもあの魔族に勝ちたかったから」
「そうかよ……カンネ」
「なに?」
「かっこよかったぜ」
友達に褒められた私は嬉しくなり、頬を緩める。
「えへへ……ありが…と……」
「おい?大丈夫か?」
「ごめん……疲れて…眠い」
「なら寝とけ」
「うん…そうす……る」
私はゆっくりと目を閉じた。
初めて魔族に勝てた。
今日のことは……絶対に忘れない。