「まさかこんなことになるとは思わなかったな」
私は頬から一筋の汗を流す。
まさかの予想外な事が今……目の前で起きている。
「なんで……アウラがここにいるの」
今、私の目の前には首なし鎧騎士達を従わせた大魔族―――アウラがいた。
断頭台のアウラ。
魔王直属の幹部“七崩賢”の一人。
《
今から数年後には《葬送のフリーレン》によって倒される敵キャラ。
そんな奴がなんでこの街に。
いや……今はそんな事より戦闘準備をしなくちゃ!
「“
私は魔法を発動し、一瞬でロングコートとプロテクター、魔法刀―――影月を装備した。
それを見て、アウラは目を細めて、笑みを深める。
「あなたね……《魔剣のカンネ》は」
「……私を知っているの?」
「ええ。多くの魔族や魔物を殺した剣の魔法使いの少女……あなたにはお礼をしなくちゃいけなくてね」
「お礼?」
「そうよ……あなた、私の部下を殺したの」
「!!」
「だから私はそのお礼をするために来たのよ」
なるほど……どうやらこの前、襲撃してきた魔族達はアウラの部下だったようだね。
つまり、アウラがこの街に来たのは私のせいってわけか。
「まったく……顔を隠して戦えばよかったかも」
私は無数の魔法を発動し、己を強化。
剣を構えて、アウラを睨む。
なんとしても撃退しないとね。
一応、倒せないわけではないけど……倒すわけにはいかない。
アウラを倒すのはフリーレンだ。
今、アウラを倒すとこの先の未来がどうなるか分からなくなる。
できる限り原作通りに進めないとダメ。
つまり私の勝利条件は……アウラをこの街から撤退するぐらいまでボコボコにすること!
「行くよ!」
私はアウラに向かって駆け出した。
疾風の如き速さで大魔族に近付く。
しかし無数の首なし鎧騎士達が道を阻む。
「邪魔だよ!」
私は素早く剣を振るい、鎧騎士達の身体を切断する。
この人たちには恨みはないけど、邪魔するなら……容赦なく斬る。
「へぇ~……やるわね」
「余裕でいられるのは今の内だけだよ!」
私はアウラの懐に入り、
「魔剣技―――死天」
鋭い刺突を放った。
あらゆるものを破壊する刺突は、
「無駄よ」
半透明のバリアーーー防御魔法によって防がれてしまう。
硬い金属すら破壊する私の刺突を……防いだ!?
なら!
「魔剣技―――闇嵐」
私は嵐の如き連続剣撃を放つ。
しかしアウラは余裕の表情で私の連続攻撃を全て紙一重で躱す。
あ、当たらない!
「次はこっちの番……
アウラは右手を私に向けて、魔法を発動。
彼女の掌から黒い極太の光線が放たれた。
“人を殺す魔法”を使えるの!?
いや、驚いている場合じゃない。
「魔剣技―――天魔!」
私は素早く、強く剣を振るい、迫りくる光線を切り裂いた。
甘く見ていた……まさかアウラが“人を殺す魔法”を使えるなんて。
アニメではそんなことなかった。
彼女はフリーレンに簡単に倒されるような魔族だったはず。
「いや……違うんだ」
フリーレンは“服従させる魔法”を利用したことで簡単に勝てていたが、アウラは普通に強いんだ。
なにせ“七崩賢”の一人。
五百年も生きる大魔族。
色んな魔法が使えて当たり前。
強くて当たり前。
フリーレンに簡単に倒されたから雑魚だと思っていたけど、違った。
アウラは……私よりも強い。
「だけど……」
勝てない相手じゃない。
私には“魔力を無限にする魔法”がある。
アウラが“服従させる魔法”を使った瞬間、“魔力を無限にする魔法”を使えば……私の勝ち。
“服従させる魔法”を利用して「この街から離れろ」と言えばいい。
彼女が“服従させる魔法”を発動させるまで……私は攻める!
「行くよ!」
ロングコートのポケットから金属の小さな魔法の杖―――三日月を取り出し、“
杖から光の刃を形成し、私は地面を蹴った。
光の剣と刀を振るい、剣撃を放つ。
「無駄よ」
アウラは鎧騎士達を盾にして、攻撃を防ぐ。
そして彼女は指をパチンと鳴らした。
直後、私の足元から鋭い岩の棘が勢いよく生えた。
私は素早く躱し、アウラに近付く。
「遅いわ」
アウラは私の頭の上に大きな炎の球を生み出す。
そしてその炎の球を落した。
私はその炎の球を刀で一刀両断。
真っ二つに切断された炎の球は消滅する。
「やるわね」
微笑みを浮かべるアウラ。
私は彼女に突撃し、怒涛の連撃を放つ。
だが私の連撃は硬い半透明のバリアによって防がれる。
「甘いわよ」
アウラは掌から冷気を放った。
素早く距離を取るが、冷気は私の左腕に直撃。
光の剣を持っていた私の左手は、指先から肩まで凍ってしまった。
これじゃあ左腕は使えない。
「へぇ……今のを躱すんだ」
流石は大魔族……ここまで強いなんて。
傷一つつけられない。
しかも無数の魔法を使えるし……正直言ってキツイ。
「《魔剣のカンネ》。あなたは素晴らしい剣士であり、魔法使いよ。流石は剣の魔法使い。百年も生きていない小娘にしてはよくやったわ。でも……もうおしまい」
アウラは指をパチンと鳴らした。
なにかの魔法!
私が警戒していると、背後から気配を感じた。
振り返るとそこには三人の魔族がいた。
一人は茶色の長髪の男。
二人目はピンク髪をツインテールにした少女。
三人目は眠そうな目をした緑髪の少年。
「首切り役人のリュグナー、リーニエ、ドラート……」
まさかのアウラの直属の部下が登場。
ここに来て、加勢とかそれはない……よ……。
「え?」
私は一瞬、思考が停止した。
今、目の前の現実が受け入れられなかったから。
《首切り役人》と呼ばれる魔族の三人の足元には、血だらけで倒れている人がいた。
恐らく人質だろう。
人質を殺されたくなければ言うことを聞けって感じの。
だけど今はそんなことどうでもいい。
血だらけで倒れている人たちの中に……私が知っている女の子がいた。
「ラ…ヴィーネ」
人質の中には私の友人―――ラヴィーネがいた。
そのラヴィーネは左目が潰れており、右腕と左脚がなくなっている。
「ああ、この娘の知り合いだったか」
そう答えたのは長髪の男魔族―――リュグナーだった。
「私がこの娘を人質にしようとした時、激しく抵抗してな。黙らせるために片目と片腕、片足を奪わせてもらったよ。ああ、ちゃんと生きているぞ。今は……な……」
その言葉を聞いた私は……自分の中でなにかが切れる音が聞こえた。