「うう……ここは」
目を覚ますと私の視界に知らない天井が映った。
ここはもしかして……、
「あ、目を覚ましましたか」
声が聞こえた方向に視線を向けると、そこには修道服を着た若い神父がいた。
神父がいるということはここは教会か。
私は教会のベットで治療を受けていたのか。
「治療はしたからもう問題ないと思いますが……どこか痛みますか?」
「いえ……」
凍っていた左腕は元に戻っており、怪我はない。
そうか……アウラを倒した後、私…気絶して……そうだ、ラヴィーネ!
「あ、あの!私と同じくらいの歳の女の子を知りませんか!?」
「……それは」
神父は暗い表情で目を逸らす。
嫌な予感を感じながら、神父の肩を掴む。
「どこに!どこにいますか!!」
「……ついてきてください」
神父はそう言って私をある部屋に案内する。
「ここです」
神父は部屋のドアを開けて、中に私を入れた。
部屋に入った私は……言葉を失う。
ああ…嘘。嘘だと言って……。
私の目に映ったのは包帯が巻かれて眠っている友人の姿だった。
やはり右腕、左脚、そして左目を失っている。
「回復魔法である程度、治しましたが……流石に失った肉体の一部を再生させることはできませんでした」
「ラヴィーネは……目を覚ましますか?」
「……酷い怪我を負っていたので……目を覚ますか。最悪、このまま……」
私は震える手でラヴィーネの左手を握る。
嫌だ。……嫌だよ。
あんたが死ぬなんて私は許さないよ。
ねぇ……いつもみたいに喧嘩しよう?
いつもみたいに笑って?
一緒に……魔法の鍛錬をしよう?
「お願い……目を覚まして。私…私は……ラヴィーネがいないと……あ」
そうか。
失いそうになって私は初めて気づく。
ラヴィーネと一緒にいるとなぜか心が温かった。
ラヴィーネと一緒にいると幸せを感じていた。
ラヴィーネの笑顔を見ると……ドキドキしていた。
そう……なんだ。私……ラヴィーネのことが……大好きなんだ。
友人としてではなく……ラヴィーネに、恋をしていたんだな。
「嫌だ……死なないで」
お願い。目を覚まして。
「私……私はあなたに……」
大好きだって……伝えていない。
「助けてやろうか。その娘を」
突然、背後から聞こえた女性の声。
慌てて振り返った私は……目を大きく見開く。
「なんで……あなたがここに」
私の背後にいたのは、長い耳を生やしたエルフの女性。
長い金色の髪を伸ばし、金色の瞳を持つ彼女は微笑みを浮かべている。
「ゼーリエ様」
魔法使いたちを束ねる組織『大陸魔法教会』の創始者であり、エルフの大魔法使い―――ゼーリエ様がそこにいた。
「ほう、私を知っているのか?」
「この世界であなたを知らない人はいませんよ」
「そうか、なら話が早い。……単刀直入に聞く。その娘を助けたいか?」
「!!助け……られるのですか?」
「ああ。その娘が生きられるようにしてやる。失った腕や脚、目も元通りにしてやる。ただし条件がある」
「条件……ですか?」
「ああ。条件は二つだ」
「……一つ目はなんですか?」
「私の弟子になれ」
「!!」
私は驚きを隠せなかった。
まさかゼーリエが弟子になれと言うとは思わなかったから。
「なんで……弟子になれって言うのですか?」
「気に入ったから。見ていたぞ。“七崩賢”の一人、《断頭台のアウラ》と戦っているところを」
「!!見ていたんですか?」
「ああ。《魔剣のカンネ》がどんなやつか気になってな。噂以上だった。お前ならもしかしたら魔法の高みに行けるかもしれない。もし弟子になるなら特別に一級魔法使いの資格を与えよう。お前にはそれぐらいの実力はある」
一級魔法使い。アニメではカンネがラヴィーネと一緒になろうとしていたものだが、ゼーリエに不合格を言い渡され、なれなかったもの。
それを私は試験を受けることなく、なれる。
いや……今はそんなことはどうでもいい。
「もう一つの条件は?」
「剣を捨てろ」
「なっ!」
「お前は剣を捨て、魔法使いとして生きろ。それがその娘を助ける条件だ」
剣を捨てる。
それは魔法剣士として戦い続けたい私にとって……夢を諦めるのと同じだった。
最強の魔法剣士として生きるのが夢だった。
その夢を……ゼーリエは諦めろと言っているのだ。
捨てたくない。これからも魔法剣士として生きたい。
けど……、
「本当に……その二つの条件を呑めば。私の友達を助けてくれるのですね?」
「ああ。約束しよう」
「……分かりました」
私は片膝を床につけ、頭を下げた。
「私は……あなたの弟子になります。そして魔法剣士の人生を……剣を……捨てます」