魔剣のカンネ   作:グレンリアスター

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エルフの怒り

「報告は聞いている。勇者の剣を抜いたそうだな」

「はい」

 

 魔法都市オイサーストに戻った私はゼーリエ様に呼び出された。

 呼び出された理由は、勇者の剣の件だ。

 椅子に座っているゼーリエ様はとても不機嫌な顔をしている。

 

「まさか勇者の剣が魔法使いのお前を選ぶとはな」

 

 面白くなさそうに言うゼーリエ様。

 それもそうだよね。

 剣の才能がなく、剣を捨てた私を勇者の剣は選んだ。

 魔法使いの師匠としては面白くないはず。

 

「まぁいい。その勇者の剣はどこにある」

「ここに」

 

 私は腰に差していた勇者の剣をゼーリエ様に見せた。

 

「ふん。どこにでもありそうな剣だな。まぁいい。それは私が預かる」

「承知しました」

 

 私は勇者の剣をゼーリエ様に渡そうとした。

 ゼーリエ様の指先が、勇者の剣に触れようとしたその時、

 

「!!」

 

 勇者の剣が光り出し、ゼーリエ様の片腕を焼いた。

 肉が焦げた臭いが充満する。

 

「ゼーリエ様!」

「騒ぐな……大したことはない」

 

 ゼーリエ様は魔法を発動し、片腕を治療。

 彼女の焦げた腕は元へと戻る。

 

 どういうこと?

 なんで突然、ゼーリエ様の腕が?

 

「なるほど……勇者の剣は認めた主以外が触れると怪我するようだな。めんどくさい剣だな」

 

 さらに不機嫌そうに顔を歪めるゼーリエ様。

 そうとう怒っている。

 こんなゼーリエ様……生まれて初めて見た。

 

「カンネ。その剣はお前が持っていろ」

「よろしいのですか?」

「剣を持つことは許そう。だが……その剣を使うことは許さない。いいな?」

「はい」

 

 勇者の剣。

 はたしてこの剣の主は私でいいのだろうか?

 

「しかし私の弟子が勇者の剣に認められたか……アイツが聞いたらどんな顔をするんだろうな」

「アイツ……とは誰ですか?」

「決まっている」

 

 

 

 

「勇者の仲間の一人……《葬送のフリーレン》だ」

 

<><><><>

 

 地面が雪に覆われた山を歩く魔法使いのエルフがいた。

 そのエルフは銀色の髪をツインテールに結び、両目にはエメラルドのような緑色の瞳を宿している。

 

「寒い」

 

 へっくちゅんとくしゃみをする魔法使いのエルフーーーフリーレン。

 そんな彼女と並んで歩く紫髪紫眼の少女—――フェルンは「雪が降っているから当然です」と呟く。

 

「フリーレン。集落が見えて来たぞ」

 

 斧を背負った赤髪の少年—――シュタルクは指を指した。

 彼らは死者と対話ができるとされる魂の眠る地(オレオール)を目指す旅人である。

 

「到着したみたいだね。剣の里に」

 

 フリーレン達は剣の里に近付き……あることに気が付く。

 

「焦げてる」

 

 剣の里にあるいくつもの建物が燃えていた。

 

「本当ですね」

「火事でもあったのか?」

 

 いったいなにがあったんだと思っていると、

 

「お待ちしておりました。フリーレン様」

 

 背の小さい少女がフリーレンたちに近付いた。

 

「君が今の里長?若いね」

「はい。四十九代目です。世襲なもので。……ようこそ、剣の里へ」

「家がいくつも焦げているけど……なにがあったの?」

「魔族に襲撃されました」

「魔族に?」

「はい。ですが……ある一級魔法使いに倒してもらいました」

「そう、ならよかった。ちなみにどんな魔法使いが倒したの」

「《水魔のカンネ》様です」

 

 里長の言葉を聞いて、フェルンとシュタルクは驚く。

 

「《水魔のカンネ》……ですか?」

「《水魔のカンネ》ってあの……」

 

 驚いているフェルンとシュタルクを見て、フリーレンは「誰それ?」と首を傾げた。

 

「知らないのですか。若くして一級魔法使いになり、ゼーリエ様の弟子になった水の魔法使い」

「多くの魔族や魔物を殺し、“七崩賢”の一人—――大魔族《断頭台のアウラ》を倒した実力者だぜ?」

「へぇ~……あのアウラを倒したんだ。ちょっと会ってみたくなった」

 

 すごい魔法使いもいるんだな~とフリーレンが思っていると、里長がなにか言いにくそうにしながら話しをする。

 

「フリーレン様。とても言いにくいことがあるのですが」

「なに?」

「実は……《水魔のカンネ》様は……その……」

「だからなに?」

「勇者の剣を……抜きました」

「…………………は?」

 

 一瞬、フリーレンの思考が止まった。

 里長の言っている意味が分からなかった。

 

「勇者の剣って……勇者ヒンメルが抜いた伝説の剣だよな?」

「知っているのですか?シュタルク様」

 

 フェルンの問いに、シュタルクは「ああ」と答える。

 

「剣の里は勇者の剣を守っていたんだ。この里の近くの聖域には女神様が授けたとされる勇者の剣が刺さっていたんだ。その剣は歴史上のどんな英雄たちが引き抜こうとしても微動だにしなかった。80年前まではな。……だけど勇者ヒンメルはその剣を引き抜いたんだ。結構有名な話だけど…聞いたことないのかよ?」

「いえ……ハイター様からなにも。あれ?じゃあなんで《水魔のカンネ》様が勇者の剣を抜いたって言ったのです?」

 

 フェルンが里長に尋ねると、代わりにフリーレンが答える。

 

「……ヒンメルは抜けなかったんだ。勇者の剣を」

「「!?」」

「ヒンメルが勇者の剣を抜いたってのは……ヒンメルを英雄にしたがっている連中が考えた嘘。勇者の剣が抜けなかっただなんて……カッコ悪いエピソードは英雄には不要だから。でも……そうか、ヒンメルでも抜けなかった勇者の剣を抜いたんだ」

 

 フリーレンは目を細め、隠していた魔力を一気に解放した。

 魔力の嵐が発生し、フリーレンの髪と着ていた服が激しく揺れる。

 フェルンとシュタルクはフリーレンの魔力に思わず息を呑み、里長は尻もちを付く。

 

「《水魔のカンネ》」

 

 そう呟くフリーレンの瞳には……強い怒りが宿っていた。

 

「本当に会ってみたくなったよ」

 

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