雪が溶け始めた森の中をフリーレンは早歩きで歩く。
そんな彼女の跡をフェルンとシュタルクは追いかける。
「フリーレン様。そんなに急がなくても」
「そうだぜ?なぜそんな急いで歩くんだ?」
フェルンとシュタルクの問いに対し、フリーレンは「決まっているよ」と答える。
「《水魔のカンネ》に会いに行く。彼女は魔法都市オイサーストにいるみたいだからね」
「フリーレン様。《水魔のカンネ》様に怒るのは見当違いだと思います」
「そうだぜ。《水魔のカンネ》は勇者の剣を抜いただけなのに、怒るのは筋違いだ」
フェルンとシュタルクの言葉を聞いて、フリーレンは足を止める。
「二人とも。なにか勘違いしているみたいだから言うけど……私は《水魔のカンネ》に対して怒っているわけじゃない」
「そうなのですか?」
「じゃあ、なんで怒ってんだよ?」
フリーレンは一緒に旅をした青髪の青年—――ヒンメルのことを思い出しながら、答えた。
「私が怒っているのは……勇者の剣に対してだよ」
「勇者の剣に…ですか?」
「そう。まだ魔王が存在していた世界で…勇者の剣はヒンメルを認めなかった。ヒンメルは……本物の勇者だったのに」
フリーレンは知っている。ヒンメルの人を想う優しさを。
フリーレンは知っている。ヒンメルがどれだけ勇敢な勇者だったのかを。
フリーレンは知っている。ヒンメルがどれだけ勇者の剣に憧れていたかを。
フリーレンは知っている。ヒンメルと出会えたことが……どれだけ幸せだったかを。
「ヒンメルは魔王を倒した本当の勇者だ。なのに……魔王を倒された平和な世界で今更、勇者の剣は抜かれた。そして勇者の剣が選んだのは人間の魔法使いの少女を。勝手すぎるんだよ……勇者の剣は」
フリーレンはギュッと拳を強く握り締める。
「私は勇者の剣が選んだ勇者を……《水魔のカンネ》がどんなやつかを確かめたい。だから会いに行く」
「会いに行って……どうするのですか?」
「別に……ただ話すだけ。まぁその後は……」
「その後は?」
「ヒンメルを選ばなかった勇者の剣を破壊する」
「やめてください」
「いやだ」
フリーレンは早歩きを再開した。
そんな彼女を見て、フェルンとシュタルクははぁとため息を吐く。
「まるで恋人に嫌な思いをさせた奴に、怒っている彼女みたいです」
「だな」
フェルンとシュタルクの話し声は……フリーレンの耳には届かなかった。
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それからしばらく森の中を歩いていたフリーレンたちはある事に気が付き、足を止める。
「これって……」
フリーレンたちの目に映ったのは、氷の世界。
木や草、地面などが凍結しており、冷気の風が流れている。
「魔物……いや、魔法使いの仕業だね」
フリーレンが杖を構えると、フェルンとシュタルクも杖と斧を構える。
武器を構えながら凍った森の中を進む。
森の中を進んでいると、氷に覆われたいくつもの魔物が転がっていることに気付く。
「これは……」
フリーレンたちが前に進んでいると、一人の少女を見つけた。
その少女はねずみ色の髪をポニーテイルに結び、両目にはサファイアの如く美しい青い瞳を宿している。
彼女は高級そうな男物の服を着て、その上に青と黒のロングコートを羽織っていた。
そして少女の右手には、湾曲した細長い剣が握られている。
「魔法使い?いや……剣士?」
フリーレンたちが警戒していると、少女の口が動く。
「違う。私は……魔法使いでも、剣士でもない」
少女はフリーレンに視線を向けて、名乗る。
「私はラヴィーネ。魔法剣士だ」