魔法都市オイサーストに向かって旅をするフリーレンたちとラヴィーネ。
彼らは北側諸国のアルト森林にやってきていた。
その森林でフリーレンたちは薬草採取をしていた時、フリーレンとラヴィーネはある人物と出会う。
「そうか……お前らは冒険者なのか」
その者は顎に髭を生やした三十代ぐらいの男。
茶色の髪に眠たそうな目。
そして少し煙草の臭いがした。
「俺もずっと昔、冒険者に憧れていた」
懐かしそうに、そして少し寂しそうに彼は語る。
「誰だってある。ガキの頃のくだらない夢だ」
夢。その言葉を聞いたラヴィーネは、自然と思い出す。剣と魔法を使って戦い、夢を追いかけた幼馴染の姿を。
「ガキの頃、一緒に小さな冒険をたくさんした親友がいたんだ。無鉄砲な体力バカで、ゴリラみたいなやつだった。とはいっても友達想いでいいゴリラだったよ」
男の話を聞いていたラヴィーネは腰に差していた剣を撫でる。
彼女は思い出す。カンネと一緒に鍛錬をし、一緒に魔物と戦った日々を。
「大人になってそんな夢も忘れかけた頃……そいつから冒険者にならないかと誘われたんだ。あの時、あの手を取っていたら、何かが変わっていたんだろうな」
ラヴィーネは思ってしまう。あの時……魔族にやられて怪我をしなければ、親友は私の隣にいたのではないだろうかと。
「十年も昔の話だ。今でも後悔しているよ」
「ふーん。なんで私にそんな話をするの?」
少し興味なさげな感じで、フリーレンは男に尋ねた。
「俺の村は収穫祭が近くてな。料理に使う野草を森で採ってくるように兄貴に頼まれた。そしたら……底なし沼にはまっちまった」
男は少しずつ……底なし沼に沈んでいく。
それをフリーレンとラヴィーネはただ見ていた。
「俺はもう……おしまいだ。でも……お前がこの手を取ったら何かが変わるかもしれないぜ」
手を伸ばす男に、ラヴィーネは呆れてため息を吐く。
「おっさん……カッコ悪いぞ」
「悪かったな。とにかく助けてくれ」
「はぁ……フリーレン。なんとかできないか?」
ラヴィーネが尋ねると、フリーレンは「ちょっと待ってね、悩んでる」と答えた。
「こ…ここまで来て悩む要素なにかある?」
「手が汚い」
「絶対そんなこと気にしてる場合じゃないよ!それに嬢ちゃん……大人ってのは汚いもんなんだぜ」
「うーん…物理的に汚いのは初めてかも。もう少し時間いい?底なし沼から引っこ抜く魔法、思い出すから」
「な…なるべく早くね」
「えっと……」
魔法を思い出そうとするフリーレンと、少しずつ底なし沼に沈んでいく男。
そんな二人を見て、ラヴィーネはため息を吐く。
「仕方ない」
ラヴィーネは剣を抜き、剣先を底なし沼に向ける。
剣先から冷気を放出させ、底なし沼の一部を凍らせた。
凍らせた部分を足場にしてラヴィーネは歩き、男に近付き、彼の手を掴む。
そして彼女は男を引っ張り出した。
「助かったぜ。ありがとよ、お嬢ちゃん」
「気にするな。フリーレン。水を出す魔法を使ってくれ、手を洗いたい」
「分かった」
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その後、フリーレンたちは男を村まで送った。
「俺はここでいいよ」
「フリーレン様がご迷惑をおかけしました」
フェルンは男に頭を下げる。
そんな彼女に男は「別にいいって、助けてもらったんだから」と告げる。
「いえ、私から……キツク言っておきます」
フェルンの言葉を聞いて、フリーレンは一瞬ビクッと身体を震わせ、シュタルクは「知らね」と呟く。
「それより本当に村に寄っていかなくていいのか?収穫祭の準備で忙しいが礼くらいするぞ」
男はそう言うが、フリーレンは断った。
「物資の補充がしたいから、今日中に大きめの街に行きたいんだよね」
「そうか。なら気をつけてな。ここら辺は危険な毒性生物が多いから」
「うん。分かった」
フリーレンたちは男と別れようとした時、
「おっさん」
ラヴィーネが男に声を掛ける。
「なんだ?ねずみ色髪のお嬢ちゃん」
「後悔しているなら……追いかけた方がいいぞ」
そう言うラヴィーネはとても真剣な表情を浮かべていた。
彼女の言葉を聞いて、男は寂しそうな表情を浮かべる。
「もう……おせぇよ」
「遅くても追いかけるべきだ」
「お嬢ちゃんになにが分かる?」
「分かる。私も……今、大切な親友を追いかけているから」
そう言い残して、ラヴィーネはフリーレンたちと一緒に旅を再開した。
彼女の背中を見つめる男は、少し悲しそうな顔で目を細める。
「遅くても追いかけるべき……か。心に刺さるね」
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「あ」
木の実を食べようとしたシュタルクの腕を、蛇が噛みついた。
「噛まれちゃった」
フリーレンたちは足を止めて、振り返る。
「え?噛まれた?」
「気をつけろって言われたのに、何やってるのもう」
「とりあえず止血しましょう」
フェルンは包帯をシュタルクの腕に巻こうとした時、
「あれ?なんか鼻血が出てきた」
シュタルクの鼻から血が流れ出た。
フリーレンは魔法で解毒を試し、フェルンは傷口に包帯を巻いた。
そんな彼らを見ていたラヴィーネは昔のことを思い出す。
「そういえば……私も毒蛇に噛まれた時は、カンネに助けられたっけ」
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「いっつ!」
毒蛇に噛まれた足首をラヴィーネは手で押さえた。
「大丈夫!?」
「これくらい平気だ…って……あれ?頭が、クラクラする」
口からはぁはぁと荒い息を吐きながら、ラヴィーネは頭に手を当てた。
吐き気と眠気が同時に彼女を襲う。
今にも倒れそうなラヴィーネを……カンネは背負い、走った。
「カ、カンネ?」
「大丈夫。今すぐに教会に行って神父様に治してもらうから。……だからもうちょっと頑張って!」
そう言うカンネの目はとても真っすぐで、絶対に助けるという気持ちがラヴィーネに伝わってきた。
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「カンネ……お前はいつも私を助けてくれたよな。だから今度は……」
瞳に強い決意を宿して、ラヴィーネは静かに……だけどハッキリと告げる。
「私が助ける」