夕陽に照らされた街の中をラヴィーネは歩きながら、店を見ていた。
彼女はフェルンの誕生日プレゼントを探していたのだ。
「なにがいいか……お、これは」
ラヴィーネはネックレスやブレスレットが売ってある店に視線を向ける。
やっぱり女の子はオシャレだろ、と思いながらフェルンに似合いそうなものを探す。
「こいつがいいかもな」
ラヴィーネが見つけたのは、艶のある紫色の耳飾りだ。
(フェルンの髪と瞳と同じ色をしているから、きっと似合うだろうな)
そう思いながら耳飾りを買おうとした時、ラヴィーネはあるものを見つける。
「これは……」
ラヴィーネの瞳に映ったのは、宝石の指輪。
その宝石はラヴィーネの愛する女―――カンネの髪と瞳と同じオレンジ色だった。
夕陽の如く輝く宝石の指輪を見て、彼女は美しいと思った。
「……おい、これはいくらだ?」
ラヴィーネが店の人に尋ねた。
「この指輪かい?こいつは珍しい宝石で作られた一級品の指輪だよ。結構高いぜ?」
そう言う店の人に、ラヴィーネは袋を渡す。
店の人は袋の中身を見て、目を見開く。
「こ、これは!」
袋に入っていたのは大量の金貨だった。
「この耳飾りと指輪は貰っていくぜ」
ラヴィーネは店から去っていた。
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「いい買い物をしたな」
兄たちから貰ったお金のほとんどを使ったラヴィーネだが、彼女は嬉しそうに指輪を見ていた。
オレンジ色の宝石の指輪は、夕陽の光に反射してさらに美しく輝く。
そんな時、ラヴィーネは見知った二人が並んで歩いているところを見てしまう。
「あれは……」
ラヴィーネの視線の先にいたのは、シュタルクとフェルンだった。
シュタルクは難しい顔でフェルンの顔を伺いながら、商品を見ている。
彼が頑張ってフェルンのプレゼントを選んでいるのが分かった。
「あれ……?」
ラヴィーネは自分の頬が濡れているのを感じ、手で触れる。
手の指には涙の雫が付いていることに気付く。
「ああ……そうか……寂しいんだな。私は……」
シュタルクとフェルンを見ていたラヴィーネは、カンネと過ごした日々を思い出してしまう。
「クソ……やっぱり会いたい。アイツに……」
ラヴィーネは苦しく感じる胸を抑えながら、静かに泣いた。
寂しい。会いたい。抱き締めたい。喧嘩したい。一緒に笑い合いたい。
色々な感情が彼女の中に流れ込んでくる。
そんな彼女に、一人の男がハンカチを渡す。
「大丈夫か?」
声が聞こえた方向に視線を向けると、そこにいたのはザインだった。
ラヴィーネはハンカチを受け取り、涙を拭く。
「悪い」
「別に謝ることはねぇだろ。どうした?悩みがあるなら聞くぜ?」
「悩み……というわけじゃないが、アイツ等を見ていたら親友に会いたくなってな」
ラヴィーネの視線の先にいるシュタルクとフェルンを見て、ザインは「なるほど」と呟く。
「アイツ等は……昔の私だ。まだ相手のことが好きだって……かけがえのない存在だって気付いていない自分だ」
「そうか……。どうして親友と別れたんだ?」
ザインの質問に対し、ラヴィーネは拳を強く握り締めながら答える。
「……私が…弱かったからだ」
「弱かった?」
「ああ。私は昔……魔族に片目と片腕、片脚を奪われたことがあったんだ」
「!?」
「そんな私の怪我を治すために……親友……カンネは命よりも大切なものを捨て、そしてゼーリエの弟子になり、魔法使いとして生きることになったんだ。それからは私はカンネと会えていない。……奪われたんだよ。私が弱かったから」
「そう……なのか」
「カンネがいなくなって初めて気づいたんだ。アイツのことを私は愛していたんだって……だから、強くなることを決めた。剣も魔法も鍛えて、一級魔法使いや強い剣士を決闘で勝って……魔族や魔物を殺して……強くなった。全ては……ゼーリエからカンネを取り戻すために」
ラヴィーネのサファイアの如き青い瞳には強い意志が宿っていた。
もう奪わせない。絶対に取り戻す。
そんな想いが……ザインに伝わってきた。
「……お前ならできるよ。愛する親友を取り戻すの」
「ああ。……おっさんも会えると思うぜ。大切な親友に」
二人は目を合わせ、笑みを浮かべる。
「……フェルンは、私と同じ道を行かねぇか心配だ。好きな奴がいなくなって初めて相手のことが好きだって気付く思いは……してほしくない」
「そう言うシュタルクだって自分の気持ちに気付くのはいつか、心配だ」
「だな」
ラヴィーネとザインは願った。シュタルクとフェルンが自分の気持ちに気付くのを……そして幸せになるのを。