フェルンは今……信じられないものを見て、言葉を失っていた。
彼女の視線の先には、大きな斬撃と炎を受けて倒れているシュタルクの姿が。
「シュ……タルク様……」
身体には深い傷跡があり、血と肉の焼けた臭いがフェルンの鼻を刺激する。
「起きて…ください……」
フェルンは声を掛けるが、シュタルクは反応しない。
それでも彼女はシュタルクの身体を揺らしながら、声を掛ける。
「起きてください……シュタルク様……シュタルク様……」
いつも無表情だったフェルンの顔が少しずつ歪んでいき、瞳から涙を零す。
「いや……」
目を覚まさないシュタルク。
そんな彼にフェルンは泣きながら縋りつく。
「イイイィィィィィィィィィィヤアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」
海より深い悲しみと大切なものを失った絶望が、フェルンを襲った。
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目を覚まさないシュタルクと、彼に縋りつきながら泣くフェルン。
そんな二人を見て、フリーレンは目を細めて剣の魔物を睨む。
「お前……やってくれたな」
フリーレンから膨大な魔力が発生し、嵐の如く荒ぶる。
殺意が、怒りが……彼女の頭を支配した。
その時、
「落ち着け、フリーレン。あの魔物は私がやる」
ラヴィーネがフリーレンの肩に手を置き、前に出る。
「シュタルクはまだ助かるかもしれない。フリーレンはザインとフェルンとシュタルクを連れて、安全な場所へ」
「ラヴィーネ……」
「大丈夫だ。もうアイツの動きは見切った。それに……奥の手がある」
「……信じていいんだね」
「ああ」
魔力を抑えたフリーレンはシュタルクとフェルンのところに向かった。
ザインもシュタルクたちのところに駆け寄る。
それを確認したラヴィーネは、フゥ―と息を吐く。
「お前は危険だ。ここでお前を倒す」
「デキルト本当二思ッテル?」
不気味な声で問う剣の魔物。
そんな魔物の言葉に対し、不敵な笑みを浮かべて答える。
「ああ。私には……愛する親友から貰った最強の魔法があるんだよ」
剣を構えるラヴィーネの足元に、水色に輝く魔法陣が出現。
魔法陣から冷気の嵐が発生し、彼女の服や髪を激しく揺らす。
「いくぞ……剣の魔物」
ラヴィーネは唱える。親友から貰った最強の氷系魔法を。
「“
直後、冷気の竜巻が……ラヴィーネを呑み込んだ。
やがて冷気の竜巻が収まった時、ラヴィーネは氷の鎧を纏っていた。
その鎧はガラスの如く透き通っており、冷気を放っていた。
「行くぞ。化物」
ラヴィーネは空中に無数の氷の剣を生み出し、駆け出した。
無数の氷剣は空中を高速に飛び、剣の魔物に襲い掛かる。
魔物は剣を振るい、全ての氷剣を切り裂いた。
その時、魔物の剣が氷に覆われる。
「!!」
「“氷の鎧を纏う魔法”。こいつはあらゆる氷系魔法の性能と氷系魔法の操作技術が大幅に上昇する魔法。この魔法を使う今の私は……氷の化物だぜ?」
ラヴィーネは冷気を纏わせた剣を振るい、魔物の身体を切り裂いた。
切り裂かれた部分が一瞬で凍結し、魔物にダメージを与える。
魔物は剣を素早く振るい、怒涛の連撃を放つ。
しかし剣の魔物の攻撃は、ラヴィーネの剣によって全て受け流される。
そして受け流れた瞬間、ラヴィーネは踊るように剣を振るい、冷気の斬撃で魔物の腕や脚、喉を切り裂く。
切り裂かれた場所は一瞬で凍結し、体温を奪われて魔物の動きが遅くなっていった。
「クッ!」
剣の魔物は危険を感じ、ラヴィーネから距離を取ろうとする。
しかし剣の魔物は動けなかった。
なぜなら魔物の両脚は分厚い氷に覆われていたから。
「終わりだ」
ラヴィーネは剣を振るい、剣の魔物を切り裂いた。
切り裂かれた魔物の身体は氷に覆われていく。
完全に氷に覆われる直前、魔物は脈を打つ剣を投げ飛ばした。
直後、魔物は完全に氷に覆われ……甲高い音を立てて砕け散る。
「なんとか……勝てたな」
剣の魔物に勝利したラヴィーネは魔法を解除する。
彼女の身体を覆っていた鎧は消滅。
普段の姿に戻ったラヴィーネは片膝を地面に付け、顔中から大量の汗を流す。
「まったく……負担がデカい魔法だ」
そう言ってラヴィーネは身体を少し休ませた後、立ち上がる。
魔物を凍らせ、砕け散った氷を見つめながら彼女は呟く。
「あの魔物は……いったいなんだったんだ」