魔剣のカンネ   作:グレンリアスター

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戦士と魔法使いの想い

 剣の魔物との戦いから一週間が経過した。

 ラヴィーネとフリーレンは村の復旧に協力し、ザインは怪我人を治療。

 少しずつではあるが村は元に戻っていき、人々に笑顔が戻ってきていた。

 

 だが……一人だけ、笑顔が戻らない少女がいた。

 

<><><><>

 

 村の復旧を終えたラヴィーネとフリーレンは、泊っている宿屋に戻った。

 宿の部屋にはベットで寝ているシュタルクと、彼を見ているフェルンの姿が。

 

「フェルン……一回、休んだら?」

「私は大丈夫です。フリーレン様」

「ダメだ。フェルンはもう一週間もまともに寝ていない」

 

 剣の魔物の攻撃を受けて気を失ってから、シュタルクは眠ったままだった。

 ザインがなんとか怪我を治し、命の危機を脱したが……目覚める気配がない。

 そんなシュタルクを、フェルンはずっと見守っていた。睡眠をとらずに。

 

「このままじゃあ……フェルンが」

 

 フリーレンは心配していた。

 何度もちゃんと寝ろと言っても、彼女は寝ようとしない。

 このままではフェルンが倒れてしまう。

 

「フリーレン様……私は本当に大丈夫です。シュタルク様が目覚めるまで、このままいさせてください」

「でも……」

「私の……せいなんです」

 

 フェルンは振り返り、フリーレンたちに視線を向ける。

 彼女の目は隈ができており、とても泣きそうな顔していた。

 それを見て、フリーレンは言葉を失う。

 

「私を……私を庇ってシュタルク様は……」

「フェルン。それはちが……」

 

 フリーレンが「違う」と言いかけた時、彼女の肩にラヴィーネは手を置く。

 

「フリーレン。フェルンの好きにさせてやれ」

「ラヴィーネ」

「……フェルンは、今……戦っているんだ。大切な人を……愛する人を失うかもしれないという恐怖に。そうだろ……フェルン」

 

 ラヴィーネの問いに、フェルンは苦笑を浮かべながら答える。

 

「はい。……私はシュタルク様が死ぬのが……とても怖いです。シュタルク様が私の前から消えるのが……怖いです。失いそうになって……初めて気づきました」

 

 フェルンは苦しく感じる胸を抑えながら、口から想いを発した。

 

「私は……シュタルク様が好きです」

「フェルン……」

「だからお願いします。フリーレン様……この人が目覚めるまで、傍にいたいんです」

「……分かった」

 

 フリーレンはラヴィーネと共に静かに部屋から出て行った。

 

<><><><>

 

「知らなかったな……フェルンがシュタルクのことを好きなんて」

 

 部屋から出て行ったフリーレンは……壁を強く殴った。

 

「私の責任だ。もっと早くあの魔物を倒していれば」

「フリーレンの責任じゃねぇ。あれは予想外の存在だ。むしろ今……生きているのを喜ぶべきだ」

 

 ラヴィーネがそう言うが、フリーレンはとても悔しそうに唇を噛む。

 そんなフリーレンを見て、ラヴィーネも暗い表情を浮かべる。

 

「フリーレンに責任があるなら……私にも責任がある。アイツの攻撃をもっと早く見切っていれば……フェルンがこんな形でシュタルクのことが好きだって分からずにすんだのに」

「ラヴィーネ」

「最悪な形で……自分の気持ちに気付いたな。フェルンの奴……」

 

 ラヴィーネは思い出す。カンネがいなくなって、自分の気持ちに気付いた時のことを。

 

「とりあえず祈るしかない。シュタルクが目が覚めることを」

「そうだね……ところでラヴィーネ。あの魔物が持っていた剣、見つかった?」

「いや……いくら探しても見つからない」

「そう……」

 

 フリーレンは剣の魔物のことを考える。

 

「あの魔物が持っていた剣は……いったい。なんだったんだろう」

 

<><><><>

 

 目を閉じたまま眠り続けているシュタルク。

 そんな彼にフェルンは語り出した。

 

「覚えていますか?シュタルク様。最初に出会った時、ドラゴンと戦えない臆病者で……泣いてばっかで。こいつはダメだって思いました。でも……あなたは勇気を出して戦い、勝った。とてもかっこよかったです」

 

 昔のことを思い出しながら、フェルンはシュタルクの手を握る。

 

「シュタルク様の誕生日プレゼントを選んだときは……楽しかったです。……私の誕生日を忘れてて、それで喧嘩したりもしましたよね。あと……貴族の社交会のダンスもやって……それから……それか…ら……」

 

 フェルンの紫色の瞳からポロポロと零れた涙が、シュタルクの手に落ちる。

 

「シュタルク様……起きてください。女の子を……泣かせちゃあ、ダメなんですよ?……お願いです。起きて……もっと一緒にいたいです。死なないで…ください」

 

 嗚咽を漏らしながら、魔法使いの少女は願う。

 共に居たいと。

 これからもそばにいてほしいと。

 

「……シュ…タルク……様。お願い……起きて……あなたが…死ぬのは……嫌……」

 

 フェルンは涙を流しながら、そっと自分の唇を……シュタルクの唇に重ねた。

 

「私は……あなたを失いたくない」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ああ……俺もだ」

「!!」

 

 フェルンの耳に聞き覚えのある少年の声が聞こえた。

 彼女は目を大きく見開きながら、シュタルクの顔を見る。

 

「聞こえてたぜ……フェルンの…声」

 

 シュタルクは目を開けており、微笑みを浮かべていた。

 

「シュタ……ルク……様?」

「俺も……フェルンが死ぬのは嫌だ。ずっと……一緒にいたい……俺の隣に……いてほしい」

 

 シュタルクは手を震わせながら、フェルンの手を強く握る。

 

「フェルン……俺は……俺は……お前が好きだ。フェルンがいない未来は怖い。そばにいてほしい」

「……バカ…本当に……バカ……ですね」

 

 フェルンは顔をくしゃくしゃに歪めながら、シュタルクを抱き締める。

 

「私も……好きです。あなたを失うのが……怖い。ずっと……ずっと一緒に……いたいです」

「……ああ」

 

 シュタルクはフェルンを優しく抱き締め返す。

 この日、戦士の少年と魔法使いの少女は……自分の想いを相手に伝えた。

 




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