魔剣のカンネ   作:グレンリアスター

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ザインの親友

 旅を再開したフリーレンたちは北側諸国ローア街道に到着した。

 フリーレン、シュタルク、フェルン、ラヴィーネは木の影の下で身体を休ませる。

 そしてザインは街の人に親友のことを聞いていた。

 

「尋ねごとか?」

 

 ラヴィーネの質問に、ザインは「ああ」と頷く。 

 

「人探しだよ。俺の目的……覚えているだろう」

「年上の色っぽいお姉さんと旅をすることだっけ?」

 

 シュタルクが答えると、ザインは真剣な顔で「確かにそっちも大事だが」と言いながら、ロケットを取り出す。

 

「俺の旅の目的はこっちだ。十年前に旅に出た親友と合流することだ」

 

 ザインの言葉を聞いて、フリーレンは「そういえばそうだったね」と思い出す。

 シュタルクはロケットの写真を見る。

 

「写真か……珍しいな」

 

 写真には笑っている少年二人が映っていた。

 

「昔、村に来た魔法使いに撮ってもらったんだ」

「足取りはつかめているの?」

 

 フリーレンの質問に対し、ザインは「ああ」と答える。

 

「俺達が通ってきたのは北側諸国の主要な街道だ。今までも目撃情報があった。このまま北上で問題ないだろうな」

「十年前だよね。よく目撃情報が残っていたね」

「名前が特徴的だからな。インパクトが強い」

「何て名前なの?」

「戦士ゴリラだ」

「……」

 

 しばらく沈黙が流れる。

 

「うん……本名は?」

「うん?本名?」

 

 顎に指を当てて、難しそうに顔で思い出そうとするザイン。

 そんな彼に思わず呆れて、ラヴィーネは「本当に親友だったのかよ」ってツッコム。

 

「昔から村のみんなも戦士ゴリラって呼んでたしな。あっ、というかあいつがそう呼ばせていた」

「どういう状況なんだよ」

「フッ、ちなみに俺は僧侶アゴヒゲ」

「聞いてねぇよ」

 

 話を聞いていたフェルンは眉を八の字にして微妙な顔を浮かべ、フリーレンは少し楽しそうに微笑みを浮かべていた。

 

 

「まぁどちらにせよ。戦士ゴリラって名前だけ分かれば十分だ。あいつはどうせ必ずそう名乗る」

「変な奴だな」

 

 ラヴィーネは素直に戦士ゴリラという人物を変な奴だと思った。 

 

「ああ、変な奴なんだ」

 

 そう言うザインは……どこか楽しそうに笑みを浮かべていた。

 それからしばらく歩くと、フリーレンたちは石で作られた橋に到着する。

 

「この大峡谷を越えて一週間も歩けば、いよいよ魔法都市オイサーストだね」

「オイサースト」

 

 魔法都市オイサースト。

 そこでは一級魔法使いの試験が受けられる。

 

「ようやく……ようやく一級魔法使いの試験を受けられる」

「そういえばなんでラヴィーネは試験を受けるの?やっぱり上位の魔法使いになりたいから?」

 

 フリーレンの興味の質問に対し、ラヴィーネは「違う」と否定した。

 

「カンネに……親友に会うためだ」

「なんで親友に会うために試験を?」

「……ゼーリエの奴が『カンネに会いたければ一級魔法使いになってからにしろ』って言ったからだ」

「へぇ~……ゼーリエ、カンネのことを気に入っているんだね」

「ああ……」

 

 ラヴィーネは眉間に皺を寄せ、拳を強く握り締める。

 彼女から強い怒りのオーラをフリーレンは感じ取る。

 

「あいつは私のなのに……なのにゼーリエの奴……」

「ゼーリエのこと嫌い?」

「ああ……」

 

 

 

 

 

 

「大っ嫌いだ」

 

<><><><>

 

 それからフリーレンたちは集落に寄った。

 理由はザインが戦士ゴリラの情報を知るため。

 

「なぁ十年前にゴリラって名乗る人、来なかった?」

 

 集落の人にそんな質問するザインを見て、シュタルクは「すげぇ質問だな」と思わず感想を述べる。

 

「ああ、戦士ゴリラ様ですね」

「あ……分かるんだ」

「インパクトがすごかったので覚えています。村の近くに出た魔物を退治してくださいました」

 

 ザインは「その後、どこに向かったか分かるか?」と問い掛ける。

 

「どうでしたかな……あっ、ゴリラ様は高台に住んでいる頑固ばあさんと仲が良かったようなので。聞いてみるといいでしょう」

「頑固ばあさん……またすげぇあだ名だ」

 

 フリーレンたちは高台にある家に向かい、一人のおばあさんに会いに行き、尋ねた。

 

「わしは頑固者でのう。そう簡単に教えられん」

「どうすればいい?」

「わしの依頼をいくつかこなしてもらおう。まずは隣町の鍛冶屋のナーゲルに手紙を届けてもらおうかの」

 

 そう言っておばあさんは手紙をザインに渡す。

 微妙な顔を浮かべながらザインは了承し、手紙を受け取る。

 

<><><><>

 

「まるでお使いだな」

 

 手紙を持ちながら森の中を歩いていたザインは、少し不満そうに呟いた。 

 

「ヒンメルとの旅を思い出すね」

「フリーレン様。こんなこともされていたんですか?」

「そうだよフェルン。お使いみたいな人助けは日常茶飯事だったよ。こういうのが面倒な探し物や厄介な魔物退治に発展していくんだよね」

「不吉なことを言わないでください」

「とにかく頑張っておばあさんの心を開こうか」

 

 それからフリーレンたちは鍛冶屋に手紙を渡したり、果物を採って集めたり、崖にある花を取ったりなど……多くのおばあさんの依頼をこなした。

 しかしおばあさんはなにも喋らない。

 

「このばあさん。全然心開かねぇぞ」

「さすがに頑固ばあさんなだけあるな」

 

 ザインとシュタルクの声には少しだけ……怒りの感情が宿っていた。

 それを見てラヴィーネはハァとため息を吐いた後、おばあさんに近付く。

 

「ばあさん……」

「なんだ?」

「頼む……戦士ゴリラのことを教えてくれ」

 

 ラヴィーネはおばあさんに向かって頭を下げた。

 それを見て、ザインは目を見開く。

 

「ザインのおっさんは……どうしても親友に会いたいんだ。私にはその気持ちがよく分かる。だから一秒でも早く会わせてやりたい。だから頼む……教えてくれ」

「ラヴィーネ」

「どうか……頼む」

 

 頭を下げるラヴィーネ。

 そんな彼女におばあさんは……雑巾が入ったバケツを渡す。

 

「んっ」

「これは?」

「最後だ。峡谷にある英雄の像を磨くんだ。ついてきな。案内する」

 

 おばあさんはフリーレンたちを連れて、外を歩いた。

 歩きながらフリーレンは「英雄の像って?」と質問する。

 

「はるか昔に世界を救ったとされる―――英雄様の石像だ。それ以上のことは知らん。名前も分からん、忘れられた英雄さ。代々村で管理している」

「忘れられた英雄か……」

「ところであんた。僧侶アゴヒゲだろ?」

「あ…なんで知ってるんだ?」

 

 ザインは質問するが、おばあさんはなにも話さない。

 それからしばらく歩いた後、石像の前に到着した。

 

「着いたよ」

「僧侶と戦士……だね。だいぶ古いものだね」

 

 フリーレンが興味深そうに観察する。

 

「じゃあ……さっさと始めようか」

 

 フリーレンたちが石像を掃除しようとした時、ザインは呆然としながら石像に近付く。

 

「ザイン?」

「これ……俺の村の近くにあった。ハハハ」

 

 ザインは笑みを浮かべながら、石像を撫でる。

 

「そういえば……忘れられない英雄になるからと言ってあいつ……自分を戦士ゴリラって名乗るようになったんだったな」

「そうなんだ……」

「……さぁ、掃除するか」

 

 フリーレンたちは数時間かけて石像を掃除し、なんとか綺麗にした。

 

「やっと終わった。大変だったぜ」

 

 腰に手を当てるザイン。

 そんな彼におばあさんは近づく。

 

「ゴリラにも同じことを頼んだが、あいつはここまでうまくはできなかった」

「あいつは戦うしか取り柄がない」

「でも名前のインパクトはばっちりだったよ」

「!」

「ゴリラはあんたのことよく話してたよ。『一緒にずっと歴史に名を残すような―――英雄になる』ってね」

「……」

 

 ラヴィーネは黙り込むザインの肩をポンポンと叩いた。

 

「よかったな。おっさん」

「……ああ」

 

 フッと笑みを浮かべるラヴィーネは、おばあさんに尋ねた。

 

「それでおばあさん……戦士ゴリラの行き先は?」

「テューア。北側諸国中部の交易都市。そこにゴリラは向かったよ。ここからはるか東方」

「オイサーストとは反対方向だな」

 

 オイサーストとは反対方向。

 それはつまり……ザインとはこの集落でお別れと言う意味だった。

 

「どうしたもんかね」

 

 寂しそうな顔でそう呟くザイン。

 そんな彼の足を……ラヴィーネは強く踏む。

 

「いって!なにすんだよ」

「なに悩んでいるんだよ。おっさんの答えはもう決まっている。……追いかけたいんだろう?」

「それは……」

「なら追いかけろ。ここまで来たんだ。せっかく親友の行く先が分かったんだ。会いに行くべきだ」

「ラヴィーネ」

「私は……親友に会いに行く。絶対に。……だからおっさんも追いかけろ」

「……」

 

 数秒間、ザインは黙り込み……微笑みを浮かべた。

 

「ありがとよ、ラヴィーネ。おかげで決心した」

 

 ザインはまっすぐな瞳でラヴィーネを見る。

 

「俺は……親友を追いかける。もう後悔したくないしな」

「それでいい」

「だからラヴィーネ。お前も……絶対に親友を取り返せ」

 

 ラヴィーネは笑みを浮かべながら、「当たり前だ」と答えた。

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