ラヴィーネとザインは小さな街の酒場で、お酒を飲んでいた。
「ここの酒、うまいな」
「だな」
「それにしても……雪が止まないな」
「もうそろそろ止むらしいぞ」
今、外は大吹雪が発生しており、旅立つことができない状態でいた。
フリーレンは魔導書を読み、シュタルクとフェルンは仲良くイチャイチャ。
そして残ったラヴィーネとザインは酒場でおつまみのチーズや乾燥肉を食べながら、酒を飲んでいた。
「それにしてもラヴィーネが酒を飲めるとは思わなかったぞ」
「まぁ……家の事情でお酒を飲むことがあってな。私はそこそこいい家のお嬢様だからな」
「その高そうな男のものの服を見れば分かる」
ザインは木に入った酒を一口飲んだ後、口を動かす。
「ありがとよ。ラヴィーネ」
「ん?」
「俺が親友を追いかけようと思えたのは……お前のおかげだ」
「私が言わなくてもおっさんは行ったさ」
ラヴィーネはジョッキに入った酒に映る自分の顔を見つめる。
酒に映るラヴィーネの顔は……どこか寂しそうに眉を八の字にしていた。
「おっさんなら……絶対に親友に会うことができる」
「ラヴィーネも絶対に親友に会うことができるさ」
「……そうだな」
ラヴィーネはお酒を一気に飲み、プハァーと息を吐く。
「私は絶対にカンネに会って……愛しているって伝える」
「俺は親友に会ったら、一緒に英雄になろうって言うぜ」
ラヴィーネとザインはジャッキをぶつけ、乾杯する。
「頑張れよ」
「おう。そっちもな」
二人は酒を飲みながら、笑いあう。
その時、酒場に銀色の髪を伸ばしたエルフーーーフリーレンがやってきた。
フリーレンはラヴィーネとザインのところに近付く。
「ザイン、ラヴィーネ。ちょっといい?」
「どうしたんだ?フリーレン。酒場に来るだなんて珍しいな」
「何だかシュタルクとフェルンの様子が変なんだよ。たぶん喧嘩してる。仲裁してよ」
フリーレンの言葉を聞いて、ラヴィーネは首を傾げる。
「いつも暑苦しいぐらいイチャイチャしてた奴らがどうした?」
シュタルクとフェルンは恋人同士になってから、いつも傍にいた。
いつも旅の時は恋人つなぎをし、フリーレンたちが見てないところでキスをしたり、みんなが寝ている時はこっそり〇〇〇をしている。
それぐらい仲が良かった二人が喧嘩と聞いて、ラヴィーネは少し驚いた。
「とりあえず行ってみるか」
「だな」
<><><><>
今、泊っている小屋に到着すると、フェルンは頬を膨らませて怒っており、シュタルクは泣きながら正座していた。
「ひどい状況だな」
「一体なにがあった?」
ラヴィーネが尋ねると、フェルンが頬を膨らませながら答える。
「シュタルク様が悪いんです」
彼女の言葉に対してシュタルクは、
「はい。俺が全部悪いんです」
と泣きながら答えた。
「話しにならないな」
「だな。おっさんはシュタルクを頼む。私はフェルンの事情を聴く」
「ああ、分かった」
ザインはシュタルクの首根っこを掴み、部屋に連れて行った。
シュタルクがいなくなった後、ラヴィーネはフェルンは事情を聴く。
「で?なにがあったんだ」
「……実は二人で抱き締め合っている時、私が『私のことをどれくらい愛していますか?』って聞いたんです」
「それで?」
「シュタルク様は『世界一愛している』って言ったんです。だから私は『どれくらい好きかもっと詳しく教えてください』って聞いたんです。そしたら一時間ぐらい答えるのに悩んで……それで私は怒って」
「お前らバカだろ」
ラヴィーネは顔に手を当てて、ため息を吐いた。
本当にどうしようもないことで喧嘩したなと思いながら、彼女はフェルンに優しく諭す。
「フェルン。好きに詳しいだのなんなのはどうでもいいことだ。大切なのはシュタルクがフェルンのことを本気で愛しているかだ。シュタルクは『世界一愛している』って言っただろう?それで十分だろう」
「……ですがやっぱり、不安なんです。本当に私のことが好きか……どこが好きなのか。聞かないと不安なんです」
「シュタルクは……お前を捨てるような薄情な奴か?」
ラヴィーネの問いに対し、フェルンは頭を横に振った。
「なら……それが分かるだけで十分だろう?どれくらい愛しているかの説明なんていらない。誰よりも愛している……それが答えだ。そして……シュタルクは誰よりもフェルンを愛している」
「はい……」
「よし、あとは仲直りだな」
ラヴィーネが話を終えた後、部屋からシュタルクとザインが出てきた。
「シュタルク様……あの、すみませんでした」
「いや……俺のほうこそごめん。別に答えられなかったわけじゃないんだ。ただ……フェルンの好きなところがいっぱいあって、どれを先に言えばいいか……迷って」
「え……あ、そうですか」
シュタルクとフェルンは顔を真っ赤に染めて、俯く。
黙り込む二人を見て、ラヴィーネは「熱いな」と呟いた。
「あの……シュタルク様。私は……シュタルク様を世界で一番愛しています」
「俺も……フェルンが大好きだ。世界一」
二人は手を繋ぎ、微笑み合う。
こうして……二人はさらに仲直りした。
<><><><>
フェルンとシュタルクの仲裁を終えた後、フリーレンとザイン、ラヴィーネは酒場にやってきた。
「もう付き合っちゃえよ!」
「おっさん。もう二人は付き合っているぞ」
お酒を一気飲みするザイン。
そんな彼を見て、ラヴィーネは「まぁ言いたい気持ちは分かるがな」と思いながらチビチビと酒を飲む。
「二人ともありがとう。助かったよ」
「どういたしまして」
「まぁ……これぐらいはな」
フリーレンはお酒を一口飲んだ後、あっとある事を思い出す。
「そういえばラヴィーネに言わなくちゃいけないことがあったんだった」
「なんだ?」
「実は君の親友……カンネは勇者の剣に選ばれたんだ」
フリーレンの言葉を聞いて、ラヴィーネは飲んでいたお酒を口から噴き出す。
噴き出した酒はザインの顔にかかる。
「ゲホゲホ……今、なんて言った!?」
「カンネは勇者の剣に選ばれて、勇者になった」
「勇者の剣って……勇者ヒンメルが抜いた伝説の剣だろ?」
「ああ……実はね」
フリーレンはラヴィーネに全てを話した。
本当は勇者ヒンメルは勇者の剣に選ばれなかったこと。
そして勇者の剣をヒンメルが抜いたというのは物語の中だけだということを
「そうか……カンネは勇者の剣に選ばれたのか」
剣を捨てたカンネが勇者の剣に選ばれた。
それを知ってラヴィーネは嬉しそうに頬を緩める。
「嬉しそうだね」
「当たり前だ。カンネは私のせいで剣を捨てることになった。だけど……剣はカンネを見捨てなかった。それを知った私は……どうしようもなく嬉しい」
ラヴィーネは椅子から立ち上がり、ジョッキを掲げる。
「今日は思いっきり、飲むぞ!付き合え、フリーレン、ザイン」
「ええ……まぁいいけど」
「しょうがねぇな」
それから三人は朝まで酒を飲み続けた。
<><><><>
翌日、大吹雪は止み、フリーレンたちは旅を再開することにした。
「やっべ吐きそう」
「頭痛い」
「飲みすぎたな」
フリーレンとラヴィーネ、ザインは酒を飲みすぎて二日酔いになっていた。
それに対しフェルンは肌をつやつやにしており、シュタルクはげっそりしている。
「二人は私達が飲んでいる間に楽しんでいたみたいだな」
「いえ、そんなことはありませんラヴィーネ様」
白々しく嘘を言うフェルンに呆れながら、ラヴィーネはザインに声を掛ける。
「ザインのおっさん」
「ん?」
「必ず……見つけろよ。親友を」
「……ああ。ラヴィーネも……絶対に親友を取り戻せ」
「ああ」
ラヴィーネとザインは拳と拳をぶつけた。
そしてザインは崖の道を歩き、フリーレンたちは橋を渡る。
さよならは言わない。
なぜならまた会えると……信じているから。
「さぁ行こうか……オイサーストへ」
「はい」
「ああ」
「そうだな」
フリーレンたちは歩いた。魔法都市オイサーストに向かって。