「話しは終わりだ」
ラヴィーネがなにかを伝えようとした時、その人はなにもないところから現れた。
その人は長く尖った耳を生やしており、金色の髪を揺らす。
「ゼ、ゼーリエ様」
現れたのは私の魔法の師匠にして、大魔法使い―――ゼーリエ様だった。
彼女は細めた目で私を見る。
「カンネ。その娘には会うなと言っただろう」
「ゼーリエ様……これは」
「話しはあとで聞かせてもらう」
私はなにも言えなかった。
ゼーリエ様から放たれる威圧感と魔力に、私は委縮する。
そんな私とゼーリエ様の間に、ラヴィーネが入った。まるで私を庇うかのように。
「よぉ……あんたがゼーリエか」
鋭い目つきでゼーリエを睨むラヴィーネ。
彼女の声には強い怒りと憎しみが宿っていた。
「久しいな小娘。元気にしていたか?腕と脚と目の調子はどうだ?」
「ああ、おかげさまで絶好調だ。お前の顔面を殴りたいぐらいには元気だ」
「口が達者になったな」
ゼーリエとラヴィーネは睨み合う。
まるで強力な魔者同士が睨み合っているような迫力を感じる。
「一級魔法使いになるまでは我が弟子に会うなと言ったはずだが」
「カンネはお前のものじゃない。……私のものだ」
「ほう……」
ゼーリエは魔力の嵐を身体から放った。
壁や床に皹が走り、私は吹き飛ばされそうになる。
だけどラヴィーネは動じなかった。
「人間の小娘にしてはいい度胸じゃないか」
「……ゼーリエ。カンネは私の……私だけのものだ。だから……返してもらうぞ。クソエルフ」
ラヴィーネはサファイアの如き青い瞳を光らせて、身体から冷気を放つ。
周囲の物が冷気によって凍っていく。
魔力の嵐と冷気が激しく衝突する。
「ゼーリエ。私はお前が許せない。カンネに剣を捨てさせたことを。……私からカンネを奪ったことを。だからゼーリエ。……お前は潰す」
「……面白い。なら……勝負しないか?」
「なに?」
「お前がもし、今回の一級魔法使いの試験に合格したら……私と戦う機会を与えよう。そして私に一撃でも攻撃を当てることができたら……お前の勝ちだ。カンネを連れていくがいい。もちろん剣を持つことを許そう」
「その言葉に嘘偽りは?」
「ない。ただしもし負けたら……二度と我が弟子カンネに近付くな」
「……いいだろう」
ラヴィーネは強い決意を宿した目で、告げる。
「その勝負……乗った」
「楽しみにしているぞ、小娘」
そう言ってゼーリエ様はラヴィーネから私に視線を移す。
「帰るぞ。カンネ」
「……はい」
私はゼーリエ様と共に、ラヴィーネから離れた。
その時、
「カンネ!」
ラヴィーネは私に向かって……強い覚悟を乗せた言葉を伝える。
「絶対に……迎えに行く」
「……うん」
待っているよ。ラヴィーネ。
<><><><>
カンネとゼーリエが姿を消した後、ラヴィーネは拳を強く握り締める。
そんな彼女の肩に……一人のエルフが手を置く。
振り返るとそこには銀色の髪を伸ばしたエルフーーーフリーレンがいた。
フリーレンだけでなく、フェルンやシュタルクの姿も。
「フリーレン」
「すごいじゃん。あのゼーリエに喧嘩売るなんて」
「見ていたのか」
「ちょっと前からね」
ラヴィーネは肩から力を抜き、フゥと息を吐いて自分を落ち着かせた。
「ラヴィーネ」
「なんだ?」
「応援してる」
「……ありがとよ」
フッと笑みを浮かべたラヴィーネは、腰に差した剣を撫でる。
「なにがなんでも……カンネを取り戻す」
読んでくれてありがとうございます。
よかったら感想をください!