「我が弟子カンネよ……あいつには会うなと言ったはずだろう」
椅子に座って私を冷たい目で睨むゼーリエ。
私は頭を下げることしかできませんでした。
「申し訳ありません」
「……お前に罰を与える。今回の一級魔法使い選抜試験の試験官として参加せよ」
「え?」
一級魔法使い選抜試験の試験官?
私が?
「試験官はゲナウさんとゼンゼさん、レルネンさんではなかったですか?」
「そうだ。お前はあいつらに協力しろ」
「……それはつまり、試験の難易度を上げるという意味でしょうか?」
「そうだ」
参ったね、これは。
まさか私が試験官として参加するとは思わなかったな。
でも……断るわけにはいかないし。
「承知しました。試験官として参加させていただきます」
「カンネ」
「はい」
「分かっていると思うが、愛する者がいるからと言って手加減するなよ」
「……はい」
ラヴィーネ……今回の一級魔法使いの試験……難しいよ。
<><><><>
試験当日。
試験会場に集められた魔法使いたちに、ゲナウは声を掛けた。
「これより。一級魔法使い選抜試験を行う」
ゲナウが一級魔法使いのこと、試験のことを話している間、ラヴィーネはずっと見ていた。ゲナウの隣に立つ、カンネのことを。
「カンネ……」
ラヴィーネがそう呟いた時、ゲナウは第一試験の内容を発表する。
「それでは第一試験の内容を発表する。パーティー戦だ。総勢57名。三人ひと組のパーティーに分かれ、試験を受けてもらう。では組み分けを行う」
ゲナウがそう言うと、試験に参加する魔法使い全員の目の前に銀色の腕輪が現れる。
その腕輪には数字が書かれている。
腕に嵌めた腕輪にラヴィーネは魔力を流し込んだ。
すると彼女の視界に光るものを見つける。
「なるほど……こういう感じで仲間を見つけるのか」
ラヴィーネは仲間がいるとされる場所に向かって歩いた。
「やぁ……ラヴィーネ。君とパーティーになれるなんて運が良いね」
「私のパーティーメンバーの一人は、フリーレンか」
フリーレンが自分のパーティーだと分かったラヴィーネはホッと安堵した。
(知らないやつと組むよりはずっといいな)
そう思いながらラヴィーネは、もう一人の仲間を探した。
「で?あと一人は?」
「あ、あの!」
「ん?」
声が聞こえた方向に視線を向けると、そこには背の小さい女の子が立っていた。
茶色の前髪で目は隠れており、灰色のローブを着ており、頭にはとんがり帽子を被っている。
「は、初めまして。ララと申します」
少し恥ずかしそうに自己紹介したララは腕につけた腕輪を見せる。
腕輪には『Ⅱ』と書かれている。
ラヴィーネとフリーレンがつけている腕輪には『Ⅱ』と書かれていた。
「どうやら君が最後のパーティーメンバーみたいだね。私はフリーレン」
「私はラヴィーネだ。よろしく」
二人が軽く自己紹介すると、ララは「よ、よろしくお願いしましゅ!」と舌を噛む。
<><><><>
「あの子が私の代わりに参加するパーティーメンバーか」
隣にいるゲナウさんに聞こえない声で、私は呟いた。
原作では私はラヴィーネとフリーレンと一緒に、一級魔法使い選抜試験の第一試験に参加する。
だけど今回の私は試験官の一人。
そんな私の代わりにララと名乗る魔法使いがラヴィーネ達のパーティーメンバーになるみたいだね。
でも……なんでだろう。
あのララって子を見ていると、なぜか胸騒ぎがする。
「気のせい……かな?」
<><><><>
北側諸国グローブ盆地、第一次試験区域。
私たち試験官と試験に受けに来た魔法使いたちは、森にやってきた。
試験官のゲナウさんは魔法使いたちに第一次試験の具体的なルールを説明を始める。
「この試験区域にはシュティレという小鳥が生息している。各パーティーにつきひとつカゴを配布しておいた。第一次試験の合格条件は二つ。明日の日没までにシュティレの入ったカゴを所持していること。その時点でパーティーメンバー全員がそろっていることだ。基本的に行動は自由だが試験区域の外側に出た者がいた場合は、その所属パーティー全員をその場で失格処分とする」
よく言うよ。区域を囲むように塵ひとつ通さないような強力な結界を張っておいて。
出られるわけないのに。
まぁ……フリーレンはその強力な結界を破壊するんだけど。
「そして……ここにいる試験官カンネはお前達を探し、捕まえようとする。もし彼女に一人でも捕まった場合、そのパーティーは失格だ」
そう。原作と違い、私が試験に参加する。
私に捕まった魔法使いは、パーティーごと失格。
アニメ以上の高い難易度になっている。
おっと、自己紹介しないと。
「私の名前はカンネ。《水魔のカンネ》って言えば、分かるかな?」
私がそう言うと、魔法使いたちは驚く。
「《水魔のカンネ》ってあの?」
「水魔法使い最強の一級魔法使いじゃないか」
「そんな彼女に捕まらないように?」
「難しすぎるわよ」
どうやら私が参加することで、合格できるか不安になっているみたいだね。
そう思っていると、一人の魔法使いが手を挙げた。
「質問をいいか?」
質問してきたのは、銀色の髪を伸ばしたエルフーーーフリーレンだった。
「なにかな?」
「私たちは君に出会ったらどうすればいいの?」
「自由にしていい」
「自由?」
「私から逃げるもよし。私と戦い、戦闘不能にするもよし。好きにするといいよ。ただし……私は手加減はしない」
「なるほど……理解した。ありがとう」
「他に質問はない?」
私の問いかけに、魔法使いたちは答えなかった。
質問はないみたいだね。
「それでは第一次試験……開始だよ」
私がそう言うと、魔法使いたちは森の中に入っていった。
だけど一人だけ……その場から動かない魔法使いがいた。
ラヴィーネだ。
ラヴィーネは真っすぐな目で私のことを見ている。
「……試験は開始しましたよ?」
私がわざと他人行儀で話すと、ラヴィーネは真剣な顔で口を動かす。
「いや……一言、言いたいことがことがあってな」
「なんですか?」
「見ない間に可愛くなったな」
「なっ!」
ラヴィーネに可愛いと言われた私は、顔が熱くなるの感じた。
ちょっと、なに言ってんの!?
「それだけ言いたかった」
「バ、バカのこと言ってないで早く行って。失格にするわよ!」
「はいはい。……行ってくる」
「……うん」
ラヴィーネはパーティー仲間と共に森の中に入っていった。
ラヴィーネが見えなくなった後、私は自分の頬に両手を当てる。
もう……ラヴィーネが変なこと言うから……顔が緩んじゃう。
「可愛いか……えへへ」
「カンネ」
「は、はい!」
思わずニヤニヤしてしまっている私に、ゲナウさんは声を掛ける。
「一時間後、森の中に入って魔法使いたちを捕まえろ」
「はい」
「それから」
「?」
「くれぐれも手加減するなよ。例え好きな人でも」
「……分かっていますよ。そんなこと」
言われなくても分かってる。
今の私は試験官。
合格させるために手加減をするつもりはない。
例え……大切な人でも。
読んでくれてありがとうございます。
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