「ゼーリエ様……」
今、私の視線の先にゼーリエ様がいた。
魔法の師匠にして、大魔法使いの彼女は……冷たい目で私を見ていた。
身体中から冷や汗が止まらない。
「カンネ……貴様、剣を使って戦ったな」
「……はい。申し訳ありません」
私は頭を下げた。
やっぱり見ていたんだ。
私が魔法剣士として戦っていたところを。
「言い訳をするつもりはありません。どんな罰も受けます」
「うむ……まぁ、試験官としてよく働いたからな。だから……」
ゼーリエ様は私に近付き、そして……、
バシンッ!!
手の平で頬を叩いた。
「これで許してやる」
痛みを感じながら、私が「はい……」と返事をした。
その時、ラヴィーネは一瞬でゼーリエ様に近付き、剣を振り下ろす。
「ラヴィーネ!やめて!」
私は叫んだ。
だけどラヴィーネは止まらなかった。
振り下ろされたラヴィーネの剣撃は、ゼーリエ様が作った見えない壁で防がれる。
金属音が鳴り響く。
「ほう……」
「お前……私のカンネになんてことをしてくれてんだ!」
ラヴィーネの静かな声には、炎の如き怒りと……僅かな殺意が宿っていた。
それを感じ取ったゼーリエ様は面白そうに笑みを浮かべる。
「カンネは私の弟子だ。弟子をどう扱おうが、私の自由だ」
「!!」
ラヴィーネは眉間に皺を寄せ、ガリッと歯噛みする。
彼女の身体から冷気が漏れ出ていた。
やばい!このままじゃあ!!
「ラヴィーネ……落ち着いて」
その時、銀色の髪を伸ばしたエルフーーーフリーレンがラヴィーネの肩に手を置いた。
すると彼女の身体から漏れ出ていた冷気が止まる。
「フリーレン……」
「落ち着いて……今は試験中だ。最悪、不合格になる」
「!クソ」
ラヴィーネは剣を鞘に戻した。
だが彼女は鋭い目つきでゼーリエ様は睨んだまま。
「お前だけは殺す」
「ほう……やってみろ」
殺意を放つラヴィーネと挑発するゼーリエ様。
そんな二人をフリーレンは仲裁する。
「落ち着いて。……ゼーリエ、流石に弟子の頬を叩くのはダメじゃないかな?」
「カンネは剣を使うなという約束を破った。悪いのはカンネだ」
「なんで剣を使うのは、ダメなの?」
「フリーレン。千年以上も魔法使いをしているお前なら分かるだろう?カンネの魔法使いとしての才能を」
「……」
「カンネの魔法使いとしての才能は世界クラス。このまま鍛えれば、人間最強の魔法使いに……いや、私をも超えるかもしれない。だから剣は邪魔だ」
「……確かにカンネは魔法剣士よりも魔法使いとして生きていくのが、正解かもしれない」
フリーレンの言葉を聞いた私は胸が締め付けるような痛みを感じた。
「だけど……カンネは魔法剣士のほうが似合ってるよ」
「なに?」
眉を顰めるゼーリエ様。
そんな彼女にフリーレンは言う。
「何度でも言うよ。カンネは魔法使いより、魔法剣士のほうが似合っている」
「……お前と話すのは無駄のようだな」
ゼーリエ様は背を向けた。
「第一次試験は今いる奴は合格だ。もう帰っていいぞ。……いくぞ、カンネ」
ゼーリエ様はそう言い残して、歩き出す。
私はその後を追いかける。
「カンネ……」
ラヴィーネの声が背中越しに聞こえた。
だけど振り返られない。
「ラヴィーネ……私のために怒ってくれてありがとう。……待ってるから」
読んでくれてありがとうございます。
よかったら感想をお願いします」