「うーん……夕方か。だらだらするのも悪くはないな」
魔法都市オイサーストのとある宿で、ベットでゴロゴロしていたシュタルク。
彼は窓の外を見つめながら、恋人のことを思い出す。
「フェルン……大丈夫かな」
シュタルクがそう呟いた時、ドアからコンコンとノックの音が聞こえた。
「ん?」
シュタルクはベットから起き上がった。
と同時にドアを叩く音が強くなる。
「何だ?」
ドンドン!とさらにドアを叩く音が強くなる。
「はいはーい!」
シュタルクはベットから降りて、靴を履く。
ドアを開けると、そこにいたのはシュタルクの恋人であるフェルンの姿があった。
「おっ、フェルン。一級魔法使いの試験に行ってたんじゃ……」
「第一次試験が終わって昨日の夜に帰ってきました。シュタルク様、今…夕方ですよね?」
「えっ……え~と」
シュタルクは視線を泳がせる。
「寝てたでしょ?」
「あ……まぁ…」
「夜更かししたの?」
シュタルクは数秒黙り込んだ後、観念して「はい」と言う。
「他には?」
「夜中にジュースも飲みました」
フェルンは頬を膨らませながら、ポカポカとシュタルクを殴った。
「わぁ~!ごめん、ごめんってば!」
「許しません。許してほしいなら……」
フェルンは殴るのをやめた後、両腕を広げた。
「……抱き締めてください」
頬を赤く染めながら言うフェルン。
シュタルクは少し恥ずかしそうにしながら、愛する女性を抱き締めた。
「お疲れ様。フェルン」
「……頭も撫でてください」
「あいよ」
シュタルクはフェルンの頭を優しく撫でた。
頭を撫でられるフェルンは気持ち良さそうに目を細める。
「今日、一緒に寝てください」
「……分かった。ところでフリーレンとラヴィーネは?見当たらないけど」
「それが……実は……」
<><><><>
とある酒場のカウンター席で、ラヴィーネはグラスに入った酒をゴクゴクと飲んでいた。
酒を飲み終わった後、グラスを力強くテーブルに叩き付ける。
彼女は眉間に皺を寄せており、舌打ちをした。
「あのクソエルフ……絶対に殺す」
「ラヴィーネ……お酒飲みすぎ。怒るのは分かるけど……少しは落ち着いて」
ラヴィーネの隣に座っていたフリーレンは、彼女を宥める。
「だってあのエルフ……カンネを殴ったんだぞ!怒らずにいられるか!」
「まぁ……私もビックリしたかな。まさかゼーリエが弟子を殴るなんて。……それぐらい許せなかったのかも。弟子が剣を使うの」
「アイツが剣を使って何が悪い。アイツは魔法使いじゃない。魔法剣士だ」
ラヴィーネは思い出す。愛する女を殴ったゼーリエのことを。
ゼーリエのことを思い出すたびに、ラヴィーネは腸が煮えくり返った。
「そうだね。あのカンネって子は……魔法使いより魔法剣士のほうが似合ってる」
「……なんで分かるんだ?」
「だって……魔法使いとして戦ったカンネより、魔法剣士としてのカンネのほうがすごかった」
フリーレンは《魔剣のカンネ》として戦った彼女のことを思い出し、頬を緩める。
「あの子は剣と魔法を同時に使っている時、どんな剣士や魔法使いよりもすごかった。迫力があった。《水魔のカンネ》よりも強かった」
「……」
「認めたくないけど……なんで勇者の剣がカンネを選んだのか分かる。認めたくないけど」
「……そうか」
ラヴィーネは小さく笑った。
「ありがとよ、フリーレン。少し落ち着いた」
「それはよかった……さぁ、シュタルクとフェルンのところに行こう。一緒にご飯を食べに行こう」
「ああ……」
<><><><>
第一次試験を終えた私は家のベットで寝転がっていた。
寝っ転がりながら、左手の薬指に嵌められた指輪を見つめる。
指輪に埋め込まれた宝石は月の光に反射して、オレンジ色に輝いていた。
「ラヴィーネ……」
私は指輪に軽くキスをする。
好き……大好き。
この指輪を嵌めてくれただけで、私はもう死んでもいいって思えるぐらい幸せだよ。
「待ってるよ……ずっとね……」
読んでくれてありがとうございます。
よかったら感想をお願いします!!