北側諸国、零落の王墓。
そこは石で作られた古いダンジョン。
そんなダンジョンに第一次試験に合格したフリーレンたち十二名の魔法使いは、集められていた。
彼ら彼女らの視線の先には、二人の魔法使いが立っていた。
一人は長い髪を伸ばした少女—――ゼンゼ。
そしてもう一人は、オレンジ色の髪をツインテールにした少女—――カンネ。
ゼンゼは第一次試験合格者に告げる。
「第一次試験合格者十二名。まずは合格おめでとう。私が担当する試験に関しては、これまでの結果から実にさまざまな憶測が飛び交っていると聞く。君たちの中にも噂を耳にした者はいるだろう。だが身構える必要はない。試験はいたってシンプル。一級魔法使いを目指す者ならば難なく切り抜けられるものだ。それでは……第二次試験の詳細を説明する」
ゼンゼは分かりやすく、説明を開始した。
「第二次試験はダンジョン攻略だ。君たちには零落の王墓の攻略を行ってもらう。合格条件はただ一つ。零落の王墓の最深部までたどり着くことだ。私は平和主義者でね。争いは好まない。よってたどり着いた者は全員合格とする」
ゼンゼの説明を最後まで聞いていたララは、手を挙げる。
「あ、あの……質問があります」
「許可しよう。なにかな?」
「ここは未踏破のダンジョンですよね?多くの人が帰ってこないって有名な」
「そうだ。だからこそ合格してもらう」
「え?」
「君たちが目指しているのは魔法使いの最高峰だ。不可能を可能にするのが一級魔法使い。未踏破だろうが前人未踏だろうがねじ伏せて突き進むんだ」
「じゃ、じゃあ最深部にたどり着いたということをどう証明すればいいんですか?金銀財宝でも持ち帰ればいいのでしょうか?」
「照明の必要はない。私とカンネも共に最深部まで潜る。無論、受験者に手は貸さんがな。それと全員にこの瓶を渡しておこう」
そう言ってゼンゼは自分の髪を触手のように動かす。
その髪には小さな人形が入った瓶を持っていた。
髪は無数の瓶をそれぞれ受験者たちに渡す。
「一級魔法使いレルネンが開発した、脱出用ゴーレムだ。瓶を割ればゴーレムが現れ、ダンジョンの外まで運び出してくれる。試作段階だが安全性は十分だ。使用者は不合格となるが負傷などで試験継続不可能と判断したら迷わず使うんだ。将来有望な人材が死ぬのは許容できん。それと明日の夜明けには自動で瓶が割れるようになっている。それが第二次試験の期限となる。説明は以上だ。質問はあるか?」
ゼンゼが問うと、ラヴィーネが手を挙げる。
「質問いいか?」
「なにかな」
「試験官と一緒にダンジョンに潜るんだよな?なら……ダンジョンを攻略中は試験官と話してもいいか?」
ラヴィーネの質問を聞いたゼンゼは、チラッとカンネを見る。
ゼンゼは師匠であるゼーリエから、カンネとラヴィーネのことは聞いている。
二人が両想いで……長い期間、会うことができなかったことを。
「……試験官は邪魔もしないし、手も貸さない。だが……話をするぐらいならいいだろう」
「ゼンゼ先輩!?」
ゼンゼの言葉を聞いて、カンネは目を見開く。
「カンネ。あの魔法使いは君の最愛の人なのだろう?なら話してくるといい」
「大丈夫なんですか?ゼーリエ様に怒られるんじゃあ」
「なに……責任は私がとる。だから……たくさん話してくるといい」
「ゼンゼ先輩……」
カンネは瞳を潤ませながら、深く頭を下げた。
「それでは……試験開始だ」
<><><><>
試験開始した後、受験者たちは話し合いを始めた。
どう攻略するか?
魔法使い同士協力するか?
それとも単独で行動するか?
そんな時、
「みんな……ここは協力しないか?」
ラヴィーネが受験者全員にそんな提案をした。
それを見て、私―――カンネは心から驚く。
アニメではこんなことなかったのに。
「ここは全員で協力したほうが、合格する可能性が高い。もし協力するのなら、私はこの零落の王墓にいる魔物の情報を提供する。どうだ?」
なるほど……全員で協力する代わりに、情報を共有するってことか。
確かにこうすればこの試験を合格できる可能性は一気に上がる。
考えたね。
「分かった。協力しよう」
「私も」
「俺もだ」
次々と協力に賛成する魔法使いたち。
全員、協力するのを確認したラヴィーネは零落の王墓のことを話し始めた。
「じゃあ言うぞ。一番上の兄貴が大陸魔法協会の……零落の王墓攻略の先遣隊の一人だったんだ。その兄貴が言うにはシュピーゲルっていう神話の時代の魔物がいるらしい。そのシュピーゲルはダンジョンに入った奴を複製して、操ることができる。先遣隊の観測結果によるとシュピーゲルは宝物庫の内部にいて、本体は攻撃手段を持たない脆弱な魔物だって話だ」
「なるほど……」
フリーレンは顎に手を当てて、思案する。
「なら協力は必須だね。ありがとう、ラヴィーネ」
「合格するためだ。さて……次は入り口はどれに入った方が正解か」
「う~ん。そうだね~」
まぁ悩むよね~。
ダンジョンの入り口は複数。
どれも罠があり、どれも宝物庫に通じている。
さてどうするラヴィーネ?
「あ、あの!私に任せてくれませんか?」
魔法使いたちが悩んでいると、ララが手を挙げた。
「私なら安全に、かつ最短なルートが分かります」
「それは本当?」
「は、はい。ちょっと待ってくださいね」
ララは深呼吸をした後、
「来て」
ポツリと呟いた。
すると小鳥や小動物たちが、ララのところに集まる。
す、すごい……あんな魔法があるんだ。
「お願い……探して」
ララがそう言うと、小動物や小鳥たちはダンジョンの中に入っていった。
十数分後、一匹の小鳥がダンジョンから帰ってきて、ララの肩に乗る。
小鳥がチュンチュンと言うと、ララは「ありがとう」と言って小鳥の頭を撫でた。
「この子が安全で最短なルートを教えてくれます」
「流石だな……ララ」
ラヴィーネが褒めると、ララはえへへと照れた。
「すごいな……あんな魔法があるのか」
ゼンゼ先輩はララを見て、驚いていた。
確かにすごい。
戦闘能力はないけど、色々使える魔法だね。
だけど……なんでだろう。
あのララって子を見ていると、なぜか胸騒ぎがする。
「どうした、カンネ?」
「ゼンゼ先輩……あのララって子。どう思います?」
「え?どこにでもいそうな魔法使いの女の子に見えるが」
「そう……ですか?」
やはり気のせいなのかな?
私がそう思っていると、ラヴィーネ達は動き出す。
「さて……行くか」
ラヴィーネの言葉を合図に、彼らはダンジョンに入っていく。
私とゼンゼ先輩はそんな彼らについていこうとした。
その時……ラヴィーネが私の手を掴んだ。
「お前は私の隣にいろ」
「……うん」
私は頬を緩めながら、ラヴィーネの隣を歩いた。
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