「 キヴォトス 等身大ザク 男子校 私 」 作:おおおユウゴ
## 第五話
さて、私が
その声の主は……まさか。いや、まさかであろう。ここはトリニティの辺境とも言うべき、正義実現委員会のしがない前線詰所である。そのような場所に、あのような
だが、無情にも、部屋にいた全員の視線は、入り口へと注がれていた。ハスミ嬢は驚愕に目を見開き、イチカ嬢は硬直し、データ解析に没頭していたはずのノア嬢と津山君(!)までもが、顔を上げている。そして、その視線の先には──
嗚呼、
白亜を基調とした、気品あふれる制服。それは、トリニティ総合学園の生徒会、いや、最高意思決定機関である『ティーパーティー』のメンバーのみが着用を許された、栄光の証。
その中央に立つは、夕陽のように穏やかで、かつ全てを包み込むような微笑みを浮かべる少女。緩やかに波打つ亜麻色の髪、理知的で優しい眼差し。
彼女の右隣には、朝日のように明るく、溌剌とした笑顔を振りまく少女。華やかなピンク色の髪、自信に満ちた大きな瞳。
そして、左隣には、全てを見通す月光のような、不思議な静けさを湛えた少女。つまりは золотистые (黄金色とでもしておこう) の長い髪、どこか遠くを見つめるような、それでいて全てを知っているかのような神秘的な瞳。
トリニティ総合学園の頂点に君臨する、御三方が、なぜ、このような吹き溜まり──失礼、正義実現委員会の前線詰所に、御揃いで降臨なされたというのか!?
まるで、場末のラーメン屋に、いきなりミシュランの調査員が団体で現れたような、そんな場違い感と、圧倒的なプレッシャー! 私の貧弱なCPUでは処理能力を超えてエラー落ち寸前である。いや、むしろエラーで強制終了してくれた方が、どれほど楽か!
「な、ナギサ様!? ミカ様、セイア様! ご、ごきげんよう!」
ハスミ嬢が、それこそ教科書に載せたいほどの美しい敬礼と共に、完全に上擦った声で挨拶をする。無理もない。ヒラの委員(しかも一年生)にとって、ティーパーティーとは直属の上司どころか、天上の存在に近いのだから。彼女の背筋は、緊張で針金のように硬直している。
隣のイチカ嬢に至っては、もはや彫像である。先ほどまでの威勢はどこへやら、借りてきた猫どころか、ポンペイの遺跡から発掘された石膏像のように、カチンコチンに硬直している。ぷるぷると小刻みに震えるプラチナブロンドが、彼女の内心の動揺を雄弁に物語っていた。ノア嬢は、流石にセミナーの書記だけあって、優雅な微笑みを崩してはいないが、その瞳の奥には、わずかな驚きと計算の色が見て取れる。津山君は……ああ、彼はもうダメだ。完全に諦観の境地に達し、「どうにでもなれ」とばかりに、再び壁にもたれかかり、虚空を見つめている。ある意味、悟りを開いているのかもしれぬ。
一方、私、Nである。状況が全く飲み込めない。なぜ、オートマタ退治の後始末現場に、学園のトップ3が勢揃いしているのか? 私という名の珍獣、あるいは問題児(どちらも不本意だが)を、わざわざ見物に来られたというのか? それとも、このザクスーツが、彼女たちの逆鱗に触れてしまったのか? どちらにせよ、碌なことにはなるまい。私のモノアイ(の奥の瞳)は、混乱のあまり左右に激しく振動していたことであろう。
「あらあら、随分と騒がしいと思ったら……。ハスミさん、これは一体、どういう状況ですの?」
ティーパーティーのホスト、ナギサ嬢が、穏やかながらも有無を言わせぬ口調で尋ねる。その声には、場の空気を一瞬で支配するような、不思議な圧があった。
「は、はっ! ナギサ様! こちらは……その……」
ハスミ嬢は、必死に状況を説明しようとするが、緊張のあまり言葉がうまく出てこないようだ。頑張れハスミ嬢! 君の正義はそこにあるのか!
そんな彼女を尻目に、ティーパーティーの一角、聖園ミカ嬢が、キラキラした笑顔で、真っ直ぐに私の方へと歩み寄ってきたではないか!
「ふーん、プルガトリウムの男の子? へえ、珍しいね☆ そのロボット、かっこいいじゃん!」
彼女は、まるで珍しい
「ひゃっ!? あ、あの……! あまり、触らないでいただけると……その、精密機械なので……」
情けない声が出た。しかも言い訳が苦しい! 精密機械? 確かにそうだが、そんな繊細なものではない。しかし、これ以上触られては、私の精神が保たない! 男子校育ちの純情(という名のコミュ障)を舐めるな!
「あははっ☆ ごっついねー! これ、自分で作ったの? すごーい! ね、ちょっと中も見せてよ!」
ミカ嬢は私の狼狽ぶりなどどこ吹く風、無邪気に(あるいは確信犯的に)質問を続け、さらに馴れ馴れしく装甲を撫で回し始めた! やめろ! やめてくれ! そんなに触られたら、サビる! いや、サビないが、私の心がサビる! 純情な男子の心が、赤錆色に染まってしまう!
私はしどろもどろになりながら、ミカ嬢の質問に答えた。
「ああ、いや、私以外にも技術工作部の連中も手伝ってくれて……ああ! そんなところ触れてはだめぇ‼!」
私の敏感なところ(心)がはじけ飛んでしまう!
「ミカさん、あまり不用意に触れてはいけませんよ。その方が困ってらっしゃるでしょう?」
天からの助け舟か、ナギサ嬢が、穏やかながらも有無を言わせぬ声でミカ嬢を制した。流石はホスト、場の空気を読む能力に長けていらっしゃる。
「えー、ちぇっ。はーい」ミカ嬢は、少し不満そうに唇を尖らせつつも、素直に(?)私から手を離した。「でも、後で絶対詳しく聞かせてね! Nくん!」
……Nくん!? なぜ私の名前を!? いや、それよりも、この馴れ馴れしさ! まるで旧知の仲のようだ! 私と彼女の間に、そのような親密な関係性は微塵も存在しないはずだが……! 女子の思考回路は、やはり摩訶不思議である。
「……なるほど。
静かに呟いたのは、百合園セイア嬢である。彼女の、どこか遠くを見ているような、それでいて全てを知っているかのような不思議な瞳が、私に向けられている。その視線は、まるで私の過去も未来も、そして今日の昼食がカップ麺であったことまでも見透かしているようで、居心地が悪いことこの上ない。そして、その言葉の意味も、皆目見当がつかぬ。蓋然性とは一体? 私という存在が、そんな小難しい言葉で語られるような、何か大層な意味を持っているとでもいうのだろうか? いや、まさか。私はただのラーメン好きのプルガトリウム生だ。
ティーパーティーの御三方が揃い踏みとなったこの詰所は、もはや尋問室というよりは、何かの