これだけチートで成り上がれないって嘘でしょ!? 作:かりん2022
世の中には不思議がいっぱいだ。
廃墟の中、俺は呪霊を退治して、息をついた。
武器はナックル。自分で作った呪具だ。
姉は自称漫画家である。デビューはできていないが、高校を行かないという。
なかなかロックな姉だ。細々とコスプレ服やイラストの依頼を受けている。
そして本物の神様の教祖様。もしかして、神様も呪霊の一種なのかもしれないけど。
呪霊を倒した後、駆け寄ってくるのは美しい双子の男女。
「お疲れ様、樹。怪我はない?」
「大丈夫、ですか?」
「大丈夫だよ、葵。椿」
「すごいね、樹は。どんどん強くなる」
「可愛いお嫁さんが欲しいからね」
「ハワワ……」
葵は術師の家系で、千里眼という当主となるべき術式を持って生まれたそうだ。でも呪霊を見ると頭が痛くなってしまうのですこぶるガッカリされている。椿はその妹で術式を持たない。それで、俺が仕事を手伝っているのだ。椿は学校に行けてるけど、葵は学校に行けてない。
俺は呪力はそこそこあるのだが、構築術式はあまりいい術式ではないらしく、落ちこぼれ三人衆と呼ばれている。
だからこそ、一般出の俺が高専卒業までに一級になったら名家の椿を嫁にする、なんて契約も結べたのだが。婿ではないのが味噌だ。
椿を嫁にさえ出来たら、葵と一緒にねぇさんの作る楽園に逃げよう。
……わかってる。絶対無理だって思われてるって。
それでも、俺を信じて俺が約束を守れなかったら親戚のクソどもの言いなりになると葵が言ってくれたから。だから俺は力が欲しい。
ルナ様から貰った知の力は良かった。全身が脳味噌になったみたいで、これさえあれば葵の体調不良も治るんじゃないかって思う。俺の呪具の精度も上がり、こうしてナックルが作れた。
力が、力が欲しい。ああルナ様、どうかお願いだ。
どうか力をください。
俺は、聖印に語りかけ、ひたすら祈った。
くそっ クソクソクソっ
俺は、呪霊の触手にぶら下げられていた。
手足を貫かれ、倒れる葵、服を破かれる椿。
「ルナ様! ルナ様ルナ様ルナ様!! 力が欲しい!!! 今すぐ!!!!」
『寝起きにどういう状況!?』
どうやらルナ様は寝ていたらしい。
『なんで化け物に襲われてるの!?』
「助けてくれ、ルナ様。その為ならどうなったっていい!!」
『私に出来るのは、貴方達に力を与える事だけよ』
俺が首に下げた聖印が輝く。
それは分裂して、葵と椿の元に飛んでいく。
「葵! 椿! 俺を信じてルナ様に祈ってくれ、力が欲しいと!!!」
「樹……ルナ、様、お願いだ。力が欲しい……!」
「お願いです。本当はずっと、私、守る力が欲しかった……!」
『力が欲しいか!??』
「「「欲しい!!!」」」
『くれてやる!!!』
葵と椿がそれぞれ聖印を握る。
俺の元に二つの光る石が吸い込まれていく。
俺の指に、指輪が装着される。
俺の胸と指輪の位置、それぞれで大きな力が弾ける。
胸からは力が溢れ、指輪からは力が流れ込む。
俺は、術式でその力を紡いだ。
「いっけええええええええええええ!!」
巨大な槍が、呪霊を貫きサラサラと崩れていく。
呪霊が崩れると、指輪にずるずるとそれが吸い込まれていく。
呆然としていると、足元に何かが落ちているのに気づく。
めちゃくちゃ綺麗なコインが一枚と、怪しい注射器。
『ピンチになる前に力を求めてもらってもいいですかぁ!? 目覚めてすぐ無双なんてご都合展開二度も三度も起きねーぞ!』
ルナ様がブチ切れている。
俺は土下座して、戸惑いながらも葵と椿もそれに習った。
それから、俺達は何が起こったか確認した。
俺の前にはコインと注射器。
葵と椿の前には、小瓶と注射器。
石みたいのが二つ、すでに吸い込まれているらしい。
聖印が熱くなる。そうして、異空間へのゲートが開いた。
『楽園で順番に力を使えるように訓練なさい。一気にやってもどうせ扱いきれないだろうし。血清は使うなら化け物に堕ちる覚悟はなさい。そしてあんた達は少なくとも5年は私の僕となりなさい! 樹、てめーは10年な!』
ドスっと目の前に薬とねーちゃんのコスプレ服が落ちてくる。
『薬! 服!! さあさっさと入る! 樹、そのコインはあんたがこれから創る武器に合成すればいいから。もっとマシな武器作れ』
荒ぶる神の声に押されるように異空間ゲートに入ると、そこは大きくて何もない島だった。
「……どういうこと?」
「ごめん、巻き込んだ」
そう言って、俺は小さき邪神ルナ様の事を話した。
「惑星開拓……」
「俺らの代では無理だろうけど、俺、頑張って魔の四天王になる。椿に相応しい男になるからさ。そしたら結婚しよう」
「樹……樹様! 私のナイト様、王子様、勇者様……!!」
椿は泣きじゃくった。俺は椿を抱きしめて撫でる。
「痛いな痛いなー」
一方、葵は注射を自らの腕に打ち、ゴクゴクと小瓶の薬を飲んでいた。
「葵」
「弱いのは嫌だ。弱いのは嫌だ。力をくれるってのは本当みたいだし」
それから、俺達はもらった薬で治療をして、椿はねぇちゃんの作ったコスプレ服を着る。ナノマシンがあるから、傷は放っておいても癒えただろうけど、助かると癒えば助かる。
ねぇちゃんから強奪したんだろうけど、怒るだろうなねぇちゃん……。
俺達はそこでしばらく休み、体が馴染むと自分の力を試した。
呪力と魔力、異能の力とナノマシン。
もしもの時の為に用意してた食料を消費しつつ、二日かけてどうにか力を把握して、俺達は帰還した。
俺は莫大な魔力と、物を作る異能、構築術式。構築術式は進化して、命を吹き込めるようになった。異能と術式がダブったのは残念? 違うな。根源を別とする同種の力が混じり合ってパワーアップした感じである。ナノマシンのおかげで物を作るイメージもより詳細になっているし、莫大な魔力の後押しもあり、スッゲェ呪具が作れそう。一級イケるのでは?
葵は、やはりナノマシンが馴染んだらしい。具合が悪いのがなくなったそうだ。
術式は、なんと眼の術式とは別の、転移の術式が発現した。どこにだって行ける、という言葉が印象的だった。異能は糸を出せる。呪力がよく馴染むので、使い所はすこぶるいっぱいあるそうだ。
椿。術式が発現し、呪力も上がった。でもなんと言っても異能だろう。
異能は、薔薇を操る事。鞭として使ったり、種を打ち込んで養分を奪ったり、なかなかいいと思う。術式は、固化。呪力を固めるだけの術だが、これの何が凄いって、力を貯めて本人であれば解凍できるってとこだ。しかも吸収の指輪で貯めた力を固化すれば、誰であろうと解凍できる。凄い。ナノマシンの適性はあまりなかったらしく、ちょっと傷の治りが早くなってナノマシン保持者同士の通信ができる程度。まあそれだけ出来れば十分だよね。
3人で家に行くと、やはりねぇちゃんに叱られた。
しかし、ねぇちゃんの仕事の手伝いを許可された。
ルナ様に願い出て、楽園に東京駅とねぇちゃんが攻略しているダンジョン都市への入り口を作ってくれる事となったのだ。言葉のデータも大まかな魔法知識もねーちゃんにダウンロードしてもらった。ねぇちゃんの異能もめちゃくちゃ強くて、俺達はスイスイとダンジョンを進んだ。
俺達は、仕事の時以外は、ダンジョンで力を磨き、魔法の勉強をするようになった。その結果、ポーションが異能で作れるようになったんだが、俺最強すぎないか?
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